コムスタカ―外国人と共に生きる会

入管政策について


2004年第159国会 改定入管難民認定法の問題点の検証(その4)
X 在留資格取り消し制度の創設問題
―第159国会 参議院及び衆議院法務委員会議事録をよんで

中島真一郎
2005年2月21日

2005年通常国会(第159回国会)の法務委員会での出入国管理及び難民認定法改定に際して、移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局を通じて、野党議員への質問項目(質問趣旨、参考資料)として私が提案したものです。以下、(1)質問趣旨、(2)私のコメント、(3)国会の法務委員会での質疑と答弁の順で紹介しておきます。

X 在留資格取り消し制度の創設問題

(1)質問趣旨  これまで「偽りその他不正な手段」により上陸許可の証印を得た者で、上陸条件に適合しないとして、上陸許可が遡って取り消され退去強制処分されていたケースは、在留取り消し制度が創設された場合には、在留取り消し制度の適用を受け、上陸許可が遡って取り消されることは行われなくなるのか、それとも並存して残り続けるのかを明らかにする。

データ公表要求

過去5年間(1999年から2003年)の「偽りその他不正な手段」により上陸許可の証印得た者で、上陸条件に適合しないとして、上陸許可が遡って取り消されて退去強制処分された外国人の人数及び国籍別人数を明らかにする。

公表されたデータ  過去5年間に上陸許可の取り消しを行った国別統計

事案  上陸許可等を取り消した事案としては、偽造変造旅券等の行使事案、その他の偽変造旅券等の行使事案(偽造の在留資格認定証明書行使事案等)、上陸審査等における虚偽の申し立て事案(偽装結婚、偽装日系人事案等)等がある。

(2)コメント

 ア、新設された在留資格取消制度の趣旨

これまで在留期間の途中において外国人の在留活動を調査する権限が入国審査官に与えられていなかったこともあり、上陸許可等の取消権の行使は謙抑的に行われてきた。そこで、公正かつ的確な出入国管理行政を実現するため、新たに入国審査官に実態調査権限を付与し、外国人の入国・在留目的、現在の在留状況を聴取させることにより対象となる者の利益保護により配慮しつつ、的確な事実認定を行い、取消権の行使に十全を期するとともに、取消の効果を遡及させず、任意の出国の機会を付与するなど取消の要件と効果を明定し、在留資格の取消制度を創設することとしたものである。なお、改正法22条の4 第1項各号のうち第1号から第4号までは、瑕疵ある行政行為として現行の上陸許可取り消し処分においても対象となりうるが、第5号は、行政行為の撤回であり、上陸許可取消処分の対象とならないとされます。

イ、在留資格取消制度と現行の上陸許可取消処分の違いについて

 在留資格取消制度と上陸許可取消処分の違いは、@法的根拠について、前者は改正法22条の4の規定に基づくが、後者は法律の規定がなく、行政法の一般原則に基づいて行われています。A取消の対象と効果について、前者は当該外国人が現に有する「在留資格」を対象として取消すもので取消の効果が上陸許可時点に遡及せず、改正法22条の4 第1項各号のうち第1号から第2号に該当する場合には退去強制手続きが執られますが、第3号から5号に該当する場合には30日を超えない範囲で出国猶予期間が指定され、その間に出国することができるのに対して、後者は、当該外国人が本邦に入国した際に付与された「上陸許可」を対象として取消すもので、その効果が処分時に遡及し、当該外国人は、入国審査官から上陸の許可を受けないで本邦に上陸した者となり、入管難民認定法24条2号(不法上陸者)に該当し、直ちに退去強制手続きが執られることになります。B取消手続きについて、前者は、法務大臣が在留資格の取消をしようとするときは、その指定する当該外国人の意見を聴取されなければならない(改正法22条の4の2項)とされ、当該外国人は事前に理由を付した通知がなされ、代理人を伴って反論することができるのに対して、後者は、明文の規定なく、意見聴取の定めもなく、当該外国人が何ら知らないところで処分が行われ、反論・防御する機会もありません。C入国審査官の実態調査権限に関して、前者は、改正法に明文で、入国審査官に当該外国人に関する在留活動を調査する権限が付与されているが、後者には、付与されていなません。

