「多文化共生の地域社会をめざす」講演会報告
2007年12月14日 中島 真一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
一、はじめに
2007年7月24日に韓国の忠清南道天安市で開催された「多文化社会の到来と地域社会の対応」をテーマとする国際セミナーに、熊本県からの紹介で、日本側の報告者の一人として私が参加しました。そのときはじめて、韓国が、これまでの「管理と排除」を中心とする日本の入管政策の後追いから脱して、外国人との多文化共生をめざす政策に劇的に転換していることを教えられました。
韓国では、2004年以降、政府や自治体レベルで、いわば行政主導で、次々と在住外国人や結婚移民女性の保護と権利擁護を実現する法律や条例などを制定し、そのための施策を実行しています。その国際セミナーの主催団体の主要メンバーであり、セミナーでの「韓国の多文化社会の現状と課題」テーマの報告者であったキム ヨンジュさんと知り合いました。在住外国人の増加という日本と共通する問題を抱え、かつ日本以上に「単一民族」「外国人排斥」「男尊女卑」「父系主義」等の意識が強いと思える韓国で、このような劇的な外国人政策の転換が政府や全国の各自治体レベルで実現できるようになっていることに驚かされ、なぜ可能になったかという問題に興味と関心が湧きました。その韓国から学び、日本社会においても多文化共生の地域づくりをめざして、九州内2箇所(移住労働者と共に生きるネットワーク・九州主催で福岡市、コムスタカー外国人と共に生きる会主催で熊本市)で講演会の開催を企画し、韓国忠清南道女性政策開発院研究員のキム ヨンジュさんを講師として招待しました。
ニ、講演会の進行
2007年12月9日(日)午後1時30分から午後5時まで、熊本市大江にある熊本学園大学の1421教室で、在住外国籍住民や帰国者及びその家族、NGO関係者、熊本県・熊本市・八代市などの国際関係や女性政策の行政の担当者、そして市民・学生など60名余りが参加して、「多文化共生の地域社会をめざす」講演会が開かれました。
講演会では、まず、主催団体(コムスタカー外国人と共に生きる会)の原田敏幸代表が開会の挨拶をおこない、韓国 忠清南道 女性政策開発院研究員のキム・ヨンジュさんによる「韓国の多文化現況と社会的課題」と題する講演が1時間30分行われました。キム ヨンジュさんへの質疑、休憩をはさんで、私(コムスタカ−外国人と共に生きる会副代表)が『日本における多文化共生の現状と課題』をテーマに25分ほど報告し、続いて熊本県国際課の坂本課長補佐と、男女共同参画パートーナーシップ推進課の坂本課長補佐から、熊本県の施策の現状についての報告がなされました。県内在住の外国籍住民やその家族 6名からそれぞれがおかれている状況報告や問題提起が行われました。終了の予定時間4時30分を30分近くオーバーしましたが、ほとんどの人が途中で席を立つこともなく熱心に最後まで参加し、午後5時前に主催者を代表して私が閉会のあいつをしました。
三、キム ヨンジュさんの講演要旨
講師のキム ヨンジュさんには、なぜ、韓国で居住外国人に対する政策転換が可能になったのかを中心に45分間(通訳時間を含めると90分)で話してほしいと依頼していました。
講師は、 1、韓国の居住外国人の現況、 2、韓国の居住外国人政策、3、多文化共生のための課題、という3つのテーマに沿って話をされました。
1、はじめに
韓国社会は、「単一民族」観念、「民族=国家」というアイデンテイが強く、「混血」と「純血」という二分法的な区分がつよい、外国人差別が酷い社会であり、特に、韓国の社会で差別される外国人は、韓国在住の華僑(中国籍)、そして在韓米軍関係者(軍人・軍属)と韓国人女性との間に生まれた子ども(「混血人」と呼ばれる)であった。しかし、居住外国人の増加で、韓国人と外国人が一緒に暮らす社会に対する悩みが始まる。
2、韓国の居住外国人の現況
