コムスタカ―外国人と共に生きる会

入管政策について


「2004年通常国会 改定入管難民認定法の問題点の検証(その1)
T 改定目的 「不法滞在者」対策について
―第159国会 参議院及び衆議院法務委員会議事録をよんで

中島真一郎
2005年2月21日

2004年通常国会(第159回国会)の法務委員会での入管法改定問題の審議に際して、以下の(1)質問趣旨とデータ請求は、移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局を通じて、野党議員への質問項目(質問趣旨、参考資料)案として私が提案したものです。2004年6月成立した改定出入国管理及び難民認定法の改正項目に沿って、改めて問題点を検証していくために、(1)質問趣旨とデータ請求、(2)私のコメント、(3)国会の法務委員会での質疑と政府の答弁の順で紹介しておきます。 

1、改定目的 「不法滞在者」対策について

(1)質問趣旨

入管法改定の提案目的 「近年、治安に対する国民の不安が増大しているところ、その原因の一つとして不法滞在者問題が認識され、その対策が各方面から求められている。」の根拠を具体的に示してほしい。

(2)コメント 政府の「不法滞在者による治安悪化論」への批判

A 今回の改定の法務省、警察庁、政府の「不法滞在者」半減政策の根拠でもあるが、 国会での参議院及び衆議院法務委員会での増田入国管理局長の答弁の論理を要約すると 以下の4つが根拠となっています。

@「外国人」による犯罪の増加の根拠は、「来日外国人」犯罪データのうち入管法違反者が大半を占める特別法犯と刑法犯を含めた総検挙件数40615件と総検挙人員20007人(うち「不法滞在者」10752人 53.7%)となり史上最高を強調しています。

A 2003年総検挙人員20007人のうち正規滞在者9255人、不法滞在者10752人で、/B>正規滞在者の人口563万人 として、「不法滞在者」人口を約25万人 として、不法滞在者が犯罪に及ぶ可能性が非常に高いことを強調しています。

B「不法滞在者」による犯罪増加の根拠は、2003年「来日外国人」凶悪犯検挙人員に占める「不法滞在者」凶悪犯検挙人員の構成の高さ(刑法犯18%、凶悪犯36.7%、侵入強盗50%、侵入窃盗 66% )が強調されている。

C 2002年凶悪犯検挙人員の割合を正規滞在者のそれと比べると約12.5倍に上っているとして、不法滞在者が正規滞在者に比べて凶悪犯罪に及ぶ比率が高いことを強調している。

その根拠を要約すると、「不法滞在者」は、「来日外国人」総検挙人員の約54%をしめ、「来日外国人」凶悪犯検挙人員の構成比37%という高さから、日本の「治安悪化」の要因として「不法滞在者」による犯罪があり、これを半減しないと日本の治安の回復ができないという論理です。しかし、ここには「総検挙人員」に占める「来日外国人」の構成比と、「来日外国人」に占める「不法滞在者」の構成比という二つのトリックが使われています。以下、@からCの論拠への批判です。

@についての批判

「外国人」による犯罪の増加の根拠は、「来日外国人」犯罪データのうち入管法違反者が大半を占める特別法犯と刑法犯を含めた総検挙件数40615件と総検挙人員20007人(うち「不法滞在者」10752人 53.7%)となり史上最高を強調しています。

ア、刑法犯と特別法犯を合計した総検挙件数・総検挙人員は、「来日外国人」犯罪にのみ使われており、日本全体の犯罪統計では使われていません。なぜならば、「特別法犯」は、統計上警察の「検挙件数と検挙人員」は不明で、検察庁への「送致件数・送致人員」としてあらわれてくるので、刑法犯の検挙件数と検挙人員とは異なる概念で、両者を合算することはそもそもできないので、両者は別々の統計として計算されるべきものだからです。

イ、「来日外国人」特別法犯の送致件数や送致人員には、「不法就労助長罪」を除き原則として日本国籍者は対象とならない入管法違反者が7割以上を占め、これを含めて統計データを計算する限り「不法滞在者」の構成比は当然高くなるので、「特別法犯」の統計で比較することは、実体を表しません。

