韓国の多文化家族支援法のご紹介


2009年10月24日 中島  眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

 

コムスタカー外国人と共に生きる会は、韓国の忠清南道の知事及び忠清南道女性政策開発院長からの

要請による「 韓国・台湾・日本の多文化家族の生活に関連した意識調査」に現在取り組んでいます。

韓国の忠清南道などの広域自治体で、このような調査が積極的に取り組まれている背景に、

2008年3月に制定された韓国の『多文化家族支援法』の存在があります。

 

この法律の第4条1項で、「保健福祉課族部長官は、多文化家族支援のための政策策定に活用するために、

3年毎に多文化家族の実態調査を実施し、その結果を公表しなければならない」と明記しています。

広域自治体の多文化家族の実態調査も、この法律の制定の影響を受けて行われています。

 

2003年(4年間の移行期間あり)産業研修制度を廃止し、2007年より雇用許可制に転換した外国人労働者の

雇用政策とともに、2007年在韓外国人権基本法ともいえる在韓外国人処遇基本法を制定し、2008年には、

韓国人との結婚移民の家族を対象とする「多文化家族支援法」を制定しました。

韓国の外国人政策やその立法化について、「非正規滞在の移住労働者を除き、正規の滞在者のみを対象としている。」

「韓国人との婚姻者のみを対象とし、外国籍同士の婚姻者を対象としていない」「韓国の家父長主義的な文化の下で

社会統合を進めようとしている」等の様々な批判や問題を抱えながらも、それでも、在住外国人を対象とした人権を

保護する法律も条例もなく、外国人の規制と管理しか行われていない日本と比べるとはるかにすんでいます。

日本の今後の外国人政策を検討し、新たな政策や制度を提案していくうえでたいへん参考になると思われますので、

紹介しておきます。

  

韓国 多文化家族支援法のご紹介

 韓国では既に、 2007年5月に在韓外国人処遇基本法が制定され、それとともに広域自治体(日本の都道府県に相当)では

居住外国人保護条例が制定・施行されています。そして、2008年3月に、「多文化家族支援法」が制定されました。この法律は、

ノムヒョン政権末期に可決(2008年2月19日)されたが、イミョンバク政権発足後に公布(2008年3月21日)されました。

同法は、韓国人と外国人による国際結婚により構成された「多文化家族」に焦点をあて、その構成員が安定的な家族生活を営むことが

できるようにして、その生活の質の向上と社会統合に貢献することを目的としています。この法律は、韓国籍以外の外国籍の結婚家族を

対象としておらず、あくまで将来的に韓国籍を取得する者、韓国籍の子どもを出産して養育していく家族に対して支援が行われます。

 

この法律は、以下の第1条から第16条まであります。

「第1条 目的、

第2条  定義

第3条 国及び地方自治体の責務、

第4条 実態調査等、

第5条 多文化家族に関する理解の促進 

第6条 生活情報提供及び教育支援

第7条 平等な家族関係の維持のための措置 

第8条 家庭暴力被害者に対する保護及び支援、

第9条 産前及び産後の健康管理支援  

第10条 児童の保育及び教育

第11条 多言語によるサービス提供  

第12条 多文化家族支援センターの指定等

第13条 多文化家族支援業務に関連する公務員の教育 

第14条 事実婚の配偶者及び子の処遇  

第15条  権限の委任と委託  

16条 民間団体等の支援

からなっています。

参考文献  

季刊 『外国の立法238(2008、12)』(国立国会図書館調査及び立法考査局発行)

に掲載されている「韓国 多文化家族支援法 ――外国人社会統合政策の一環として」

(白井  京)が制定の経緯や背景、そして法律の日本語訳を掲載しています。

http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/238/023807.pdf#search='

'

     この論文のなかで、コムスタカのホームページで掲載している

[韓国の忠清南道天安市で開催された『多文化社会の到来と地域社会の対応』をテーマとする国際セミナー報告」

私の報告から、忠清南道の副知事の発言が引用紹介されています。