韓国の滞在外国人は、1997年39万人が2007年8月には100万人と2.5倍に急増し、韓国の総人口の2%を占め、その7割以上が長期滞在者となっている。国籍別では、朝鮮族(韓国系中国籍)27%、朝鮮族以外の中国籍17%、アメリカ籍12%、ベトナム籍6%、フィリピン籍5% タイ籍4%などの順です。在留資格別内訳では、外国人労働者が56%、結婚移民者が14%、留学生が7%、その他23%であった。長期滞在者約72万人の3分の2が韓国の首都圏(ソウル、京畿、仁川地区)に集住している。性別比は、外国人労働者は男性:女性が7:3であるのに対して、結婚移民者は男性:女性が1:9となっている。
外国人増加の背景として、@1992年の韓国と中国の国交樹立(韓国人と中国人の国際結婚の増加や中国朝鮮族(韓国系中国人)の入国増加、A韓国内の労働力不足から1993年産業研修制度の実施に伴う外国人労働者の増加、B国際交流の増加に伴う留学生の増加、C 国際結婚の増加が挙げられる。
国際結婚は、2000年に韓国の総結婚件数の4.6%が2006年11.9%と2.5倍に増加、在住外国籍の妻の国籍別では、朝鮮族(韓国系中国人)38%、中国籍22%、ベトナム籍18%、日本籍7%、フィリピン籍5%、モンゴル籍2%などである。特に2004年ごろから急増しているのが、ベトナム女性と韓国人男性の婚姻である。その背景として、農村男性や都市の低所得階層の男性など社会的資源が少ない韓国男性の結婚難があり、なかでも第一次産業従事者の結婚総数の平均40%、多い地域では50%以上が国際結婚となっている。
3、韓国の居住外国人政策の転換
(1)外国人問題の登場
韓国社会に居住する外国人の増加に関連して、次のような外国人問題(@外国人労働者に対する人権侵害、A産業研修制度の矛盾、未登録者の量産、B人身売買に近い国際結婚の増加、C外国人に対する差別意識、D居住外国人に対する生活適応支援政策の不在)が社会問題として登場してくることになった。
2000年代以前まで韓国政府の外国人政策は、管理統制中心、国内労働力需要に必要な労働力供給の側面からの接近であったが、2000年以後、在住外国人に対する支援政策が少しずつ始まる。また、外国人政策の変化の背景として、@ 市民団体による外国人労働者への人権侵害問題、政府の制度に対する批判の高まり、A 人種差別撤廃委員会など国際人権条約機構の勧告(1996年、1999年、2006年)、B国際結婚家族の増加で、地域社会から彼女らに対する支援政策の必要性増大などがあげられる。
以下、韓国の居住外国人関連の主要制度の最近10年間の変化を列挙する。
(2) 居住外国人の主要制度の変遷
1997年12月 国籍法改正 父系血統主義から父母両系血統主義採択
1999年 9月 一部在外同胞(韓国系外国人)の就業活動、金融、不動産取引の
自由化
2002年 4月 出入国管理法の改正 永住権制度の創設
12月 中国同胞〔韓国系中国人〕に対する就業管理制度の導入
2004年 8月 産業研修制度の廃止と雇用許可制への転換(2007年より実施)
2005年 8月 永住権者に、地方選挙権を付与
2006年 行政自治部が「居住外国人支援条例の標準案」を作成
※ 2007年12月現在「居住外国人支援条例」は、韓国の広域自治体16のうち14で条例が成立。未成立の2つは、外国人労働者の集住地域で、その内容が未登録外国人の権利保護に不十分として自治体の議会で反対多数で否決され、修正内容を検討中とのこと。忠清南道居住外国人条例は、2007年7月30日に成立、同日施行。
4月 女性結婚移民者の家族への社会的統合支援法
5月 政府の新組織として大統領を委員長とする外国人政策委員会を組織
し、第1回委員会を開催。(同委員会は、外国人政策の方向と計画の樹立、政府機関間の協議・調整事項を審議する。)
法務省の「出入国管理局」の名称を、「出入国・外国人政策本部」に改称。(このうち外国人政策は、「社会統合課」と「政策企画課」
で担当)