ウ、政府の推定でも「不法滞在者」(約25万人)の8割以上を占める「不法残留者」(約22万人)は、1993年の約30万人から2003年約22万人へと約27%減少しており、「不法滞在者」も当然減少しています。「特別法犯」の検挙件数は1993年6900件から2003年13357件へ1.9倍、検挙人員は1993年5191人から2003年11282人と2.2倍へ増加しています。これは、最近11年間で入管法違反者が約3割近く減少しているにもかかわらず、警察の取り締まりの強化の結果摘発数が増加していることを示しており、特別法犯の検挙件数や検挙人員の増加は、特別法犯の増加を示しているわけではありません。

エ、 刑法犯の検挙件数や検挙人員も、犯罪の実数を表す指標ではなく、あくまで警察の取り締まりの結果を示すものに過ぎません。特に、検挙件数は、2003年刑法犯検挙件数の67%を占める窃盗犯(2003年の検挙率は19%台に過ぎない)の余罪の追及の程度によりその増減が大きく左右されます。窃盗犯検挙人員一人当たりの検挙件数を意味する「余罪率」( 窃盗犯検挙件数÷窃盗犯検挙人員)は、2003年では「日本全体」が2.27件 (433918件÷191403人)に対して、「来日外国人」は5.01件(22830件÷4555人)と2.2倍以上カウントされています。このように、「来日外国人」については余罪の追及が厳しくカウントされていますので、犯罪の増減を判断する指標として使えません。

オ、「来日外国人」による犯罪や、「不法滞在者」による犯罪の動向を見る指標としては、暗数も少なく検挙率が約95%と高い「殺人」の検挙件数の推移でみるのが比較的近似値を表します。2003年の殺人の認知件数1452件、検挙率94.1%、検挙件数は、日本全体は1366件、「来日外国人」37件(構成比2.7%)、「不法滞在者」はデータ公表なし。 殺人の検挙人員は、日本全体は1456人、「来日外国人」61件(構成比4.2%) うち「不法滞在者」16人(構成比1.1%)です。

次に、警察の取り締まりの方針に左右されやすいという限界を踏まえつつ、刑法犯検挙人員、あるいは罪種別刑法犯検挙人員の日本全体に占める構成比の経年的推移でその犯罪発生の動向をある程度推定することできます。最近11年間(1993-2003年)の日本全体に占める構成比の変化でみると、「来日外国人」及び「不法滞在者」による犯罪の増加傾向は認められません。

C Aへの批判

2003年総検挙人員20007人のうち正規滞在者9255人、不法滞在者10752人で、正規滞在者の人口563万人 として、「不法滞在者」人口を約25万人 として、不法滞在者が犯罪に及ぶ可能性が非常に高いことを強調しています。

ア 特別法犯を含んだデータで比較することの誤りは、「B @への批判」のなかで述べています。

イ、人口を分母として比較する場合には。2003年「来日外国人」正規滞在者の人口を563万人とすると、そのなかには15日以内と、90日以内しか滞在していない新規入国短期滞在者約426万人(2003年)を含んでいるので、それらは除いて「正規滞在者」「不法滞在者」の構成人口を比較すべきです。

ウ、2002年「来日外国人」正規滞在者(新規入国短期滞在者約430万人を除く)人口は、563万人でなく、約113万人(「来日外国人」正規滞在者人口=外国人登録者数―特別永住者―一般永住者―永住者の配偶者)となります。

エ、「不法残留者」人口22万人、「不法入国・不法上陸者」人口3万人と政府は推定しています。但し、「不法残留者」の推定値は、毎年法務省が公表しており比較的実数に近いと思われますが、「不法入国者」の推定値3万人の根拠は示されていません。2002年収容令書が発付された外国人41663人のうち「不法残留者」は31610人で、「不法入国・不法上陸者」8880人です。「不法入国・不法上陸者」は、「不法残留者」の約28%を占めているので、この比率で推定すると、「不法残留者」約22万人に対して、「不法入国・不法上陸者」は約6万2千人人と推定されるので、「不法滞在者」人口は約28.2万人となる。

