要 請 書
2009年2月25日
法務大臣
福岡入国管理局長 殿
移住労働者と共に生きるネットワーク・九州
連絡先 福岡市博多区美野島2-5-31 美野島司牧センター内
Tel 092-431-1419 Fax 092-431-5709、
共同代表 岩本光弘、(福岡県遠賀町)
コース・マルセル(福岡市・美野島司牧センター)
中島真一郎(熊本市・コムスタカ-・外国人と共に生きる会)
1、個人識別情報の提供の義務化について
外国人(特別永住者や16歳未満などを除く)を対象として、指紋情報など個人識別情報の提供を
義務として求めることは外国人を「テロリスト予備軍」とみなし、管理・監視の対象とするもので、
外国人を差別し外国人の基本的人権を侵害するものであり、すみやかに廃止してください。
また、提供された個人情報をプライバシーとして保護し、その目的外利用を許さず、
その目的達成のための合理的な期間経過後はすみやかに消去してください。
2、定住者の在留資格の申請、更新の際の「素行の善良さ」の証明について
「定住者」の在留資格で入国あるいは定住している日系外国人全般を対象として、いわば
「犯罪者、あるいは犯罪予備軍」とみなして管理や規制を強化することは、これら外国人の
基本的人権を侵害するものです。「定住者告示」に追加された「素行の善良であること」の要件、
およびそのために「本国の権限を有する機関が発効した犯罪歴に関する証明書の提出を求めること」は、
すみやかに撤回してください。
3、在留特別許可について
@ 日本人等との婚姻や日本人等との実子を養育していることなどを理由とする在留特別
許可申請については、現行の三審制を1回の審査で済むように改める等、増大傾向にある
在留特別許可申請に対応して迅速に審査し、審査期間を短縮するように改善してください。
A 在留資格のない外国籍の家族について、日本で出生した子どもがいる場合や子どもが就学中の場合には、
在留特別許可により「定住者」の在留資格も認めるようにしてください。
B 入管法違反で収容され、退去強制令書発付後に日本人等との婚姻届が受理された場合には、
夫婦としての実態を総合的に判断して在留特別許可を認めるようにしてください。
C 在留特別許可が不許可となり、退去強制令書発付処分がなされた外国人にも、
「裁決後に事情が変更し、退去強制することが人道上過酷であるような場合について裁決を見直すこともある」
という運営方針を積極的に活用し、法務大臣の裁決を見直して在留特別許可を与えるようにしてください。
4「日本人配偶者等」や「定住者」の在留資格の更新や変更、及び「永住者」
の在留資格への変更について
@ 別居中の日本人配偶者から離婚調停の申立や離婚訴訟を提訴されて係争中の外国人配偶者の在留資格
(「日本人配偶者等」)の更新・変更について、調停や訴訟の目処がつくまで、対等・公平に争えるように
在留資格の更新や変更を認めてください。
A 日本人配偶者との離婚により日本人配偶者ビザから定住者ビザへの変更を希望するケースで、
子の親権のない場合でも、子の面接を行うなど子との交流を続けているケースでは、
定住者の在留資格への変更を認めるようにしてください。
B 日本人配偶者との離婚により日本人配偶者ビザから定住者ビザへの変更を希望するケースで、
子どもがいない単身者の場合でも、定住者の在留資格への変更を認めるようにしてください。
C 子どもがいない単身者で「日本人配偶者等」から「定住者」へ在留資格への変更申請に関して、
在留特別許可のガイドラインや永住者のガイドラインを公表しているように、ガイドラインを設けて
公表してください。
D 「定住者」あるいは「日本人配偶者等」の在留資格を有して日本で暮らしている外国人が、
その親の介護、あるいは子どもの育児のため親を呼び寄せたいとき、「短期滞在」ではなく、
「特定活動」あるいは「定住者」の在留資格を付与し、長期的に滞在できるようにしてください。
E 永住者の在留資格への変更の申請から許可までの審査期間が6ヶ月程度かかっていますが、
審査期間を短縮し、できるだけ早く許可するようにしてください。
5、DV被害者及び人身取引の被害者について
@ 改正DV防止法や、「外国人等の人権の尊重」を独立した項目として設けたDV防止の
