第17回 移住労働者と共に生きるネットワーク九州と
福岡入管との意見交換会報告
2015年3月6日 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会
移住労働者と共に生きるネットワーク九州と福岡入管との第17回意見交換会は、2015年3月6日(金)午前1時30分から午後3時過ぎまで、福岡入管3階会議室で行われました。福岡入管側から、今年から1名増えて実務担当者4名(入国審査部門、在留審査部門、警備部門、審判部門の統括審査官)が出席し、総務課の渉外調整官1名の計5名が出席しました。また、移住労働者と共に生きるネットワーク九州から11名が参加しました。
最初に出席メンバーの自己紹介を双方行い、2015年1月末にネットワーク九州事務局が事前に福岡入管に文書で提出していた質問書(Ⅰ 入管業務に関する質問、Ⅱ、改定入管法に関する質問、Ⅲ、福岡入管の収容施設に関連して、Ⅳ、統計数値に関する質問 小項目総計45項目)に対する回答の説明が約25分間ありました。
その後、福岡入管からの回答に対して、技能実習生問題に関して、違法な保証金や違約金等借金を背負って来日する技能実習性の現状、来日後の失踪者数の急増問題、人身売買被害者の保護問題、永住者への在留カード切替の通知問題、職員数の部門別人数の増減問題、DV被害者の在留資格問題、日本人配偶者の在留資格取り消し問題、外国人女性への入国管理センターへの移送問題などについて、約1時間あまりの質疑を行い、率直な意見交換会ができました。そして、最後に、移住労働者と共に生きるネットワーク九州から法務大臣と福岡入国管理局長あて7項目(小項目総計では20項目)の要請書を提出しました。以下、重要と思える福岡入管への質問と回答とともに、その後非公開(録音なし)の質疑の中で重要と思えるものに関して、メモと記憶に基づいて報告しておきます。
- 技能実習制度に関する回答や質疑では、
入管から、「九州内の技能実習生失踪者の急増(2013年182名から2014年328名へ)の要因として、技能実習生が借金を背負って来日している現状があること円安による実質賃金の減少、都道府県別の最低賃金額が関東地方や東海地方と九州内では格差があり、インターネットやSNSを介して、甘言に乗せられて失踪する者が増えてきている。その対策として、監理団体に、監理団体自身とともに送り出し機関への技能実習生への趣旨や指導を徹底するように指導している」とのことでした。
2010年7月から施行の新しい技能実習制度では、「送出し機関などが不当な保証金をとったり、違約金契約を締結することが禁止され、そのような事実が明らかになれば不正行為として認定され、関係機関は5年間受け入れ停止となると決められているが、これまで送り出し機関が不正行為認定された件数は福岡入管内で、何件ありますか」という質問には、「ゼロ件、管理団体を通じて指導している」という回答で、入管による保証金などの不正行為認定が、規制として全く機能していないことが明らかになりました。
また、「技能実習生で、人身取引のうちの労働搾取の被害者として認定された者は、何件ありますか」という質問にも、「ゼロ件」という回答でした。また質疑の中で、「性的搾取への認定は認められることもあるが、労働搾取については非常に消極的な傾向がある」との発言もありました。「技能実習生が労働搾取の人身被害者であることは、在留特別許可の積極的な要件となりうるのか、」という質問には、「それが証明されれば積極的な要件となりうる」との回答でした。
- 外国人女性の福岡入管の収容施設から入国管理センターへの移送問題について、
大村入国管理センターだけでなく、西日本入国管理センターも男性しか収容をしなくなり、東日本入国管理センターしか女性を収容しなくなっていることに関して、これまで、福岡入管から東日本入国管理センターへ移送された例はないという回答で、今後については「大阪入管の収容施設へ移送することが検討されている」との回答でした。
- 福岡入管の職員の対応などに苦情がある場合の入管側の窓口について、
福岡入管総務課渉外調整官が苦情・相談の窓口となっていることが明らかになりました。入管へ苦情等が寄せられた場合速やかに関係部署に連絡の上、事実関係を調査するとともに必要と認められれば改善措置をとることとしています。
1, 技能実習生問題への回答(赤字が今年の回答)
- 福岡入管内の技能実習生の失踪者・死亡者・途中帰国者
失踪者 2011年 59名 2012年 79名 2013年 182名 2014年 328名
死亡者 2011年 1名 2012年 1名 2013年 0名 2014年 0名
途中帰国 2011年 567名 2012年 515名 2013年 874名 2014年 1077名
※ 失踪者が2012年79名、2013年182名、2014年328名と急増しています。
※ 途中帰国者も2012年515名、2013年874名、2014年1077名へと増加しています。
- 技能実習生の入国者の増減について
