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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

2024年コムスタカ活動報告Activity report 2024

 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会代表)

はじめに

 2024年の相談件数は、293件。2020年の404件をピーク(最大)に、2021年360件、2022年342件と減少し、2023年385件と増加し、2024年は、293件と92件減少しました。 2020年から2022年の新型コロナ感染渦における相談件数が300件を超えるようになりました。 2023年は5月からのコロナによる規制の緩和による来日する外国人の急増等が影響したと思われますが、2024年は従来の300件未満の相談件数に落ち着いてきました。

 2024年の相談の特長として、性別では、外国籍女性の比率は71%で、その比率が年々低下し、男性の比率が以前の10%程度からここ数年増加し、2024年は28%と増加してきました。 また、年齢別では、2019年まで40代〜50代が最も多かったのが、2020年以降から、20代の相談が最も多くなり2024年も142件と最大で、30歳代40件や10歳代12件の相談も増えてきており、若い年齢層からの相談が増加する傾向にあります。

 国籍別では、昨年の19ヵ国から4ヶ国減少して15ヶ国でした。 フィリピン籍からの相談が122件(42%)とこれまで通り一番多いのですが、ベトナム籍が102件(35%)と増加し、それ以外は、日本籍(外国ルーツを含む)25件、中国籍16件、ネパール籍5件、ミャンマー籍4件、パキスタン籍4件、インドネシア籍2件、韓国籍2件、イラン籍、カンボジア籍、ブータン籍、ペルー籍、アメリカ籍、ナイジェリア籍各1件と不明5件と相談者の国籍が多様化しています。

 これまでコムスタカへの相談は、結婚移住したフィリピン女性からの相談が大半でしたが、彼女らの高齢化とベトナム籍など技能実習や特定技能の在留資格者など就労関係者の外国人労働者の増加にともない、ベトナム籍等からの相談が増加し、年齢別でも20代、30代からの若者の相談が増加しています。

1.相談活動

@ 性別
 2024年293件のうち208件(71%)が移住女性、81件(28%)が移住男性、それ以外1件、不明が3件を対象としたものでした。 2023年に比べて、移住女性からの相談が295件(77%)から208件(71%)と97件減少し、移住男性からの相談が85件(22%)から81件(28%)と9件増加しました。

性別

女性208
男性81
その他1
不明3


A 国籍別
 国籍別では、15カ国、フィリピン籍が122件(42%)と最も一番多く、次にベトナム102件(35%)で、日本籍(外国ルーツを含む)25件(9%)、中国籍16件(5%)の順となっています。 それ以外は、ネパール籍5件、パキスタン籍4件、ミャンマー籍4件、インドネシア籍2件、韓国籍2件、ペルー籍、イラン籍、ブータン籍、ナイジェリア籍、アメリカ籍、カンボジア籍各1件、不明5件でした。

国籍
フィリピン122
ベトナム102
日本(外国ルーツ含む)25
中国16
ネパール5
その他10ヵ国23

 2023年と比べて、フィリピン籍231件から122件へ109件減少し、逆に、ベトナム籍は92件から102件と10件増加、中国籍28件から16件と8件減少し、日本籍(外国ルーツを含む)からの相談8件から25件と17件増加しました。2023年の19カ国と比べ2024年は15カ国と4カ国減少しましたが、相談者の国籍が多様化しています。


B 年齢別
 2024年は、年齢別10歳代12件(4%)、20歳代142件(48%)30歳代40件(14%)、40歳代50件(17%)、50歳代18件(6%)、60歳代以上2件(1%)、不明29件(10%)となっています。

年齢
10代12
20代142
30代40
40代50
50代18
60代2
不明29

 2023年と比べて2024年は、10歳代36件から12件と24件減少、20歳代から103件から142件と39件増加、30歳代86件から40件と46件減少、40歳代37件から50件と13件増加、50歳代47件から18件と29件減少、60歳代以上49件から2件と47件減少、不明25件から29件と4件増加となっています。