ウ 上陸許可取り消し処分の問題点

上陸許可取り消し処分とは、「適法に在留している」外国人が、事実調査権も与えられて いない入国審査審官により、ある日突然上陸許可及び在留許可を、上陸許可時点に遡及して取り消され、「入国」時点から「不法」状態とされて、入国後日本で築いた経済―社会―教育などすべての生活基盤を喪失させられ、身柄を「収容」され退去強制されるという重大な人権問題を含む処分で、違憲―違法です。


@ 法律上の根拠がなく、行政法一般の解釈のみで行われています。
A 入国審査官には事実調査権が法令上与えられていないのに、第三者の通報(いわゆる密告)により、任意調査を名目に関係者を調査し、当該外国人に知らせないまま    摘発する手法で行われています。
B「適法に在留している」外国人に対しての事前の聴取も、事実調査もなしに行われる処 分です。
C「明白な偽装や不正」という抽象的な要件を入管が一方的に設定して恣意的に行われています。
D  「収容」を伴うという重大な処分であるにもかかわらず、第三者機関(例えば裁判所など)のチェックを一切受けずに、入国管理局の判断のみで行えます。
E 処分を受けた外国人には、収容後の退去強制手続きにおける異議申し立てしか認められておらず、十分な防御や反論が行える適正な手続が保障されていません。

エ、 在留資格取り消し制度の問題点

  入国管理局は、適法に在留する外国人には、在留期間中は在留資格を取り消すことができないといいながら、適法に入国を認めた外国人についても、年間600件以上も在留期間中に、違憲―違法な上陸許可取り消し処分を行ってきました。在留資格取り消し制度の新設により、適法な在留資格が認められた外国人には、今後上陸許可取り消し処分は行われず、在留資格取り消し処分が取って代わります。(注 今後、上陸許可取り消し処分は、在留資格はないが日本への上陸を認められている「特定上陸者」には適用される)

これまでも、疑わしいケースとみなした場合には入国管理局は、在留期間更新時に更新を認めないだけでなく、在留期間更新時に在留期間を最短の期間となっている在留期間(6ヶ月や1年間)に短縮し、次の在留期間更新時に更新を認めてない運用を行ってきました。増大し続ける入管業務の合理化のためには、在留期間を次第に長期化していかなければなりませんが、その一方で、在留期間中でも在留資格の取り消しを行い出国させることができるようにしたのが在留資格取り消し制度です。在留資格取り消し制度は、上陸許可取り消し制度の手続き面での違憲―違法性を是正し適正化するものであるとともに、在留期間中でも適法に在留する外国人の在留資格を取り消すことで、その在留を不安定化させ、また、その運用が恣意的になれば、その在留を一層不安定化させていきます。

(3)国会の法務委員会での質疑と答弁

資料1 2004年4月8日 第159回通常国会 参議院法務委員会 議事録 第9号より

○木庭健太郎君 それではもう一つ、今度は在留資格取消し制度の問題もちょっとお聞きしておきたいんです。

 今回の法案では、偽りその他の不正な手段により上陸許可などを受けるなど、入国、在留すべきでない外国人に対してその在留資格を途中で取り消すことができるという在留資格取消し制度というのをこれもまた設けていると。これ、在留資格が取り消された場合には、不正手段等の行使について悪質性が高くない場合には30日以内の指定された期間内に出国すべきこととされている、その際は居住制限などの条件を付すことができるとされていると。これ、まず30日とした根拠、その期間をじゃ経過して、又は条件に違反した場合にはどのような制裁や不利益があるのか、御説明をしておいていただきたいと思います。

○政府参考人(増田暢也君) 在留資格を取り消された場合には、その取り消された人はもう我が国に本来いることができないわけで、ただし、出国するまでに出国のための準備も必要でしょうから、そのために期間を与えるということで、その出国準備のためには通常30日あれば足りると考えられることから、最大30日の期間を与えることとしたものでございます。

