最近14年間(1989年―2002年)の外国人犯罪刑法犯検挙人員と新聞社などの外国人犯罪報道件数の比較
「外国人犯罪」と「外国人犯罪報道」の関係を示す基礎資料として
中島真一郎
2004年1月25日
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1994
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A8245
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7692
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9606
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10807
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12182
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11906
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11234
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B96
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111
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234
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364
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414
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536
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638
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C1.2
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1.4
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2.4
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3.4
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3.4
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4.5
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5.7
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@1996
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1997
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1998
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1999
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2000
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2001
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2002
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A10741
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10385
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10248
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10696
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10963
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11893
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13077
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B388
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925
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693
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1274
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1406
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1845
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2133
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C3.6
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8.9
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6.8
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11.9
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12.8
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15.5
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16.3
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上から順に、@ 年、 A 外国人刑法犯検挙人員、 B 日経テレコム21「外国人犯罪」検索結果該当件数 C 報道率(B÷A)
注1) ここでいう刑法犯とは、交通業務上過失を除く一般刑法犯のことです。
表1のA外国人刑法犯検挙人員と B 検索結果の記事件数 を比較すると、1989年から2002年の14年間に、外国人刑法犯検挙人員は、1.6倍しか増えていないのに、外国人犯罪報道は、22.2倍以上に増えています。たとえば、1994年と2001年を比較すると、外国人刑法犯検挙人員が、1994年は11906人で、その年の外国人犯罪の記事件数は536件でしたが、2001年 は11893人で、その年の外国人犯罪の記事件数1845件と、外国人刑法犯検挙人員はマイナス13人と減少しているのに、検索結果の記事件数は536件に対して、1845件と3.4倍以上に増加しています。また、Cの報道率をくらべても、1989年の1.2%から2002年16.3%へ13.6倍となっています。
以上から、外国人犯罪報道は、客観的な外国人犯罪(「外国人刑法犯検挙人員」)の増加に対応して、報道件数が増加しているのではなく、マスコミ(新聞メデイア)が意図的に「外国人犯罪」記事を掲載していること、とりわけ1999年以降に急増して取り上げていることがわかります。
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1990
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1992
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1993
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1994
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1995
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A8245
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7692
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9606
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10807
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12182
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11906
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11234
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B312992
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293264
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296158
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284908
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297725
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307965
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293252
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C2.6
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2.6
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3.2
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3.8
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4.1
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3.9
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3.8
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@1996
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1997
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1998
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1999
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2000
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2001
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2002
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A10741
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10385
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10248
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10696
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10963
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11893
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13077
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B295584
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313573
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324263
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315355
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309649
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325292
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347880
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C3.6
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3.3
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3.2
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3.4
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3.5
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3.7
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3.8
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上から@年、A外国人刑法犯検挙人員 、B日本全体の刑法犯検挙人員、 C構成比(%) (A÷B))
注) 2002年刑法犯検挙人員は、2003年版『警察白書』では347558人となっていますが、2003年版『犯罪白書』では347880人となっており、『犯罪白書』の数値を使いました。
表2、最近14年間(1989年―2002年)「外国人」刑法犯検挙人員と日本全体の刑法犯検挙人員の構成比の推移をみると、最初の5年間は1989年の2%台から1993年4%台へ上昇しますが、その後の5年間は3%台に低下し、1994年3.9%から1998年3.2%まで減少を続けます。そして、最近4年間は上昇傾向にあり1999年3.4%から2002年3.8%まで上昇します。それでも10年前の1993年の最大値4.1%以下であり、この10年間、日本の刑法犯検挙人員にしめる外国人刑法犯検挙人員の構成比は増えていないことがわかります。外国人人口は、1993年とくらべても1.4倍以上に増加していると推定できますので、その増加を考慮すると相対的にこの10年間減少していることがわかります。
注) 外国人人口
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1992
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A96
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111
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234
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364
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414
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536
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638
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B11330
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12210
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15362
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17655
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16176
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16654
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22348
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C0.9
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0.9
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1.5
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2.1
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2.6
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3.2
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2.9
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@1996
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1997
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1998
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1999
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2000
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2001
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2002
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2003
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A388
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925
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693
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1274
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1406
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1845
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2133
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2344
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B28723
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35608
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32181
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32974
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46570
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45436
|
43968
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58136
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C1.4
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2.6
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2.2
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3.9
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3.0
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4.1
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4.9
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4.0
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上から、@年、A日経テレコン21「外国人犯罪」記事検索件数 B日経テレコン21「犯罪」記事検索件数、 C 構成比(%)(A÷B)
注) 2003年の数値は、2003年から涛経テレコン21の検索対象に「日中グローバル経済通信」という海外情報が加わっているので、他の年との整合性を持たせるため、これを除いた数値としています。
表3の最近15年間(1989年から2003年)の「外国人犯罪」報道記事の件数と「犯罪」報道記事の件数の構成比の推移から、1989年から1998年までは、1994年3.2%を除いて3%以下で推移していたのに、1999年より3%台へ、2001年と2003年には4%台へと上昇していることがわかります。1999年より「外国人犯罪」報道件数が1000件を超え、2000年から「犯罪」報道件数が4万件をこえるなど、「犯罪」報道件数も増加していますが、2001年と2002年は「外国人犯罪」報道件数の増加が上回っています。このことは、最近数年間、新聞メディアで「犯罪」報道件数が急増しており、そのなかでも「外国人犯罪」報道件数の比率が増加していることを示しています。
表4 表2と表3の構成比の比較(表2 「外国人」刑法犯検挙人員と日本全体の刑法犯検挙人員の構成比と、表3「外国人犯罪」報道記事の件数と「犯罪」報道記事の件数の構成比の比較)
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2.6
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3.2
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3.8
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4.1
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3.9
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3.8
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B0.9
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0.9
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2.1
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2.6
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3.2
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A3.6
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3.2
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3.4
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3.5
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3.7
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3.8
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B1.4
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2.6
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2.2
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3.9
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上から順に、@年、A 日本全体の刑法犯検挙人員に占める外国人刑法犯検挙人員の構成比、 B 日経テレコン21で検索した「犯罪」に占める「外国人犯罪」の検索件数
表4 (表2 「外国人」刑法犯検挙人員と日本全体の刑法犯検挙人員の構成比と、表3「外国人犯罪」報道記事の件数と「犯罪」報道記事の件数の構成比の比較)から、最近14年間では、1999年、2001年、2002年の3年間の「犯罪」報道件数に対する「外国人犯罪」報道件数の比率が、全国の刑法犯検挙人員に対する「外国人」刑法犯検挙人員の構成比を上回っていることがわかります。このことは、ここ数年、特に2001年と2002年の最近2年間の「外国人犯罪」報道が、「外国人犯罪」の実態以上に報道されていることを示しています。
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