移住労働者と共に生きるネットワーク九州と福岡入管との
第12回意見交換会報告 質問と回答
2010年4月19日 中島 真一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
はじめに
移住労働者と共に生きるネットワーク九州と福岡入管との第12回意見交換会は、2010年2月25日(木)
午前1時30分から午後3時すぎまで、福岡入管3階会議室で行われました。福岡入管側から実務担当者3名
(入国在留審査部門、警備部門、審判部門の統括審査官)が出席し、総務課の渉外調整官1名の計4名が出席しました。
また、移住労働者と共に生きるネットワーク九州から12名が参加しました。
最初に出席メンバーの自己紹介を双方行い、2010年1月下旬にネットワーク九州が事前に福岡入管に文書で
提出していた質問項目に対する回答の説明が約30分間ありました。
(質問項目は、昨年の意見交換会終了時の入管の要望で56項目から33項目に減少したものを事前に提出しました。
その分、解答時間は減少しましたが、質疑応答の時間が増えました。)その後、福岡入管からの回答に対して、
改定入管法の運用と入管職員の増員問題、人身取引やDVの外国籍被害者の問題、在留特別許可の新ガイドラインの運用問題、
研修生―技能実習生問題など約1時間あまり質疑を行いました。
そして、最後に、ネットワーク九州から法務大臣と福岡入国管理局長あて7項目の要請書を読み上げて提出しました。
以下は、重要と思える質疑応答でなされた入管の回答
1、在留特別許可が、政権交代後、これまで認められなかった摘発時中学生に達していなかった子どもがいる家族全員に
認められるケースがあらわれているが、在留特別許可のガイドライの改定によるものか、それとも政権交代によるものか、
入管の回答 「 在留特別許可の新ガイドラインは、従来からあった内容をより詳細に明らかにしたもので、内容的に
変わったわけではない、カルデラ のり子さんのケースを念頭におかれての質問と思われるが、それ以前から
摘発時中学生未満の子どもがいる場合も家族全員に認められているケースもあり、特に変わっているわけではない。
また、政権交代による入管行政への影響は特に感じない」
2、離婚を認めていないフイリピンの場合、日本人と重婚状態で在留しているケースもあるが、重婚により日本人配偶者との
婚姻が無効となった場合の在留資格の取扱いはどうなるのか、
入管の回答「 重婚による婚姻無効が確定したからといって、直ちに在留資格が喪失するわけではない。個々のケースの事情を
考慮して判断していくことになる。」
3、2009年7月入管法改定により、在留資格の更新や変更などの申請に関して、その在留期限を経過している場合や、
期限から2ヶ月以内は、適法とする扱いに変わることになるが、これは、申請の在留期限から2ヶ月以内に許可。不許可の結論を
しなければならなくなるという意味に受け取られるが、間違いないか、
入管の回答 「 はい、そのとおりで、われわれは、2ヶ月以内に申請に対する判断をすることを義務付けられることになる」
4、人身取引の被害者が、偽装結婚で来日して在留している場合に、人身取引による被害者保護と偽装結婚の摘発とどちらが優先されるのか、
入管の回答 「人身取引の被害者保護を優先することになる。人心取引の被害者と確認できれば、その保護を優先して、
在留資格のない被害者には在留特別許可を与えており、偽装結婚による在留の場合も、被害者の保護が優先される。」
5、 DV被害者の外国人女性が、二重国籍状態の子どもを本国へいっしょに帰る場合、日本人旅券が日本人配偶者の
協力がないため発行されない場合に、本国の旅券を使用して出国できるのか、また日本人配偶者の問い合わせに回答して
出国を教えることがあるのか、
入管回答 「 日本人であることを示す戸籍謄本と有効な旅券の提示があれば、日本人として出国を認める場合もある。
入管の出国情報は、個人情報の取扱い規定により運営されており、日本人配偶者からの子どもの出国の問い合わせに
回答することはないと考えもらってよい。」
福岡入管への質問項目と回答
(注):回答の数値は、福岡入管内の数値で2008年は確定値、2009年は概数。
T、質問事項
1、出国命令制度、在留資格取消制度、難民認定申請件数や認定件数
@ 出国命令制度により出国した外国人は何人いますか。
『昨年回答』 2007年 53名 2008年39名(引き継ぎベース)全員出国しています。
回答 2008年 39人 2009年 29人
A 在留資格取消がなされた外国人は、何人いますか。
『昨年回答』 2007年 1名(虚偽申告) 2008年 6名
回答 2008年 6名 2009年 2名
