要   請   書

2008年2月19

法務大臣

福岡入国管理局長 殿

 

移住労働者と共に生きるネットワーク・九州

連絡先 福岡市博多区美野島2-5-31 美野島司牧センター内

Tel 092-431-1419 Fax 092-431-5709

共同代表  岩本光弘、(福岡県遠賀町

コース・マルセル(福岡市・美野島司牧センター)

塚田ともみ(鹿児島市・ATLAS)

中島真一郎(熊本市・コムスタカ-・外国人と共に生きる会)

 

1、個人識別情報の提供の義務化について

外国人(特別永住者や16歳未満などを除く)を対象として、指紋情報など個人識別情報の

提供を義務として求めることは外国人を「テロリスト予備軍」とみなし、管理・監視の対象

とするもので、外国人を差別し外国人の基本的人権を侵害するものであり、すみやかに廃止

してください。

また、提供された個人情報をプライバシーとして保護し、その目的外利用を許さず、その目的

達成のための合理的な期間経過後はすみやかに消去してください。

 

2、退去強制の対象となる「テロリスト」の認定と適正手続きの保障

退去強制の対象となる「テロリスト」の認定に際しては、その認定基準や認定の根拠や経緯を

具体的に明らかにし、その認定が当局の恣意的な運用にならないようにしてください。及び認

定の対象とされた外国人に、十分な反論や反証の機会を与え、適正手続きを保障した運用を行

うようにしてください。

 

3、定住者の在留資格の申請、更新の際の「素行の善良さ」の証明について

2005年11月に広島県内でおきたペルー人男性による「日本人女児殺害事件」を契機として、

「定住者告示」が見直され『無犯罪証明書』の提出義務化が導入されました。しかしながら、

このような凶悪事件は、あくまで加害者が引き起こした個別的な事件であり、「定住者」の在留

資格で入国あるいは定住している日系外国人全般を対象として、いわば「犯罪者、あるいは犯罪

予備軍」とみなして管理や規制を強化することは、これら外国人の基本的人権を侵害するものです。

「定住者告示」に追加された「素行の善良であること」の要件、およびそのために「本国の権限を

有する機関が発効した犯罪歴に関する証明書の提出を求めること」は、すみやかに撤回してください。

 

4、在留特別許可について

@ 日本人等との婚姻や日本人等との実子を養育していることなどを理由とする在留特別

許可申請については、現行の三審制を1回の審査で済むように改める等、増大傾向にある

在留特別許可申請に対応して迅速に審査し、審査期間を短縮するように改善してください。

 

A 2007年9月27日の埼玉県内在住の在留資格のないフイリピン人家族に対する東京高裁

判決の付言の趣旨を踏まえ、在留資格のない外国籍の家族について、日本で出生した子ど

もがいる場合や子どもが就学中の場合には、在留特別許可により定住者の在留資格も認め

るようにしてください。

 

B 入管法違反で収容され、退去強制令書発付後に日本人等との婚姻届が受理された場合で

も、夫婦の実態があると認められる場合には「再審情願」により、法務大臣の裁決を見直

して在留特別許可を与えるようにしてください。

 

C 在留資格のないナイジェリア人夫の退去強制令書発付処分を取消す逆転判決を言い渡

した2007年2月22日福岡高裁判決の趣旨を踏まえ、オーバーステイ等を理由に逮捕・摘

発される前に、夫婦として同居していない場合や同居期間が短い場合にも、夫婦としての

実態を総合的に判断して在留特別許可を認めるようにしてください。

 

5、「日本人配偶者等」から「定住者」の在留資格への変更について

@ 日本人配偶者との離婚や死別等により配偶者ビザから定住者ビザへの変更を希望する

ケースで、子の親権のない場合でも、子の面接を行うなど子との交流を続けているケース

では、定住者ビザへの変更が認めるようにしてください。

 

A 日本人配偶者との離婚により配偶者ビザから定住者ビザへの変更を希望するケースで、

日本人配偶者等の在留資格で3年間の在留期間のビザを有し、日本での定住を希望する場

合は、原則として定住者の在留資格への変更を認めてください。

 

B 日本人配偶者との死別により配偶者ビザから定住者ビザへの変更を希望するケースに

ついては、日本人配偶者が日本での定住を希望する場合は、原則として定住者の在留資格

への変更を認めてください。

 

C 「定住者」あるいは「日本人配偶者等」の在留資格で日本で暮らしている外国人が、そ

の親の介護、あるいは子どもの育児のため親を呼び寄せたいとき、「短期滞在」ではなく、

「特定活動」あるいは「定住者」の在留資格を付与し、長期的に滞在できるようにしてく

ださい。

 

