ねずみ講やネットワークサービス勧誘への注意
2016年10月22日 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
2015年春ごろから、 熊本県内のフィリピン人コミュニテイの間で、「金の投資 のため8万5000円をわたしてくれると、そのお金は必ず戻り、損することはない。さらに8万5000円を投資してくれる会員2名を紹介してくれると5倍の42万5000円になって、3カ月以内に還ってくる」等と勧誘され、お金を渡し、次々と会員の拡大をはかっていく、うごきがひろがっていました。2015年夏にはそのためのセミナーが開かれ、会員のSNSでは、「1万円札の現金を広げて、こんなにお金を得られた」と宣伝する写真等が掲載されていました。なかには、会員の拡大のため友人の名前を借りてその資金を立て替え、あるいは借金をして賄う人も出てきました。しかし、昨年秋や2016年に入り、得られたお金も、一時的な見せ金で、次の会員拡大のための投資を勧められ戻ってこず、そして支払ったお金すら返してもらない人が次々に出てきています。そして、その手口は、契約書も説明書もなく、お金の受け渡しの証拠となる領収書もなく、証拠となる文書を残さない、あるいは被害を訴えたくとも家族に内緒で投資していたため、その事実を公にできない、被害者でもあるが勧誘して加害者でもあるという弱みに付け込むものです。
これら行為は、金の投資目的より会員の特定利益を目的に会員に出資をさせる連鎖取引であり、日本の法律で禁止されている「ねずみ講防止法(無限連鎖講防止法)」や、マルチ商法やネットワークビジネス等連鎖販売取引を厳しく制限している「特定商取引法」に違反し、あるいは刑法の詐欺行為に該当すると思われます。
A. 勧誘に会ったら
- 「絶対に損をせず、支払ったお金の3倍―5倍になって還ってくる」といううまい話を信用しない。また人にも勧誘しない。勧誘している人がいたら、やめるように伝える。
- 説明書や契約書など書面を要求し、渡されない場合には、おかねをわたさない。
- お金をわたすときは、領収書を必ずもらう。
- やり取りを録音、メモ、撮影して記録を残す
B. お金を渡して、戻ってこない等、被害にあって、泣きねいりしたくないひと
- 事実関係を整理し、できるだけ証拠を集めておく。
- 消費生活センターなど行政機関へ相談する。
- 警察へ被害届を出す
- 弁護士等へ相談して、相手方にお金の返還を請求、あるいは裁判所へ訴える
参考
A.ねずみ講(無限連鎖取引)の定義
金品の受け渡しのみが目的で、会員の拡大による配当がなされ、先順位者は、提供したお金品以上の金品を会順位者の提供した金品から得る配当組織のこと、上位会員は利益を受けるが、下位会員は会員拡大が難しくなり、損害を被る
⇒ねずみ講防止法で禁止されている。
ねずみ講防止法の罰則
第5条 無限連鎖講を開設し、又は運営した場合は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金 又はこれを併科
第6条 業(一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に行うこと)として無限連鎖講に加入することを勧誘した場合は1年以下の懲役または30万円以下の罰金 又はこれを併科する。
第7条 無限連鎖講に加入することを勧誘した場合は20万円以下の罰金(1回勧誘しても違反が成立する)
B. 連鎖販売取引・マルチ商法・ネットワークビジネス
マルチ商法・ネットワークビジネス(連鎖販売取引)
⇒商品、製品又は役務の流通の成果に応じて報酬を支払うという点が、ねずみ講と異なるが、会員の拡大による配当がなされる点は共通、上位会員は利益を受けるが、下位会員は会員拡大が難しくなり、損害を被る)特定商取引法で厳しく制限されている
特定商取引法における連鎖販売取引の定義
1.物品の販売(または役務の提供など)の事業において、2.再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を3、特定利益が得られると誘引し、4、特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの
特定商取引法における連鎖販売取引における制限
- 業者などの氏名公表しなければならない。
- 嘘や脅しの契約締結の禁止されている。
- 広告の表示内容の義務付けられている、
- 誇大広告が禁止されている。
- 事前に概要・契約書面の交付が義務づけられている
- クーリングオフ・中途解約・返品が認められている
特定商取引法に違反している場合の処分及び刑事罰の適用
マルチ商法は、特定商取引法に適応している場合には違法ではないが、違反しているばあいには違法となる。行政からの業務改善命令・業務停止命令、それらに従わないときは、刑事罰の適用がある。違反の疑いがある時は消費生活相談センターや消費者庁へ相談・通報することができる。
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