インドネシア看護師候補生の問題 (その2)
厚生労働省が、EPAによる看護師候補者の国家試験の改定のための検討会を設置しました。
2011年12月20日 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
厚生労働は、EPA(経済連携協定)により来日しているインドネア看護師候補者、フィリピン看護師候補者 に対する 「看護師国家試験における母国語・英語での試験とコミュニケーション
能力試験の併用の適否に関する検討会」を設置して2011年12月から検討を始めています。
2010年10月に相談をうけ、2011年7月に解決したEPAにより来日しているインドネシア看護師候補生の給与未払い問題で、解決後の帰国に際して、熊本市内で2011年7月27日の記者会見を開きました。その時、給与未払い問題の報告だけでなく、日本語による現行の国家試験の改善を看護師候補生 ダナさんは訴えていました。 また、私からも、インドネシア語の専門試験とコミニケーション手段としての日本語試験を別個に設けた試験制度の改革の必要性を訴えました。
厚生労働省は EPAによる看護師候補者の国家試験、2011年12月から インドネシア語や英語による試験とコミニケーション能力試験の併用の適否を検討する検討会を設けて検討を始めています。その通りに実施なるのか予断は許しませんが、検討を開始したことは評価してよいと思います。但し、検討会の委員の多くは、「日本の国家資格試験として看護師資格試験は、日本語でないといけない」という「信念」に凝り固まっていると思われ、この通りになるかは不透明です。
厚生労働省 「看護師国家試験における母国語・英語での試験とコミュニケーション 能力試験の併用の適否に関する検討会」 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008zaj.html#shingi87
EPAによる 外国人看護師候補者の試験制度について
EPA(経済連携協定)に基づき来日したインドネシア人看護師候補生は、6ヵ月間の日本語学習など非実務研修をへて、2年半を期限として日本各地の病院等の施設で実務研修と日本の看護師国家試験のための受験勉強をします。来日後3年間は、あくまでも、日本の看護師国家試験を受験する準備期間という位置づけですが、病院等施設で受け入れられる実務研修期間中は、病院等施設と看護師候補者との間に雇用契約が締結され、雇用であるとされています。
三年前の2008年8月に来日したインドネシア看護師候補者104名は、2011年8月に3年の期限を迎えましたが、これまで3回の国家試験(日本語による)に合格できた者は、わずか15名にすぎません。(これ以外に、フィリピン看護士候補者の合格者数は、これまで2名) EPAを締結したにもかかわらず、大量の帰国者が出ることを恐れた日本政府は、外交上の配慮から当初の滞在期間3年間を、国家試験の点数が300点満点中102点以上の者は、もう一年延長できる特別措置を決めました。しかし、該当する68名のうち滞在延長できたのは27名にすぎず、本人の都合や病院等の施設の雇止めにより、41名は帰国しました。
来日した看護師候補者のうち一部しか合格できない最大の要因は、看護師国家試験が日本語で書かれていることにあります。2010年夏に厚生労働省が設置した有識者による検討会(看護師国家試験における用語に関する有識者検討チーム)により「試験問題の主語をはっきりさせる」「専門用語に英語表記を加える」など一部の手直しが、2011年2月の試験問題から施されるようになりました、しかし、日本人受験者と同じ日本語の試験問題を課している限り、多くの合格者が生まれることを望めそうにありません。来日している看護師候補者は、インドネシアで看護師の国家試験に合格し、看護師として実務経験を持っている人々ばかりです。むしろ、看護師としての専門知識を問う問題は、試験問題を多言語化し、インドネシア語でも受験できるようにする、その上で、日本で看護師として働いていくうえで必要と思えるレベルの日本語の会話や、読み書き能力を別個試験する方式に変えるなど抜本的な改革が必要です。
現状のままである限り、外国人看護師候補者は、外国人技能実習生と同様な、2年半の期限付きの日本の病院等の施設の看護助手としての労働力として使かわれていくものでしかありません。
注) 現行の日本語による試験制度の下で、合格者数を増大させる方法
現行の日本語(日本語長文読解を含む)による看護師資格試験を外国人看護師候補者に課している限り、合格者数の増大は望めないと思われますが、現行試験制度のままで、合格者数を増大させるには、以下のような方法がありえます。
現在の半年間の日本語学習などの非実務研修とは別に、毎年2月の国家資格試験前に半年間ほど、看護学の専門家ではなく、受験指導の専門家である予備校講師や学習塾講師を招いて看護師国家資格試験のための受験対策の勉強を徹底させる。そうすれば、日本人の大学受験者が、英語のコミュニケーション能力(話したり、聴いたりする)はなくとも、受験英語に関しては合格点となるように正解を導くことができるように、日本語を話したり、聞き取る能力はなくとも、日本語の看護師国家資格試験に合格できるようになる者が増大させることができると思われる。
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