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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

元監理団体職員へのパワハラと残業代未払い訴訟福岡高裁差戻し控訴審判決報告

2025年9月18日 
中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)


はじめに

 一審原告が2019年6月4日に提訴した残業代未払いと監理団体と上司2名を被告としたパワハラに対する損害賠償(総額約200万円 うち残業大未払い83万円)の本案訴訟と、監理団体が2020年5月28日に一審原告の提訴時の記者会見で名誉棄損による損害賠償(総額550万円)を請求した反訴訴訟という二つの訴訟がありました。 

 一審原告が提訴したパワハラによる損害賠償と、監理団体が提訴した名誉起訴による損害賠償は、一審判決では双方一部が認められましたが、控訴審判決では、どちらも認められず、監理団体が上告した最高裁でも棄却され確定しました。 そして、控訴審判決が認めた残業代未払い(総額約29万円)について、監理団体が上告し、最高裁が「労働基準法38条2の第一項「事業外みなし労働時間制」の適用の有無についてのみ、上告を受理し、控訴審判決を破棄差し戻し 福岡高裁で差し戻し控訴審が行われ、2025年6月5日に結審、同年8月28日判決が宣告されました。

 2025年8月28日の福岡高裁の差し戻し判決は、一審本訴の残業代の未払いに関して、一審被告(以下、監理団体)が主張した労働基準法38条2の第一項「事業外みなし労働時間制」の適用を認め、一審判決29万6080円からその4分の1にあたる7万4255円の減額が認められました。 その一方で、4分の3(22万1825円)の未払い残業代の支払いが一審被告に命じられており、一審原告(通訳相の職員)が実質的に勝訴(請求額全額ではなく一部であるが)した判決といえます。

 この判決、最高裁が破棄し、差し戻した争点にそって、労働基準法38条の2第一項「事業外みなし労働時間制」の適用を認めて、「指示」「同行」「内勤」の日を除き、一審判決の命じた未払い残業代を4分の1減額しました。 しかし、その一方で「一審原告の労働時間を把握できず、一審原告の自主申告にすぎない」とされた「業務日報」に記載された労働時間にもとづいて、一審原告の労働時間を把握し、残業時間と残業代を計算し、一審判決の命じた未払い残業代の4分の3を一審被告に命じる判断をしました。

 一審原告及び一審被告とも上告を断念し、この福岡高裁の差し戻し控訴審判決が2025年9月17日に確定しました。 そして、一審原告が、コムスタカに相談してから約7年、2019年6月に熊本地裁に提訴してから6年3ヶ月という長い期間をへて終結となりました。

一、裁判の経緯

1.提訴に至る経緯

 コムスタカー外国人と共に生きる会に2018年12月下旬に監理団体(事業組合グローブ 上告人)の元職員(被上告人)からパワハラにより退職を余儀なくさせられたことと、2017年7月から事務所に立ち寄ることなく自宅から出張先(大分県や宮崎県や福岡県など)へ直行・直帰に変更され、残業代が支払われなくなったという残業代未払いの相談がよせられる。

 原告が2018年11月からパワハラによる退職を訴え、雇用保険を申請していた問題で2019年1月16日ハローワーク熊本の審査部で、一部嫌がらせの言動が認定され、正当な理由のある自己都合による退職が認められる。 原告は、2019年3月4日熊本労働局にパワハラによる退職に伴う損害請求等のあっせん申立を行う。 被上告人があっせん受入れ、同年4月16日に熊本労働局で1回目が開かれるも、被上告人は、一切パワハラの事実を認めず、斡旋不成立で終了。 一方、残業代未払いについては、2019年3月15日熊本労働基準監督署へ申立するも、同年3月29日上告人は、労基署に対して、問題がないという説明で、これ以上労基署として関与できないとして終了となる。 そこで、弁護士に依頼して、事業組合グローブと上司2名を被告として、2019年6月4日火曜日に熊本地裁にパワハラに対する慰謝料と未払い残業代の支払を求める訴訟などを提訴することになった。

