第12回 移住労働者と共に生きるネットワーク九州と大村入国管理センターとの意見交換会報告
2016年1月17日 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会
はじめに
大村入国管理センターと移住労働者と共に生きるネットワーク九州(以下、ネットワーク九州)との12回目の意見交換会が、2015年12月3日(木)午後1時より、大村入国管理センター 2F会議室で開かれました。大村入国管理センター側から総務課長、総務係長、企画管理部門、処遇部門の統括審査官ら5名、NGO側として、ネットワーク九州より(長崎・大村・熊本、北九州、福岡都市圏から)25名ほどが参加しました。
西日本入国管理センターが2015年9月末に廃止された後の大村入国管理センターがどのように変化しているかを知る上でも重要な機会となりました。
1. 施設見学
最初に、大村入国管理センター内の施設見学(毎年1.2階のみで、被収容者がくらしている3階は見学できませんでした)を20分ほどしました。3年ぶりに今年は、施設見学中に、施設見学で見かける運動場でバスケットやランニングをする被収容者の姿を見ることができました。 施設も、西日本入国管理センターが2015年9月末で廃止された影響か、これまでの1ブロックの使用から2ブロックの使用に増えていました。
昨年までなかったことですが、今年から施設見学中に被収容者が食べる食事の内容が写真付きで描かれたメニュー表を見せてくれるになり、宗教や文化の違いに応じて食事に配慮していることが説明されました。医療施設に関しては、歯科診察室、内科など診察室、薬品保管室など公開され、医療施設関連ではできるだけ公開するように配慮されていると感じました。但し、2013年から常勤であった医師が非常勤に変わり、 医療の人の面では後退している状況は変わっていません。また、カウンセリングルームには、観葉植物の鉢が昨年以上に多く備え付けられ、緑を見ることの少ない被収容者がリラックスできる環境に配慮していることが説明されました。被収容者が最初に荷物検査など受ける部屋では、1日の生活スケジュールの説明書が12ヶ国の多言語で、処遇や職員の対応に対する苦情申立ての説明書も13ヵ国語に増えて壁に貼ってありました。
2. 意見交換会
事前に提出していた質問書や要望書への回答を含めて1時間程度の意見交換会がおこなわれました。
(1) 質問への回答
① 収容施設及び被収容者の状況について
被収容者が、2015年10月末時点で、44人と、2014年10月末の20名と比べて2.2倍に増加し、実行収容定員 昨年の男子区100名から、今年男子区200名(4ブロックある施設のうち2ブロックを使用している)に変化していました。44名のうち86.4%(38名)が、九州外から移送されてきた外国人が占め、九州内は6名しかいませんでした。国籍別では、イラン8名、フイリピン6名、ブラジル・中国各5名、その他20名で、16カ国の国籍に及んでいました。平均収容期間は、2013年84.7日から2014年109.6日に長期化していました。6カ月以上の長期被収容者は、9名、4名のうち17名が、刑務所服役後の移送者で、そのうち6カ月以上の長期被収容者は4名でした。被収容者の自殺や自傷行為は、2013年1件、2014年2件、2015年(1月から10月)は0件でした。
仮放免許可者は、2013年17件が、2014年23件、2015年(1月―10月) 23件と増加傾向にあります。2015年(1月―10月)仮放免者23名の指定住所地の内訳は、関東地区8名、近畿地区6名、東海地区6名、中国地区1名、九州地区2名となっており、9割以上が九州外となっています。
送還者は、2013年54名(内訳 自費送還者45名、国費送還者は、9名)、2014年37名(内訳 自費送還者28名、 国費送還者は9名そのうち送還忌避者は2名)、2015年(1月―10月)11名(内訳 自費送還者6名、国費送還者は5名そのうち送還忌避者は1名)でした。送還者数は減少傾向にありますが、国費送還者の割合が増え、その中には送還忌避者の送還も行われるようになっています。
苦情申出件数は、2013年0件、2014年1件(その後取り下げ)、2015年(1月―10月)1件(処遇や医師の診療への不満を申出)、被収容外国人のうち性的マイノリテイで特別な処遇をした人数は、2013年1名(他の収容者と接触しない区域に収容するという処遇をした)、2014年0人、2015年(1月―10月)0人でした。
② 医療スタッフ及び医療ケアの状況について
医療スタッフについては2014年と変化がありませんでしたが、2014年以降常勤医師が不在となっており、内科と消化器科の医師2名の非常勤体制となり、月、水、金週3日の午前中のみ診療が、歯科医師は1名で、毎週金曜日午前中週1回診療を行われています。
メンタルケアの専門家によるカウンセリングは、2013年延べ104件、2014年延べ104件、2015年(1月-10月)延べ81件でしたが、通訳のついたケースについては、2015年5月までカウンセラーが英語を解することで、通訳者はつけていなかったが、2015年6月から10月の間に9件(主にペルシャ語)の通訳者をつけて行われた。外部の医療機関への診療・検査件数は、2013年99件、2014年72件、2015年(1月―10月)40件と減少傾向にありました。施設内の医師の診療で通訳のついたケースは、2013年2件、2014年1件でしたが、2015年は16件と急増しています。
③ 予算や職員体制及び被収容者の処遇について
大村入国管理センターの予算は、2014年度 6100万円、2015年度、6100万円、2016年度概算要求額6100万円と変わらず、職員体制は、2015年度は、2014年度と同じ47名で、職員数の増減はありませんでした。2015年10月以降は、昨年の20名台という被収容外国人が、他の入管収容施設からの移送者が増え、常時40名ほどに増加しているにもかかわらず、予算と職員数が同じなため、残業時間の増加など対応に苦慮している様子がうかがえました。
