日本政府、北朝鮮からの大量の難民の流入に備えた対策を検討
2011年12月25日 中島 真一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
2011年12月18日 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の金正日(キムジョンイル)総書記が急死し、朝鮮半島情勢が一層不安定化する可能性が強まっています。また、2011年12月25日共同通信の配信記事によると、「日本政府も、北朝鮮からの大量の難民の流入に備えた対策の検討に入った」と報じられています。これまで、提案してきた大村入国管理センターら入管の収容施設の難民保護のための施設への活用が現実味をおびえてきました。
「政府は北朝鮮の金正日総書記死去を受け、同国からの大量難民流入を想定した対策の検討に入った。難民の一時保護などで日本海側の自治体の協力を得るため事前協議を進め、受け入れが可能な施設を選定。朝鮮半島が不安定化した場合の韓国在留邦人輸送に備え、米軍との連携緊密化を図る。政府関係者が24日明らかにした。」
http://www.47news.jp/news/ 2012年12月25日(共同通信)
以下は、2011年11月28日の移住労働者と共に生きるネットワーク九州と大村入国管理センターとの8回目の意見交換会で、2011年9月におきた脱北者9名の大村入国管理センターへの保護に関する議論の報告です。
脱北者9名の保護について
2008年以降から、収容施設としての大村入国管理センターの存在意義を議論していますが、今回は、2011年9月から10月にかけて、大村入国管理センターで、約3週間にわたり保護された脱北者9名の問題について議論しました。
大村入国管理センターとしてこの問題については、「上陸許可、一時庇護許可の指定住所地として、大村入国管理センターが脱北者9名を受け入れたこと、収容棟以外施設内で保護したこと、保安上の理由で外出、面会、差し入れを認めなかったこと」等の事実関係は認めましたが、それ以外は、「本件に関して、これ以上コメントできない」という回答しかありませんでした。
2011年9月14日から10月4日韓国へ移送されるまで約3週間、大村入国管理センターは、仮上陸許可者、一時庇護許可者である適法な外国人9名(脱北者9名)を収容ではなく、保護したという事実は、大村入国管理センターが適法な外国人のための保護施設として使えることを示しました。そして、今後、朝鮮半島情勢の変化によっては、今回のような漂着民として日本へ来る者や、あるいは難民として日本へのがれてくる者が増大してくることが予想されます。これに対する対応についての質問に関しては、
昨年と同様に、「本省の判断となる政策レベルの問題で回答できない。」という姿勢は変わりませんでした。
2009年まで「東アジアの状況がどうなるのか不明で、必要となるときも来る」等という収容施設としての存続理由の反論が、2010年は、砲撃事件など朝鮮半島の危機が現実化し、2011年は、脱北者9名の日本への漂着がおきただけに、こちらの以下のような主張の方が説得力をもったように思えました。
「もし、万が一の事態が起きたら、その時日本へ来るのは、大量の避難民や難民で、必要とされるのは、入管法違法者の退去強制するための収容施設ではなく、避難民や難民らの保護施設であること」、「法務省の施設のなかで、朝鮮半島に近く、長崎空港がすぐ近くにあり、800名(過去、同センターで最大時、在日韓国・朝鮮人を2000名収容したことがあることを教えてくれました。)が収容可能で、給食設備や医療施設や医療スタッフがそろっており、建物以外にも広大なグランドや敷地あることから、難民キャンプとして最適であること」
現状や将来的にも、外国人収容施設としての大村入国管理センターの存在意義そのものが失われてきており、収容施設としては、その役割を終えたとして廃止し、難民の日本での定住化のための日本語や職業や生活習慣などの教育や訓練を受ける「定住化促進センター 」として再活用していくという提案が、「夢物語」ではなく、法務省内部にも浸透してきており、より現実味を帯びてきています。
そして一気にそこまで転換できなくても、当面、一部収容施設として機能を残し、他の施設を、仮放免許可者、一時庇護者、難民申請者の保護施設、あるいは、難民などの外国人の定住化促進センターとしての機能に転換させ、収容機能と併用して活用していくあり方も、検討されるべきであると思います。