出入国管理行政をめぐる行政訴訟提起事件の推移(2003年―2009年)
2010年12月26日 中島 眞一郎(コムスタカー外国人とともに生きる会)
(1)出入国管理関係行政訴訟(本案事件) 取消請求・無効確認提起事件の推移
表1 出入国管理関係訴訟(本案事件) 提起事件の推移
請求趣旨 |
2003年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
2008年 |
2009年 |
退去強制手続関係 ( )は、国の敗訴確定数 |
68 ― |
109 ― |
143 ― |
164 (2) |
158 (6) |
234 (3) |
162 (3) |
在留審査関係不許可処分 |
58 |
6 |
8 |
21 |
17 |
17 |
16 |
在留資格認定証明書不交付処分 |
5 |
7 |
17 |
6 |
18 |
8 |
10 |
難民認定手続関係 |
53 |
25 |
52 |
59 |
82 |
72 |
50 |
その他 |
6 |
19 |
28 |
2 |
3 |
4 |
1 |
小計 |
190 |
166 |
248 |
252 |
278 |
335 |
239 |
出典 2006年から2010年の各年度の「 出入国管理』(法務省入国管理局編)等
出入国管理関係行政訴訟(本案事件)取消請求・無効確認提起事件は、増加傾向にあります。
難民認定手続関係の訴訟も、増加傾向にありますが、50−80件台を推移しているのに対して、
退去強制手続関係(退去強制令書発付処分等取消請求訴訟)は、2003年68件、
2004年109件、2005年143件、2006年164件、2007年158件、2008年には 234件 と、
増加傾向にありました。しかし、2009年は162件と、2008年と比べて72件減少しています。
2009年についての出入国管理関連の行政訴訟(2009年 239件)の内訳は、
退去強制手続関係の行政訴訟( 162 件)、難民認定手続関係の行政訴訟( 50 件)
在留審査関係不許可処分( 15件)、在留資格認定証明書不交付処分関係( 10件7)であった。
(出典 『2010年版 出入国管理』資料編P.111)、また、このうち国の敗訴が確定して
在留資格を付与した事例は、「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」からの法務省への質問に
対する回答によると、2009年3件であった。
(2)、 出入国管理関係訴訟(退去強制令書執行停止申立事件) 提起事件の推移
区分 |
2003 |
2004 |
2005 |
2006 |
2007 |
2008 |
2009 |
提起件数 |
42 |
95 |
101 |
85 |
103 |
147 |
140 |
終了件数 |
44 |
70 |
109 |
69 |
69 |
124 |
162 |
却下 |
9 |
4 |
16 |
5 |
17 |
19 |
31 |
全部停止 |
2 |
4 |
2 |
3 |
1 |
0 |
0 |
送還停止 |
54 |
72 |
49 |
31 |
31 |
94 |
109 |
取り下げ |
5 |
8 |
19 |
12 |
20 |
11 |
22 |
年末係属件数 |
11 |
36 |
28 |
44 |
34 |
57 |
35 |
出典 『2006年 出入国管理』 『2007年 出入国管理』(法務省入国管理局編)
注: 「2008年 出入国管理」以降は、出入国管理関係訴訟(退去強制令書執行停止申立事件) 提起事件の
推移のデータは公表されなくなっています。2008年と2009年のデータは「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」
からの法務省入国管理局への質問に対する回答によるものです。
執行停止申立事件の提起件数は、概ね増加傾向にありますが、収容の停止と送還の停止をあわせて認める
全部停止の決定は、1987年から2001年までの15年間1件もありませんでした。
しかし、2002年以降は毎年2−4件程度認められるようになってきました。(但し、下級審での決定では入管側が
抗告するので、抗告審である高裁で認められ確定した事例は2004年までゼロ、2005年から1−2件が認められた
事例が、ようやくあらわれるようになってきたにすぎません。)また、2008年と2009年には再び0件となっています。
また、収容の停止はみとめないが、送還の停止だけ認める決定は、終了件数の6−7割程度を占めるよう
なってきています。