2010年度 熊本県DV対策関係機関会議報告

 2010年6月10日 

   中島  眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

熊本県内の51団体で構成される熊本県DV対策機関長会議が、

2010年6月4日午前10時から午前11時45分頃まで、

熊本県庁新館2Fの会議室でひらかれました。
(コムスタカも、民間サポート機関として、構成団体となっているので、

出席しました。)
会議は、熊本県男女参画協同推進課からのDV対策事業の実施状況、

熊本県内の各地域振興局による活動状況報告、女性相談センター、

男女共同参画センター、精神保健福祉センター等行政機関の相談などの

状況報告が、1時間ほど行われ、残り30分ほど質疑があります。
事前提出した質問に行政の関係機関が回答するものですが、女性福祉相談員

連絡協議会、あるいは、母子生活施設支援協議会という直接DV被害者に

接している関係機関から質問が一部なされ、発言がありますが、行政関係機関

の出席者からの質問はない状況でした。もったいないので私が出席するように

なったこの3年間は、この質疑の時間の大半を、コムスタカで現在進行形で

おきている外国籍のDV被害者の保護や自立支援の経験から外国人のDV対策

問題 について質問や要望を述べています。
 2010年の会議では、事前に熊本県土木部住宅課のDV被害者への県営住宅の

目的外使用(3年前から1年間に限定して、入居できる部屋が1戸認められるようになる)

の複数戸化やその施策の充実へ向けた取組みについてと、県内の郡部の福祉事務所を経由して、

母子自立支援施設へ入居した母子が、福祉事務所長の裁量判断で、期限付き入居となり、

子育て支援や生活支援が必要とされているにもかかわらず退去しなければならない問題が

なぜ生じるくのかについて質問しました。
 前者の県営住宅のDV被害者のための目的外使用を認める施策は、

この3年間質問し続けている問題ですが、毎年要望しているのは、

@県内に1戸しか認められていないのを、地域及び戸数を複数化すること、

A 旧い住宅が割り当てられ、そこでは浴槽を入居時に自己負担して設置しなければならない

部屋をDV被害者用に割り当てないこと、B 入居時に敷金などが不要でも、

退去時に畳表の交換や襖の張替えが義務づけられ、そのために9万から10万円ほど出費が強いられるので、

退去時の負担が少なくなるようにしてほしい、という3点でした。
 3年前の要望は、県土木部の担当者の交代により、引継ぎさえされず無視でした。昨年の要望は、

行政側のできない理由(県営住宅は多くの入居希望があり、1戸しか割り当てられない、

浴槽の設置負担は、そういう規則で運営している等)の説明に終始しました。
 ところが3年目の今年の県土木部住宅課からの回答は、「DV被害者のために県営住宅の

目的外使用をみとめる戸数の複数化については、今年度から現在2戸、現在空き部屋という

意味ではないが、7個まで提供戸数を増やす、特定の団地に固定しないため、県営住宅

4箇所で設ける。Aについても、DV被害者用に浴槽を自己負担で設置しなくてもよい

部屋を提供していくとともに、県営住宅の浴槽が設置されていない部屋では、入居者が

退去後浴槽を設置するようにして解決していく、Bについては、今後、DV被害者の

負担が少なくてすむようにどのような方策が可能か持ち帰って検討する。」という、
 3年間言い続けた要望がほぼ実現してしまうという、あるいみ意味で「画期的」

な回答でした。
 政府が、DV被害者の支援のための公営住宅の目的外使用を都道府県や市町村へ勧めている

ことも影響していると思いますが、無視されたり、「できない理由を正当化する」役人答弁

をきかされたりしても、あきらめず言い続けると、(行政がやる気になると)実現できてし

まうことを改めて実感させられました。
 今年、新しく質問した、郡部の市町村の福祉事務所からの母子自立支援施設への入居に期限が

つけられる問題についても、県社会福祉課で、「なぜそのような事態が起こるのかを市町村の

福祉事務所の取扱いについて実情を調べ検討する」という回答でした。

(追記  この問題については、2010年6月中旬に母子自立支援施設、コムスタカ、当該母子

及び当該自治体で話し合いを行いました。その結果、当該自治体が母子の自立へ向けてその実情を調査し、

長期的な入居を認める方向で検討することで更新が認められことになりました。)


 他の民間サポート関係機関の団体からも、「前年、質問及びそれに対する回答が、どのような

内容であったかを記録し、次の年にはそれに対して、関係機関がどのような対応をしたのかを

あきらかにするようにしてほしい」という発言がありました。出席した他の関係機関から者発言

も多くなされました。
 昨年までの関係行政機関が「自己防衛」的にできない理由を言い訳するようなやり取りの雰囲気から

、施策をどのようにしていくか具体的に考えようという雰囲気が感じられ、会議としては

活発であったと思います。


 追記
 2009年度の熊本県の一時避難所への入居者は本人84人と児童など同伴者104
人、うちDV本人68人 同伴者 88人 でした。一時保護者のうち外国籍の本人7人、同伴者21人、

うちDV 5人  同伴者13人 でした。 一時保護者のうち外国籍の占める比率は、8% 程度ですが、

日本人一時保護者と比べて、日本語のコミュニケーション能力の弱さ、在留資格の制約、実家が国内になく、

頼れる親族や友人が少ないなどハンデイがあり、深刻な問題を抱えているケースが多いのが実情です。そのため、

外国籍のDV被害者の保護と自立の施策は、日本人DV被害者の全体の施策の充実や行政サービス全体の底上げに

つながっていくものとなっています。