B 難民認定申請件数及び難民認定件数は、何件ありましたか。
『昨年回答』 2007年認定申請、認定件数とも0件 2008年 認定申請3件 認知0件
回答 2009年 申請4件 認定 0件
2、個人識別情報の提供義務化
@ 上陸審査時における外国人の指紋や顔写真など、個人識別情報の提供義務化が2007年11月20日から施行されるようになりました。
個人識別情報提供義務化により2009年中に福岡入管管内で上陸を拒否された者、退去を命ぜられた者、退去強制の手続をとった
者の人数をお答え下さい。
『昨年回答』 法務省入国管理局の全国ベースの統計 (2007年11月20日から2008年11月20日) 個人識別情報提供義務化により
上陸を拒否された者 846名、退去を命ぜられた者 748名、退去強制の手続をとった者 98名
回答』 法務省入国管理局の全国ベースの統計 (2008年11月20日から2009年12月20日) 個人識別情報提供義務化により
上陸を拒否された者 1412名、退去を命ぜられた者1412 名、退去強制の手続をとった者 140名
『追加説明』 個人識別情報提供による統計情報は、法務省入国管理局により全国統計のみ公表し、各地方局毎に公表していません。
A 2009年中に福岡入管管内で免除対象者でないにもかかわらず、個人識別情報の提供を拒否して退去強制を命じられた外国人の数は
何人ですか。
『昨年回答』 2008年1名
回答 2009年 0件 0名
(法務省入国管理局により全国統計のみ公表し、各地方局毎に公表していません。)
3、外国人登録及び外国人労働者届出義務化と入管による摘発
在留資格のない外国人が、市町村の窓口で外国人登録を行った場合、市町村から入管に必ず報告がなされますが、
外国人登録の情報をもとに入管が摘発したケースは、2008年、2009年中に何件ありましたか、また、入管単独の場合と、
警察と合同しての摘発の場合の件を明らかにしてください。
『昨年回答』 2005年までは統計を取っていない。2006年以降は統計を取るようになったが、該当者なし、
2007年 該当者なし、2008年2件(警察合同)
回答 2008年 2件 (警察と合同) 2009年 該当なし
4、行政訴訟、裁決の見直しについて
在留特別許可を認めない裁決を行い、退去強制令書が発付された事例のなかで、入管側が裁判で敗訴しその判決が確定して
在留特別許可を付与した事例、裁判中に和解、あるいは訴訟の取り下げにより在留特別許可を付与した事例、裁判以外に、
それぞれ福岡入管の2009年の事例で何件ありましたか。
『昨年回答』 2008年に入管側が裁判で敗訴しその判決が確定して在留特別許可を付与した事例 0件 0件 裁判中に
訴訟の取り下げにより在留特別許可を付与した事例 0件 0件
回答 2009年 0件 0人
5、E-メール通報制度による摘発
法務省は2004年2月よりE-メールによる通報制度をおこなっていますが、このE-メール通報制度により、通報の対象者が
福岡入管内在住の場合に連絡を受けて摘発をしたケースは、2009年中何件ありましたか。
『昨年回答』 2007年 5件 5名、2008年 1件を摘発しました。
2009年 1 件 1名 摘発
6、人身売買の被害者の保護について
人身取引(トラフイッキング)の外国籍の被害者が入管難民認定法違反者で退去強制対象者の場合にも、在留特別許可を付与し、
被害者保護として特別な配慮するとしています。福岡入国管理局は、人身売買の被害者の保護として、入管難民認定法の
運用においてどのような配慮がおこなわれてきたかを知りたく以下の質問をします。
@ 2009年の「興行」の在留資格者の退去強制者数を教えてください。
『昨年回答』 過去2年間に「興行」の在留資格で退去強制された人数2006年298名
2007年76名 2008年19名
回答 2009年 2名
A 2009年で人身売買被害者として保護された外国人は、全国および福岡入管内でそれぞれ何名いましたか。
国籍別の内訳も教えてください。
『昨年回答』 2008年 全国28名(うち福岡管内3名) タイ 18名(うち福岡管内3名) フィリピン6名
中国・台湾 3名 韓国 1名 バングラデッシュ 1名
回答 2009年 全国20名(うち福岡管内0名)フィリピン10名 タイ8名
中国 1名・ 香港 1名
B 2009年に入管により保護された人身売買被害者のうち、在留特別許可により在留資格を得られた人数と、
そのうち長期の滞在や定住を可能とする在留資格の取得が認められた人数は何名いましたか。
『昨年回答』 2008年 在留特別許可 17名 (タイ13名 フィリピン 2名 韓国1名 バングラデッシュ 1名)
在留資格別の統計は公表していません。
