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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-402

須藤眞一郎行政書士事務所気付

熊本県「DV被害者総合支援ガイドライン」(素案)に関する意見書と熊本県の回答

中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会 代表)

はじめに

  2020年2月13日、熊本県庁において2019年度第2回熊本県DV対策関係機関会議(以下、実務者会議)が開催されました。 コムスタカら民間の5団体を含む、DV被害者支援をしている15の関係機関が出席しました。
 内容は、平成29年度(2017年度)の熊本県DV被害者総合支援・加害者対応モデル事業を活用した、「熊本県DV被害者総合支援ガイドライン」の報告と、昨年8月に関係機関から寄せられた同ガイドラインの素案に対する意見や提案への説明がなされました。 同素案に対しては、コムスタカ以外にも熊本市、法務局、ウイメンズカウンセリングールーム熊本、熊本県婦人相談員連絡協議会、女性相談センター、ゆあさいど、NPO法人こころのサポートセンター・ウイズから23の意見が出され、これに対しての回答がありました。 そのほとんどの意見が、同ガイドラインの素案に追加の記載や修正として取り入れられて、2020年2月に完成しました。
 本ガイドラインの取り扱いについて、「本書は、主に行政機関におけるDV被害者支援体制の充実を図ることを目的に作成し、DV被害者支援の担当部署等に配布するものです」と記載されています。 2020年度から、熊本県のDV対策関係機関の職員らの研修会において、同ガイドラインが順次配布されて、これを活用した支援の実施が期待されます。
 以下、コムスタカが2019年8月に提出した同ガイドラインの素案に対する意見と提案に関する、熊本県からの回答部分を紹介しておきます。  

【コムスタカより提出した質問と県からの回答】

1.本ガイドラインにおける用語について、「被害者(性別を問わず、同性間の暴力の被害者も含む)」と明記してください。

回答 ガイドラインの目次の裏に、「被害者=DVを受けている者(性別を問わず、同性間の暴力の被害者を含む)」と追記しました。


2.P1の「はじめに ガイドラインの趣旨」があまりにも簡素で、これまでに県がDV対策連絡会議やガイドラインの概要などで説明してきたことが本書には説明されていません。 以下の内容を含んだものに変更してください。
 @ このガイドラインでは、加害者と再び接触する可能性のある地域での生活を希望する被害者に対する再被害防止のための支援を見守り支援によって行うこととしており、加害者に再び加害行為を起こさせないようにするという観点から、関係機関・団体等と連携し、加害者への対応も含めた多面的な被害者支援を目指している。
 A 被害者が再び被害に遭わずに安心安全に住み慣れた地域で生活するためには、様々な分野の関係機関・団体の連携による継続的な支援が必要。
 B 関係機関が連携・協力して再被害防止を向けた取り組みを進めることで、県内におけるDV被害者の支援体制の充実を目指している。


回答 ガイドラインP3に次の通り記載しました。
 「カ 本ガイドラインのめざす姿
 ●ガイドラインでは、加害者と再び接触する可能性のある地域での生活を希望する被害者に対して、再被害防止のための支援を行うこととしており、加害者に再び加害行為を起こさせないようにするという観点を含め、関係機関・が連携した多面的な被害者支援を目指している。
 ●また、被害者が再被害に遭わず、安全・安心に住み慣れた地域で生活するためには、様々な分野の関係機関・団体の連携による継続的な支援が必要であり、関係機関が連携・協力して、本ガイドラインの趣旨に沿った支援を進めることで、県内におけるDV被害者の支援体制の充実を目指している。」  


3.支援の対象は、一時保護所退去後の被害者に限定するものではなく、支援が必要な被害者である。

回答 ガイドラインのP3に記載しています。 本書における支援機関及び支援対象について、DVに関する相談は、福祉事務所や市町村等の行政機関でも受けているため、本書では、被害者からの相談を受け、対応を行う機関を支援機関と表記しています。 また、支援対象者も、一時保護所退所後の被害者に限定するものではなく、支援が必要な被害者に対して、関係機関が連携・協力し再被害防止に向けた取り組みを進めることで、県内におけるDV被害者の支援体制の充実を目指しています。


4.P13の(5)被害者の安全確保に向けた支援について、「被害者が加害者に対する責任追及…を希望する場合は…」を、「被害届の提出や告訴、家裁への離婚や婚姻費用請求の調停の申立、民事上の損害請求や慰謝料請求など、加害者に対する責任追及が、再被害の防止に繋がることを被害者に理解してもらい、責任追及行為を希望する場合には、警察や司法等の関係機関に繋ぎ、手続きが円滑に進むように同行支援等のサポートを行う等、加害者に対して向き合いながら自立していくための行動を支援し一緒に取り組むことで、DV被害者のエンパワメントを行う」と変更してください。

