コムスタカ―外国人と共に生きる会

入管政策について


福岡入管との意見交換会の報告

2001年1月24日

3回目の福岡入管との意見交換会

コムスタカも、団体会員となっている移住労働者と共に生きるネットワーク・九州は、日本で暮らす移住労働者や家族の人権擁護や自立への支援を目的として九州内で活動する団体・個人が集まり、1998年5月に結成しました。2000年11月現在、15団体会員(うち賛助団体会員2団体)と個人会員41名(うち賛助会員18名)で構成しています。  来る12月18日は、1990年12月18日に『移住労働者とその家族の権利条約』が国連で採択されたことを記念して、国際移住労働者デーとなっており、世界各地や日本各地で『移住労働者とその家族の権利条約』の批准を求め、また移住労働者とその家族の人権擁護を求めて様々な催しが企画されています。移住労働者と共に生きるネットワーク・九州は、国際移住労働者デーにあわせて、移住労働者や家族からよせられる人権相談の経験を踏まえ、福岡入国管理局に対して1998年12月以来3回目となる意見交換会の開催を12月18日を希望して2000年11月22日に申し入れました。しかし、福岡入管が博多港合同庁舎から福岡空港内に移転するため年内開催は無理との回答が寄せられ、2001年1月23日午後1時半から開催となりました。時間は2時間の希望にたいして、入管側からは約1時間と言う回答でしたが、質問内容が多岐に渡っていたことで質問への回答だけで約1時間、質疑や意見交換で約1時間要望書の説明などで30分と計2時間半となり、終了したのは午後4時頃でした。

こちらの事前提出した質問項目に沿って回答がありましたが、昨年度(1999年12月)に 比べて、回答内容が一般的説明や抽象的になったり、また回答できないという回答も増えてやや後退した印象を受けました。それでも、「改正」入管法の施行後の影響は、不法在留罪で摘発した事例が、ゼロであること、退去強制後5年以内で3件の申請があることがあきらかになり、昨年説明があったとおりの人道的に配慮する運用となっていること、離婚前でもの在留資格の条件をみたせば、日本人の配偶者の在留資格から定住者への変更が認められることもありうること、また、離婚後でも就学や留学の在留資格への変更が可能であると言う見解が明らかになりましたし、不許可処分にしたとき、入管側に説明義務があり、理由を説明するという回答も得ました。

第2次出入国管理基本計画に関する質問はへの回答は、地方入管での回答という制約からか、一般的説明に終始した印象を受けましたが、パンフレットを読んでいるだけではわからない入管側の考え方がより明らかとなり、留学生の卒業後の就職の際の基準の緩和や研修-技能実習制度について、「技能実習」の在留資格の創設の検討を認めたり、失踪の背景へのとらえ方や対策についての考えを聞くことができました。また、入管職員の増員について,要求しているが行革の状況から期待できないと理解していることもわかりました。結果的に2時間半の時間を 使いましたが、第2次出入国管理基本計画全体についての質問や回答にも多くの時間を費やしたため、入管側の説明をきくNGOの参加者にとって、日頃抱える外国人からの相談の具体的ケースに関する運用方針や基準についてより具体的に公表がなく意見交換をする時間が少なくなったという不満が残ったと思われます。一方、入管側にとっても、冒頭にテープの「録音はしないでください」と注意したり、言質をとらないような一般的説明に終始する傾向が見られました。第2次出入国管理基本計画については、今後法務省と全国レベルで意見交換をするか、地方公聴会の開催を実現させてそこで行うようなことも必要と思われました。4回目となる今年12月の意見交換会は、質問と回答、そして双方の意見交換のテーマを何に重点を置くか事前検討をしてより効果的なものにしていきたいと思います。今回の意見交換会は、入管との質疑の後、NGOとしての入管行政と,第2次出入国管理基本計画についての要望書を提出して終わりました。

第ニ次出入国管理基本計画へのNGOとしての要望(総論部分のみ、具体要望は省略)

第二次出入国管理基本計画では2000年から2005年までの期間を、日本社会が人口減少時代(労働力減少社会)へ転換していくことに対応していく準備期間として位置づけています。しかし、日本国内で要望のある中小零細企業や、農林水産業、ホテルなどのサービス業については「特定活動」から独立させて「技能実習」の在留資格を新たに設け、研修―技能実習制度の拡充で対応しようとするものです。また、少子―高齢化社会に対応として、専門的技術的分野と評価しえる分野の人材について積極的受け入れをはかるため「介護労働」等の分野の受け入れの是非を検討し、国際化の進展に対応しIT関連の技術者や多国籍企業の企業内技術者の移転を容易にするための「技術」「企業内転勤」の在留資格の見直しを行おうとするものです。これまでの専門的―技術的労働に限定して受け入れる入管政策を基本的に維持しながら、当面研修―技能実習制度の拡充で対応して行こうとするもので、きわめて不十分なものと思えます。 むしろ、これまでの技術職など「専門的労働」目的の入国のみを認め、いわゆる「一般的労働」目的の入国を認めない入管政策から、現在ある27の在留資格の種類を増やし、就労の範囲を大幅に拡大し、労働目的での入国を原則的に認めていくこと、また、これまで日本人との身分関係を有する者に原則的に限定されてきた定住者や永住者の在留資格を、日本での定住や永住を望む外国人とその家族に定住者或いは永住者の在留資格を積極的に認めていく入管政策への転換するための準備期間として積極的に位置づけていくこと求められいます。そして、人口減少が急速に現実化していく2006年以降からは、外国人の入国を一層厳しく制限して外国人に依存しないで人口減少に対応して経済規模を縮小していくことをめざす「小さく美しい日本」(坂中英徳名古屋入国管理局長)をめざすより、日本社会の人口減少に対応して労働目的に限定せず定住を前提とした移民を積極的に受け入れていく入管政策へ転換し、日本社会で暮らす外国人が日本人と平等な扱いをうけ、その人権が尊重され、日本社会が多民族・多文化共生社会として発展できることをめざしていくべきであると考えます。


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