回答 2009年 在留特別許可 11名 (タイ 6名 フィリピン 4名 中国1名) 在留資格別の統計は公表していません。
7、研修生・技能実習生に関する質問
@ 福岡入管内で、外国人研修生や技能実習生を受入れている企業や団体で、入管から不正行為の認定を受け3年間の受入停止措置を受けた団体、
不正行為に順ずる行為があったとして改善指導を受けた団体は、2007年から2009年の過去3年間に、団体監視型の第一次受入機関、第二次受入機関、
単独型でそれぞれいくつありましたか。
『昨年回答』 福岡入管管内についての件数及びその内訳については公表していません。
全国で不正行為に認定された件数は、2003年92件 2004年210件 2005年180件 2006年229件 2007年449件
回答 2008年 452件
A 福岡入管内で、入管から不正行為の認定を受けた団体が、調査開始から処分を受けるまでの期間はおおよそどのぐらいの期間を要するのですか。
『昨年回答』 調査を要する時間については、個々の事案ごとに異なるため調査期間について具体的に申し上げることはできませんが、
いずれの事案についても的確な対応を行っています。
回答 調査を要する時間については、個々の事案ごとに異なるため調査期間について具体的に申し上げることはできませんが、
いずれの事案についても的確な対応を行っています。
8、改正DV防止法の施行に伴う入管の対応について
@ 入国管理局におけるDV事案の認知件数について、2008年7月以降より法務省として統計を公表するようになりました。
(総数26件、期間更新等15件、退去強制手続き 8件、 相談のみ3件) 2008年と2009年中の福岡入管管内で、
DV事案の認知件数の総数とその内訳(期間更新等、退去強制手続、相談のみ)を教えてください。
『昨年回答』 福岡入管管内 1件 国籍フィリピン 期間更新
2009年 8件 国籍フイリピン5件 国籍中国3件
期間更新 5件変更 3件
A 日本人夫からのDVにより別居中の外国籍女性と子ども(日本国籍)にとって女性の母国に避難する場合、
新たに子どもの日本人としてのパスポートを取得することが難しくなっています。2重国籍が認められる場合、
子どもは母親の国のパスポートを取って出国する場合があります。この際の出国を入管は出国を差し止めることがありますか。
日本人の子どもが外国人として出国したことを、夫側に情報提供することがありますか。もし事前に夫側から入管に
子どもの出国を認めないでくれと依頼されたら、入管は出国を認めないということがありますか。
回答 日本人であれば日本旅券で出国するのが原則ですが、やむをえない事情で日本旅券を所持できない場合、
有効な外国旅券と戸籍謄本(日本人であることを示す)があれば、日本人としての出国を認める場合があります
。出国記録に関する照会については、行政機関の7保有する個人情報の保護に関する法律に基づいて判断することになります。
また、夫から依頼に基づいて 入管が、出国を差し止めることはありません。
9、日本人配偶者の在留資格の更新
フィリピンなど離婚を認めていない国で、同国人配偶者との婚姻継続中に来日して、日本人と婚姻し、日本国籍の子どもが生まれ、
子どもを実際に養育している場合、重婚状態にあることが明らかになった場合には、日本人配偶者等の在留資格から定住者への変更申請が可能となるのか、
日本人配偶者の在留資格が喪失し、退去強制手続の過程で在留特別許可が可能となるのか、あるいはそれ以外の取り扱いになるのか
、外国人配偶者の在留資格の取扱いを教えてください。
回答、重婚が即、日本人との婚姻の有効性の否定とはならず、それぞれの事情で個別に判断することになります。
U、 統計数値に関する質問
件数または人数は、特に指定のない限り2008年(確定値)及び2009年(概数値)を、それぞれお答え下さい。
『』 内は、昨年の福岡入管からの回答です。
1、福岡入管の管内での在留特別許可の運用の現状について
@ 在留特別許可が認められた件数
『昨年回答』 2006年206件、 2007年199件、2008年 153件(概数値)
回答 2008年153件 2009年131件
A 福岡入管で収容中に60日以内で在留特別許可が認められた件数
『昨年回答』 2006年 2件、 2007件 0件、 2008年 2件
回答 2009年3件
B 1年以上の懲役または禁固刑の有罪判決(執行猶予付き判決も含む)を受けるなど上陸拒否事由者に該当するケースで、
退去強制されずに在留特別許可が認められた件数
『昨年回答』 2006年 7件、 2007年 8件、2008年 9件
回答 2009年 14件
2、福岡入管内での上陸特別許可の運用の現状について
@ 上陸特別許可の件数を明らかにしてください。
