不公平な研修−技能実習制度の暴露

―熊本県のある団体の「監視チーム」の一員として働いた経験から―

                  フイリピン籍のAさん

自己紹介

私は日本人の配偶者として、今幸せな生活をしています。しかし、研修制度を装って外国人を招聘する、ある団体で働くことになってから、たくさんの問題が起こるようになってきました。今日は、この研修制度について、お話したいと思います。

私はある団体に口頭契約で働くことになりました。他の日本人と結婚したフィリピン女性らと共に、派遣する団体、その派遣者を受入れる団体、そして研修生の連絡代理人として雇われました。私たちは、内部では「監視チーム」と呼ばれていました。

この団体で働いて約1年4ヶ月が経った時に、ある迷いに悩まされるようになりました。「単なる金儲けだけで働いていいのか」、良心に責められました。不道徳で、不公平な研修制度の道具として取り扱われ続けることに我慢できるのか?この問題で気をもみましたが、ようやく決意し、2008430日、この団体を辞職することにしました。今日、私は自らの勇気と希望をもって皆さんに発表します。

この団体による研修制度がいかに実施されているのか、この団体の「元連絡代理人」として自らの経験を皆さんと分かち合い、この重要な問題をネットワーク九州で公に暴露してほしいと思います。

まず、皆さん、研修制度とは何かをご存知ですか?なぜ、日本政府が研修制度を許可するのか?研修生として日本に来られる外国人にとって役に立つのか?個人的に言えば、様々な点で、役に立つと思います。しかしながら、法には抜け穴があるため、研修生が搾取されて、苦情を言い始めます。我慢できなくて、逃げる研修生もいます。

 

日本に来る研修生は、その受入施策を積極的に支援することを目的に設立された国際研修協力機構(JITCO)の仲介を通して招聘されています。JITCOが発行したマニュアルによれば、研修生は日本のためのだだの労働力ではありません。むしろ、研修制度の目的は国際的人材の助成や、発展途上国の方々に日本工業の技術、職業の技術、技能、知識などを移転する制度です。つまり、研修生の労働を通して利益を得るためのプログラムではなく、工業技術、技能と知識を教えることに関心がある方々を対象にするプログラムです。

 

 

B.私が理解している限り、この研修制度は次のような構成です。

 

 TESDA →    送出機関    →    受け入れ団体    → JITCO

                            第一次受入機関

                               ↓

                            監視チーム

                             (指導員

                               

                           第二次受入機関

                          (企業  ・  農家)

                                

                            研修生

                           (技能実習生 )                              

 

 

団体の役割と機能

 

1.              送出団体:様々な方法で、送る側が研修生や技能実習生を採用します。

2.              受入団体:研修生を受け取りたい側です。

研修生の他に、フィリピン人で構成されている「監視チーム」を結成します。

監視チーム:受け入れ団体、受け入れ会社、研修生の連絡代理人として機能します。

3.              JITCO:研修生や技能実習生をサポートする機構です。

4.              TESDA:フィリピン労働雇用省技術教育技能教育庁

5.              受け入れ会社:技能や援助の移転を提供する側です。

6.              研修生、技能実習生:研修生として想定されていますが、実際には一般の労働者 

    として働かせています。日常的に8時間以上働いています。

 

 

C.本団体のプログラム(理念)と、今日の現状について

                                                                                                 

       理念                      現実

研修生

労働者

原則として一年間以内の滞在

実際の滞在は1年間

研修期間内に、実務研修以外にトレーニング(非実務研修)を受ける。

研修期間内には、実務研修以外のトレーニング(非実務研修)をほとんど受けていない

研修出席日は月〜土曜日まで指定されている。研修時間は朝8時〜17時までと    決まっている。

月〜土曜日までの勤務制。残業や休日出勤もある不特定な長時間労働が、常態となっている。

残業や休日、祝日中の勤務は禁止。

残業は許可されている。もしくは強制残業を強いている。

研修生・技能実習生の人権を侵害してはならない

監視チームによる人権の侵害や公民権の抑制などがおこなわれている。

指導者や生活指導者による相談やカウンセリングを受ける権利がある。

困難な状況のまま、相談を受けることができない。外部に相談すると帰国させられる

一年間の研修を修了すると専門分野の就業体験への移転は可能

 

?(研修の成果をどのように帰国後行かせるかが不明)

 

D. 受け取る会社と受け取る団体間の契約について

 

1. 研修生                                                        工業                     農業

 

  毎月の研修手当                                                     8万                     6万

 

  管理費用(第二受入機関が第一次受入機関へ支払う) 毎月4万2千円

 

2.技能実習生(労働者と認められ、労働関係法の適用がある。

                         工業      農業

  月給                                                                      12万円              10万7千円

  管理費用(第二受入機関が第一次受入機関へ支払)   毎月 4万2千円

 

E. 今後の挑戦

今年4月30日、辞職した時、この団体から「コムスタカ」や他の「NGO」、「教会」などにこの内容を暴露しないよう、警告を受けました。しかし、クリスチャンとして、義務付けられているのは、真実と正義のため、堂々と意見を述べなければなりません。

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