――退去強制手続関連の行政訴訟の現状(2008年版)――
2008年12月 29日 中島 真一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
1、退去強制手続関連行政訴訟の現状
退去強制手続関連行政訴は、2003年68件、2004年109件、2005年143件、
2006年164件、2007年158件と、2003年68件と比べて2倍以上に増加しています。
2007年についての出入国管理関連の行政訴訟(2007年 278件)の内訳は、退去強制手続関係の
行政訴訟(158件)、難民認定手続関係の行政訴訟(82件)在留審査関係不許可処分(17件)、
在留資格認定証明書不交付処分関係(18件)、その他(3件)でした。(出典 『2008年版
出入国管理』資料編 109ページ表51より)、また、このうち国の敗訴が確定して在留資格を付与
した事例は、移住労働者と連帯する全国ネットワークの法務省への質問に対する回答によると2006年2件
でしたが、2007年は6件と増加しています。
2、 出入国管理行政をめぐる行政訴訟提起事件の推移(2003年―2007年)
(1)出入国管理関係行政訴訟(本案事件) 取消請求・無効確認提起事件の推移
出入国管理関係行政訴訟(本案事件)取消請求・無効確認提起事件は、増加傾向にあります。難民認定手続き関係
の訴訟は2004年の25件以降、毎年増加傾向にあり、2007年には82件と3.2倍以上となっています。退去強制手続
関係(退去強制令書発付処分等取消請求訴訟)は、2006年(164件)には2003年(68件)の2.4倍以上になっています。
請求趣旨 |
2003年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
退去強制手続関係 |
68 |
109 |
143 |
164 |
158 |
在留審査関係不許可処分 |
58 |
6 |
8 |
21 |
17 |
在留資格認定証明書不交付処分 |
5 |
7 |
17 |
6 |
18 |
難民認定手続関係 |
53 |
25 |
52 |
59 |
82 |
その他 |
6 |
19 |
28 |
2 |
3 |
合計 |
190 |
166 |
248 |
252 |
278 |
出典 『 『2008年 出入国管理』(法務省入国管理局編)
(2)出入国管理関係訴訟(退去強制令書執行停止申立事件) 提起事件の推移
執行停止申立事件の提起件数は、2003年の42件から2007年には102件と2倍以上に増加しています。
決定内容を見ると、収容の停止と送還の停止をあわせて認める全部停止の決定は、1987年から2001年までの
15年間1件もありませんでした。
しかし、2002年以降は毎年1−4件程度認められるようになってきました。(但し、下級審での決定では入管側が
抗告するので、抗告審である高裁で認められ確定した事例は2004年までゼロ、でした。) 全部停止の決定で
確定した事例は、2005年から2007年にかけて、毎年1−2件が認められた事例が、ようやくあらわれるように
なってきたにすぎません。
また、収容の停止はみとめないが、送還の停止だけ認める決定は、2004−2006年の3年間は終了件数の
7割程度を占めるようになってきていましたが、2007年は4割に低下しました。これは却下件数が17件と取り下げ
件数が20件と増加したためです。
区分 |
2003年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
提起件数 |
42 |
95 |
101 |
85 |
103 |
終了件数 |
44 |
70 |
109 |
69 |
69 |
却下 |
9 |
4 |
16 |
5 |
17 |
全部停止 |
2 |
4 |
2 |
3 |
1 |
送還停止 |
28 |
54 |
72 |
49 |
31 |
取り下げ |
5 |
8 |
19 |
12 |
20 |
年末係属件数 |
11 |
36 |
28 |
44 |
34 |
出典 『2006年 出入国管理』
移住労働者と連帯する全国ネットワークの法務省への質問への回答から