 そして、この期間を経過してその後も我が国に残った場合には、これは退去強制の対象となりますし、さらに法案の70条に規定が新たに設けられますが、3年以下の懲役、禁錮又は300万円以下の罰金という処罰を受けることにもなります。

○木庭健太郎君 ですから、その資格を取り消されるケースという、いろいろあると思うんですけれども、私が心配するのは、例えば、働くためにこっちへ来ていたと、雇用企業が倒産するとか、あとはリストラに遭う、当然解雇されてしまう、若しくは急に職を失う。つまり、本人の責任とは言えないような理由によって、この在留資格に該当する活動が行えなくなるということも今のこの日本の現状では往々にしてあるわけでございます。こんな場合にはどうこの在留資格取消しという問題がかかわってくるのか、この点についても御説明をいただいておきたいと思うんです。

○政府参考人(増田暢也君) 委員のおっしゃるとおり、我が国に入ってくるときは適法に入ってきた、しかし我が国にいる間にその在留資格に見合う在留活動ができなくなるというケースは確かに起こり得るところでございます。その場合にも今回在留資格取消しの対象としたわけですが、それはどのような場合かと申しますと、その与えられている在留資格に係る活動を継続して3か月以上行わないで在留している場合であって、その3か月以上継続して活動を行わないことについて正当な理由がない場合、これが取消しの対象となっております。

 例えば、雇われている企業が倒産してしまった、そのために本来与えられている在留資格に見合う在留活動ができなくなったという場合を想定いたしますと、倒産したために活動はできなくなったけれども、しかしその与えられた在留資格に見合う活動を継続するために別途就職先を探しているような場合などは、これは再就職によって今後在留資格に係る活動が再び開始される可能性もあるわけですから、これは正当な理由はあるとなりますから、在留資格取消しの対象にはなりません。

○木庭健太郎君 もう1回確認します。それは倒産した場合はならないんですけれども、そのためには次へ向かって継続するためにどう努力しているかというところをきちんと自分で証明しなくちゃいけないんですか、これ、ということになるんですか。

○政府参考人(増田暢也君) 結論的にはそのとおりでございますが、要は、倒産したような場合、それから3か月活動を行っていなかったとして、その3か月間活動を行っていないことに正当な理由があるのかどうか、そこを調べることになります。そうすると、その場合には当然本人から話を聞いて、この3か月間何をしていたのかということを聞くことになるでしょうし、必要な場合はその本人の言うことがどの程度本当なのかどうかというようなことを調査をすることにもなると思いますが、その結果で、この人はまじめに活動再開のための努力をしているなということが認められれば、正当な理由があるという判断をして在留資格を取り消さないことになると思います。

○木庭健太郎君 これもちょっとさっきの出国命令制度と同じように、諸外国においてもこういう在留資格を途中で取り消すような制度があるのかどうかお伺いしておきたいし、また、併せてお伺いしておきますが、現行法にはこの取消しの根拠規定はないわけですが、このような事態にどのように今まで対処してきたかについても、併せて2問、お答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(増田暢也君) 今般の在留資格取消し制度と同様の制度が諸外国であるのかということでございますが、例えばフランスにおきましては、偽装婚で滞在している外国人について途中で滞在許可を取り消す制度がございます。また、韓国では虚偽その他不正な方法で許可などを受けた者について在留途中で許可を取り消す制度があるものと承知しております。

これまで我が国ではこの在留期間途中で在留資格を取り消す規定はございませんでした。そこで、例えば、入国審査官を偽って上陸許可の証印を受けた場合、それは原始的に瑕疵がある行政処分という言い方をしますが、その場合、取消しは個別具体的な法律の根拠がなくても行政法の一般法理によって取消しが可能であると解釈されておりまして、当局ではこれまでも偽変造文書を提出して上陸許可を受けたような事案が後で分かった場合は、言わば一般法理に従って上陸許可を取り消してまいりました。

