コムスタカ―外国人と共に生きる会

「外国人犯罪」問題


「2004年犯罪情勢――警察庁とマス・メデイアの「外国人犯罪増加論」への批判
中島真一郎
2005年5月15日

1、2004年の犯罪情勢―刑法犯認知件数の減少と、検挙件数と検挙人員の増加の意味

 

警察庁は2005年2月に2004年の犯罪統計データを公表しました。

2004年犯罪情勢について、「2年連続の認知件数の減少と検挙件数と検挙率の増加により、『治安悪化』に歯止めがかかり、警察の犯罪抑止策が増加に歯止めをかけた」というのがマス・メデイアの多くの報道内容です。

2003年と2004を比較する前提として、警察が認知件数の受理基準を変更していないと仮定して、以下その内容を検証してみました。刑法犯の認知件数の減少は、失業率の低下など雇用環境の改善や景気回復傾向など経済環境の改善により、窃盗犯25.4万件減少、その中でも特に非侵入窃盗14.5万件減少(車上狙い8.6万件減少、自販機狙い3.5万件減少)したことが大きな要因となっています。

(注、1990年代の刑法犯認知件数の増加、とりわけ1999年(認知件数2165626件)以降から2002年(認知件数285379件)までの刑法犯認知件数の急増は、不況による窃盗犯などの増加も影響しているとおもわれますが、警察の犯罪相談の全件受理への方針変更による影響がもっとも大きいと考えられます。)

(1)刑法犯の認知件数の減少について

ア 2004年の認知件数は、前年同期に比べて、227369件(減少率 8.1%)減少しました。

イ 犯罪の種別に認知件数の減少具合を見ると、凶悪犯594件減(減少率 4.3%)、風俗犯688件減(減少率 5.3%)、粗暴犯2143件減(減少率 2.7%)と微減で、これらの減少は、刑法犯認知件数の減少にはほとんど影響していません。

ウ 認知件数22.7369件の減少をもたらしたのは、窃盗犯認知件数の254270件減少だといえます。窃盗犯では、内訳を見ても、非侵入窃盗145563件減、乗り物窃盗66069件減、侵入窃盗42638件減と、すべて減少しています。

エ 認知件数で減少した窃盗犯手口別上位10をみると、1 車上狙い 85898件減、2 自動販売機狙い34913件減、3 自転車盗 32321件減、4 オートバイ盗 28262件減、 5  空き巣 13649件減、6 出店荒し 8787件減、 7 部品狙い 8565件減、 8 事務所荒し 7175件減、 9 ひったくり 6955件減、10 すり 6140件減  となっています。

一方、前年より認知件数が増加している罪種は、 1 詐欺 22717件増、 2 万引き 11712件増、3 占有離脱物横領 11706件増、などです。

(2)、刑法犯検挙件数と刑法犯検挙人員の増加について

ア、刑法犯検挙件数は、前年より19301件(増加率 3.0%)増加しました。
罪種別では、1 占有離脱物横領 8258件増、2 万引き 7540件増、3自転車盗 3339件増4 車上狙い 2692件増、 5 部品狙い 2153件増、 、などです。一方、検挙件数が減少している罪種は、1 侵入盗5104件減、2詐欺3747件減、などです。

イ、刑法犯検挙人員は、前年同期より9425人増加しました。
罪種別で増加しているのは、1、万引き 6991人増、2、占有離脱物横領 6725人増、3、 詐欺 1044人増などです。一方、検挙人員が減少している罪種は、1、オートバイ窃盗 2010人減、2、傷害 1930人減、3、恐喝 1468人減、 4、自動車窃盗-776人減、5、侵入盗 660人減、6、強盗  544人減です。

(3)、2004年 全国9管区警察別、及び上位5都道府県別の認知件数・検挙件数・検挙人員の増減(2003年比) 