オ、2002年「来日外国人」刑法犯検挙人員 7690人、「正規滞在者」(短期滞在者475人を除く)刑法犯検挙人員5812人、「不法滞在者」刑法犯検挙人員1403人(うち「不法残留者」刑法犯検挙人員 822人「不法入国・不法上陸者」刑法犯検挙人員 581人)です。

カ、2002年の構成人口10万人当たりの検挙人員比率(いわゆる「犯罪者率」)は、「正規滞在者」514人、「不法滞在者」498人 (「不法残留者」374人、「不法入国・不法上陸者」937人)、「短期滞在者」は11人となります。つまり、「不法滞在者」刑法犯検挙人員比率は、「正規滞在者」のそれより低いことがわかります。「不法残留者」刑法犯検挙人員比率は、「正規滞在者」のそれより低く、「不法入国・不法上陸者」の刑法犯検挙人員比率は「正規滞在者」より高くなりますが、2倍以下です。

D B への批判

B「不法滞在者」による犯罪増加の根拠は、2003年「来日外国人」凶悪犯検挙人員に占める「不法滞在者」凶悪犯検挙人員の構成の高さ(刑法犯18%凶悪犯36.7%、侵入強盗50%、侵入窃盗66%が強調されています。

表1「不法滞在者」罪種別刑法犯検挙人員の「来日外国人」の検挙人員に占める構成比(2003年)

表1から、2003年「来日外国人」罪種別検挙人員に占める「不法滞在者」罪種別検挙人員の構成比は、刑法犯17.4%、凶悪犯 37%(殺人26%、強盗 40% 放火 38% 強姦26%)粗暴犯12.3% 窃盗犯19.9% 知能犯42.1% 風俗犯 28.0% その他の刑法犯5.0%である。

「不法滞在者」人口約28万人、「正規滞在者」人口113万人(新規入国短期滞在者 約430万人を除く)の141万人が、「来日外国人」人口となります。「不法滞在者」人口は、「来日外国人」人口の約20%を占めており、刑法犯の17%台という構成比は、人口比に比べて低いことを示しています。

罪種類別では、「不法滞在者」は、凶悪犯や知能犯の構成比が約40%と高く、粗暴犯が12%、その他の刑法犯が5%と構成比が低くなります。「正規滞在者」は、凶悪犯が63%、知能犯が58%と人口比に比べて低く、粗暴犯は88%、その他の刑法犯は95%と構成比が高いことを示しています。これらの比較は、「不法滞在者」と「正規滞在者」との刑法犯罪種別構成比の比較に過ぎません。この比較からわかることは、正規滞在者は、「不法滞在者」に比べて、人口構成比でみると「凶悪犯」や「知能犯」として検挙されることが比較的少なく、「粗暴犯」「その他の刑法犯」として検挙されることが多いという意味しかありません。

「不法滞在者」による犯罪が、日本社会の「治安悪化」の要因となっているのか、あるいは「犯罪の温床」となっているのかは、「来日外国人」検挙人員に占める「正規滞在者」と「不法滞在者」の構成比を比べるのではなく、日本全体の検挙人員に占める「不法滞在者」の構成比と、その構成比の最近11年間(1993-2003年)の推移である程度判断できます。 表2より、2003年日本全体の罪種別検挙人員に占める「不法滞在者」罪種別凶悪犯検挙人員の構成比は、刑法犯0.4%、凶悪犯 2.1%(殺人 1.1%、強盗 3.1 % 放火0.6 % 強姦 0.7%)粗暴犯 0.2 % 窃盗犯 0.5% 知能犯 1.5 % 風俗犯 0.4% その他の刑法犯 0.1%です。

表2「不法滞在者」罪種別刑法犯検挙人員の日本全体の検挙人員に占める構成比(2003年)

表3「「不法滞在者」刑法犯と凶悪犯検挙人員の日本全体の検挙人員に占める構成比(最近11年間 1993年−2003年)