ただ、この一般法理による取消しというのは取り消せば取消しの効果は遡及いたしますから、その外国人は結局最初から上陸、適法な上陸許可を受けなかったことになりますから、不法上陸ということになります。そうなると、その外国人、直ちに退去強制につながる効果を持ちますので、権利侵害は重大であるということがございますので、入管局といたしましても、従来この上陸許可の取消しというのは比較的謙抑的に行ってきたところでございます。

それから、当初は正規に入国したものの、後発的に在留資格に該当する活動を行わなくなったというような場合、先ほどのように、まじめに働いていたが勤めていた会社がつぶれてしまったような場合ですが、これは後発的に瑕疵が生じたということになりますが、この場合はこれまで明文規定がございませんでしたので、取消しを行うことはできませんでした。

○木庭健太郎君 こういう形でその不法滞在の問題に入管としても積極的に取り組むということでございますから、この運用その他含めてきちんとやっていただくものはやっていただく。ただ、配慮しなければならない部分もあるなと、ちょっと今質疑をしながら感じておりましたし、その辺は運用をどうきちんとやっていただくかという問題も大きく残されているなと思いますので、政府として一つのこの不法滞在をなくそうというのは目標でございますから、これへ向かって最大限の努力もしていただきたい、こう思います。

資料2

2004年5月26日 第159回通常国会 衆議院法務委員会 議事録 第30号より

○辻委員 そういう意味で、この罰金刑の引き上げということには、政策的な効果もないし、立法事実も欠如しているということにおいて、極めて問題があるということを指摘しておきたいと思います。

 次に、提案理由の中で、「適法に在留している外国人の中にも不法就労活動を行ったり、犯罪を犯す等公正な出入国管理を阻害する者も少なくなく、これらの者に適正かつ厳格に対処」しなければならないというふうになっております。

 適法な滞在者の違反行為に対しては、従前はどのような対策がとられていたのか、どのような措置がとられていたのか。いかがでしょう。

○増田政府参考人 適法な在留資格を持って在留している人で、特に問題のある在留活動としては、資格外活動というのがございます。つまり、本来、正規の在留資格を持っているけれども、許可を受けずにその本来の活動でない活動を専ら行っていた、それで報酬を受ける活動を専ら行っていたような活動、こういったものが特に問題になります。

 これについては、退去強制事由になりますので、入管ではできるだけこれは資格外活動として摘発するということで臨んでおります。

○辻委員 そうすると、資格外活動をしている適法滞在者に対して摘発をするというのは、手続としてはどのような手続をとることになるんですか、現状は。

○増田政府参考人 資格外活動は退去強制事由に当たっておりますので、退去強制手続をとるということになります。したがって、入国警備官の調査から始まって、容疑が認められれば収容して違反調査などが行われ、最終的には送還していくということになります。

○辻委員 その場面において、今回のこの改正案では、在留資格の取り消しをまず先行して行う、こういうことなんでしょうか。そこに違いがあるということですか。

○増田政府参考人 退去強制事由に当たる人については、これまでも退去強制の手続をとっておりましたので、資格外活動が認められる限りは、今後もそれは退去強制で賄うということになります。

○辻委員 退去強制を行うというのは、入国に際して在留資格を取得している、その在留資格をやはり取り消しするという手続が先行して退去強制が現行法下でもなされているということなんですか。

○増田政府参考人 退去強制におきましては、別に、そこでその人の在留資格を取り消して出て行ってもらうということではございません。退去強制ということ自体がもう日本にいられないという効果になりますので、この場合には、本人を調べて事実が認定されて、本人が不服がなければ確定して、そのまま出て行ってもらうということになります。

○辻委員 そうすると、こういう理解でいいんですか。従来は、適法滞在者も資格外活動をすれば、それは在留資格の違反であるから退去強制手続を即行う。この改正法によっては、資格外活動の場合には、退去強制に即突き進むのではなくて、在留資格の取り消しの手続をとりあえずまずとるんだ、そういうことでよろしいんでしょうか。