9月 小学校の在学子女がいる「不法滞在者」が自主申告する時、2008年2月までの一時滞在を許可
12月 未成年の子女を養育している結婚移民者に生活保護法や母子父子福祉法を適用
2007年 3月 訪問就業制の拡大(韓国系中国人などの在外同胞の入国、
就業機会の拡大)
5月 犯罪被害者や深刻な人権侵害を受けた、就労が認められていない外国人に対して、救済されるまで時まで国内就業を許す。
5月 在韓外国人処遇基本法の制定、同年7月に施行
在韓外国人処遇基本法の主要内容
@中央成府や地方政府は5年ごとに外国人政策施行計画を樹立
A外国人・子女に対する不合理的な差別防止と社会的適応の支援
B適応教育支援、子女の保育支援
C事実婚から生まれた子女、難民、永住権者の保護
D一緒に暮らしていく環境造成
6月 高度技術者以外にも、新に熟練生産労働者の外国人に永住者の
在留資格取得を許容
10月 差別禁止法の立法予告(国会上程)
差別禁止法の主要内容
ア 禁止対象となる差別事由
注* 性別、出身国家、出身民族、人種、皮膚の色、容貌など21種類の差別事由が人権委員会の提案時点ではあったが、「学歴・病歴・出身・民族・言語・言語・家族状態」の7つが削除されて、14種類のみに減らされて国会に上程され、成立が見込まれている。
イ 差別禁止の領域
@ 募集・採用・昇進・賃金
A 金融機関・交通手段・住居施設の利用
B 教育機関への入学・教育機会・教育内容
C 人種・皮膚の色などを理由にしたいじめ
ウ 罰則 違反者に罰金
(3) 多文化共生政策の推進の背景
@ 韓国社会の人口学的構成の変化(少子―高齢化)とその結果への認識の深まった。
A増加する外国人と韓国人との統合が社会的課題として登場し、社会的統合の観点から、外国人政策の樹立を推進しなければならないという問題意識が拡大した。
B国際結婚の急増で、女性移民者とその子女に対する社会問題が急増し、国内定住が予想される代表的な集団で、中央政府や地方政府の関心が高く、現在韓国の居住外国人政策の中心は国際結婚家族に対する政策が主流となる。
*韓国社会には、外国籍の女性の結婚移民者は、「将来や現在の韓国国民の母親」となる存在として、それを保護することについての共通の価値観が強くある
女性結婚移民者への支援政策の現況
法務部 婚姻破綻・離婚による簡易帰化申請時の立証要件緩和
保健福祉部 結婚仲介業管理に関する法律の制定推進
* 国内結婚仲介業者は届出制のままであるが、国際結婚仲介業者については、登録制に変更した。
ベトナムとフィリピンとの国際結婚仲介斡旋業者については規制を強化した。
女性家族部 結婚移民者家族支援センターの設置や運営(2007年現在、全国に40箇所、2008年には全国80箇所の設置を目指している。)
女性結婚移民者のための母性保護ガイドの作成
教育人的資源部 多文化家庭の子女教育支援対策と師範学校の運営
農林部 農村居住結婚移民者のための訪問ボランティア事業の実施
文化観光部 女性結婚移民者を対象とした社会文化芸術教育プログラムの作成
4、 韓国における多文化共生政策の課題
*韓国で「多文化共生」という言葉が使われるようになったのは最近で、2006年3月の日本の総務省の「多文化
共生プログラム」を韓国語に翻訳・研究し、それらを参考に政府が採用した。
(1) 政府次元では制度化はものすごく早く推進されているが、地域社会の基盤
はとても脆弱である。
(2) 中央政府や自治体など行政機関中心の政策遂行で、民間NGOとの
パートナーシップが弱い。
(3) 地域社会の住民が自らの政策推進の主体にならなければならないが、そのための社会的資源や人材の育成が必要である。
(4)「巨視的なレベル」から「細部の政策単位」まで、多文化社会の理念一貫して
適用されなければならにない。(自治体の施策のなかには、多文化共生政策とい
いながら、その内容が韓国語と韓国文化を教えるものしかなく、同化政策と変わ
らないものがある。)
(5) 女性結婚移民者以外にも、外国人労働者など多様な外国人集団に対する社会的な権利や人権保障の政策がもっと拡大しなければならない。
