コメント 移住労働者と共に生きるネットワーク九州福岡入国管理局
第10回意見交換会の質問と回答に対するコメント
2008年2月22日
中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
T 2004年5月に国会で成立した改定入管法の運用状況について、
年 |
2005 |
2006 |
2007 |
出国命令制度 |
68人 |
68人 |
53人 |
在留資格の取消制度 |
1人(偽装結婚) |
1人(偽装結婚) |
7人(虚偽申告) |
難民認定制度 申請 |
0件 |
8件 |
0件 |
認定 |
0件 |
0件 |
0件 |
退去強制総数 |
929 |
946 |
562 |
自主申告者数 |
138 |
130 |
95 |
コメント
出国命令制度は、自主的に入管へ出頭して退去する外国人を増やすという政策目的で創設されました。
出国命令による帰国者は、最近3年間はほぼ横ばいです。自主申告者は、2005年138人、2006年130人、
2007年95人で、退去強制者数の14−17%程度にすぎず、その政策目的を果たしているとはいえません。
在留資格の取消制度により、在留資格を取り消される外国人は2005年、2006年は1人から2007年には
7人と増加しています。しかし、取消対象となる外国人の数は、きわめて限定された運用がなされています。
福岡入管内では、難民の申請そのものが、これまで少ないのですが、2006年は8件(ビルマのイスラム系
少数民族「ロヒンギャ族」 と思われる)の申請がありましたが、認定は0件でした。
U 2006年5月に国会で成立した改定入管法の運用状況について、
個人識別情報提供義務化の実施状況(2007年11月20日から2007年12月31日)
上陸を拒否された者 |
128 |
退去を命ぜられた者 |
108 |
退去強制の手続を執った者 |
19 |
提供を拒否したもの |
0 |
福岡入国管理局の増員 |
13 |
一人あたりの審査時間 |
40秒から60秒 |
○ 修学旅行時の再入国時の上陸審査での特別な配慮
(回答) 個人識別情報の提供義務化の対象者となる外国人が、就学旅行などで再入国する場合には、
予め学校と入管が協議して、再入国時に別室で審査を行う。
(注 2007年1月末の文部科学省から全国の教育員会への通知に基づく回答であるが、2007年2月
14日法務省は、日本で暮らす外国人高校生が羅が海外に出た修学旅行から再入国する場合に限って、
免除する方針を年度末までに結論を出すよう検討すること明らかにした。)
○ 過去の退去強制事由を隠蔽して入国在留していた外国人の再入国時の取扱い
(回答)ご質問のように過去の退去強制事由を隠蔽して入国在留していた外国人が、再入
国許可を受けて出国し、その許可をもって上陸申請したときに、入管法第5条第1項各
号に該当する、いわゆる上陸拒否事由該当者であることが判明した場合は、上陸条件に
適合しないことから第7条1項第4号に適合しない旨認定することになります。これに
対して当該外国人が法務大臣に対して異議の申し立てを放棄した場合には、本邦から退
去を命じることとなり、当該認定を不服として異議を申し出た場合には、個々の事案ご
とに上陸拒否事由となった経緯のほか、上陸を希望する家族状況や素行等の諸事情を総
合的に勘案して上陸特別許可の許否について判断することになります。
一方、当該再入国許可による上陸審査の時点で、上陸拒否期間が経過していれば、上
陸拒否期間中という理由で上陸拒否されることはありません。しかしながら、過去の
退去強制事由を隠蔽して最初に入国した上陸申請時に、偽りその他不正の手段により、
入管法第5条第1項各号のいずれにも該当しないものとして上陸許可の承認を受けた場合は、
入管法第22条の4第1項1号に該当し、在留資格の取消対象となりますし、其の他同項第2号から
第5号に該当することが判明する場合には、やはり在留資格の取消対象となります。
但し、当該過去の退去強制事由を隠蔽して最初に入国した上陸申請時から上陸拒否期間を経過し、
入管法第5条第1項に該当しない場合は、過去の退去強制事由を隠蔽していたことがあとで
判明したとしても、それをもって第22条の4第1項第1号に該当するとされ、在留資格取消の
対象となることはありません。なお、当該外国人が上陸申請した際、所持していた旅券が有効な
ものでなかった場合は、例えば、他人名義や偽装された旅券などが使用された場合には、
その理由をもって退去強制の対象となります。
コメント
施行から1ヶ月間程度のデータですが、個人識別情報の提供義務化の運用状況から、この制度が実際上は、
過去の退去強制歴があり、指紋等の情報が当局にある外国人が、「不法入国者」として再上陸していくことを
規制する役割を果している実情がうかがえます。法の本来目的である「テロリスト」として認定し、上陸を拒否
した者の人数を入管が公表しないので不明ですが、0人かそれに近い数しかありえないと思われます。