1部屋の定員は10人、1部屋の収容人数はおおむね4人から5人で運営しているとのことでした。収容施設内の収容区分ごとの収容者数は、2014年10月末は1ブロックのみの使用で喫煙者用区域7名、非喫煙者用区域1名でしたが、2015年10月末では、喫煙者用区域12名、非喫煙者用区域17名でしたが、その他の収容区域は喫煙者用2部屋2名、非喫煙居室8部屋で13名という回答で、もう一つのブロックは居室単位の運営で一人か、二人の入居した運用となっていることが分かりました。
運動時間や入浴や洗濯などは、2013年10月から入浴時間13時から16時30分に加えて新たに10時~12時の2時間がプラスされた以外は、ここ2年間変化がありませんでした。食事については、2015年から、味噌汁が飲めない被収容者のために新たにコンソメスープを提供するようになったこと、コッペパンと食パンの二種類を2週間ごとに交互に支給していたのを、パン製造業者の変更に伴い、2014年12月25日から毎週火曜日に支給することになった。それ以外は変更なしということでした。
面会者の延べ人数は、2013年延べ1139名、2014年延べ1721名、2015年(1月―10月)延べ1456名でした。
複数言語の電子辞書の取り入れの検討結果については、予算の都合で導入していないという回答でした。日本語、英語、仏語、中国語、ベトナム語、ラオス語の辞書を被収容者の希望で貸与している、また、被収容者の所持する電子辞書に保安上の支障がなければ持ち込みを認めるとのことでした、
④ その他
「過去に大村入国管理センターを難民受け入れ施設として使うことを検討されたことはありますか、」という質問には、「当施設の使用目的等方針については、本省で検討、決定することであり、答える立場にない」との回答でした。
また、女性の被収容者が、大村入国管理センターに2010年以降認められなくなったことで、外国人女性の場合に九州内で福岡入管の収容施設から入国管理センターに移送される場合には、茨城県牛久市にある東日本入国管理センターに移送されるしかない問題について質問したところ、個人的な見解としながらも、「大村入国管理センターでの女性部の復活を望んでいる」という発言がありました。
(2) 要望事項への回答
処遇の改善について、昨年までの要望事項をいくつか見直した13項目の要望書が、事前に提出されていましたが、「被収容者のモデル居住区」の見学の要請に対して、否定ではなく今後検討するという回答があった以外は、これまでどおりか、前向きな回答はすくなかったように思えました。
九州外の関西、東海、関東地方に家族や友人の多い被収容者が増加しており、遠く離れた大村入国管理センターではなく、「家族が日本国内にいる被収容者は、家族との面会も考慮して、家族が居住している地域に近い所で収容するようにして下さい」という要望は切実さを増しています。
意見交換会終了後、午前中に被収容者との面会を終えた長崎県内の参加者を除いて、収容されている外国人被収容者との面会(複数人との面会を含む)を、熊本と福岡からの参加者らが行いました。面会終了後の午後4時半過ぎに解散となりました。
コメント (中島)
西日本入国管理センターの廃止に伴う大村入国管理センターへの影響
2015年9月末西日本入国管理センターが廃止されて、2カ月しかたっていない時期での意見交換会ですので、その影響が今後どうなるかはもうしばらく様子を見てみないとわかりません。また、大村入国管理センターをどのように位置づけていくかという法務省の方針を見極めることもできないと思います。それでも、わずか2カ月ほどでも大村入国管理センターには、大きな変化が起きていました。
2014年10月1日から2015年9月末までの期間中に西日本入国管理センターから、大村入国管理センターへ移送されてきた外国人数についての質問への回答は、2名という回答でした。
しかし、2015年10月に東京入管収容施設(東京都港区品川にある)から18名が、大村入国管理センターに移送されてきたため、意見交換会が行われた同年12月3日時点で40名を超える被収容者数となり、あきらかに西日本入国管理センターの廃止の影響が出ていました。
大村入国管理センターへの他の収容施設からの移送は、本省(法務省)が決めているということでしたが、廃止前までの西日本入国管理センターの管轄区域と思える関西や東海地方からの収容予定者が、大村入国管理センターへ移送されてきているだけでなく、東京入管管内で、退去強制令書が発付された外国人の一部を東日本入国管理センターではなく大村入国管理センターへ移送してきていることもわかってきました。
しかも、2015年10月に東京入管の収容施設から移送されてきた人々の中には、日本人等と婚姻し、あるいは子どもがいて 在留特別許可を申請して入管に自主出頭したが、不許可となり東京入管の収容施設に収容され、家族が関東地方に居住しているにもかかわらず、東日本入国管理センターに移送するのではなく、遠く離れた長崎県大村市にある大村入国管理センターへ移送されてきた人が含まれていました。これらは、家族との面会を困難にして、自主的な退去強制に応じさせようとしている狙いがあるように思えます。
大村入国管理センターの被収容外国人数は 2006年1979人から2 014年59名へ減少し続け、2009年から女性の収容を取りやめ男性だけの収
容施設になっていました。そして、予算も減らされ 職員数も2014年度と2015 年度の職員数は同じ47名まで減らされていました。
これまでおおむね20名程度だった被収容外国人数が、西日 本入国管理センターが廃止された2015年10月以降は40名台となり、職員の残業が増えているとのことでした。医師の診療やカウセリングでも2015年6
月以降に通訳者が必要な被収容者が急増しています。 現時点でいえることは、被収容外国人の9割近くが九州外からであり、201 5年10月以降は、関西地方や東海地方からの入管収容施設からだけでなく、東京入管の収容施設からの移送者が多いこと、仮放免許可者の数も増加傾向にあり、九州内の場合も刑務所から受刑後に移送されてきた外国人が多いこと等が特徴としてあげられます。
|