中島真一郎
2003年2月18日
2003年2月15日 の朝日新聞紙上で、根元武府中刑務所所長は、刑務所の「過剰収容」状態を表すのに、なんらの説明も加えず「府中刑務所も定員を400人上回る約3千人を収容し、うち500人強が外国人という状況である。」と述べ、外国人犯罪者が極めて東京では多いかのような印象を与えている。かって石原都知事が、2000年9月3日のフジテレビでの番組に出演し、「府中刑務所収容の2千人のうち400人は外国人」と語った発言と同様に、外国人受刑者への偏見・差別とともに、外国人のみを危険視するという悪質な扇動となっています。
2002年版犯罪白書によると、2001年12月31日現在、日本の行刑施設における受刑者数は、53284人で、このうちF級といわれる「日本人と異なる処遇を必要とする」外国人は2176人(構成比 4.1%)にすぎず、日本全体の受刑者の4%を占めているに過ぎません。日本人の受刑者(日本人と異なる処遇を必要としない外国人受刑者も含む)が、全国の行刑施設(1999年4月1日現在)、本所74(刑務所59、少年刑務所8、拘置所7)、支所116(刑務所6、拘置所110)に分散収容されているのに対して、F級外国人受刑者のうち、男子は府中・横浜・横須賀・黒羽・大阪・神戸・名古屋・広島・福岡・札幌の各刑務所に、女子は栃木・和歌山刑務所に集中的に収容されています。
このようにF級受刑者が収容可能な設備は、全国で12ヶ所(男子10ヶ所、女子2ヶ所の刑務所)しかなく、そのうち外国語による面会や信書の発受等に際しての通訳・翻訳業務を円滑にするため国際対策室が1995年に設けられた府中刑務所と1997年に設けられた大阪刑務所が中心的な位置を占め、特に府中刑務所には、東日本の外国人受刑者が集中的に収容されています。
朝日新聞社も、同紙面で述べているように外国人への偏見と差別をもたらさない報道を心がけるのであれば、このような実状をしり、執筆者へ注意するか、少なくとも補足説明として掲載するのが、言行一致の在り方だと思います。今後、外国人の定住化の進展により日本で暮らす外国人は増大し、それに伴い日本国内で被疑者や受刑者となる外国人が増大していきます。これ自体は、国際化の進展の必然的結果として冷静に受け止めていけばよいことです。むしろ、今後とも増大するであろう言葉も習慣や宗教も異なる外国人受刑者が日本人受刑者と同じような保護と処遇を受けられるような行刑施設や運用の態勢を整えていくことが求められています。
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