この制度の実施に伴い、在留外国人の間で不安が高まっていたのが、修学旅行などでの再入国時の16歳以上の
外国人の場合の取扱いと、過去の退去強制事由を隠蔽して入国在留していた外国人が、再入国許可を受けて
出国し、その許可をもって上陸申請した場合の取扱いで入国拒否されてしまうのではないかという不安で
したので、質問しました。前者対しては、回答は別室での審査をするという配慮だけの回答でしたが、
マスコミ報道では、高校生については免除の方向で2008年4月以降実施されることになりそうです。
後者については、上陸拒否事由に該当しても、上陸拒否期間が経過していれば問題なく入国できること、
上陸拒否期間内であっても、家族状況や在留状況などを考慮して上陸特別許可により再入国できる道が
あることが、明らかになりました。
V、 定住者告示の変更について、
2006年3月29日 定住者告示が一部改定され、日系人及びその家族が「定住者」の在留資格を取得する
要件に「素行が善良であること」が追加され、出身国の警察などによる「無犯罪証明書」「犯罪歴証明書」
の提出が義務付けられるようになり、同年4月29日から施行されています
質問 定住者の変更申請の際に、本国からの「無犯罪証明書」の取寄せができない場合や、取寄せに時間がかかり、
在留期限までに提出できない場合の取り扱いについて
回答 定住者の告示が施行された 平成18年4月29日以降に、直近の在留期間更新申請の際に犯罪経歴証明書等が
提出できないものについては、「素行が善良」であるということが立証されていないことから在留期間1年のみ許可し、
1年の猶予期間を持って提出を求めることとしています。また3年の在留期間を有するものについては、在留期間を1年に
短縮して許可し、次の更新時に当証明書を提出し、「素行善良」要件を満たしていることが確認できれば、3年に伸長許可
するということにしています。
また、1年間の猶予期間をもってしても、次回の更新時に提出できず、その提出できない理由が合理的であると
認められない場合、次回にも、提出意思が全くなく、あきらかに隠している場合には、在留が認められない場合があります。
コメント 「定住者」の在留資格を有して日本に在留する日系人に及びその家族が、在留資格の更新申請時に 「犯罪経歴証明書」等
が期限までに提出できない場合の在留資格の更新への不安がありました。入管の回答から、提出できなくとも1年間の在留期限で
在留更新できること、1年後の在留期限までに提出する猶予期間があること、在留資格の更新が認められなくなるのは、意図的な場合や
明らかに隠している場合など悪質なケースが想定されていることがわかりました。
W 外国人登録及び外国人労働者届出義務化と入管による摘発
質問 2007年10月1日から改正雇用対策法が施行され、外国人を雇用する事業主にハローワークへの届出が義務付けられました。
この届出の情報はハローワークから入国管理局へ伝わることになりますか。もし、入国管理局へ伝わる場合、事業主が在留資格の
ない外国人を雇用していることがハローワークへの届出により明らかになった時、入国管理局はこの情報に基づき外国人の摘発を
行うことになりますか。
回答 出入国管理難民認定法第62条の規定により一般的な通報義務がありますが、通報に対しての法違反者であるか否かの判断は
ハローワーク側の問題であり、通報を受けた後の摘発については、事案の内容等を検討したうえで、実施することとしています。
なお、改正雇用対策法等により、事業主から厚生労働大臣に外国人の雇用に関する情報を届け出ることになりましたが、
改正雇用対策法第29条により厚生労働大臣は、法務大臣から出入国管理及び難民認定法及び外国人登録法に定める事務の処理に
関して外国人の在留に関する確認のため求めがあった時には、情報を提供することとなります。
コメント 入管の回答からは、 従来は、入管法第62条の一般通報義務としての通報しかありませんでしたが、改正雇用対策法施行により、
法務大臣が要請すれば厚生労働大臣は、情報提供を行わなければならなくなり、法務省入国管理局はその情報を求み在留資格のない
外国人が就労していることが明らかになった場合、摘発することもありうるということを否定しませんでした。
X、 裁決の見直しについて、
質問、 在留特別許可を認めない裁決を行い、退去強制令書が発付処分後の裁決の見直し
回答 法務大臣は原則として裁決の見直しを行うことはありませんが、案件によっては、判決で裁決が違法であると
判断された場合、裁判所における審理の過程で新たな事情が判明した場合、裁決後に事情が変更し、退去強制することが
人道上過酷であるような場合については、裁決の見直し、在留特別許可の可否について再検討する場合もありえます。
年 |
2005 |
2006 |
2007 |
敗訴判決確定後の 在留特別許可の付与 |
1件 |
0件 |
1件 |
訴訟係争中の和解や訴訟と利下げ後の在留特別許可の付与 |
