出入国管理行政をめぐる行政訴訟提起事件の推移(2003年―2010年)
2012年2月8日 中島 眞一郎
(1)出入国管理関係行政訴訟(本案事件) 取消請求・無効確認提起事件の推移
表1 出入国管理関係訴訟(本案事件) 提起事件の推移
請求趣旨 |
2003年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
2008年 |
2009年 |
2010年 |
退去強制手続関係
( )は、国の敗訴確定数 |
68
― |
109
― |
143
― |
164
(2) |
158
(6) |
234
(3) |
162
(3) |
172
(7) |
在留審査関係不許可処分 |
58 |
6 |
8 |
21 |
17 |
17 |
16 |
21 |
在留資格認定証明書不交付処分 |
5 |
7 |
17 |
6 |
18 |
8 |
10 |
15 |
難民認定手続関係 |
53 |
25 |
52 |
59 |
82 |
72 |
50 |
55 |
その他 |
6 |
19 |
28 |
2 |
3 |
4 |
1 |
5 |
小計 |
190 |
166 |
248 |
252 |
278 |
335 |
239 |
268 |
出典 2006年から2011年の各年度の「 出入国管理』(法務省入国管理局編)等
(出典 『2011年版 出入国管理』資料編P.112)
出入国管理関係行政訴訟(本案事件)取消請求・無効確認提起事件は、2003年から2008年まで増加傾向にありました。 このうち難民認定手続関係の訴訟も2003年から、2007年82件をピークに、50−80台を推移し増加傾向にありました。しかし、2008年72件、2009年50件と減少し、2010年55件とやや増加してきました。これに対して、退去強制手続関係(退去強制令書発付処分等取消請求訴訟)は、2003年68件、2004年109件、2005年143件、2006年164件、2007年158件、2008年には 234件と増加傾向にありました。しかし、2009年162件と、2008年と比べて72件と大幅に減少しましたが、2010年172件とやや増加しています。
2010年についての出入国管理関連の行政訴訟(2010年 268件)の内訳は、 退去強制手続関係の行政訴訟(172件)、難民認定手続関係の行政訴訟(55件)在留審査関係不許可処分(21件)、在留資格認定証明書不交付処分関係(15件)でした。また、このうち国の敗訴が確定して在留資格を付与した事例は、「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」からの法務省への質問に対する回答によると、2010年7件と、2008年3件、2009年3件から増加しています。
(2)出入国管理関係訴訟(退去強制令書執行停止申立事件) 提起事件の推移
区分 |
2003年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
2008年 |
2009年 |
2010年 |
提起件数 |
42 |
95 |
101 |
85 |
103 |
147 |
140 |
105 |
終了件数 |
44 |
70 |
109 |
69 |
69 |
124 |
162 |
95 |
却下 |
9 |
4 |
16 |
5 |
17 |
19 |
31 |
13 |
全部停止 |
2 |
4 |
2 |
3 |
1 |
0 |
0 |
2 |
送還停止 |
54 |
72 |
49 |
31 |
31 |
94 |
109 |
59 |
取り下げ |
5 |
8 |
19 |
12 |
20 |
11 |
22 |
21 |
年末係属件数 |
11 |
36 |
28 |
44 |
34 |
57 |
35 |
45 |
出典 『2006年 出入国管理』 『2007年 出入国管理』(法務省入国管理局編)
注:「2008年 出入国管理」以降は、出入国管理関係訴訟(退去強制令書執行停止申立事件) 提起事件の推移のデータは公表されなくなっています。2008年と2010年のデータは「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」からの法務省入国管理局への質問に対する回答によるものです。
執行停止申立事件の提起件数は、概ね増加傾向にありますが、収容の停止と送還の停止をあわせて認める全部停止の決定は、1987年から2001年までの15年間1件もありませんでした。
しかし、2002年以降は毎年2−4件程度認められるようになってきました。(但し、下級審での決定では入管側が抗告するので、抗告審である高裁で認められ確定した事例は2004年までゼロ、2005年から1−2件が認められた事例が、ようやくあらわれるようになってきたにすぎません。)また、2008年と2009年には再び0件となっていますが、2010年は2件が認められています。
また、収容の停止はみとめないが、送還の停止だけ認める決定は、終了件数の6−7割程度を占めるようなってきています。
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