コムスタカ―外国人と共に生きる会

中国残留孤児の再婚した妻の娘2家族7人の退去強制問題


5月24日衆議院での「中国残留日本人の継子・養子家族問題」での院内集会と厚生労働省との協議行動の報告
中島真一郎
2004年5月30日

2004年年3月6日に結成された「中国残留日本人の継子・養子家族を支援する連絡会」の呼びかけに答えて、5月24日(月)衆議院議員会館での「院内集会&厚生労働省との協議」に、熊本県菊陽町在住の元中国残留孤児 井上鶴嗣さんと私の二人で上京し、参加しました。院内集会の前に、午後2時から厚生労働省記者クラブで記者会見が行われ、関西在住の中国残留日本人の継子・養子家族とともに、井上鶴嗣さんも会見で自身の家族の状況について、中国語で通訳してもらいながら10分ほど話をしました。

血縁なしで退去処分33人 残留孤児ら在留許可訴え(2004年5月24日共同通信配信) 「中国残留日本人の子供として来日したのに、養子や継子で血のつながりがないため退去強制命令を受けた人が、大阪府や九州に少なくとも9家族計33人いることが24日、支援団体『中国残留日本人の継子・養子の家族を支援する連絡会』のまとめで分かった。家族が退去を求められた中国残留日本人らは同日、東京・霞が関の厚生労働省内で記者会見し『家族をばらばらにしないで』と在留特別許可を認めるよう訴えた。会見したのは、熊本県在住の中国残留孤児井上鶴嗣さん(63)ら。連絡会によると、退去を求められた33人のうち13人がやむなく中国に帰国し、一部は退去処分取り消しを求める民事訴訟を起こしている。井上さんは、中国で結婚した妻が前夫との間にもうけていた娘2人とその家族が来日後、入管に収容された。会見で『娘とは長年一緒に暮らして自分の子と同じ。一緒に暮らせないのは納得できない』」と、訴えた。

5月24日午後3時半から午後4時まで、 衆議院第一会・第2会議室で、中国残留日本人の継子・養子家族を支援する連絡会主催による院内集会が、中国残留日本人の継子・養子家族や支援者、大阪選出の民主党の山本参議院議員、稲見衆議院議員らの国家議員や部落解放同盟、部落解放大阪府民共闘、自治労や日教組など民主団体関係者など約50名ほどの参加で開かれました。そして、午後4時から厚生労働省との協議が同じ場所で引き続いて開かれました。厚生労働省からは、社会援護局援護企画課中国孤児等対策室 小林佑一郎室長ら3名、保護課1名の計4名が出席し、主に小林室長が説明回答しました。

主催者の趣旨説明の後、井上鶴嗣さんを含めて、中国残留邦人の継子・養子家族として協議に参加した家族が、その実情や在留特別許可を求めて訴ました。そして、厚生労働省とは、 実態のある継子や養子家族の在留許可と、「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律」のかかわりについての質問と協議となりました。  わたしが、小林室長の回答で印象に残ったのは、「中国残留孤児が帰国する際に同伴が認められた家族(1家族)については、その旅費が国費でまかなわれており、その国費帰国家族のなかには、実子の家族だけでなく、養子や継子の家族のケースも含まれており、法務省と協議して在留が合法的に認められている」ということでした。また、これまで厚生労働省の中国孤児等対策室は、「中国残留日本人の家族の帰国も国費で可能という説明を行う際に、『実子』の家族と『養子』や『継子』の家族を特に区別して説明を行ってきておらず、家族として同様に扱ってきたこと」も明らかになりました。但し、小林室長の回答や説明は、厚生労働省としては、「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律」の所管官庁の立場とその範囲内にとどまり、入管法や法務省令である定住者告示の問題や出入国管理行政は法務省の管轄であるという責任逃れの回答を繰り返すばかりでした。山本参議院議員から、「この問題は、国費で帰国させられる家族の範囲の問題ではなく、中国残留日本人の呼び寄せ家族の範囲の問題であり、同じ家族なのに『血縁』関係がないことで退去強制されたり、退去強制されようとしている家族の苦しみは今日の話で十分厚生労働省としても理解したはずであるから、一緒に法務省に対して、在留特別許可を認めさせ、呼び寄せが可能となるように働きかけていこう」という的確な指摘がありました。その後、協議は生活保護の問題に移りましたが、午後5時30分を過ぎて熊本への最終便へのるため、私と井上鶴嗣さんは、会場を後にしました。

資料 「中国残留日本人(国は、残留邦人、孤児・婦人という)の継子・養子家族の実態について」の稲見衆議院議員(民主党)の質問に対する2004年5月21日の法務省入国管理局の回答

質問1

中国残留日本人で在留を許可したもので、その後在留資格を取り消された件数は、ここ数年は、毎年200件以上と聞いているが、その理由の内訳はどのようなものか。そのうち継子・養子家族は何世帯、何人か。

 回答1

中国残留邦人の家族として在留を許可された者のうち、上陸許可等を取り消された件数・家族数・人数は家族、平成13年―341件・99家族、平成14年―235件・79家族、平成15年―169件・60家族。回答1のうち「継子・養子」であったために上陸許可等を取り消された件数・家族数・人数 「上陸許可取消件数」は、平成13年―2件・3名、平成14年―2件・3名、平成15―1件・1名、 「同家族数」―計5家族。(注)退去強制手続き終了までに、継子・養子家族との主張がなされているものの数値である。

質問2

「継子・養子」家族で在留が許可された件数、家族数、人数はどれだけあるか。また中国残留日本人で、日本で「継子・養子」と暮らす方は、何家族あるか。

回答2

 「継子・養子」家族のうち在留特別許可された件数・家族数・人数は、平成13年―0件・0家族・0名、平成14年―4件・1家族・4名、平成15年―9件・2家族・9名。

質問3

中国残留邦人の実子として入国後、「継子・養子」であることが判明したことにより上陸許可等が取り消され、退去強制令書が発布された家族が、同令書発付処分の取消しを求めた訴訟で、現在係争中のもの、訴訟が提起されている件数はいくらあるか。

回答3 

現 在係争中のもの、訴訟が提起されている件数―5件、同家族数−6家族、同人数―21名。


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