0件 |
0件 |
0件 |
裁決後の事情変更し、人道上過酷の場合に在留特別許可の付与 |
1件 |
0件 |
0件 |
コメント 昨年の2007年2月4日の回答では、裁決前の新たな事情が明らかになった場合に裁決の見直しもありうるという従来の
見解から、「裁決後に事情が変更し、退去強制することが人道上過酷であるような場合については、裁決の見直し、在留特別許可の可否
について再検討する場合もありえます」という回答が注目されました。
今年は、 2007年2月19日の回答で、裁決の見直される3つのパターンの件数を質問したところ、入管から3つのパターンによる件数
の回答がはじめてありました。@敗訴判決確定後の在留特別許可の付与(2005年の1件は2005年3月7日の福岡高裁逆転勝訴
元中国残留孤児の妻の婚姻前の娘7人の退去強制問題、2007年の1件は 2007年2月22日の福岡高裁逆転勝訴、ナイジェリア人
夫の退去強制問題 A訴訟係争中の和解や訴訟と利下げ後の在留特別許可の付与 B 裁決後の事情変更により人道上過酷の場合に
在留特別許可の付与(2005年の1件は内容は不明です。)
Y E-メールによる通報制度
年 |
2005 |
2006 |
2007 |
摘発件数 |
2件 |
3件 |
5件 |
摘発人数 |
27人 |
9人 |
5人 |
※(法務省は2004年2月よりE-メールによる通報制度をおこなっています)
コメント 2004年2月からはじまったE−メール通報制度による福岡入管管内の摘発件数、最近3年間2件,3件,5件と
増加してきていますが、摘発人数は 27にん、9人、5人と少なくなっています。
Z 人身取引の被害者の保護について
全国2005年―2007年人身取引被害者として保護された総数と国籍別内訳
年 |
2005 |
2006 |
2007 |
総数 |
115人(18人) |
47人 ( 0人) |
40人(6人) |
フィリピン |
ー |
29 |
22 |
インドネシア |
− |
14 |
11 |
タイ |
− |
3 |
5 |
韓国 |
− |
1 |
2 |
全国2007年人身取引被害者として
保護された外国人の在留資格別内訳
総数 |
40 |
正規滞在者 |
27 |
興行 |
22 |
短期滞在 |
4 |
日本人配偶者等 |
1 |
在留特別許可 |
13 |
不法入国 |
5 |
不法残留(短期滞在) |
8 |
2007年 人身取引被害者の在留特別許可者の内訳
総数 |
13 |
インドネシア |
7 |
タイ |
5 |
フイリピン |
1 |
韓国 |
0 |
福岡入管内 2005年―2007年 「興行」の在留資格者の退去強制者数
年 |
2005 |
2006 |
2007 |
退去強制者数 |
337人 |
298人 |
76人 |
コメント
2007年は、人身取引被害者に関する法務省が公表したデータを元に保護された被害者の総数、
国籍別や在留資格別内訳が公表されました。福岡入管内の人身取引被害者として保護された総数は、
2006年0人、2007年8人であることがわかりましたが、国籍や在留資格別の内訳は公表されませんでした。
また、2005年、2006年と300人前後あった「興行」の在留資格者の退去強制者が2007年には76人と大幅に
減少しました。
これは、フィリピン人の「興行」の在留資格による入国者の激減により、「興行」の在留資格の滞在者が減少し、
「接客」を理由とする入管法違反(「資格外活動」による摘発者数も減少しているためと思われます。そして、
「興行」の在留資格者への摘発を中心とするなかで、見出される人身取引被害者の保護も、2005年の115人から、
2006年47人、2007年40人へ減少しています。
法務省のデータは、当局の入管法違反などの摘発の過程で人身取引者が保護されるなかであきらかになる場合が多く、
人身取引被害の実態や全体を示しているものではありませんし、保護された外国人数の減少が人身取引被害の減少を
意味しているか否かは不明です。
2007年人身取引被害者として保護された外国人は全員女性で、約3分の2は正規滞在者ですが、残り3分の1は不正規滞在者で、
「短期滞在者からの不法残留」おとび「不法入国者」です、人身取引の被害者は、「興行」の在留資格で入国するルート以外に、
「短期滞在」の在留資格による「短期滞在」ルート、偽造旅券などを使った「不法入国」ルートが存在することを示しています。
[ 研修生及び技能実習生について
年 |
2004年12月末 |
2005年12月末 |
2006年12月末 |
研修生総数 |
2560 |
3878 |
5084 |
福岡県 |
547 |
832 |
1235 |
佐賀県 |
317 |
365 |
477 |
長崎県 |
444 |
583 |
759 |
大分県 |
246 |
333 |
472 |
熊本県 |
408 |
806 |
1071 |
宮崎県 |
308 |