全国の技能実習生1号イ(企業単独型)の入国者数2011年5178人、2012年5876人、2013年 5585人、2014年6377人 1号ロ(団体監視型)の入国者数 2011年60847人2012年 62039人、2013年61841人 2014年76139人とのことでした。技能実習生の入国者数 2011年から2012年へやや増加しましたが、2013年には、やや減少しましたが、2014年より1号イ、ロあわせて約1万5千人も増加に転じています。九州内(沖縄県を除く)の技能実習生数(在留外国人統計 1号イ、1号ロ、2号イ、2号ロの合計数)は、2011年11781人、2012年12655人、2013年 13513人と増加しています。(※2014年は集計中}
- 不正行為の認定数
全国 2012年197件 2013年 230件(内訳 企業単独型0件 団体監視型230件 1一次受入機関 20件 2次受入機関 210件) ※ 2014年 集計中
- 地方労働局と福岡入管との相互通報制度
福岡入管から地方労働局への通報件数 2011年9件 2012年0件、2013年3件、 2014年 9件
地方労働局から入管への通報件数 2011年24件、 2012年32件、2013年15件(うち 通報後に不正行為認定した件数 2011年10件 2012年 6件、2013年3件。) 2014年 38件(うち通報後に不正行為認定した件数 2件 改善指導 5件)
2, 改定入管法の運用状況
- 2012年7月9日から施行された新たに設けられた届出義務違反の刑事罰や罰則の具体的適用状況、刑事告発に関しては、福岡入管からは、「指導に徹しており、刑事罰を課すために告発したりしたものはない」ということで、
2013年、2014年と同様に、2015年3月6日時点でも、福岡入管内では、具体的適用は行われていないということでした。
- 2012年7月9日から施行された新たに設けられた在留資格取り消し制度について、日本人配偶者等の在留資格者に2014年に1件取消が出ています。
- 日本人配偶者としての活動を6月以上行っていない、 2013年 0件 2014年 1件
- 転居の届け出の届け出90日以上怠る 2013件 0件 2014年 0件
3, 在留カードへの切り替え状況と永住者への通知について
- 外国人登録証から在留カードへの切り替え状況に関して、福岡入管からは、「2012年7月9日施行から現時点まで、永住者に関しては、全国レベルで2割を切っていると承知している」状況としてあることが明らかになりました。
- 私達NGOが以前から指摘や要望している永住者への通知に関しては、特別永住者だけでなく、一般永住者への通知に関しても、通知は2014年9月以降順次送付しているとの回答でした。
- なお、永住許可のガイドラインの見直しに関しては、昨年同様に、「本省の方で検討中」という回答でした。
4, 福岡入管内でのDV
福岡入管内でのDV事案の認知件数は、2012年5件 でしたが、2013年は8件(国籍別 フイリピン 6件、タイ 2件、認知状況 在留審査5件、相談のみ3件)、2014年は7件(国籍別 フイリピン 6件、ブラジル 1件、その認知状況 在留審査5件、相談のみ2件)
4、ハーグ条約(国際的な子どもの奪取に伴う民事上の則目に関する条約)とその国内実施法の施行について
2014年4月1日施行(ハーグ条約及びその実施のための国内法)に伴い入管の運用に変化について、(一方の親のみによる子どもの出国にもう一方の親の同意がこれまで通り不要か)という質問しましたが、「ハーグ条約の施行の有無に関わらず運用の変化はない」という回答でした。ハーグ条約の宣伝や広報については「入管職員を対象に外務省職員を講師に前いての研修会の開催、入管施設での外務省のパンフレットの掲示による広報」という回答でした
5、セクシャルマイノリテイ問題 同性婚者の在留資格について
回答 昨年(2014年3月)と同様の回答で、「昨年から変更となった外国籍同士の同性婚の在留資格へ配慮された件数について尋ねましたが、昨年(2014年3月)と同様の回答で「個別事案の件数については承知していない」
6、人身売買 問題
- 2012年までここ数年来 興行の在留資格者の退去強制者は、 0件でしたが、2013年は、8件で、2014年は3件と減少していました。
- 人身売買被害者として保護された外国人は、2011年21名(フイリピン13名 タイ8名)、2012年は9名(フィリピン4名 タイ4名 台湾1名) うち 福岡入管内は 2011年1名、2012年0名。2013年12名(フイリピン人6名、タイ人6名)うち福岡入管内 フイリピン人1名
質疑で、公的支援の対象になっていても、具体的な公的支援がない男性やセクシュアルマイノリテイの人身売買被害者への保護についての質問が出ましたが、これについては、昨年同様「警察との関係機関との連携のもと適切な対応をする」(※施設や公費負担を含めて具体的な進展はなし)という回答でした。
|