表3より「不法滞在者」刑法犯検挙人員の日本全体刑法犯検挙人員に占める構成比の最大は1996年の0.55%で、それ以降概ね0.4%台で増大傾向は見られず、2001−2003の最近3年間は減少傾向にあります。「不法滞在者」凶悪犯検挙人員の日本全体刑法犯検挙人員に占める構成比の最大は1996年と1999年の2.6%で、それ以降概ね2%台前後で増大傾向は見られません。

結論

以上から、「不法滞在者」の刑法犯と凶悪犯の検挙人員の日本全体のそれに占める構成比は、刑法犯で約0.4%程度、 凶悪犯で約2%程度にすぎず、最近11年間で増大傾向は見られません。 「不法滞在者」による犯罪(刑法犯、凶悪犯)は、その絶対数や構成比も小さく、日本社会の治安悪化の要因でも、まして犯罪の温床ともなっていません。

E Cへの批判

C 2002年凶悪犯検挙人員の割合を正規滞在者のそれと比べると約12.5倍に上っているとして、不法滞在者が正規滞在者に比べて凶悪犯罪に及ぶ比率が高いことを強調しています。

2002年「来日外国人」凶悪犯検挙人員 353人、「正規滞在者」(短期滞在者を含む)凶悪犯検挙人員212人、「不法滞在者」凶悪犯検挙人員141人(うち「不法残留者」検挙人員 86人「不法入国・不法上陸者」検挙人員 55人)です。

2002年の「来日外国人」(新規の短期滞在の在留資格者を除く)人口は113万人、「不法滞在者」人口28万2千人(「不法残留者」22万人、「不法入国・不法上陸者」6万2千人と推計できます。構成人口10万人あたりの検挙人員比率(いわゆる犯罪者率)は、「正規滞在者」18.8人以下、「不法滞在者」50.0人、(「不法残留者」39.1人、「不法入国・不法上陸者」88.7人)となります。「不法滞在者」の凶悪犯検挙人員比率は、「正規滞在者」の2.7倍程度であり、12.5倍ではありません。(「不法残留者」の凶悪犯検挙人員比率は、「正規滞在者」の2.1倍、「不法入国・不法上陸者」の刑法犯検挙人員比率は「正規滞在者」4.9倍程度となる。)『不法滞在者」の凶悪犯検挙人員比率は、「正規滞在者」の3倍以内であり、12.5倍ではない。

「不法滞在者」(「不法残留者」や「不法入国・不法上陸者」の凶悪犯検挙人員比率が、正規滞在者のそれよりも高いのは、その一部に来日後も収入が少なく経済的困窮などから「強盗」犯となるものが多いためであり、「不法滞在者=犯罪者や犯罪予備軍」ではない。 それは、「不法滞在者」という在留資格のない状態で暮らしている外国籍の彼ら/彼女ら(「不法残留者」約22万人の約半数が女性である)の経済的困窮や隷属関係や不安定雇用という状態の改善を図ることで解決すべき問題であり、在留資格のない外国人を日本国内から追放することで解決できる、あるいは解決すべき問題ではない。

資料1

第159国会 参議院法務委員会 議事録 第10号 2004年4月13日 より 抜粋 

○角田義一君  政府の最近の方針によりますと、五年間で、不法滞在者というものを五年間で半減をするんだと、半減をするんだと、こういうことをあれですな、高らかにうたっているんですけれども、どういう理念でこれ半減するんですか、半減をしようとするんですか。

○政府参考人(増田暢也君) 不法滞在者は、我が国の出入国秩序に反して我が国に違法に在留するものでございますから、出入国管理行政を所管する入国管理局といたしましては、当然その減少に努めなければならないところであります。  不法滞在外国人につきましては、平成十五年十二月に犯罪対策閣僚会議で決定されました犯罪に強い社会の実現のための行動計画にもあるとおり、我が国の治安悪化の原因の一つであるなどと指摘されているところでございます。