6、DV被害者及び人身取引の被害者について

@ 改正DV防止法や、「外国人等の人権の尊重」を独立した項目として設けたDV防止の

ための施策に関する基本方針の趣旨に沿って、外国籍のDV被害者に対して、夫と離婚成

立前であれば日本人配偶者等の在留資格の更新を、離婚後であれば日本人配偶者等の在留

資格から定住者の在留資格への更新を認めるなど、在留資格の付与をより明確にしてくだ

さい。

 

A 在留資格のない外国籍のDV被害者で、入国管理局へ出頭し在宅で在留特別許可の審査

を受けている場合に、自治体からの国民健康保険加入や生活保護の給付決定を行うための

在留特別許可取得の見込みの問い合わせに対して、福岡入国管理局が「在留特別許可によ

り1年以上の在留期間のある在留資格(「『定住者』・『日本人配偶者等』」など)が与えられ

る蓋然性の有無」について回答するようにしてください。

 

B 外国籍の在留資格のない人身取引の被害者に対して、帰国を希望する場合には速やかな

帰国の実現を、帰国を希望しない場合には、仮放免の弾力的運用や在留特別許可を付与す

るなど積極的な被害者保護を行うことを要請します。

 

7、外国人を対象とする E-メール通報制度の廃止について

法務省入国管理局のホームページで外国人のみを対象として、E-メールでの通報を呼びかけ

摘発に利用することは、外国人を「犯罪者、あるいは犯罪予備軍」とみなし、外国人の基本的

人権を侵害します。すみやかにE-メール通報制度を廃止してください。

 

8、外国人登録や外国人労働者の就労届出からの摘発の中止

 近年、外国人登録をした在留資格のない外国人への入管や警察による摘発・逮捕が多くなって

います。しかしながら、在留資格のない外国人が外国人登録を行っている理由の多くは子どもの

就学や家族の社会保障給付を受けるため、あるいは日本人等との婚姻を理由に在留特別許可申請

するために外国人登録を勧められたことによるものです。

自治体での外国人登録や事業主に義務付けられた外国人労働者の就労状況の公共職業安定所

(ハローワーク)への届出情報は、外国人及び外国人労働者の個人情報であり、それらの情報

を活用した入管の摘発は個人情報の目的外使用でありプライバシーの侵害となります。外国人

登録や事業主の外国人就労状況の届出から外国人の摘発をやめるようにしてください。

 

9、研修生―技能実習生の見直しについて

研修生制度や技能実習生制度は現代版「奴隷労働制度」と呼ばれるほどの人権侵害事件や法令

違反が後を絶たず、近年、政府内部でも研修生制度や技能実習生制度の改革の論議がなされて

いますが、私たちも研修生制度や技能実習生制度について以下の要請をします。

 

@ 研修制度は、研修の在留資格は厳格に規制し本来の研修実態と一致する場合のみ認め、

これまで特に人権侵害の温床となっている団体監視型の受入れ団体による受け入れを禁止してください。

また、技能実習制度は廃止し、代わりに転職の自由を認める「労働」の在留資格を設けてください。

 

A 受け入れ団体の受け入れ条件違反や法令違反による人権侵害からの救済を求めている

外国人研修生や技能実習生が、その権利や損害の回復ができるまで日本で滞在できるよう

に在留資格の更新や変更を認めてください。

 

10、難民申請手続きに関する案内文書について

政治的、経済的に混乱する母国から逃れてくる人たちがいます。その人たちが来日した後、難民申請

をするケースを多数見てきました。その中の人たちが我々に支援を求めてくるケースもあります。しかし、

日本に入国してもどのように難民申請をすれば良いのかが分からず、入管センターなどに収容されています。

 法務省および入国管理局は、入国時に難民申請を希望する者に、「難民認定手続案内」と言う冊子を発行し

多言語化もされていますが、その内容は難民申請者にとって必要最低限の情報しかなく、わかりにくいと

いわれています。

先日、難民支援協会が「難民認定申請を行う人への助言」というパンフレットを作成しました。このパン

フレットは、「英語、フランス語、ビルマ語、中国語、ペルシャ語、トルコ語、ウルドゥー語、アムハラ語、

タミル語」に翻訳されています。当局による「難民認定手続案内」と言う冊子とともに、

このパンフレットも難民申請者が利用できるように窓口に設置してください。

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