○増田政府参考人 どうも答弁がうまくなくて、ちょっと申しわけございませんが、わかりやすい例で申しますと、例えば留学生が許可を受けずに勝手に膨大なアルバイトをしている、これが一見、明らかにそれらをやっているという場合、退去強制事由になります。これは今回の法改正をまつまでもなく、退去強制になります。

 ところが、今回の法改正を考える一つのきっかけになったのは、平成13年に酒田短期大学の事件がございました。あれは、本来酒田にいるはずの学生たちがいなくて、新宿にいると。ところが、あれを退去強制でできるのかというと、実は難しい。というのは、退去強制というのは、本来与えられている在留資格でないことを専ら行っていることが明らか、例えばどこかの店で風俗に従事して働いていること、専らそれに従事していることが明らかである場合が退去強制なものですから、一口にその留学生がほかで働いているといっても、退去強制で賄えるケースもありますが、実はそうでないケースも多々あるということでございます。

 では、それをどうするかということで、従来は今申し上げましたような酒田短期大学のようなケースには対応できなかったわけです。それは、在留資格を途中で取り消すという制度がないものですから、結局、平成13年春に日本に入ってきた彼らは、2年間の在留期間を与えられている平成15年春まで、大学なんかもうつぶれていますから留学なんかしていないとわかっているけれども、しかし日本に適法にいることができる、そういう問題があったわけです。

 それを、これはおかしいということで、じゃ、どうやってそういった人を見つけて外に出すかということとして考えたのが今回の在留資格取り消し制度であって、この場合には、専らアルバイトをしているとかいうことがわからなくても、大学にはもう行っていない、そのこと自体が明らかである、除籍されている。しかも、3カ月間、正当な理由なく留学という在留活動に従事していない。そのことがわかれば、それで本人の在留資格を取り消して、日本にいる根拠を失わせて出ていってもらう。これが今回の在留取り消し制度として考えたものでございます。

○辻委員 今の御説明では、現行法では退去強制まで進めない事案、ある意味では法の欠缺なのか、そのような場合に対処するためにこの在留資格の取り消し制度を設けたんだ、こういうお話ですよね。

 その場合、在留資格の取り消しの上で、これは後で伺いますけれども、聴聞の機会というか証拠を提出する機会なりを与えて、やむを得ない場合には退去強制には至らないで済むような、そのような判断をすることがあり得るんだ、こういう理解でいいんですか。答えはいかがでしょう。

○増田政府参考人 在留資格取り消しの原因には、大きく分けて、この第1号から第5号まであるとおり、5つの類型がございます。

 その中で特に悪質なもの、それは、第一号にある上陸拒否事由の該当者、これはそもそも日本に入ってきてはいけなかった人ですから、その人が身元を偽って入ってきたような、第1号に当たる場合。それから、第2号にある、在留活動をそもそも偽る場合。これは、外国人は、我が国では、在留資格、在留活動をもって在留するというのが根拠ですから、その在留活動そのものを偽るのは、これはやはり日本にいてもらっては困るということで、この第1号と第2号に当たることで在留資格を取り消された人は退去強制ということになります。

 それ以外の、第3号から第5号までの人、先ほど例を挙げました、留学生が大学に行かなくなって取り消し云々というのは第5号で問題となることですが、この第3号ないし第5号の事案については、本人から意見を聴取し、その他いろいろ調べて、退去強制ではなしに、在留資格を取り消す場合であっても、任意に、出国期間を定めてその期間内に任意に出ていってもらう、こういう制度にしたということでございます。

○辻委員 22条の4の1項5号で、在留資格に応じた活動を継続して3月以上行わないで在留している場合についても在留資格の取り消しということになっておりますけれども、これは、やむを得ない事由で3月以上資格に応ずる活動をしていないで在留せざるを得ないという場合は、どのように取り扱われるんですか。

