犯罪報道について(2)
刑法犯11%減 210万件
松本 妙子
2005年12月23日
今日12月23日の西日本新聞に「刑法犯11%減」という記事が載っていました。それによると、今年1月から11月に全国の警察が認知した刑法犯は、昨年同期より、26万件少ない計210万3648件で通年でも昨年の256万を下回り、三年連続で減少する見込みだということです。これに対し警察庁は「数字の上では治安は回復しているが(安全、安心を実感できる)体感治安はまだまだ厳しい情勢」としているそうです。????体感治安???
殺人、強盗などの「重要犯罪」はすべての罪種で減り、路上での恐喝、路上強盗、ひったくり、自動車盗は大幅減、住宅への侵入強盗も減り、13歳未満の子供の被害、殺人の犠牲になった小学生以下の子供の数、すべて減っているということなのに、何をもって体感治安はまだまだ厳しいなどと、いうのでしょうか。治安がよくなったとは絶対言いたくない?それにしても体感治安なんておもしろい言葉を作りだすものです。こうやって、人々の不安を煽るのですね。
警察庁の「体感治安」という造語を見て、同新聞の12月21日「時評社会」に載った日垣隆氏による興味深い記事を思い出しましたので、紹介します。記事のタイトルは「『不安扇動社会』ニッポン」です。
子供を危険から守る対策として通学路の安全確保のための学生ボランティアやスクールバスでの送迎などが提案されていることに対して日垣氏は「では、学生ボランティアから凶悪な性犯罪者が出た場合、次はどうするのだろう」「スクールバス運転手による幼女殺害事件もおきている」と言い、どんな対策をとろうとも、「少数ながら悪いやつはどこにでも一定数いる」「相対的に危険な場所は永遠になくならない」と述べています。そして、「0.00001%の凶悪犯罪者のために、なぜ99.99999のまともな大人がかわいい子供たちから少年時代にはなくてはならない道草や、子どもたちだけの時間と空間とルールづくりを取り上げなければならないのか?百歩譲ってそれで凶悪犯罪がなくなるなら妥協もしよう。だが、国ごとに毎年ほぼ同じ数だけの殺人事件や性犯罪が起きてしまう事実に向き合うほかない」と言い、非常に低い確率の凶悪犯罪に感情的な対応をする最近の傾向を「日本列島が集団ヒステリーに覆われつつある」と指摘しています。
警察庁の「体感治安はまだ厳しい」というコメントはこのような集団ヒステリー状態を助長するものでこそあれ、社会をまともな方向に導くものとは言えないでしょう。まともな社会とはいたずらに不安に怯えて、魔女狩りをしたりすることのない社会です。このとき魔女として狩られるのは決まって社会的に弱い立場の人々なのですから。
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