 2023年と比べて相談件数が92件減少し、全般的に各世代とも減少しましたが、技能実習生や特定技能の在留資格者の相談が増えたことから、20歳代の若年層の相談が増加と、結婚移住者等の40歳代からの相談が増加しています。


C 相談経路別
 2024年の相談の経路別では、電話相談が118件(40%)、面談(オンラインを含む)122件(42%)、同行32件(11%)、訪問21件(7%)でした。

経路
電話118
面談(オンラインを含む)122
同行32
訪問21

 2023年と比べると、電話相談が210件から118件と92件減少し、面談(オンラインを含む)116件から122件と6件増加、同行43件から32件へ11件減少し、訪問14件から21件に7件増加しました。


D 地域別
 熊本県内が、172件(59%)と大半占めますが、熊本県外からも121件(41%)ありました。 熊本県外の内訳は、九州内65件(22%)、九州外36件(13%)、海外(フィリピン、ベトナム、中国)から9件(3%)、不明11件(4%)でした。

地域別
熊本県内172
九州内65
九州外36
海外9
不明11

 2023年と比べると、熊本県内261件から172件と89件減少、熊本県外が104件から121件と17件増加、九州内から25件か65件へ40件増加、九州外が52件から36件と16件減少、海外が27件から97件と18件減少、不明は18件から11件と7件減少しました。     


E 相談内容(主訴別)
 相談内容は、2024年は、@雇用関係54件、A妊娠・出産41件、Bビザ・在留資格・国籍38件、C訴訟関係38件、D夫婦関係18件、E医療・社会福祉17件、F相続14件、G生活困窮13件、H警察・入管関係13件、I社会保険関係8件、J子ども8件 L住居8件 MDV6件、その他17件でした。
雇用関係54
妊娠・出産41
ビザ・在留資格・国籍38
訴訟38
夫婦関係18
医療・福祉関係17
その他87

 2023年と比べると、妊娠・出産に関する相談が27件から41件に増加、技能実習生や特定技能から相談の主訴の大半を占める雇用や社会保険に関する相談が49件から62件と増加、ビザ・在留資格、・国籍に関する相談38件から38件、訴訟に関する相談39件から38件とほほ横ばい。 その一方で、子どもに関する相談62件から8件、福祉医療に関する相談38件から17件、夫婦関係に関する相談29件から18件と減少しました。


F 訴訟等の伴う相談
 2024年は、2019年6月に提訴した監理団体職員による監理団体などへのパワハラと残業代未払い訴訟1件、2022年10月に提訴したフィリピン女性の元技能実習生による介護施設と監理団体などへの損害賠償訴訟1件、2023年4月に日本人夫から離婚訴訟を提訴されたフィリピン人妻の反訴訴訟計3件が係争中でした。 このうち、日本人夫から離婚訴訟を提訴されたフィリピン人妻の反訴訴訟は、2024年中にフィリピン人妻の有利な内容で和解解決しました。 また、あらたに2024年2月に孤立死産した乳児の遺体を遺棄したとして死体遺棄罪で逮捕・起訴されたベトナム人技能実習生グエットさんの刑事裁判、「愛人」関係にあった日本人男性から貸金返還請求訴訟を提訴されたフィリピン女性の訴訟、そして、2025年3月に元ベトナム人技能実習生イーさん労働災害損害賠償請求訴訟を提訴しました。 (2025年5月段階で5件の訴訟が係争中です。)


