在留特別許可と外国人登録

  2007年10月31日  中島 真一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

  

在留特別許可申請の必要書類のために外国人登録をして、必要書類を揃えるまで待っている間に、入管と警察により逮捕−起訴された外国人配偶者が、執行猶予付きの有罪判決後10日間で、入管より在留特別許可が認められたケースがありました。

今回のような事態がなぜ起きたのか、詳しい事実経過と再発防止のためにどうすればよいかを検討するため釈放された外国籍の配偶者と日本人夫から詳しい事情を聞きました。また、自治体の市民課と、入管の警備課の職員に電話で、在留資格のない外国人の場合の外国人登録の取扱いや、在留特別許可申請の際に外国人登録済み原票記載事項証明書が提出書類として必要なのかを聞きました。

 

1、 外国籍配偶者と日本人夫からの説明

在留特別許可を得るため入管へ出頭する準備のため、まず、役場に婚姻届を提出しようとしたところ、最初外国人登録済原票記載事項証明書も提出してくれといわれ、提出できなかった。その後、いろいろ調べ相談したところ婚姻届には、外国人登録が必要ないことを知り、行政書士に依頼して、一緒に役場まで同行してもらい婚姻届は、外国人登録なしで受理された。

行政書士からは、婚姻届手続きでは必要がないが、在留特別許可を求めて、入管へ提出する書類に、外国人登録記載事項証明書が必要といわれ、役場で、婚姻届受理後に外国人登録手続きを同日にした。

役場の担当者からは、在留資格のない事情を聞かれ、陳述書として書いて提出した。

また、「在留資格のない外国人が外国人登録をすると、入管へ通知しなければならない」とも言われたが、「どうせ書類がそろえば入管へ出頭するのだからかまわない」と考えて、手続きをした。  在留資格のない外国人の外国人登録は、時間がかかるといわれ、役場からの連絡を待つことになった。

その間、外国人配偶者の出身国への婚姻の報告的届のための必要書類を集めるのにも時間がかかった。役場から、申請手続きから3ヵ月後にようやく外国人登録手続きが終わり、外国人登録証と外国人登録原票記載事項証明書が発行できるという連絡がきて、指定された日に書類を取りにいくことにしていた。そして、その翌日に入管へ連絡し、出頭するつもりであった。ところが、逮捕の1週間前からアパートや外出するたびに尾行されたり、見張られている気配を感じるようになった。そして、入管の出頭予定日の3日前に、入管と警察が、夫婦が同居しているアパートにきて逮捕されてしまった。

 

 

2、 役場の市民課の説明

(1)外国人登録と婚姻手続き

在留資格のない外国人が、婚姻届を提出される場合には、住所を確認するために

外国人登録の有無を聞いたり、登録のない方に登録を勧めることはある。但し、婚姻届には、外国人登録は必要要件となっていないので、登録されていなくとも婚姻届は受理できる。

(2)在留資格のない外国人の外国人登録手続き

在留資格のない外国人が、外国人登録を初めてされる場合には、在留資格のない事情を陳述書として書いて提出してもらい、手続きをしている。また、在留資格のない外国人が外国人登録した場合には、入管へ通知することになっているので、その旨も伝えている。

(但し、警察には、役場から連絡することはない)

過去に登録済みの場合には、外国人登録証は約3週間、外国人登録原票記載事項証明書は、即日発行できるが、日本でこれまで一度も登録されていない外国人の外国人登録手続きには、本人確認や法務局の承認が必要なので時間がかかり、数ヶ月かかることもある。

 

3、入管の警備課の説明

在留資格のない外国人が、日本人との婚姻を理由とする在留特別許可を求めて、出頭する場合に、在留特別許可の必要書類として、住所確認のために外国人登録済原票記載事項証明書の提出を求めている。但し、これがないと手続きを進められないわけではないので、この書類がなくとも、在留特別許可の他の書類があれば、受理できる。

入管への出頭後に、在宅審査の場合には、役場で外国人登録手続きをして、後日提出してもらえればよい。また、収容中に在留特別許可の申請を行い、外国人登録手続きを本人ができないケースでは、外国人登録済原票記載事項証明書がなくとも、在留特別許可を許可し、ビザ取得後に、外国人登録手続きをしてもらうこともある。

 

4、まとめ、

(1)今回の事態が起こった要因

@他人名義の旅券での入国で、本人名義の外国人登録手続きが初めてであったことから、外国人登録手続きが完了し、外国人登録済み原票記載事項証明書が発行されるのに時間がかかった。

A入管に在留特別許可を申請するには、外国人登録済原票記載事項証明書が必要書類と知らされ、その入手後に入管へ連絡―出頭しようと考え、書類がそろうのを待っている間に、入管への連絡−出頭をしなったこと、

B外国人登録した在留資格のない外国人について、通知を受けた入管が、その情報をもとに警察に連絡し、警察が内偵し、手続きの3ヵ月後に警察と合同で逮捕にきたことです。

(2)今後の対応

以前と異なり、在留資格のない外国人が外国人登録手続きをした場合、入管が自治体からの通知をもとに、その外国人を入管法違反で調査し、摘発、場合により警察と合同で逮捕している現実があります。このこと自体が不当ですが、この現実の危険性を知って相談がある場合に対応しておく必要があります。

 

外国人登録済原票記載事項証明書は、入管から必要書類といわれることがあっても、住所確認のために必要とされるもので、それがないと在留特別許可の申請を受理できない書類でないこと、また、在留特別許可が認められない書類でないことを知っておくことが必要です。

 

在留資格のない外国人が、今回のケースのような事態にならないで、在留特別許可をえるには、外国人登録済原票記載事項証明書がなくとも入管は在留特別許可の受理ができることを知っておいて、外国人登録をする前に他の必要書類を揃えた段階で入管に出頭すること、その後入管から提出を求められた段階で外国人登録手続きをすることがベターな対応となります。むろん、外国人登録手続きをした場合には、すみやかに入管に連絡―出頭するように心がけることが必要です。

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