○増田政府参考人 この第五号の括弧書きにございます「当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合」に当たれば、これは、そもそもその人はこの第五号には当たらないことになりますから、在留資格の取り消しを受けることはございません。

○辻委員 今指摘された22条の4の1項の1号、2号に関係してですが、不正手段で、上陸自体が不法であったという場合は、現行は上陸許可の取り消しということで対応しているわけでしょう。現状で対応できない場合というのは、この22条の4の1号ないし5号のうちのどの号に該当するのが、さっきおっしゃったように法の欠缺に当たるんだという場合なんですか。

○増田政府参考人 先ほど申しましたように、第五号の場合には、上陸許可の取り消しの対象にはなりません。これは、現に在留資格を持って在留活動している過程で、途中からその在留活動をしなくなった場合ですから。

 それから、第四号は、本人に認識がない場合がございますので、この第四号も、従来の上陸許可取り消しの対象にならないということが考えられます。

 第1号から第3号までは、上陸許可の取り消しの対象となります。

 ただ、なぜそれでも第1号以下のこういう条文を設けたかと申しますと、上陸許可の取り消しというのは、やはり取り消してしまえば、その人は不法上陸となってそのまま退去強制になりますので、それだけ影響が大きいというか、人権侵害の程度が重いということがございますので、従来、偽り、不正が明白な事案に限って、いわば謙抑的に上陸許可取り消しは行っておりました。そのために、本当は偽り、不正の手段を用いて我が国に入り込んできたと思われるような事案であっても、取り消さないでそのまま入り込まれているような案数がかなりあるんじゃないかというようなことがあるものですから、このたび、こういう上陸許可取り消しを設けた機会に、この1号から3号についても、今後はこの在留資格取り消しでもう一括してやっていこう、こういう考えで取り込んだものでございます。

○辻委員 不法上陸の場合は上陸許可の取り消しで現行法上対処しているということですが、そうすると、この改正法になれば、上陸許可の取り消しということは行わないで、在留資格の取り消しの手続の中でそれも含めて対処する、こういう理解でいいんですか。

○増田政府参考人 法律論としてはあるかと思いますが、このたびこういう在留資格取り消し制度で1号から5号まで整備いたしましたので、これに当たる限り、もうこの在留資格取り消し制度一本でやっていくということを考えております。

○辻委員 法令上の根拠はないけれども、現行でも在留資格の取り消し制度というのを運用しているという事実はあるんではないんですか。ないんですか。

○増田政府参考人 運用であれ、在留資格取り消しを現在行っているということはございません。もしも誤解を招いているとしたら、それは上陸許可の取り消しではなかろうかと思います。

○辻委員 22条の4の1項5号について、「正当な理由がある場合」というのは、例えば、勤め先が倒産をした、それで3カ月以上働き口がないのに在留しているという場合とか、それから、どうなんですか、病気による場合とか、あと、在留目的に即応するような活動を、いわば環境に適応できないからしばらくの間できないような、そういう精神状態にあるとか、そういう場合は、正当な理由がある場合ということで、在留資格の取り消しはされないという理解でいいんでしょうか。具体例を挙げてお答えいただければと思いますが、いかがでしょう。

○増田政府参考人 正当な理由があるかどうかにつきましては、在留資格取り消し対象者から意見を聴取することになりますから、それを踏まえて個別具体的に判断することとなると思いますが、要は、その人に今与えている在留資格がもう実態がなくなっていて、もとに復活するような見込みも全く失われている。例えば、大学をもう除籍になっていて、本人は学問の意欲なんかまるでなくて犯罪組織に入っているとか、こういった場合が考えられるわけです。

 そうすると、お尋ねが幾つかございました中で、例えば、勤め先が倒産してしまった、だから今働かずにもう3カ月を過ぎているという場合でも、その人の在留資格に見合う在留活動を復活するために、例えば仕事先を現に探していて、要するに、ひょっとしたらその人はその在留資格に見合う在留活動を行う可能性があるということになれば、この在留資格が形骸化しているとは言えないであろう。となりますと、この人については取り消しの対象にはならないということが考えられます。