 例えば、現在約二十五万人と推定される不法滞在者数でございますが、そこに占める、これは平成十四年の数字ですが、凶悪犯検挙人員の割合、これは正規滞在者のそれと比べますと約十二・五倍に上っております。不法滞在者が正規滞在者に比べて凶悪犯罪に及ぶ比率が高いという実情がうかがわれるわけでございます。

 また、不法滞在に係る犯罪以外の犯罪に関与していない場合でありましても、多くは不法就労活動に従事しているところであって、国内における雇用情勢、これの悪化であるとか、あるいは日本人を含めた労働条件の向上の阻害であるとか、あるいは労働市場の二層化などの問題を生じさせる懸念があるものと承知しております。このように、我が国の治安や社会経済に悪影響を及ぼす不法滞在者を減少させることは、我が国において外国人との共生を図り、健全な国際化の進展を図る前提として必要なことであると考えております。

○角田義一君 私は必ずしもそうは思わないんですね。

 何で五割なんですか。五割だということの合理的理由言ってくださいよ。

○政府参考人(増田暢也君) この半減というのは、言わば私どもに課せられた目標の数値であって、五年間でどれぐらい一体減らすことができるかというところで、現在およそ二十五万人いる数字を五年間で体制整備などの下で半分は減らさなければいけないということが政府の下で取られた措置であるということでございます。

○角田義一君 答えになってないや。

 なぜ半分かってね、半分になれば、あれですか、あなたが言っている理念が実現されてだね、外国人の犯罪はうんと減少するし、万々歳なんだと、こういうことになるんですか。じゃ、残った半分はどうなるんですか。半分になったからといって、半分残っているんですよ。それで、その半分の人たちはどうするの。みんな国外に追っ払っちまえばいいという発想かね、半分にするということは。

○政府参考人(増田暢也君) 先ほども申しましたように、この五年間で半減の背景にあるのは、我が国の国民の間で治安に対する危機意識、不安感が高まっていると、その不安感の一つの要素として来日外国人犯罪のことが意識されている。そこには、正規滞在者だけでなくて、不法滞在者によって犯されている犯罪、とりわけ凶悪犯罪などについて不法滞在者が犯している、そういったことについて非常に国民の間で不安を醸していると。

 そういった中で、それではこのまま放置して、政府として放置してよいのかという中で、それではこれを減らしていかなければならない。その減らしていくためにはどうするのか、あるいはどういう目標を決めて目指していくのかというときに、それでは五年間で半減するということであって、その半減が実現した場合に、後はそれでいいのかとか、そういうことではございません。要は、その不法滞在者については、それは、私どもは不断にその減少に努めていかなければいけないことであると考えているところでございます。

○角田義一君 あんた方の発想は単純なんだよ、単純過ぎるんだよ。要するに、不法滞在者、確かに不法だよ、不法には違いないかもしれないけれども、そこに住んでいる、いや、失礼、不法の滞在者というのが、あなた方の発想は、それはすべて犯罪予備軍のように思っているんだよ、犯罪予備軍。「犯罪の温床」と書いてあるんだよ、大臣の所信表明だって。これは、外国人一般に対する、正にこれから国際社会で国際化していこうというときに、そういうふうに犯罪の、不法滞在者を犯罪の温床であり、犯罪の予備軍だと、こういうふうに決め付けて、そしてあなたが言うところの外国人との共生なんということができるかね。少し理念や哲学が違うんじゃないかい。

 

その半分の人を、じゃ、不法滞在者なんだから、今度はみんな外国、国外へ追っ払っちまえばいいんだと、こういう発想でしょう。追っ払っちまえば万々歳という発想でしょう。全部追っ払えるのかね、現実に。追っ払えもしないでそういうことを言うのは、僕は絵そらごとじゃないかと、こういうように思うんですよ。どうですか。

○政府参考人(増田暢也君) まず、事実を数字に基づいて申し上げますと、たしか平成15年の検挙実績はもう公表されたと思いますが、53.7%、検挙された来日外国人の53.7%は不法滞在者であったと。それから、その内訳が、正規滞在者9200人余り、不法滞在者1万0700人余りですが、正規滞在者はそもそも我が国に563万人いるのに、不法滞在者というのはおよそ25万人と見られていると。このことからも、不法滞在者が犯罪に及ぶ可能性が非常に高いということは明らかであると思います。

