2000年8月25日
東方時報(週間) より(
(以下の和訳文は、コムスタカホームページ編集部の責任です)
人情と道理にかなって合法的に紛争が解決された
実習生達は賠償金2225万円を獲得した
熊本県玉名市で最近発生した、会社が安価な賃金で中国人実習生を雇い人権を侵害していた事件は、
中国駐福岡総領事館、玉名労働基準監督署、当地の民間団体“(コムスタカ)外国人と共に生きる会”
の三者の協力体制の下で、日本側の企業、協同組合、中国側の労働請負派遣会社の三者と12名の
実習生が交渉を行い和解が成立した。企業は自社の行った誤りを認めて謝罪し、実習生は補償金
2225万円を獲得した。また、中国の労働請負派遣会社は帰国後の彼女達に対する報復や訴訟を
行わないことを保証し、これを以ってこの紛争は人情と道理にかなって合法的に解決され、
実習生の合法的な権利と利益が保護されただけでなく、企業の存続も得られた結果となった。
関係者は今回の和解が今後の研修生や技能実習生と企業との紛争の解決のために一つの良好な
範例をもたらしたと賞讃した。
記者が“外国人と共に生きる会”に対して行った取材によると、7月30日、熊本県玉名市横島町に
ある2社の縫製加工工場で働いていた余海雲さんら12人の中国人技能実習生はこの団体の援助の下、
熊本労働局に赴き、経営者が彼女達を安価な賃金で雇い、人権侵害等の違法行為をいっていると
救済申立をした。
この12名の中国人技能実習生の報告によると、彼女達は残業や休日労働を強制され、連日朝8時30分
から深夜12時まで働かされ、毎月200時間以上残業し、幾月も連続して休みがもらえず、それだけでなく
残業代は時給わずか350円で昨年11月に390円に増額されたという。このような状況下でも2社の経営者は
毎月3万円を預金として強制的に差し引き、その彼女達の賃金を時々借用して会社資金に使っていた。
これら以外にも、会社の経営者は彼女達の逃亡を防ぐために、まとめて保管するという名目で彼女達の
パスポートを強制的に預かり、彼女達の人権を甚だしく侵害した。実習生達の生活環境もまた大変劣悪で、
彼女達は工場内の食堂に住み、12人が6つの二段ベッドに押し込められ、炊事係が調理している時に出た
煙が立ちこめて眠れない日もあったという。
彼女達は申立書の中で、企業に対し、規定に従って彼女たちに残業代を支給すること、強制的に預金させられ
経営者に流用された賃金を彼女達の元に返すことを求め、総額3266万円を要求した。
福岡総領事館はこの事件を知ると直ちに、竇忠褘首席領事、楊鑯林商務領事を派遣して熊本県玉名市に
赴かせ事件の解決に当たらせた。両領事は2社の会社および協同組合の“ソーシャルマーケッテイング協同組合”、
玉名労働基準監督署から事情をきいた。また、民間団体の“(コムスタ)外国人と共に生きる会”からも、情況を
尋ねて意見を聞いた。また、この12名の実習生の送り出し機関である労働請負派遣会社の浙江東方労務派遣会社に
対してこの事件を通知し、関係者をできるだけ早く日本に派遣して事態の収拾に努めるよう要求した。
8月4日、竇忠褘、楊鑯林両領事は再度熊本県を訪れ、両者の関係を調整し、熊本労働局職員や“(コムスタカ)
外国人と共に生きる会”の代表らと共に直接12名の実習生の権益に関する訴えを聴き、関係のある現地の組織に
対して彼女達の合法的な権益を確保するよう要求した。
この連合会議の中で、関係者は実習生の訴えに基づいて彼女達がいくつの領域において合法的な補償を受ける
べきかを具体的に検討し、その上2社が現在直面している経営難も考慮して、可能な限り双方が満足できるよう、
人情と道理にかなった合法的な和解方法を用いてこの紛争を解決する努力をした。
8月19日、浙江東方労務派遣会社の代表が福岡総領事館を訪れ、竇忠褘、楊鑯林両領事らに対して派遣研修生の
情況を説明し、また法に従い理にかなった方法でこの件を解決する意を示した。同日、会社の代表団と楊鑯林領事らは
玉名市に急行し、企業や協同組合と話しあった。