『昨年回答』 2006年 81件、 2007件 72件、 2008年 70件
2009年 62件
A 退去強制された外国人で上陸特別許可が認められた者のうち事前審査した在留資格認定申請者のうち
入管法第5条該当者数を明らかにして下さい。
(『昨年の回答』入管法第5条該当者で上陸許可された数は何人ですか。
『昨年回答』 2006年 8件、 2007年 9件、 2008年 8件
回答 2009年 12件
3、福岡入管内上陸拒否者
福岡入管管内の空港や港で、来日しながらも上陸拒否された外国人は何人かを教えて下さい。
『昨年回答』 2006年 358件、 2007年 384件、 2008年351件
回答 2,009年 313件
4、福岡入管の退去強制処分について
@ 福岡入国管理局管内で退去強制された者の総数及び内訳などについてお尋ねします。
『昨年回答』
退去強制者の総数 2006年946名 2007年 562名 2008年372名
*不法残留者 425名 331名 282名
*不法入国者 164名 95名 31名
*不法上陸者 10名 10名 5名
*資格外活動 306名 90名 28名
*刑罰法例違反者 41名 36名 26名
回答 退去強制者の総数 2009年 300人
*不法残留者 232名
*不法入国者 32名
*不法上陸者 2名
*資格外活動 10名
*刑罰法例違反者 24名
A 入管法違反の受理件数のうち本人の自主申告者数は何人ですか。
『昨年回答』 2006年 130名、 2007年 95名、 2008年 86名
回答 2009年 77件
B 退去強制者のうち福岡入管より警察・検察に告発した人数と、告発理由別内訳数
『昨年回答』 2006年 10名 (理由・不法入国) 2007年 11名 (理由・不法入国)
2008年 11名(不法入国の疑い)
2009年3名 理由 不法入国1名 資格外活動 1名
偽装滞在(偽装結婚)1名
5、福岡入管内の収容施設
@ 福岡入国管理局の収容定員、平均収容期間、最長収容期間について教えてください。
『昨年回答』 2008年 平均収容期間 5.8日 最長収容期間 52日
回答 2009年 平均収容期間 6.6日 最長収容期間 52日
A 福岡入管の収容施設内での被収容者の自殺未遂(自傷行為)を引き起した件数は、どのぐらいありましたか。
『昨年回答』 2006年該当者なし 2007年該当者なし 2008年 0件
回答 2009年 1名 (自損行為)
6、福岡入管の職員体制について
@ 2009年度福岡入管職員の総定員、警備部門、在留審査部門、審判部門の大まかな定員数を教えてください。
また、2009年度は前年度に比べてどの分野にどのぐらい増員がなされましたか。
『昨年回答』 2008年度 福岡入管職員の総定員220名、うち福岡本局58名、その内訳 警備部31名、
在留審査部と審判部門15名、その他12名、2008年度の人員は前年度と比べて2名減員
回答 2009年度 福岡入管職員の総定員244名、うち福岡本局76名、その内訳 警備部39名、
在留審査部と審判部門25名、その他12名、2008年度の人員は前年度と比べて24名増員
(追加質問での増員の理由の回答 大型旅客船の来航が九州内は多いため、増員となった。)
A 福岡入管職員の一人当たりの月平均残業時間はどれぐらいになっていますか。
『昨年回答』 2008年度 平均20時間
回答 平均20時間程度
7、研修生及び技能実習生について
@ 九州内の研修生の総数と各県別の数
『昨年回答』 2007年12月末現在 九州内外国人研修生 (九州8県内) 5972名
各県別 *福岡県1611名 *佐賀県 528名 *長崎県 895名 *熊本県 1159名
*大分県 784名 *宮崎県 452名 *鹿児島県 356名 *沖縄県 187名
回答 2008年12月末現在 九州内外国人研修生 (九州8県内) 6169名
各県別 *福岡県1812名 *佐賀県 515名 *長崎県 736名 *熊本県 1118名
*大分県 838名 *宮崎県 551名 *鹿児島県 493名 *沖縄県 106名
A 九州内の研修生及び技能実習生で2008年度と2009年度に失踪、逃亡した者の数、研修や技能実習中に死亡した者の数、
研修途中や技能実習中に帰国した者の数を教えて下さい。
『昨年回答』 2006年111名、 2007年157名、 2008年 集計中
回答 2008年 失踪 154名 死亡 3名 途中帰国 694名
2009年については集計中
追加質問
来日2年目から移行できる技能実習Aが認められる職種が、63種類から65種類へ増加しましたが、
新に加えられた2職種はどんな職種ですか。
○ 紙器・段ボール箱製造職種
○ ホタテガイ・マガキ養殖職種