台湾と韓国における多文化共生政策
2011年4月1日
中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
2010年の昨年は、日本が韓国を併合し、植民地支配した1910年から100年目であり、
また、2011年の今年は、中国で辛亥革命により中華民国が誕生した1911年から100年目となります。
かつて、大日本帝国の植民地とされていた韓国と台湾ですが、現在では、移住してくる外国人を対象とした
積極的な保護と平等化をめざす日本より進んだ外国人政策を政府や自治体が展開しています。
(日本の外国人政策は、外国人を対象とした「管理と排除」という規制しかなく、外国人の保護や平等を保障する政策も、
「国籍条項を設けず同じに扱っている」というものでしかないことです。)
韓国の多文化共生政策については、すでに紹介され、御存じの方も多いと思われますが、
台湾の多文化共生政策についてはあまり知られていないと思われます。
台湾と韓国の多文化共生政策を概略のみ紹介しておきます。
台湾における多文化共生政策
(2011年2月26日 同志社大学 寒梅館 で開かれた 国際結婚研究会 での
新移民家庭成長センター 朱莉英主任による 「新移民への服務内容と活動に関する報告」より、)
日本の総務省に当たる台湾内政部は、2007年1月2日から移民省を設置し、出入国管理局を、
出入国管理及び移民局に名称を変更し、台湾への新移民への行政サービスの提供を行うようになりました。
一、 移民への行政情報の提供を独立して設けられた窓口におけるサービスとする。
台湾に25ある自治体(県・市)においてサービスステーションを設置し、初めて入国した外国籍配偶者および
中国からの配偶者に対して、居住や在留に関する情報や移住に伴う指導に関する情報の提供と必要な窓口の紹介を行う。
二、新移民の生活適応に関する指導の促進
各地方行政は。新移民に対して生活適応に対する指導や多元的文化生活の広報の促進をサポートする
三、 新移民にする情報ルートの円滑化
外国籍配偶者のための専用電話窓口の設け、中国語、インドネシア語、タイ語、英語、ベトナム語、
カンボジア語の六カ国語に対応した、生活適応や教育文化、就業サービス、医療衛生、安全保護、子女教育、
在留や定住における法令などに関して無料の情報サービスを行う
四、外国籍配偶者のケアと指導を目的とした基金、種々のケアと指導に関する業務の推進
台湾中央政府や直轄県市政府及び財団法人、市民団体などによるNPOから支援を受け、
「医療補助。福祉救助及び法務サービスの計画」
「外国人配偶者の学習過程・広報・子女の託児及び多元文化化の推進計画」「家庭サービスセンター及び
組織化の計画」、「指導・サービス、又は、
人材育成及びコミュニテイーサービスの活性化計画」を執り行う。
韓国の多文化共生へ向けた外国人政策
1990年代まで、管理と排除を中心とする日本の出入国管理政策の後おいをしていた韓国が、2000年代に入ると、
「外国人に開かれた政策」への劇的な転換をおこなっていきます。
2004年に、日本の研修生制度をまねて導入した産業研修生制度を廃止、雇用許可制度を導入しました。
(3年かの経過措置を経て2007年から完全移行)2005年には永住外国人へ地方選挙権を付与しました。
2007年 外国人人権基本法といえる在韓外国人処遇基本法 が施行、韓国内に16ある広域行政自治体で、
外国人処遇保護条例が制定施行されました。
2008年 急増する国際結婚移住者の保護を目的とする多文化家族支援法が制定されました。
2010年 国籍法が一部改正され、一定条件付で成人に多重国籍が認められるようになりました。
むろん韓国の外国人政策にも、非正規滞在の外国人労働者への徹底した取り締まり強化や人権侵害、
「儒教の家父長思想」をベースとした「将来の韓国民となる子の母親となる結婚移民への保護」という
価値観など様々な問題を抱えていますが、外国人移住者や労働者を韓国に必要な存在と認めて、
外国人を対象として国や自治体が法律や条例を制定して政策や施策を進めていくあり方は、日本も学ぶべきと思います。