576 |
638 |
鹿児島県 |
290 |
383 |
432 |
失踪者数(技能実習生を含む) |
81 |
111 |
157 |
技能実習への移行が認められている職種 |
62 |
62 |
62 |
不正行為を行ったと認定された受け入れ機関( 全国統計ベース )
2003年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
92 件 |
210 件 |
180件 |
229件 |
質問 受け入れ条件に違反した団体・機関で、法令違反の過酷な労働を強いられている研修生や技能実習生が、
受け入れ先企業や団体から逃げ出し、受け入れ先企業や団体を相手に未払い賃金や損害賠償を求めて
訴訟を提訴したり労働基準法違反などで刑事告訴している場合に、在留資格の更新や変更は認められますか。
その場合どのような条件を満たせば認められるのですか、
回答 在留目的や在留状況其の他諸事情を総合的に勘案して判断することになります。
(質疑の中で)、実習途中で、受け入れ先企業や農家、受け入れ団体が受け入れできなくなった場合には、
同種の実習先(縫製ならば縫製、畜産であれば畜産)であれば、他団体の受け入れ先企業や農家で受け入れる
ことができれば、実習を継続することができるという回答がありました。
コメント
研修生は、2005年と比べて総数で2倍以上に増加し、九州7県全てで増加しています。中でも熊本県と福岡県は
1000名以上となっています。一方、失踪者数も、2004年12月末81人から2006年12月末157人へと約2倍に増加しています。
全国統計ですが、「研修生及び技能実習生入国在留管理に関する指針」に規定された不正行為を行っているとして3年間の受入
停止を受けた受入機関の数も2003年92軒から2007年229件へと2倍以上に増加しています。これらは、研修生や技能実習生が
増大していくなかで、研修生制度や技能実習生制度のひずみが拡大してきていることを示しています。
\ 改正DV防止法の施行に伴う入管の対応について、
コメント
改正DV防止法(2008年1月11日施行)のための基本方針が改定されました。その中で、職務関係者の配慮について
「外国人等の人権の尊重」が独立した項目として記載され、「国においては、被害者から在留期間の更新等の申請があった
場合には、被害者の立場に十分配慮しながら、個々の事情を勘案して、人道上適切に対応するよう努める。」と明記されました。
基本方針の改定について今度どのような変化があるのかについて質問しましたが、2008年1月段階で福岡入管自身が基本方針の
改定の事実を認識しておらず、こちらから基本方針の該当箇所を入管へ送信し、教示するにとどまりました。
質問 改正DV防止法の施行に伴い、DV被害者からの在留資格の更新や、在留資格を喪失した
DV被害者の在留特別許可について、入管としてどのような配慮がなされますか、また、従来と比べてどのように対応
が変化していくのですか。
回答 DV被害者にかかわる在留特別許可については、これまでも人道的見地に立ち、被害者の個々の事情に応じながら
適切に対応しています。
I 統計数値に関する質問
1、在留特別許可、上陸特別許可
年 |
2005 |
2006 |
2007 |
在留特別許可件数 |
350 |
206 |
199 |
うち収容中60日以内 |
1 |
2 |
0 |
うち上陸拒否該当者 |
10 |
7 |
8 |
上陸特別許可 |
75 |
81 |
72 |
うち法第5条該当者 |
2 |
8 |
9 |
上陸拒否者 |
496 |
358 |
384 |
2.福岡入管の退去強制処分について
年 |
2005 |
2006 |
2007 |
退去強制総数 |
929 |
946 |
562 |
うち不法残留者 |
449 |
425 |
331 |
うち不法入国者 |
111 |
164 |
95 |
うち不法上陸者 |
5 |
10 |
10 |
うち資格外活動 |
340 |
306 |
90 |
うち刑罰法令違反者 |
24 |
41 |
36 |
自主申告者 |
138 |
130 |
95 |
入管からの警察や検察への告発者数 |
7(不法入国) |
10(不法入国) |
11(不法入国) |
3、 収容状況
年 |
2005 |
2006 |
2007 |
平均収容期間(日) |
3.6 |
5.2 |
4.6 |
最長収容期間(日) |
31 |
50 |
31 |
自傷行為者 |
0 |
0 |
0 |
4、福岡入管の職員体制について、
年 |
2005 |
2006 |
2007 |
総数 |
208 |
211 |
222 |
福岡本局 |
57 |
52 |
56 |
うち警備部門 |
31 |
27 |
31 |
うち在留審査と審判部門 |
13 |
13 |
13 |
その他 |
13 |
12 |
12 |
職員一人あたりの平均残業時間 |
40 |
40 |
40 |