コムスタカ―外国人と共に生きる会

DV被害者を支援する熊本県の施策


熊本県が来年度からDV被害者などの自立のためのステップハウスを予算化
中島 真一郎
2003年4月3日

昨年9月の施策の提言としてコムスタカ―外国人と共に生きる会など4団体で提案し た、「Dv被害者や単身者も利用できる自立のための中間施設(3ヶ月から1年程度居住できる)としてシェルターを設置すること」に関連して、2003年度予算案に県として、自立のためのステップハウスとして施設を設ける予算を計上しているので、その説明をしたいとの連絡があり、2003年2月19日午後1時にコムスタカのメンバー3名で熊本県児童家庭課にき、説明を受けました。

児童家庭課の説明によると、「県として、県の施設を活用して試験的に2部屋程度の自立のためのステップハウスを2003年4月から設けることにしたい。そのための予算100万円程度を計上している。一時避難所で保護した人を対象(子ども連れだけでなく単身者も含む)に、働きながら民間アパートなどを探して自立するまでのつなぎとして、敷金や家賃なし(水光熱費自己負担)で原則3ヶ月程度居住できる施設として二部屋を確保する。セキュウリテイ対策として、その部屋に警察に繋がる緊急通報装置を設置する。また、女性相談所の相談員などが継続的に相談にあたる。」内容でした。私たちのほうには、「風呂やガス、電気などの必要最低限のものは県の予算で用意できるが、家財道具や備品などの寄付をお願いしたい、又これまでの経験から運営のノウハウについての助言をお願いしたい」ということでした。

自立のためのステップハウスは、2年前からコムスタカ―外国人と共に生きる会が 県へ要望していましたが、相手にされませんでした。DV防止法が成立し、その後熊 本県でもDV問題に関係する団体(NGOも含めて)の会合が開かれるようになり、そのなかで「NGO側から要望事項がありますか」と聞かれ、コムスタカとして自立のためのステップハウスを要望していました。 当初児童家庭課の職員は否定的でしたが、昨年から課長が前向きに考えましょうと意欲的な反応となりました。昨年9月に8項目の施策の提言の1番目に、自立のための中間施設としてのシェルターの要望を掲げたのは、そのような流れのなかのものでした。来年度(2003年4月から)予算において、県が予算化したのは2部屋、100万円程度と試験的なものですが、これまで聞き置かれるか、無視されることばかりであった私たちの要望が、県予算として具体化していく(3月県議会での承認がひつようですが)ことは、画期的だと思います。

これまでの熊本県内には、全国の大半の都道府県にある「婦人寮」を1985年度で廃 止しており、1箇所の一時避難所と2箇所の母子自立支援センターしかありません。そ して、一時避難所は、原則2週間程度の保護期間しかないことと、求職活動はできますが、そこから働いたり通学できないこと、母子自立支援センターは、単身者が利用できないことや満室状態で入れないことがあること、双方の施設とも「保護」という建前による「管理」が厳しく、被害者の救済や自立に制約が多いことなどの問題点を指摘していました。今回のステップハウスは、熊本県によると全国的に公的施設を利用したものとしては先例がないとのことでしたが、私たちの提言などをうけ具体化しいく第一歩として評価できるものです。(3月議会で承認され、4月1日より具体化します。)

県の直営のステップハウスが、今後どのように育っていけるかわかりませんが、行政 の施策の在り方としてひとつの方向を示していると思います。そして、現在全国的にも行政は、民間団体の活用、民間委託(行政の基準に合わせた施設整備と補助金支給)という方向で民間シェルターの保護施設としての活用を進めています。熊本県も同様であり、コムスタカにも同様な相談がありましたが、現時点で断りました。「婦人寮」を廃止してしまった熊本県がまずすべきことは、DV被害者などの相談に対応するという現在のあらたな状況に適応する熊本県の責任で運営する施設をつくり、それにNGOが協力していくことが、本来のあるべき姿と考えているからです。


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