(6)居住外国人自らが地域住民として政策推進の主体として参与できるようにしなければならない。
5、 キム ヨンジュさんへの質疑
質問1 日本で、指紋や写真を入国する外国人から強制する個人識別情報義務化など管理が強化されていることついてどう思われますか。
回答 今年8月に来日したときはありませんでしたが、今回は指紋をとられ、不愉快な思いをしました。韓国内でも、日本に対抗して、韓国に入国する日本人から指紋とかを写真を撮るようにすべきだという議論が起こりましたが、そのような措置は人権上問題があるのですべきではなく、日本自ら取りやめるようにしてほしいと思います。
質問2 韓国は12月の大統領選挙が行われますが、新しい大統領の誕生で、今日説明された多文化共生政策が変更されることはありませんか。
回答 現在の政府は人権問題を重視する政権で、韓国の外国人政策は、行政主導で行われているので、その点は心配です。但し、保守系の大統領が誕生し、企業利益を代表する人が政策決定の中心に入ってきた場合でも、外国人労働者に対する政策は企業よりに変わるかもしれませんが、結婚移民者への保護や権利を認める政策には変更がないと思われます。
質問3、韓国内で国際結婚が増加しているとのことですが、国際結婚による生まれた子どもへの学校でのいじめ問題はおきていませんか
回答 韓国の国際結婚が急増するのは近年のことなので、その子ども達の多くがまだ年齢が低く、学校へいくまで達していないので、学校内での国際結婚から生まれた子どもへのいじめは大きな問題とはなっていません。しかし、近い将来顕在化してくる問題なので、学校や地域のなかでその対策を考えていかなければなりません。
四、報告―― 日本の多文化共生の現状と課題
中島 真一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
(1)、 はじめに
「コムスタカ−外国人と共に生きる会」は、熊本市内中心部にある手取カトリック教会を連絡先に、1985年9月結成以来22年間、在住外国人の相談・支援活動を行っているNGO団体である。22年前逃げてきたフィリピン人女性を助けることから始まった活動は現在、在留資格の相談や国際結婚の破綻やDV被害者の救援、国際家族の結合、日比国際児問題など多岐に渡る。最近は中国籍や帰国者の子女の学校でのいじめなどの問題解決、日本人夫の死亡後親族から遺棄される外国籍妻の支援なども相談項目にあがり始めている。相談活動以外にも、週に一度、日本語教室を開催や、移住労働者と家族の問題の講演会、セミナー、映画会など啓発活動に取り組んでいる。
(2)、日本の居住外国人及び国際結婚の現況
日本も、1996年141万人から2006年208万人へと62万人の外国人登録者が増加し、日本の総人口の1.6%を占めている。在留資格のない外国人のうち「不法残留者」は、1993年約30万人でしたが、2007年には約17万人へと減少している。
国際結婚も、1970年の5546件から2006年44701件と約8倍になり、2006年の日本の婚姻総数の約6%を占めている。国際結婚のうち夫外国籍・妻日本籍と夫日本籍・妻外国籍の比率は、1:4と、後者が前者の4倍となっている。
(3)日本政府の外国人政策
日本政府の外国人政策の特徴は、@ 外国人に関する法律が、「外国人登録法」と「出入国管理及び難民認定法」という管理と排除を中心とする外国人政策しかないこと、A日本政府の労働力政策は、「専門的技術的分野」に限定して就労を認めるが、「一般労働分野」については、原則受け入れ禁止とする政策を堅持している(但し、日系三世を主な対象とする「定住者」や、「研修生」や「技能実習生」として実質的に労働力として外国人を受け入れている)B「移民」を認めず、「定住」を望まない政策などである。(但し、一般永住者は1996年7万人から2006年39万人と5倍以上に増加し、定住する外国人が増加し続けている。)