2.訴訟の事案の概略と一審判決、控訴審判決の要旨

 技能実習制度は、技能実習生への人権侵害問題を引き起こす問題の多い制度です。 技能実習生を斡旋する監理団体には、技能実習生への不当な扱いをしているところもありますが、技能実習生だけでなく監理団体で正社員として働く指導員等の職員への不当な扱いをしているところも見られます。 主にフイリピン人技能実習生を実習実施者にあっせんしている監理団体である協同組合グローブ(本部 広島県福山市)の熊本支所に2016年9月から2018年10月まで約2年間技能実習生の通訳や相談など担当する指導員として勤務した熊本市内在住のフイリピン出身(現在は日本国籍者)の元女性職員が原告となり、上司によるパワーハラスメントと残業代など賃金等未払を理由に、協同組合グローブと上司2名を被告として、慰謝料や残業代の未払い分の支払いなど総額約200万円の支払い求める訴訟(本訴)を熊本地方裁判所に提訴しました。 また、提訴した当日の2019年6月4日に記者会見を被上告人が行い、マスコミ(KKT,KAB、日テレNEWA24、熊本日日新聞社)がそれを報道したことで、2020年5月28日に反訴として、被上告人に対して総約550万円の損害賠償訴訟を上告人が提訴(反訴)しました。 被上告人が提訴後3年近く審理を経て、熊本地方裁判所(裁判官  佐藤 丈宜)で、2022年5月17日(火曜日)に一審判決が言い渡されました。

3.一審判決

 この一審判決は、本訴に関して、上告人(一審本訴被告、反訴原告)が主張していた労基法第38条2第1項の事業外みなし労働時間制を認めず、被上告人(一審本訴原告、反訴被告)が主張していた組合員企業への自宅から直近直行の移動時間を労働時間としても認めませでしたが、裁判官が被上告人の勤務時間数と賃金額を計算し、残業代における未払い賃金があることを認め、上告人へ被上告人に対して29万6080円の支払いを命じました。 また、被上告人へのパワハラについて、被上告人の上司一人について認め、その上司に被上告人へ11万円の支払いを命じました。 しかし、反訴について、被上告人の残業の時間は月27時間程度が最大であるのに、記者会見で月30時間以上あったと述べたことを理由に被上告人の上告人への名誉毀損をみとめ、33万円の支払いを命じました。

4.控訴審判決

 双方が、この1審判決を不服として福岡高裁へ控訴しました。 控訴審である福岡高等裁判所(山之内 紀行裁判長)は、2022年11月20日に判決(原判決)を言い渡しました。 原判決は、本訴について、残業代の未払いに関して一審判決と同じ判断をして、上告人の労基法第38条の2事業外みなし労働制の適用を認めませんでしたが、パワハラに関して、一審判決が認めた被上告人に上司一人の11万円の支払いを取消しました。 その一方で、反訴に関して、一審判決がみとめた名誉毀損の成立を認めず被上告人から上告人に33万円の支払いを取り消しました。

 この控訴審判決に対して、被上告人は、上告しませんでしたが、上告人は残業代未払いについて、労基法第38条の2事業外みなし労働制の適用及び名誉毀損の成立を理由として、上告及び上告受理申立てを、最高裁判所に行いました。

5.最高裁判所の弁論決定

 2024年2月13日に最高裁判所第三小法廷は、被上告人の上告は棄却する決定を行いましたが、上告受理申立に関しては、名誉起訴の成立に関しては排除する一方、労基法第38条の2第1項の事業外みなし労働制に関して、キャリア業務日報に「指示あり」「同行」と記載されている日を除いて上告審として受理する決定を行い、2024年3月26日(火曜日)午前11時に口頭弁論が開かれました。

6.最高裁判所の福岡高等裁判所への差し戻し判決

 2024年4月13日最高裁第三小法廷( 裁判官裁判長 今崎幸彦)は、「原審の上記判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 論旨はこの趣旨を言うものとして理由があり、原判決中、本件本訴請求に関する上告人敗訴部分破棄を免れない。 そして、本兼業務につき本件規定に言う「労働時間を算定しがたいとき」に当たるといえるか否かなどに関しさらに審理を尽くさせるため、上記部分につき、本件を原審に差し戻すこととする。 尚、上告人のその余の上告については、上告受理申立理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとする。」 との福岡高等裁判所への差し戻しを命じる判決を言い渡しました。(裁判官全員一致、裁判官 林道晴の補足引見あり)

