熊本県玉名市横島町の縫製工場の

中国人女性技能実習生12名の問題のその後

   2008年1月3日  中島 真一郎(コムスター外国人と共に生きる会)

 

2008年7月30日夜に、熊本県玉名市横島町の縫製工場の中国人女性技能実習生12名を

救出保護したケースは、2008年8月20日の中国側送出機関の派遣会社との協定合意、

9月19日の受入企業2社との示談書の締結、第一次受入機関である協同組合との協定書の締結を

へて解決に至りました、保護した実習生12名のうち2年目の実習生5名は9月2日より職場復帰し、

3年目の実習生7名は9月21日中国に帰国しました。

 あれから3ヶ月以上がたちましたが、その後の状況を報告しておきます。

 

 1、帰国した7名の実習生と中国側の派遣企業について

中国の派遣会社と協定書に約束した奨励金(5000元)の返還は、帰国後すぐしてもらえました。

但し、そのとき交換条件として署名捺印した協定書を渡すように要求され渡してしまったということでした。

そのご、協同組合の理事や中国領事館から連絡してもらったり、コムスタカからも手紙で、抗議して

返還するように求めましたが、そのままとなっています。

但し、この協定書は派遣企業と12名連名の形式となっており、全部で17通(実習生12名、

中国派遣企業、日本の受入れ企業と協同組合、熊本労働局、中国領事館、コムスタカ 各1通保有)

作成してありました。原本をコムスタカでも保存してありますので、将来万が一訴訟を起こされても

実害はありませんが、実習生7名には、協定書の写しを再度郵送しておきました。 

実習生らが中国に帰国し、協定書を取り上げてしまえばなんとでもなるという派遣会社の体質には

あきれさせられます。

帰国後に7名が体験したことは、中国側派遣会社の派遣業務が政府により停止されたために、新規派遣で待機

している研修生らからの批判と非難でした。なお、11月下旬現在、中国政府や地方政府は、この派遣会社の

派遣業務の停止処分を解除しておらず、今後も解除の見込みが期待できないため、上部会社の派遣部門は廃止

せざるをえなくなったとのことでした。

 

2、職場復帰した5名の実習生と当該企業2社と協同組について

@  労働基準監督署

  11月14日に熊本県玉名労働基準監督署に当該企業2社の労働基準法違反事件で参考人として私が呼ばれ、

保護している期間中の事情を聞かれました。労基署としては、年内をめどに検察庁へ告発する予定とのことでした。

処分は、検察庁が判断することになるが、罰金か、和解していることと、その後適法な運営にかわってきているので、

起訴猶予となる可能性もあるということでした。

  A 入国管理局

第一次受け入れ機関の協同組合の理事の話によると、11月末までに入管へ、「今回の事件の経緯、違法や不正行為の実情、

そして今後の改善計画」についての報告書の提出をもとめられており、当該企業の分を含めて協同組合として報告書を

福岡入管と法務省双方へ提出したとのことでした。今後、入国管理局として調査や審査を行い、

本省の決定をへて処分が決まるということでした。

 

B 協同組合への研修制を派遣する派遣会社について

この事件の解決するまで、中国側派遣企業からの申請中の新規の研修生の派遣許可が停止されていたが、そのうち山西省と

四川省の派遣会社からの研修生は10月に許可され受け入れが可能となった。しかし、今回の事件起こし、協同組合の

研修生派遣の7−8割を占めていた浙江省の派遣会社の処分が解かれず、今後も中国政府から解除することが期待

できないため、他の派遣会社を探さざるを得なくなっている。(この派遣会社は、現在派遣している研修生―実習生が

将来帰国した場合の受け皿として存続する必要があるが、新規の派遣業務をおこないため、実質的には倒産と

なっていく可能性が強いということです。)

 

C 当該企業と協同組合

復帰した5名と残留していた研修生ら6名の11名の中国人技能実習生と研修生で工場の生産を継続している。

労基署の指導を受けながら変形労働時間制を採用し、長時間労働ではなく生産効率をあげるように工夫し、

適法な残業時間と残業代の支払い、研修生には残業させないなどの改善がおこなわれています。(

残業ができなくなった研修生らからは、収入が減ったことで、復帰した5名へ非難が当初なされたことも

あったと聞いています)会社の社長によると、12月の受注はきており、年は越せそうという話でした。

協同組合の理事によると、今後入管の処分がどうなるか不安があるが、協定書で合意したように適法な

運営となるように協同組合の加盟企業のやり方も改善し、生き残りを図っていくという話でした。

 

3、まとめ、

解決後2ヶ月を経て、関係機関や企業は、2008年9月19日の示談書や協定書で約束した内容は、

遵守され、あるいは遵守していく方向で努力しているようです。

起ち上がった技能実習生−研修生が、その権利の回復と未払い分の賃金や残業代を得られるという

具体的な解決となり、かつ、違法や不正行為に対して行政機関から処分されながら、当該受け入れ企業や

第一次受け入れ機関が倒産や自己破産、あるいは清算されてなくなるという形ではなく、適法な運営に改める

ことで存続できるというモデルケースとなることをめざすという目的は、今後も不確定要素はありますが、

現時点ではその方向で動いているようです。

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