ア、全国9管区警察別認知件数は、全国9管区すべてで減少しています。近畿管区が5.8万 件減(大阪府約3万件減、兵庫県約1.8万件減)と最も減少が大きく、次いで九州管区(福岡約 2.6万件減)、関東管区、(千葉県約1.7万件減)、中部管区(愛知県約1.8万件減)が約3万件 以上の減少となっています。

イ、 全国9管区警察別検挙件数は、関東管区が約1.9万件増(埼玉県6625件増、神奈川県6439件増、群馬県4013件増)と最も増加が大きく、九州管区(福岡県3031件増)、北海道管区(3304件増)、東京(3257件増)は増加していますが、他の5つの警察管区では減少しています。

ウ、 全国9管区警察別の検挙人員は、関東管区の増加が最も大きく(埼玉県2802人増 神奈川県 2241人増)、次いで東京都(3232人増)、北海道(1899人増)、中部管区(愛知県1714人増)の順で増加しています。近畿管区、中国管区、九州管区、東北管区の4つの管区では、減少しています。

表1 全国9管区警察別認知件数・検挙件数・検挙人員の増減(2003年比) 

表2 2004年上位5都道府県別の認知件数・検挙件数・検挙人員の増減(2003年比) 

(4) まとめ

認知件数約22万7千件減少という変化は、窃盗犯の認知件数25万4千件の減少によるものですが、これは失業率の改善など雇用情勢の回復という社会的要因によると思われます。

認知件数のうち増加している罪種は、「詐欺」「占有離脱物横領」と「万引き」です。このうち「詐欺」は「振り込め」詐欺などの増加によるものと思われますが、「万引き」と「占有離脱物横領」の増加は、「街頭犯罪」取り締まり強化などの警察の取り締まり強化によるものであり、犯罪自体の増加を意味しているわけではありません。

刑法犯検挙件数及び刑法犯検挙人員の増加は、「占有離脱物横領」(放置自転車の無断使用がその大半を占める)、「万引き」等の増加によってもたらされており、これらの罪種は、検挙された件数、人員が同時に認知件数として数えられる場合が多く、また「暗数」(被害届けのだされない犯罪)も多く、警察の取り締まり活動強化の結果増大したことを表すものに過ぎません。

一方、警察が重要事件としている「強盗」や「侵入盗」の検挙人員は減少しており、また、最近認知件数の増加が著しい知能犯の検挙人員も、「知能犯」認知件数の増加に追いついていません。

2、2004年「来日外国人」増加論への批判

(1)刑法犯と特別法犯を合算して総検挙件数、総検挙人員で統計数値を公表することの誤り。

特別法犯は認知件数が不明な犯罪で、統計上は、検察庁への送致件数と送致人員として公表されています。「来日外国人」特別法犯検挙件数や検挙人員として公表されている数字は、実は、検察庁への送致件数と送致人員のことであり、刑法犯の検挙件数と検挙人員とは異なる概念です。 

警察庁も、日本全体の刑法検挙件数と特別法犯送致件数を合算して総検挙件数や、刑法犯検挙人員と特別法犯送致人員を合算して、総検挙人員として統計上公表することはしていません。ところが、「来日外国人」の犯罪統計では、この別々の概念で合算できないものを総検挙件数、総検挙人員として公表しています。

(2)「来日外国人」特別法犯送致件数、送致人員増加の意味

2004年「来日外国人」特別法犯検挙件数は、前年同期より1684件、検挙人員は1662人増加しました。そのうち、入管難民認定法違反者の検挙件数は1966件、検挙人員1858人増加しており、「来日外国人」特別法犯検挙件数の増加や検挙人員の増加は、入管難民認定法違反者の検挙件数と検挙人員の増加によるものです。 