 だからこそ、国民の間でも治安に対する危険、危機意識あるいは不安感は高まっていると私どもは認識しているし、入管に対して、この不法滞在者をこれだけ増やしたのは一体何をやっていたんだという厳しい御批判がこれまでにも入管に寄せられていたところでございます。

 それから、そもそもその不法滞在者ゼロになどできないのではないかという御指摘ですが、私どもとしては、とにかく今課せられているのは、今後五年間で今二十五万人いる者を半減させるのだということで、そのために組織総力を挙げ、全国入管が一丸となって、ありとあらゆる知恵を絞って実際に二十五万人を半減させるための方策を考え、それに取り掛かっているところでございますので、この点は、実際にゼロになる云々は別として、とにかく私どもの努力を見守っていただきたいと思います。

資料2 

第159国会 衆議院法務委員会 議事録 第30号 2004年5月26日 より抜粋 ○辻委員 今回の出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案の提案理由について伺ってまいりたいというふうに思います。まず、外国人犯罪の深刻化に伴い、その温床とされる不法滞在者を大幅に減少させることが求められているということが出入国管理の部分の改正の理由の一点であります。もう一点として、我が国に適法に在留している外国人の中にも不法就労活動を行ったり、犯罪を犯す等公正な出入国管理を阻害する者も少なくなく、これらの者に適正かつ厳格に対処する必要性が生じている、これがもう一点であります。 外国人犯罪の深刻化という場合に、外国人犯罪の犯罪者数のこの5年間の推移、及びその深刻化というのはどういう意味でおっしゃっているのか、この点についてまず伺いたいと思います。

○増田政府参考人 外国人犯罪の数字的なことは、警察庁の発表資料ということでお答えさせていただきますが、最近5年間の来日外国人犯罪、これは刑法犯、それから特別刑法犯を含めてでございますが、その検挙件数、人員は、平成11年の検挙件数、人員が、3万4398件、1万3436人であったものが、その後一たん減少いたしましたが、平成13年以降増加し続けまして、平成15年には4万615件、2万0007人でして、前年に比べて、件数で5869件、16.9%増、人員で3798人、23.4%増と増加して過去最高を記録しております。

 このうち、殺人、強盗、放火、強姦の凶悪犯の検挙件数と人員は、平成15年には336件、477人となりまして増加傾向にございますし、さらに、来日外国人犯罪の組織化が進んでいて、平成15年におきます刑法犯検挙件数のうち、共犯事件の割合が61.7%に上っており、来日外国人犯罪は凶悪化、組織化も進んでいて、我が国の治安に与える影響は大きいものになっていると考えられます。 なお、平成15年中の来日外国人犯罪の検挙人員2万0007人と申しましたが、そのうち、不法滞在者が1万0752人で、全体の約54%を占めております。

○辻委員 私のもとにある数字は、今御紹介いただいた数字とはちょっと違う統計資料をもとに積算しているものだと思いますけれども、在日外国人の凶悪犯の検挙人員ということで、1993年には246人、これが2003年には477人というふうに確かに増加傾向にある。しかし、一方で、日本全体の凶悪犯の検挙人員についても、1993年は5190人であったものが2003年には8360人という増加傾向にある。

 つまり、全体の増加傾向の中で、とりわけて在日外国人、来日外国人の凶悪犯罪の増加傾向が大きいわけではないということが言えると思いますが、この点はどのように認識されておりますか。

○増田政府参考人 委員のお手持ちの資料と数字が違うのかもしれませんが、お尋ねの点について申し上げますと、不法滞在者の犯罪検挙人員の絶対数、これが日本人やあるいは正規滞在者に比較して少ないということはございます。これは、不法滞在者の母数が日本人や正規滞在者に比較して少ないということがある、要するに、やはり絶対数がもともと少ないということが言えると思います。