(4)日本の外国人政策の変遷
1980年代から1990年代前半までは、難民条約の批准、父母両系主義の国籍法の改正、「研修」の在留資格の創設や「技能実習生」制度による受け入れ拡大、1990年代後半から2007年現在は、「集団密航」、「不法入国者」、「フーリガン」、「テロリスト」対策を名目とする規制強化や取り締まり強化のための入管法改定が続いている。その一方で、難民やDV被害者や人身売買被害者について保護していく入管法の改定や運用の変更が見られた。また、日本政府は、「不法滞在者」を合法化するアムネステイ政策を否定しているが、入管法第50条の在留特別許可により、主に日本人等との婚姻等を理由に合法化される外国人は、2003年〜2005年は1万人以上(2006年 9360人)に達している。
(5)日本の多文化共生政策
日本の在住外国人への保護と権利擁護は、政府が立法化をしようとせず、施策も提供しないため、もっぱら一部自治体と民間団体(NGO,NPO)によって担われることになる。
2000年代になり在住外国人の増加や定住化に伴い、自治体も国際交流や国際協力から、外国籍住民を対象にした施策(多言語相談窓口や情報提供など)を行うところが増加してくる。 このような変化を背景に、2006年3月総務省が、「多文化共生プログラム」を発表した。ここでいう「地域における多文化共生」とは、日本人や日本文化への同化を求めるものではなく「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」と定義されている。
そして、以下の4つの項目での自治体の外国人施策の具体的な取組み事例を紹介している。(@地域における情報の多言語化、日本語や日本社会における学習支援などのコミュニケーション支援、A居住・教育・労働環境・医療・保健・福祉・防災などの分野別に必要な支援施策を実施する生活支援、B 多文化共生の地域づくり、多文化共生概念の共有化、C基本計画や条例の整備、推進などの多文化共生のための推進体制の整備)
(6) 多文化共生の地域社会の実現へ向けて
@ 日本社会における「外国人」観の転換、即ち、「犯罪者」「テロリスト」、あるいは「ゲスト(お客)」「一時滞在者」から、「隣人」「地域社会の構成員」としてとらえることが求められている。
A 外国人を「管理と排除」する政策から、「情報弱者や社会的弱者」として保護し、地域社会の中で共生していく多文化共生政策への転換、具体的には、政府は「外国人人権基本法」や「差別禁止法」等を立法化し、自治体は「外国人保護条例」「多文化共生条例」等を制定し、行政として居住外国人の権利保護や生活支援のための施策を行う。
B それらの立法や施策の内容を決めるとき、かつ、具体的に浸透し、効果をあげていくために、外国籍住民、地域住民、民間団体(NGO,NPO等)、自治体との連携した取組みが必要である。
五、熊本県行政からの報告
(1)地域振興局国際課 からの報告
総務省の「多文化共生の推進に関する研究会報告書」を配布資料として、その理念や役割や課題について説明、熊本県の取組みとして、熊本県内主要施設等における外国語表記実態調査を行ったこと、委託している国際相談コーナーの相談の集計報告、医療通訳者派遣システムを構築するために医療通訳者勉強会〔英語・韓国語・中国語〕の取組みなどの報告がありました。
(2)男女共同参画パートーナーシップ推進課から報告
熊本県DV対策について、以下の報告がありました。
@ DV相談件数が全国と同様に熊本県でも増加傾向にあること、
熊本県DV相談件数2002年589件(うち一時保護 34件)から2006年832件(うち一時保護 69件)
A 2005年12月の「熊本県配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本計画」(計画期間2005年から2008年)に基づき事業(啓発・関係機関会議・研修会・相談窓口設置・カウセリングの実施・一時保護・自立支援・民間シェルター支援・身元保証人確保対策事業など)の報告