 それから、病気につきましても、病気治療のためにやむなく3カ月を超えて本来の在留活動を行っていないとしても、病気が治癒した場合に当然本来の在留活動に復帰できるというようなことがある以上は、これもやはり取り消しの対象にはならないと思います。

○辻委員 この22条の4の1項5号のただし書きの正当事由、「正当な理由がある場合を除く。」というこの「正当な理由」を限定的に解釈しないように、これは当局に望んでおきます。運用に当たって、非常に柔軟に対処していただきたいということを指摘しておきたいと思います。

 正当理由があるかないかということを判断するに当たって、今回、この2項で、「当該外国人の意見を聴取させなければならない。」とか、4項で、「意見を述べ、及び証拠を提出することができる。」ということが新設されているんですけれども、これは、手続としてはなお不十分ではないか。通常の行政手続では、処分庁が事前に聴聞を行って、該当する事実を明示して、資料等についても閲覧をさせたり、弁護士の代理出席を認めたりしている。

 そういうことと比べて、この22条の4の手続については、まだまだ拡充されなければならない、通常の行政手続と比べて非常に対象者の側の防御を図る手段が狭くなっている、このように私は思わざるを得ないのでありますが、この点について、拡充していく御意思はおありなのかどうなのか、前向きな発言をお願いしたいと思います。

○増田政府参考人 この取り消しに際しましては、本人に対して、あらかじめ、意見聴取の期日、場所のみならず、何が原因で取り消しの対象と考えられているのか、その取り消しの原因ということをあらかじめ通知しておくことになっておりますし、本人は、代理人とともに、その期日に出頭して意見を述べることができますし、証拠を提出することもできます。それと同時に、従来とは違って、審査官の方で、外国人について必要な調査を行うことができるようになりましたので、その必要な調査に基づいて、その外国人が、例えば正当な理由なく活動していないのかどうかなど、事実関係についても調査ができることになりました。

 そういったことを踏まえた上でのことですし、さらに言うならば、本人から意見を聞いた中で、最終的に、例えば第五号を例にした場合、なぜ活動していなかったというだけでなくて、今の在留状況がどういうものであるのか、今後どういう希望であるのか、どういう見通しであるのか、そういったこともすべて踏まえた上で、取り消すかどうかを判断することになりますので、その意味では、私どもといたしましては、この制度で足りているものと考えております。

○辻委員 私は、4項で「当該外国人又はその者の代理人」とあるのをちょっと見落としていましたから、その点の質問は撤回します。

 それで、告知、聴聞の機会は、通常はどれぐらいの期間で行うというふうにされているんでしょうか。

○増田政府参考人 これは今回新たにつくった制度なものですから、今後、運用していくに際しては、十分に本人が準備できる期間をあらかじめ通知していくということを考慮したいと思います。

○辻委員 在留資格が取り消された場合に、それが異議があるときに訴訟で争うということになることも当然あり得ると思いますが、その場合の身柄がどうなっているのか、身柄が拘束されるのかどうなのか。原則としては拘束されるんだということなのかなというふうに思いますけれども、そうであると、異議があって訴訟継続中に身柄が拘束されるというのは、やはりこれはフェアじゃないと私は思いますから、仮放免の制度なり、そういうものが柔軟に適用されるべきだと考えますが、その点、いかがですか。

○増田政府参考人 おっしゃるとおり、在留資格取り消しをされますと日本に在留する根拠がなくなりますので、不法滞在ということになりますから、退去強制の対象になるか、あるいは3号から5号の場合は任意に出国するということになりますが、その場合でも、訴訟を起こしてその期間を過ぎたような場合には、やはり在留できる根拠はなくなりますので、不法滞在の問題が起きると思います。

 不法滞在の場合になりますと、退去強制の対象ということで収容ということになりますが、委員のおっしゃる仮放免については、もちろん事情を勘案した上で、弾力的な運用というものはこれからも考えていきたいと思っております。


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