それを除く「来日外国人」特別法犯検挙件数は282件減少、「来日外国人」特別法犯検挙人員は、196人減少しています。

入管難民法違反の検挙件数と検挙人員の増加は、警察の取り締まり強化の結果であり、その違反者の増加を意味しているわけではありません。都道府県別の警察による来日外国人特別法犯の摘発件数の増加数は、東京都1091件、埼玉県769件、愛知県165件、摘発人員の増加数は、東京972人、埼玉県667人、愛知県129人であり、警視庁や埼玉県警や愛知県警の摘発強化によるものです。

(3)「来日外国人」刑法犯検挙件数増加、刑法犯検挙人員の増加の意味

2004年「来日外国人」刑法犯検挙件数は、前年同期より4829件増加(17.7%増加)、刑法犯検挙人員は173人増加(2.0%増加)しました。2004年の前年と比べた日本全体の刑法犯検挙件数の増加率は3.0%、検挙人員の増加率は2.5%です。

「来日外国人」刑法犯検挙人員の増加率2.0%は、日本全体の増加率2.5%より0.5%低くなっています。一方、「来日外国人」刑法犯検挙人件数の増加率17.7%は、日本全体の増加率3.0%より14.7%高くなっています、これは、「来日外国人」窃盗犯には、その余罪が多くカウントされることによるものです。

2004年「来日外国人」刑法犯検挙件数の前年より4829件増加の罪種別内訳は、「自動販売機狙い」1981件増、「車上狙い」1785件増、「万引き」403件増、「自動車盗」357件増などです。

一方、検挙人員を見ると、前年より「自動車窃盗」は43人減、「自販機ねらい」は32人減少していますので、これらの罪種の検挙件数の増加は、余罪を多くカウントしたことによるものです。とりわけ刑法犯検挙件数の増加の41%を占める「自販機狙い」の増加は、特定の外国人グループの余罪を何千件とカウントしていることによるものです。

刑法犯検挙人員173人増加の罪種別内訳は、「万引き」201人増「車上狙い」79人増、「知能犯」66人増、「風俗犯」46人増加などです。これら「万引き」や「車上狙い」や「風俗犯」の刑法犯検挙人員の増加は、警察の取り締まり強化によるものです。

(4) まとめ、

ア、「来日外国人」刑法犯検挙人員の増加率(173人増加 2.0%増)は、日本全体の刑法犯検挙人員増加率(2.5%)より低くなっている。増加している罪種も、「万引き」(201人増)と「車上狙い」(79人増)によるものが大半を占めているので、警察の取り取り締まり強化の結果を表しているに過ぎません。

イ、「来日外国人」刑法犯検挙件数の増加率(17.7%増)は、日本全体の増加率(3.0%増)より高くなっていいます。

「来日外国人」刑法犯検挙人件数の増加の約4割を占める「自動販売機ねらい」(1981件増)の増加は、特定の外国人グループの余罪を何千件とカウントしたためであり、「車上ねらい」「自動車窃盗」も検挙人員は減少しているので、余罪のカウントの増加によるものです。また、「万引き」の刑法犯検挙件数の増加は、警察の「街頭犯罪」等の取り締まり強化によるものです。

したがって、「来日外国人」の刑法犯検挙件数の増加は、「来日外国人」刑法犯の増加を意味しているわけではありません。

ウ、「来日外国人」刑法犯のうち凶悪犯検挙件数 9件(+2.7%)と微増ですが、「凶悪犯」検挙人員は、56人減(11.7%減)と減少しており、また粗暴犯は、検挙件数41件減(7.2%減)、一方、検挙人員は、42人減(6.6%減)、侵入盗は、検挙件数87件減(1.0%減少)、検挙人員 141人減(20.0%減)となっています。

エ 以上から、警察の刑法犯検挙件数と検挙人員を指標とする「来日外国人」犯罪統計を前提としても、警察がここ数年取締りを強化している街頭犯罪の取り締まり強化や窃盗犯の余罪追及の強化による影響を除いて考慮すると、2004年の「来日外国人」刑法犯の増加は日本全体より低く、「来日外国人」による凶悪犯、粗暴犯、侵入窃盗は、減少しています。


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