B 外国籍の被害者への対応
ア DV防止法第23条「DVに係る職務関係者は、その職務を行うに当たり、被害者の心身の状況、その置かれている環境等を踏まえ、被害者の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重するとともに、その安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならない。」の説明
イ 熊本県の具体的な取組み、
○ 9ヶ国語でのDVに関する説明資料と相談窓口紹介リーフレットの作成、
○ 一時保護所の通訳の手配、
○ 2006年外国籍被害者からの相談件数 8件〔全体 832件〕、
一時保護入所者4人〔全体69件〕、ステップハウス利用者1人
六、在熊外国籍住民や家族からの発言
熊本県在住の外国籍住民6人から以下のような意見が出されました。
@来日後20年以上となる熊本フィリピン人会の代表からは、「 外国籍住民は、言葉もわからず、文化や社会の仕組みもよくわからないなかで、多くの苦労をして、移り住みながら、日々、日本の社会に適応して生きていく努力をしています。そして、仕事をし、家庭を築き子どもを育て、熊本の地域のなかで貢献しています。私たちを地域のなかで住民として存在していることを認めてほしい。熊本県・熊本市も韓国と同じ政策を進めてほしい」と、用意していたアピール文を読み上げました。
A熊本県内の農村に暮らす来日後10年となる中国籍の女性は、中国籍の友人から多く相談をうけるが、「子どもが来日したが言葉が分からず、日本語を覚える支援体制がない。こどもは学校でいじめられ、親は会社でいじめられる。どこに相談したらいいのか分からない」と訴えた。
B韓国籍の女性は「日本に来て6年。入国制度が変わり、指紋をとられ、写真を撮られるようになった。子どもが高校生で、海外の修学旅行へいくことになるが、入国審査では同級生たちと異なる扱いをされることになる。子どもが友人にそのことを話すと、半数は『外国人だから仕方がない』という反応が返ってくる。みんな無関心。日本で住んでいる外国人は同化させるか、追い出すかしかないと考えている。私たちは犯罪者なのか。これ以上管理が増えたら、この国で生きていく自信がない。押捺した指紋をないがしろにすることは人権侵害。」と、2007年11月20日から実施されている個人識別情報提供義務化を批判しました。
C来日後15年以上となる日系ペルー籍の女性は「定住者」の更新に、2005年から入管へ無犯罪証明書をペルーから取り寄せなければならないこととなり、東京のペルー領事館へ書類をとりにいき、本国から書類を取り寄せるのに時間と費用がかかり大変な思いをした体験を語り、自分たちを「犯罪者扱い」しないでほしいと訴えました。
D当日会場に参加していた一人の中国籍の中学生が「自分は中学校でいじめられた。『中国に帰れ』、『死ね』という罵倒されたり、多数の学生に取り囲まれて、打たれたりした。いじめられて、学校へ行けなくなった。今は転校して別の中学に通っている。絶対生き抜きたいので、皆さん、助けてください。本当に話ができる友達がほしい。人生やくらしの話ができる友達がほしい」と訴えました。
E 県南から参加した中国籍の女性も「こどものことで悩んでいる。昨年来日した子どもが中学校へ入学したが、日本語がわからず、学校行ってもただイスに座っているだけで、とても心配。日本語の勉強をどこですればいいのか」と話した。
7、閉会のあいさつ、 コムスタカー外国人と共に生きる会 中島真一郎
参加者がどのぐらいになるか心配しましたが、60名を超える参加がありました。今日の講演会が、在住外国籍住民と家族、NGO関係者、行政関係者などが初めて一同に会して、韓国の多文化共生政策への転換とその施策を学びながら、日本で、この熊本で、多文化共生の地域社会を作っていくための第1歩、スタートとなったと思います。どうも長時間の参加ありがとうございました。