7.福岡高等裁判所の高等裁判所の差し戻し審

 争点
 一審審原告が事業外で従事した業務の一部(本件業務)については 労働基準法第38条の2の第1項(本件規定)にいう「労働時間を算定しがたいとき」に当たるか否か、である。 より具体的に最高裁判決は、以下の2つの争点の当否を審理するように命じていたため、事前に非公開の進行協議がオンラインで複数回行われ、一審原告と一審被告双方から準備書面が提出されました。

 2025年6月5日(木曜日)差し戻し控訴審第1回口頭弁論が当事者双方の代理人がオオンラインで参加して開廷され、即日結審し、2025年8月28日(木)午後1時10分福岡高等裁判所1015号法廷で判決が宣告されることになりました。

争点1 1審原告が記載し一審被告に提出した業務日報の正確性が担保されているか否か

争点2 1審被告の「本件規定を適用せず残業代を支払ったのは、業務日報の記載のみによらず一審原告の労働時間を把握しえた場合に限られる旨」の主張の当否。

二、福岡高裁の差し戻し判決内容

 令和6年(ネ)第403号 損害賠償等(本訴)、損害賠償(反訴)請求控訴審事件(控訴人(第1審本訴被告、反訴原告)・被控訴人(第1審本訴原告、反訴被告)口頭弁論終日 令和7年6月5日)について、福岡高等裁判所第一民事部 高瀬順久裁判長裁判官 古川大吾裁判官、高山愼裁判官は、令和7年8月28日(木)午後1時10分に、福岡高裁1015号法廷で判決言い渡した。

  判決      主文
1.差戻し前第1審判決中、差し戻しに関わる部分を次の通り変更する
2.控訴人は、被控訴人に対し、22万1825円及びこれに対する平成30年11月1日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3.控訴人のその世の請求を棄却する。
4.差し戻しに関わる訴訟費用は、差戻し前の第1審、控訴審及び上告審並びに差し戻し後の控訴を通じてこれを10分とし、その3を控訴人の負担とし、その余は被控訴人の負担とする。
5.この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

争点に関する裁判所の判断

 1審判決は争点(1)から争点(7)「(1)就業規則の有効性、(2)事業外労働のみない制の適用について、(3)移動時間の労働時間該当性、(4)時間外労働の有無。(5)固定残業代の支払い、(6)管理監督者の該当性、(7)未払い賃金」まで判断して判決を宣告しましたが、差し戻し控訴審では、以下の(2)と(4)の2つの争点について判断して、(7)を主文のとおり宣告しました。

争点(2)事業外労働のみなし制の適用について

 「本件業務に関し、控訴人において、被控訴人において、被控訴人の事業場外における勤務の状況を具体的に把握することが容易であったとはいえず、本件業務日報による報告によって、これを把握することが可能になるものともいえない。 そうすると、本件業務については、控訴人において被控訴人が労働に従事した時間を把握することが困難であったというべきであり、本件規定にいう『労働時間を算定し難いとき』にあたるものと認めるのが相当である。」(差し戻し控訴審判決P.9上から8行目から13行目)

争点(4) 時間外労働の有無

 「控訴人の労働時間を認定する資料として、本件業務日報以外には存在せず、控訴人から特段の反証がないことからすると、基本的には本件業務日報を基礎として労働時間を認定するのが相当である。 他方、前期4で認定説示したとおり、本件行について本件規定が適用される。」 「そして、これまでの判示に加え、証拠(甲21の6頁、甲22の6頁、乙2から331、342)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人の労働時間は、1審判決が認定した1審判決別紙「裁判書時間シート」記載のうち、1日8時間を超える労働のある日の中で、本判決別紙「裁判所 時間シート」の「備考」欄に「指示あり」、「同行」または「内勤」と記載のある日を除いた日(本件業務に従事した日)につき、本件規定鵜の適用により、所定労働時間である午前9時から午後6時まで(休憩1時間)の8時間労働したものとみなされることによる補正を加えるのが相当である」(差し戻し控訴審判決9頁下から6行目から 10頁上から6行目まで)