2. コムスタカ主催の企画

    
  • 1月20日(土)午後1時30分から午後4時30分まで熊本市国際交流会館地下にある多目的ホールで、フイリピン人会・熊本(FOK 代表 松田アデラさん)とコムスタカー外国人と共に生きる会の共催で、「2024年新年出会いの会」が、新しく来日した技能実習生50名、結婚移住したフィリピン女性とその家族30名の合計80名を超える参加がありました。
  • 2024年3月24日(日)午後1時から5時まで熊本県民交流館パレア第1会議室で、ベトナム人技能実習生リンさん死体遺棄事件最高裁無罪判決1周年記念企画「外国人労働者の妊娠・出産の権利を考えるシンポジウム」を開催しました。あいにく当日が、熊本知事選挙の投票日で、マスコミの取材はありませんでしたが、会場に35名、オンラインで76名の参加がありました。
  • 2024年11月19日(火)午後7時から午後9時まで、オンラインで、「孤立死産の後死体遺棄罪で起訴されたベトナム人技能実習生グエットさんの無罪判決へ向けた勉強会―なぜグエットさんは無罪となるべきか」をコムスタカ主催で開催し、当日60名の参加がありました。

3. 行政への政策提言など

    
  1. 3月24日(日)に投票が行われる熊本県知事選挙の立候補予定者への「外国人との共生・参画の地域づくり」についての質問書を提出し、立候補者4名(このうち2名は直前の立候補表明で連絡先不明で送付できませんでした)のうち2名(木村 敬氏、幸山 政史氏)から回答を得ることができました。
  2. 5月31日(金)午後1時30分から午後3時間まで、2024年4月「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」の施行に伴い「熊本県困難女性等支援調整会議」(「熊本県DV対策関係機関会議」のから名称変更)が、熊本県庁会議室で、対面で開催され、50名ほどが参加しました。コムスタカとして、DV対策に関する事前の質問と要望書を提出しました。 そして、後日回答を文書で得ることができました。
  3. 熊本市のDV関係機関ネットワーク会議は、2024年11月19日(火)午後2時から午後4時まで、熊本市議会棟第2階会議室にて、国・熊本県・熊本市の関係機関や民間団体等約50名が参加し、コムスタカー外国人と共に生きる会よりDV対策に関する事前の質問と要望書を提出し、後日回答を得ました。

4.コムスタカの事務局会議と勉強会とニューズレターの発行

 2024年は、原則毎月第4日曜日に事務局会議を年12回開催しましたが、須藤眞一郎行政書士事務所での対面参加とZOOMでのオンライン参加のハイブリット形式で行いました。 また、会の活動を報告するニューズレターは、「コムスタカ」114号、115号、116号の年3回発行しました

5.外国人の人権問題等をテーマにする講演やパネリストの依頼

 2024年は、3月2日熊本市孤独孤立対策シンポジウム(熊本城ホール大会議室2、主催熊本市)のパネリスト依頼、10月12日「災害と子ども」研修会の分科会(東洋大学と学園大学共催 熊本学園大学教室)の報告者、10月24日2024年度日本基督教団草葉町教会地区婦人部研修会「外国人と共に生きるとは」の講師、12月10日熊本大学教育学部人権教育講座の講師、12月11日熊本大学グローバルリーダーコース課外研修の講師の5つ講演や報告の依頼がありました。