 それから、凶悪犯をお取り上げになられたわけですが、不法滞在者による犯罪として、強盗、窃盗等の盗犯の比率が高い、職業的、常習的な犯行が多い、また正規滞在者による盗犯が偶発的、単発的なものが少なくないと言えると思います。

 さらに、凶悪犯について申しますと、来日外国人による刑法犯全体の中で不法滞在者の占める割合は18%台だったと思いますが、凶悪犯に限りますと、例えば凶悪犯では36.7%になっている。また、侵入強盗で50%、侵入窃盗で66%ぐらいが不法滞在者によって犯されるというようなことから考えまして、この割合から見てもやはり重いものがあると考えております。 ○辻委員 ちょっと資料を事前に突き合わせておりませんから、数字にお互いそごがあるということではありますけれども、概略はそれほどずれてはいないというふうに思います。

 その上で、御質問をさらにいたしますけれども、先ほど紹介しました、1993年には来日外国人の凶悪犯の検挙人数が246人である、それが2003年には477人にふえている。しかし、日本全体で、1993年の凶悪犯の検挙人員は5190であって、それが2003年には8360人にふえている。来日外国人のうちの不法滞在者については、1993年は132人であり、2003年は175人である。

 これを見ますと、大体2%前後で推移しているという意味におきまして、特に日本の今の刑事犯罪の状況の中で、来日外国人、そしてとりわけ不法滞在者の比率が増大している、ほかの、日本人全体とかに比べてとりわけ増加しているということではないという事実が指摘できると思います。

 だとすると、今の時点で、とりわけ凶悪犯罪のある意味で増加、増大ということを大義名分として、出入国管理の強化とも思われるような罰則強化を今の時点でしなければいけない理由、具体的な根拠は何かあるんでしょうか。

 〔森岡委員長代理退席、委員長着席〕

○増田政府参考人 来日外国人の検挙件数あるいは検挙人員を見ていきますと、例えば、平成10年当時は2万1689件、5382人であったものが、平成14年で2万4258件、7690人、それが昨年は8725人に上がっていく、このように順次、順次という言い方はおかしいかもしれませんが、増加傾向にあるということはやはりゆゆしきことであろうと思います。

 それから、もう一つは、先ほど申しましたとおり、やはり国民が治安に対して抱く不安感の一つとして、来日外国人による凶悪犯罪がふえていること、また、不安を特に感じる侵入強盗、侵入窃盗などがとりわけ不法滞在者によって犯されている割合が高いということ、こういったことがございますので、やはりこれについては毅然とした対応をとらなければいけないだろうという考えでございます。

 それはそれとして、もう一つは、やはり来日外国人そのものにつきまして現在約25万人いる、これは順次私どもそれなりに努力して減らしてきているところではございますが、それでもなお25万人ぐらいおりまして、これに対して、やはり国民の間から、入管はもっとしっかりこの不法滞在外国人をもっと減らさなければいけないという強い要望あるいは御批判もございまして、そういったことから、不法滞在者を減らすための方策の一つとして、立法的な措置も考えなければいけないということで、今回の法改正を計画したものでございます。

○辻委員 十年前と比べて犯罪の形態、態様が変わっているものが見受けられる、新聞報道で外国人の犯罪とおぼしき例も報道される件数がふえているということは確かに事実だと思うんですね。

 だけれども、先ほど私が申し上げましたように、犯罪自体が全体にふえているわけであるから、今、社会が犯罪をどう抑制するのか、そういう問題として、外国人だけを取り出して対処するということを考えるのではなくて、全体の問題としてどう対処するのかが今問われているものであって、その中でとりわけ外国人だけを取り上げ、そして罰則を強化することによって何か犯罪の抑制ができるというのは、非常に木を見て森を見ない、極めて部分的な発想にしかすぎないというふうに私は思わざるを得ないのでありますが、この点については、犯罪全体の抑止ということの中で、外国人の問題をどのように対処していくのかというのは、これは法務省内部できちんと検討されていることなんでしょうか。


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