ための施策に関する基本方針の趣旨に沿って、外国籍のDV被害者に対して、夫と離婚成
立前であれば日本人配偶者等の在留資格の更新を、離婚後であれば日本人配偶者等の在留
資格から定住者の在留資格への更新を認めるなど、在留資格の付与をより明確にしてくだ
さい。
A 外国籍の在留資格のない人身取引の被害者に対して、帰国を希望する場合には速やかな
帰国の実現を、帰国を希望しない場合には、仮放免の弾力的運用や在留特別許可を付与す
るなど積極的な被害者保護を行うことを要請します。
6、外国人を対象とする E-メール通報制度の廃止について
法務省入国管理局のホームページで外国人のみを対象として、E-メールでの通報を呼びかけ摘発に
利用することは、外国人を「犯罪者、あるいは犯罪予備軍」とみなし、外国人の基本的人権を侵害します。
すみやかにE-メール通報制度を廃止してください。
7、外国人登録や外国人労働者の就労届出からの摘発の中止
自治体での外国人登録や事業主に義務付けられた外国人労働者の就労状況の公共職業安定所(ハローワーク)への
届出情報は、外国人及び外国人労働者の個人情報であり、それらの情報を活用した入管の摘発は個人情報の
目的外使用でありプライバシーの侵害となります。外国人登録や事業主の外国人就労状況の届出から外国人の
摘発をやめるようにしてください。
8、研修生―技能実習生の見直しについて
研修生制度や技能実習生制度は現代版「奴隷労働制度」と呼ばれるほどの人権侵害事件や法令違反や
「不正行為」が後を絶たず、近年、政府内部でも研修生制度や技能実習生制度の改革の論議がなされていますが、
私たちも研修生制度や技能実習生制度について以下の要請をします。
@ 研修制度は、研修の在留資格は厳格に規制し本来の研修実態と一致する場合のみ認め、
これまで特に人権侵害の温床となっている団体監視型の受入れ団体による受け入れを禁止してください。
また、技能実習制度は廃止し、代わりに転職の自由を認める「労働」の在留資格を設けてください。
A 政府機関や現地子会社や10億円以上の取引のある現地企業の常勤職員を研修生―技能実習生の受入れ
のみ認められている企業単独型の受入れ企業において、書類を偽造し、禁止されている派遣会社や仲介会社を
通じて、研修生―技能実習生を受入れている企業がいます。企業単独型の受入れ企業についても、
その実態を早急に調査し、「不正行為」を行っている違反企業には、すみやかに受入れの停止などの
処分をおこなってください。
B 受入れ団体・企業・農家の「不正行為」や法令違反による人権侵害からの救済を求めている
外国人研修生や技能実習生が、その権利や損害の回復ができるまで日本で滞在できるように
在留資格の更新や変更を、また、帰国後であっても、裁判などの証言のために来日を希望する場合には、
在留資格を付与して来日できるようにしてください。
C 受け入れ機関や企業・農家などの「不正行為」や法令違反があるとの申告がなされた場合に、
入管は、速やかに、実態調査を行い、「不正行為」を認定し、そして処分を行うようにしてください。
D 研修生―技能実習生が苛酷な労働環境や搾取状態におかれている要因として、日本側受け入れ機関や
企業・農家と違法な「裏契約」を締結して、研修生を送り出している外国の送り出し機関(派遣会社等)の存在があります。
「不正行為」や違法行為を行っている送り出し機関から派遣される研修生の入国申請を不許可とするようにしてください。
9、難民・定住外国人について、
難民申請に対する認定件数や人道配慮による在留特別許可件数も次第に増加してきています。
また、日本政府は、難民保護国から日本への定住を希望する難民の受け入れを検討しているといわれています。
これらの難民や定住が認められた外国人が、日本語教育や職業訓練、生活習慣や社会制度の学習などを受けられる
「難民・外国人定住センター」を設けてください。 九州内の施設として、収容施設として日本最大の800名の
定員がありながら、10名(2008年9月末現在)程度、それも管轄外から移送者しか収容者がいない
大村入国管理センターを廃止し、「難民・外国人定住センター」として活用してください。