争点(7)未払い賃金額について

 1審判決48頁7行目の「29万6080円」を「22万1825円」に改める。

結論

 よって、争点(1)について判断するまでもなく、被控訴人の本件本訴請求中、賃金の支払いを求める部分については、前期1の限度で理由が、その余の請求は理由がない、従って、控訴人の本件控訴は一部理由があるから、これに基づき1審判決中差し戻しに係わる部分を主文の通り変更する。

※ 2025年8月28日福岡高等裁判所差し戻し審判決文(公開用)

三、 2025年8月28日福岡高裁の差し戻し判決へのコメント
(コムスタカー外国人と共に生きる会代表 中島 眞一郎)

 福岡高裁差し戻し判決は、最高裁が示した争点1の労働基準法38条の2第一項の事業外みなし労働時間制の適用の有無について適用を認め、争点2の「1審被告の「本件規定を適用せず残業代を支払ったのは、業務日報の記載のみによらず一審原告の労働時間を把握しえた場合に限られる旨」の主張についても認め、1審判決認定した残業代の未払い額から、補正を加えた日(同行、指示、内勤した日を除く)@平成29年 4日、A  平成30年 30日の合計34日分の残業代が事業外みなし労働制の適用により7万4255円減額し、「同行」「指示」「内勤」のあったと認定した日に支払われた残業代22万1825円を未払い賃金額として認定した。 これについては、1審判決では記載のなかった仮執行が認められた。

 但し、この差し戻し判決は、一審原告が記載し提出した業務日報について「本件業務については、控訴人において被控訴人が労働に従事した時間を把握することが困難であったというべきであり、本件規定にいう『労働時間を算定し難いとき』にあたるものと認めるのが相当である。」と労働基準法38条の2第一項の適用を認めておきながら、未払い賃金の計算根拠については、「業務日報以外に控訴人の労働時間を認定する資料として、本件業務日報以外には存在せず、控訴人から特段の反証がないことからすると、基本的には本件業務日報を基礎として労働時間を認定する相当である」と、一審原告の業務日報に記載のある始業時間、終業時間、休憩時間に基づく法定労働時間や残業時間を算定して、残業代を計算している。」という論理矛盾のある判決である。

 なぜこのようなねじれのある(論理的整合性のない)判決内容になったのかは、一審被告が、一審原告が作成提出した業務日報に基づいて、一審原告の残業時間を計算し、残業代を支払っており、一審被告も、みなし労働時間制の適用が認められた日、認められない同行や指示や内勤の日の時間も、一審被告の労働時間を把握する客観的な資料を提出できず、業務日報を根拠として算出するしかなかったためである。

四、労働基準法38条の2第一項事業外労働時間制の適用の不当性

1.一審被告(監理団体)は、就業規則にはこの規定を記載していたが、実際は適用していませんでした。通訳相談員の職員には、一審原告が勤務する2016年7月までは、基本給しか支給していませんでした。その頃何らかの指摘をうけて、一審原告が勤務する2016年9月頃から残業代の支給を始めていましたが、タイムカードの記入も廃止し、2017年7月から直近直行を指示、通勤・帰宅時間を労働時間に含めない運用をはじめ、残業代の支給額を減らしましたた。一審原告は、自宅から実習先企業への直近直行(片道1時間から3時間程度)により残業代の減額を不当として、未払い残業代の支払いを求める本案訴訟を提訴しました。一審被告も、訴訟途中から、残業代未払い分の理由としてこの制度の適用を言い出しました。

2.一審原告の賃金や残業代は、一審原告が作成提出した業務日報に記載された始業時間終業時間、訪問先などの記載により算定され、実際に支給されており、一審被告は一審原告の労働時間を把握する方法は、業務日報以外になく、実態として、業務日報に基づいて残業時間と残業代が計算されて支給されていました、