回答 ガイドラインP12に次の通り記載しました。
 ガイドラインP12 「(5)被害者の安全確保に向けた支援-
 ●再被害防止には、加害者の加害行為を起こさせないための対策が必要です。 暴力抑止には加害者に暴力行為の自覚や反省を促すこと必要であることを被害者に丁寧に説明し、被害者の希望に応じて警察や司法機関などの関係機関につなぐとともに、手続きがが円滑に進むよう、同行支援等のサポートを行うなど、被害者が再被害防止に向けた行動を選択できるよう、支援を行います。」


5.P16以降の「支援の必要性」の表にある〇と×の意味が不明確です。 表の使い方の説明を加えるか、もしくは○×ではなく、言葉で説明していく必要があります。 また、「この項目のどれか一つでも該当する場合は支援が必要である」と追記してください。

回答 ガイドラインP17、21、25、19、37、42、46の表の説明に、「一つでも×がある場合、再被害の危険性が継続している可能性がある」と修正しました。


6.P19の「ポイント➁(エンパワメント)」に、「今まで何もできないと思い込まされていた被害者が、加害者がいなくとも生活できるという実績を少しずつ作り、自信を取り戻していくことが必要。 そのためには、加害者に向き合うことを促し、また加害行動に対する責任追及(警察への被害届や裁判所への提訴等)が可能であること説明し、自立していくための行動を支援し一緒に取り組むことがDV被害者のエンパワメントとなる。」と追記してください。
  
回答 ガイドラインP12に記載しています。   
  
  
7.P28「支援の必要性:こどもは安全・安心が確保された生活できる環境にいるか」について、「子どもは加害者について怖いと発言しているとのことで、心理的に影響を受けている可能性がある。」という部分を、「家庭内に暴力がある場合は、子どもがなんらかの心理的影響を受けている可能性がある。」と変更または追記してください。   子どもが加害者について怖いと発言していようがいまいが関係ありません。   

回答 ガイドラインP.29に「(事例1)家庭内に暴力がある場合は、子どもがなんらかの心理的影響を受けている可能性がある。 (状況把握が必要)」と記載しました。


8.P28「支援方針」に、「要対協の担当者などとDV相談員が連携して被害者及び加害者に対して、面前DVの影響や虐待に関する教育、並びにDVの再被害及び再加害防止につながる介入を行う。」と、「加害者に対して」も含んでください。 児童相談所が入っている要対協の連携があれば可能なはずです。

回答 ガイドラインP29に「要対協の担当者等とDV相談員が連携して被害者及び加害者に対して、面前DVの影響や虐待に関する教育、並びにDVの再被害(再加害)防止につながる支援・介入(被害者の問題解決能力を高めるエンパワメント等)を行う。」と記載しました。


9.P49「DV再被害防止のための加害者対応について」、加害対応時のポイントの4つ目の項目の「再被害に遭わないためには、まず加害者との力関係を…」の後に、「加害者が暴力行為を行うと、逮捕や起訴、離婚、損害賠償や慰謝料の支払い、外部機関による介入などの結果となることを体験することで、自分の取った行動がDVであると認識し、再度問題行動を起こせば同じような結果となると意識するようになり再加害の防止につながる。ゆえに、加害者が起こした暴力行為に対しての責任追及を被害者が行うことが重要である。」と追記してください。

回答 ガイドラインP52に「第三者の介入により、加害者が自身の行動をDVと認識したり、再度問題行動を起こせば、再び外部の介入があることを意識するようになり、DVを起こしにくくなるなど、再被害防止につながることが期待できます。」と記載しました。


10.P53「支援側の役割と心構え」について、「円滑な支援を行うためには、関係機関と連絡・調整などを行うコーディネーターの役割が重要です。」を「円滑な支援を行うためには、関係機関と連絡・調整などを行うコーディネーターの役割が重要不可欠であるので、必ずコーディネーターを設ける必要がある。」と変更してください。 このガイドラインによる支援を行う上で重要な役割がコーディネーターであると思います。 しかし、どの機関がコーディネーターの役割を担うかを明確にしていないので、どの機関もこの役割を果たそうとしない恐れがあります。 このガイドラインによる「DV被害者総合支援」を現実化するには、特定の機関が責任を持ちこの役割を担っていくことが不可欠だと考えます。

回答 ガイドラインP56に「円滑な支援を行うためには、関係機関と連絡・調整などを行うコーディネーターの役割が重要であり、どの機関がコーディネーターの役割を担当するか明確にしておくことが必要です。」と記載しました。

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