6.コムスタカ関係機関の会議や企画参加

  1. 2024年1月30日―31日
     カンボジアのプノンペンで開催された「移民の社会保障へのアクセス支援の送出し国の役割に関する第3回政策対話」に、コムスタカから佐久間順子さんが参加しメコン移住ネットワーク(MMN)やカンボジアの送出し機関を訪問しました。
  2. 2024年5月11日(土)午後1時から午後4時
     福岡市中央区のカットリック大名町教会4階会議室で、移住労働者と共に生きるネットワーク・九州主催の講演会(講師 田中 雅子上智大学教員 演題「移民女性の孤立出産が問いかけるもの」)が開催され、70名の参加があり、コムスタから5名が参加しました。
  3. 2024年6月8日(土)・9日(日)
     大阪市生野区で、移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)全国ワークショップin 大阪2024」が開催され、コムスタカより3名が参加しました。
  4. 2024年7月14日(日)午後3時から午後4時
     死産したグエットさんの子(パウロ・ニャトちゃん)の祈りの会が、熊本市中央区のカトリック手取り教会で、カトリックベトナム人共同体、カトリック女性の会、ベトナム人技能実習生グエットさんの裁判を支援する会の三者の共催が行われ、ベトナム人100名以上と日本人支援者ら20名の120名以上の参加がありました。
  5. 2024年11月1日(水)午後2時から午後3時30分まで
     福岡出入国管理局会議室にて、「第27回移住労働者と共に生きるネットワーク・九州と福岡入管との意見交換会」が、福岡法務合同庁舎7階会議室にて、対面で開催され、福岡入管より統括審査官7名とネットワーク・九州から9名(うちコムスタカから2名)が参加しました。
  6. 2024年12月5日(月)午後1時30分から午後2時30分まで
     大村入国管理センターの施設参観(13名参加)、午後2時30分から午後3時30分過ぎまで、第21回移住労働者と共に生きるネットワーク・九州(16名参加)と大村入国管理センター(5名参加)との意見交換会が開催され、ムスタカより3名が参加しました。昨年は、録音を認めない、施設見学が中止されましたが、今年は施設見学が認められ、質問への回答の録音も許可されました。但し、昨年以上に 本省からの指示により回答がしない項目が増えました。

7.孤立死産し、死体遺棄罪で逮捕・起訴されたベトナム人技能実習生グエットさんの刑事裁判支援の取組み

 孤立死産した技能実習生グエットさん、2024年2月2日に死産し、2月6日福岡県警に逮捕され、マスコミで大きく報道されました。 福岡の外国人支援の市民団体等連携して、グエットさんへの面会や差し入れの依頼、起訴を防ぐための私選の弁護士(池上遊弁護士)を弁護人に依頼し、グエットさんから国選弁護士に変えて選任してもらい、無罪主張をして、勾留理由開示裁判の請求と実施し、起訴をさせないように運動しましたが、福岡地検の検察官は、2月27日死体遺棄罪で起訴しました。 起訴後、4月に第1回目の保釈請求をしましたが、認められず、グエットさん逮捕から約5か月後の7月2日に2回目の保釈請求がようやく認められ、保釈金150万円を裁判所に支払って保釈されました。 保釈後3カ月間は、これまでは、実習先の食品加工会社が受け入れず、監理団体も転籍先を探そうとしなかったため、シェルターなどで待機し、新しい監理団体と実習先を見つけ、OTIT(外国人技能実習機構)と入管に手続をして10月下旬から実習が再開でき、就労できるようになりました。

 グエットさんの死体遺棄罪被告事件の刑事裁判は、1名の弁護士に2名の弁護士(島翔吾弁護士、石黒大貴弁護士)を追加して3名の弁護団として、無罪判決を目指すことになりました。 福岡地方裁判所で第1回公判 5月14日、第2回公判6月26日(1名のベトナム人技能実習生で、グエットさんの交際相手の証人調べ)、第3回公判7月1日、(同僚のベトナム人技能実習生と監理団体のベントナム人通訳職員の2名の証人調べ)、第4回公判 7月8日 (被告人グエットさんの証人調べ)、第5回11月8日(蓮田健慈恵病院院長の証人調べ)第6回公判 2025年1月15日結審、3月7日 判決宣告公判が開かれ、2025年3月7日に懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決が宣告されました。 グエットさんは、この判決を不服として2025年3月14日福岡高裁へ控訴しました。

 コムスタカは、逮捕直後から福岡県内の市民団体等と連携しながら、不起訴を求める署名、起訴後のグエットさんの無罪判決を求める署名(紙署名とオンライン署名 1審判決前に約15000名を超える)の呼びかけ団体の一つとなり、署名集めや裁判のための寄付の呼びかけ、公判への傍聴参加、保釈金の一部立て替え、オンライン勉強会の開催等、2024年中の活動で最も力いれて取り組んできました。 今後の控訴審でも無罪判決を目指して取り組んでいます。

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