報告 熊本県玉名市横島町の縫製関連の中国人女性技能実習生12名の問題が
解決となりました。
2008年9月21日 中島 真一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
2008年7月30日深夜に、熊本県玉名市横島町の縫製工場で働く12名の中国人女性実習生を保護しました。
彼女達は、「1ヶ月200時間をこえる残業など長時間労働」、「未「賃金や残業代の未払い」、
「強制貯金とその会社資金への流用」、「会社への貸付」、「旅券の取り上げ」など過酷な労働環境化で、
働かされていました。
翌日7月31日に熊本労働局へ救済申し立てをおこない、同日午後、熊本市役所内の市政記者クラブで、
記者会見をおこないました熊本県内では、その日の夕方のニュースや翌日の新聞朝刊(一部九州内)で
報道されました。
当該の企業に対して、熊本労働局及び管轄の玉名労働基準監督署は、8月1日に実態調査に入り、
8月12日是正勧告を通知し、当該企業に対して刑事事件としての立件へ向けて、実習生からの
聴取をおこなうなど、最優先課題として取り組みました。
また、本件は、日中間の外交問題ともなり、7月31日のマスコミ報道を通じて事態を知った
中国福岡総領事館の領事が、実習生12名から直接話を聞きました。その後、中国政府は、
この問題解決がなされるまで 浙江省の中国の派遣会社の海外派遣業務を8月14日に一時停止する
処分をおこないました。
さらに、中国側の派遣会社の代表者らを日本に呼び、実習生12名との話し合いが8月20日実現し、
実習生と中国の派遣会社との間で、全国で初めて5項目の協定(1、本件の責任が実習制にないこと、
2、帰国後、奨励金を返還すること、
3、帰国後、違約金を請求したり、訴訟をおこさないこと、4、家族への接触をしないこと
5、日本と中国の法令を遵守することを約束すること)が締結されました。
日本側受け入れ機関(当該企業と協同組合)と実習生12名とは、熊本労働局職員の立会いで、
話し合いを数回行い、 「1、重大な法令違反や人権侵害行為を発生させたことを認め、実習生に謝罪する。
2、2賃金や残業代など未払い総額 2226万のうち、1270万円を9月18日までに支払う、
2年目の実習生5人分の残業代未払い分214万円を2009年11月までに分割で支払う、
3年目の実習生の残業代の未払い分742万円の債権を放棄する。
3、受け入れ機関側が法令違反の事実を認め、今後法令遵守の運用を行うこと」等を内容とする
合意が成立することになりました。
そして、2008年9月19日(金)に、熊本労働局会議室で、熊本労働局職員2名と
中国在福岡総領事館の領事1名の立会いの下、実習生12名と当該企業と協同組合の間で、
示談書と協定書が締結され、本件事件は、実習生12名が7月30日に立ち上がってから
52日目に解決しました。合意に基づき、2年目の実習生5名は9月2日より職場に復帰し、
3年目の実習生7名は9月21日に帰国しました。
外国人研修生―技能実習生の「労働―人権侵害」問題の要因には、日本側受け入れ機関と
中国側の送り出し機関双方の間で、日本の最低賃金法や労働基準法に違反する「秘密契約(協定)」(本件では、
「残業手当 時給 300円以上ではたらかせてよい」という協定が結ばれていました。)が結ばれ、
多くの外国人研修生―実習生が「人身売買」や「現代の奴隷制」とよばれる過酷な労働環境下での違法な労働を強いられています。
従って、この問題の解決には、日本側受け入れ機関と中国側送り出し機関の双方の違法行為を取り締まる日中双方の
政府や行政の取組みが不可欠です。
本件事件では、熊本労働局や中国福岡総領事館の協力の下に、日本側受け入れ機関や中国側送り出し機関へ
の規制や処分がなされ、実習生との示談書や協定書が締結されて解決することになりました。
その意味では、日本国内で、技能実習生―研修生を巡り多発している「労働―人権侵害」事件のなかでも、
今後の解決のモデルケースとなる意義を持っています。
※ この事件は、9月10日(水)TBS イブニング ファイルのなかで、「外国人研修制度の闇」というタイトルで、
10分間程度の特集(一部、山梨のクリーニング店で働く中国技能実習生の問題も含みますが、大半が本件事件について特集)
として全国報道(熊本や一部地域は放映なし)されました。