3.技能実習生制度下の監理団体と実習先企業と受け入れ先企業や技能実習生との関係は、労働基準法第38条の2の事業外見なし労働時間制の適用が認められる「飛び込み営業職」や、最高裁判例となっている旅行会社の「ツアー添乗員」とは全く異なります。。技能実習制度下の監理団体は、実習先企業や技能実習生の個人情報や個別企業情報法を詳細に把握し、法令で監理・指導が義務づけられており、監理団体の職員である通訳・相談員が、どこに実習先を訪問し、どの技能実習生と面談し、様々なトラブルの相談を受けたかなど詳細に把握しています。むしろ把握できない監理団体は監理団体の本来業務を行えない存在として行政処分をうける場合もあります。。

4.一審被告は、通訳相談の職員のタイムカードを自ら廃止し、その代わりとして業務日報の作成提出を命じて、他のアプリや、事前の訪問先のカレンダーへの記入等様々な方法を指示し、労働時間の把握をしていました。スマホのアプリなど活用すれば把握可能であるにもかかわらず、監理団体が自ら労働時間の把握するための努力を尽くさずに、労基法第38条の事業外みなし労働時間制を主張すること自体が、不当です。

2024年3月11日 最高裁判所第三小法廷への被上告人の答弁書要旨(公開用)

 以上の主張等を一審原告は、最高裁判所の弁論決定後の答弁書や差し戻し審の中で主張したが、受け入れらませんでした。最高裁裁判所裁判官の技能実習生度やその制度下の監理団体、そこで働く職員の労働実態への無知と無理解と、高裁裁判官の最高裁の破棄差し戻し判決に追随する主体性の弱さを跳ね返すことができませんでした。

五、結び

 2019年6月の提訴から6年以上の月日が経過しましたが、一審原告は、2025年8月28日の福岡高裁の差し戻し判決を上告せずに受け入れることにして、一審被告((監理団体 協同組合グローブ)も上告せず、2025年9月17日にこの判決が確定しました。

 監理団体(一審被告)が主張した「事業外みなし労働時間制(労働基準法第38条の2第一項)は、1審判決や控訴審判決が認めなかったにもかかわらず、最高裁による破棄差し戻し判決をへて、福岡高裁の差し戻し審判決で認められたことは、技能実習制度下の通訳相談員の過酷な労働実態に対する最高裁判所裁判官及び高裁裁判官の無知と無理解を示す極めて不当な判決です。しかし、この裁判を一審原告が提訴した目的である残業代未払いの争いについて1審判決が一審被告に支払いを命じた残業代未払い額(約29万円)から、その適用によっても4分の1に相当する約7万円が減額されたにとどまり、1審判決が命じた額の4分の3となる約22万円の支払いを一審被告に命じる判決が確定しました。このような結果になったのは,1審被告が[正確性を担保できない]とされた業務日報に基づいて、一審原告の残業時間と残業代を計算して支払っており、業務日報に基づくしか残業時間と残業代の計算根拠がなかったためでした。この判決の確定は、残業代未払いを求めた一審原告の一部勝訴としてこの裁判が終了したことを意味します。

 また、一審被告にとって、通訳相談員に「事業外みなし労働時間制(労働基準法第38条の2第一項)を適用すれば、一審被告が残業代を支払わず基本給だけ支払っていた時や、業務日報に基づいて直近直行を認めて残業代を支払っていた場合とくらべて、「内勤」「指示」「同行」の勤務が多い就業実態では、今回の判決が示しているように残業代の支払いが増加し、その主張の目的である「残業代の支払いを減らす」という目的を失いかねません。またで監理団体の通訳相談員に「事業外みなし労働時間制(労働基準法第38条の2第一項)適用を認めた今回の判決がどこまで先例となり、適用されていくのか不明ですが、2027年までに技能実習生度が廃止され、育成就労制度に移行し、監理団体もなくなり名称変更されるなかでは、かなり限定的な場合にとどまらざるを得ないと思われます。

≪添付資料≫
1.2025年8月28日福岡高等裁判所の差し戻し審判決(公開用)
 