8月20日、竇忠褘、楊鑯林両領事は各当事者が出席する協議会に参加した。この会議では、当事者同士が和やかな気持ちで
協議することができ、これにより基本的な和解が成立した。浙江東方集団株式会社の代表と12名の実習生は協定書に調印し、
この事件は受け入れ側の2社の会社が日本の労働法に違反したことで引き起こされたこと、実習生はいかなる責任も負わないこと
を承認した。会社は彼女達一人一人に対し、帰国後5000元の奨励金を支払うこと、彼女達の帰国後も彼女達及びその家族や保証人に
対しても違約金の支払い要求を掲げることはせず、訴訟も起こさないとした。また、彼女達の家族には接触しないと約束し、
今後また日本に研修生を派遣する際には日本の法律を遵守するとした。協定書の規定で、12名の実習生が上記の内容に同意したならば
、満期を迎えた7名は和解金を受け取った後は直ちに帰国し、そのほかの5名は工場に戻って働くことが決まった。
9月19日、12名の中国人実習生と彼女達が所属していた企業側は和解を成立させて、両者は正式に示談書に署名した。
この2社の会社は示談書の中で、長時間の残業を強制し、給料と残業代を支払っていなかった、強制的に預金させていた、
その預金を流用していた、パスポートを没収していたなどの不法行為を行っていたことを認めた。その上で実習生に
対して謝罪し、彼女達に対して残業代などの報酬として2225万9674円を支払う義務に同意し、支払方法と支払期限
を明確にした。
7名の実習生は示談書の中で、企業が未払いとなっている残業代の一部742万3900円を放棄し、和解金を受け取った後は
直ちに帰国することを表明した。そのほかの5名の実習生は、和解条項が履行された後は直ちに職場に戻り仕事復帰をする意
を表明した。21日、期限を迎えた7名の実習生は規定に従って中国に帰国した。
こうして、中国人技能実習生を安い賃金で雇い人権を侵害していたこの事件は人情と道理にかなって合法的に解決され、
実習生の合法的な権益が保護されただけでなく、企業が経営難に陥っていることも考慮された解決となった。
実習生達は、労働法で規定された支給されるべき賃金と残業代を全額受け取ることはできずそのうちの7割しか
得られなかったものの、まさに“(コムスタカ)外国人と共に生きる会”が示しているように、雇用企業と
協同組合が違法行為を認めてその上実習生に謝罪したことこそ申立が成功したことの表れだと言える。
この団体は駐福岡総領事館が中国人実習生の合法的な権利と利益を保護したことを高く評価しており、
総領事館の関与の下で、はじめて中国の労働請負派遣会社と実習生との直接対話が実現したことを賞賛している。
派遣会社は、実習生には責任がないことを認め、彼女達に違約金の請求を行わないことを承認し、また同時に
派遣業務の方法にも誤りがあったことを認めた。この“(コムスタカ)外国人と共に生きる会”はまた、
今回の紛争の解決が広まることは日中相互に関わりのある組織や企業の法の遵守意識を高めること、
派遣研修生の業務の改善に効果的であると考えている。
福岡総領事館の関係職員は今回の和解について「中国の研修生や技能実習生達は同じような問題に
遭遇しています。そんな時は適時それぞれの地域の大使館や領事館に報告をするべきです。
大使館や領事館は合法的な権益を擁護してくれるでしょう。熊本県で12名の実習生が申立し、
解決された今回の件はまさにその実例のひとつです。」と記者に話した。
記者の調べによると、最近、研修生など中国国民の日本における合法的な権益の擁護のために、
総領事の武樹民を筆頭とする福岡総領事館の職員達はチームを組んで管轄地内の中国人実習生受け
入れ企業や組合を訪問し、研修生や実習生を見舞って情況を聞いた。そして合法的な権益の擁護の知識
を紹介し、更に連絡を取る方法を残して、研修生や実習生が問題に遭遇した時、
リアルタイムで報告しやすいようにしたという。
【本紙取材/記者 吴 福昶 発】
≪写真の説明≫ 中国人実習生は当地(熊本市)のメディアの取材を受けた。