2.2024年3月11日 最高裁判所第三小法廷への被上告人(1審原告)の答弁書要旨(公開用)

2025年8月28日福原高等裁判所の差し戻し控訴審判決への一審原告のコメント

 私は、以下の理由で、2025年8月28日の福岡高裁の差し戻し判決を受け入れることにしました。そして一審被告も上告せず、2025年9月17日にこの判決が確定しました。

 一審被告が主張した「事業外みなし労働時間制」(労働基準法第38条の2第一項)が最高裁判決をへて、福岡高裁の差し戻し審で認められたことは残念ですが、その影響は1審判決が一審被告に支払いを命じた残業代未払い額(約29万円)から4分の1に相当する約7万円が減額されたにとどまりました。一方、私がこの裁判を提訴した目的である残業代未払いの争いについて1審判決が命じた額の4分の3となる約22万円の支払いを一審被告に命じた判決が確定しました。それは、私の一部勝訴としてこの裁判が終了したことを意味します。

 提訴から6年以上、一審被告との争いがここまで長く続くとは思ってもいませんでしたが、私はこの闘いから多くのことを学びました。一つは、人は自分の利益を守るためにすぐに言い訳を作り、事実をねじ曲げるということです。その一方で、困っている時に見返りを求めずに助けてくれる人も現れてくれること、それら人への感謝の気持ちを学びました。この裁判を通じて、もし、これから自分が上司もしくは会社の上のものになることが来たら、周りの部下が働きやすい、そしてみんながいいコミュニケーションができる職場環境にしたいです。長い間この裁判を応援してくれた皆さんに、改めてお礼を申し上げます。

一審原告の裁判を支援してきた支援団体 コムスタカー外国人と共に生きる会 代表  中島 眞一郎よりのコメント

 2019年6月の提訴から6年以上の月日が経過しましたが、一審原告は、2025年8月28日の福岡高裁の差し戻し判決を上告せずに受け入れることにして、一審被告((監理団体 協同組合グローブ)も上告せず、2025年9月17日にこの判決が確定しました。

 監理団体(一審被告)が主張した「事業外みなし労働時間制(労働基準法第38条の2第一項)は、1審判決や控訴審判決が認めなかったにもかかわらず、最高裁による破棄差し戻し判決をへて、福岡高裁の差し戻し審判決で認められたことは、技能実習制度下の通訳相談員の過酷な労働実態に対する最高裁判所裁判官及び高裁裁判官の無知と無理解を示す極めて不当な判決です。しかし、この裁判を一審原告が提訴した目的である残業代未払いの争いについて1審判決が一審被告に支払いを命じた残業代未払い額(約29万円)から、その適用によっても4分の1に相当する約7万円が減額されたにとどまり、1審判決が命じた額の4分の3となる約22万円の支払いを一審被告に命じる判決が確定しました。このような結果になったのは,1審被告が[正確性を担保できない]とされた業務日報に基づいて、一審原告の残業時間と残業代を計算して支払っており、業務日報に基づくしか残業時間と残業代の計算根拠がなかったためでした。この判決の確定は、残業代未払いを求めた一審原告の一部勝訴としてこの裁判が終了したことを意味します。

 また、一審被告にとって、通訳相談員に「事業外みなし労働時間制(労働基準法第38条の2第一項)を適用すれば、一審被告が残業代を支払わず基本給だけ支払っていた時や、業務日報に基づいて直近直行を認めて残業代を支払っていた場合とくらべて、「内勤」「指示」「同行」の勤務が多い就業実態では、今回の判決が示しているように残業代の支払いが増加し、その主張の目的である「残業代の支払いを減らす」という目的を失いかねません。またで監理団体の通訳相談員に「事業外みなし労働時間制(労働基準法第38条の2第一項)適用を認めた今回の判決がどこまで先例となり、適用されていくのか不明ですが、2027年までに技能実習生度が廃止され、育成就労制度に移行し、監理団体もなくなり名称変更されるなかでは、かなり限定的な場合にとどまらざるを得ないと思われます。

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