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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

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須藤眞一郎行政書士事務所気付

福岡入管との意見交換会Meeting with Fukuoka Immigration

第20回 移住労働者と共に生きるネットワーク九州と福岡入管との意見交換会報告

2018年4月30日  中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会

はじめに

 移住労働者と共に生きるネットワーク・九州と福岡入管との第20回意見交換会は、2018年3月6日(木)午後1時30分から午後3時過ぎまで、福岡入管7階会議室で行われました。 福岡入管側から、実務担当者4名(入国審査部門、在留審査部門、警備部門、審判部門の統括審査官)が出席し、総務課の渉外調整官1名の計5名が出席しました。 また、移住労働者と共に生きるネットワーク・九州及びその関係者から18名が参加しました。 福岡入管側の実務担当者5名のうち2名は女性で、統括審査官として女性が出席してきたのは初めてでした。

 最初に入管職員の自己紹介が行われ、2018年1月16日にネットワーク九州事務局が事前に福岡入管に文書で提出していた質問書(T 入管業務に関する質問、U、改定入管法・技能実習法等に関する質問、V、統計数値に関する質問、小項目総計59項目)に対する回答の説明が約45分間ありました。 また、移住労働者と共に生きるネットワーク・九州から法務大臣と福岡入国管理局長あて9項目(小項目総計では23項目)の要請書を事前に提出していましたが、こちらへの入管側の回答はありませんでした。

 その後、福岡入管からの回答に対して、多岐にわたる質疑が約1時間行われました。 入管との意見交換会終了後、近くの会場で、参加者との交流会が午後5時過ぎまで行われました。 今年は例年以上に入管からの回答もより詳細で、質疑応答でもより深い丁寧な回答がなされた印象を受けました。 以下、福岡入管への質問と回答及び質疑の中で重要と思えるものに関して、報告します。

1.日本語学校の留学生の人権問題

 日本語学校の留学生問題については、冒頭に質問を設け6項目について尋ねました。 昨年が「集計していない」などほぼゼロ回答でしたが、今年は「集計していない」という回答は同じですが補足説明や留学生の人権に配慮した回答が比較的なされました。

 日本語教育機関にかかわる在留資格認定書証明交付件数2016年4,800件、2017年7,000件、日本語教育機関から報告を受けた2018年1月末現在の在籍者数2016年7,500件、2017年9,100件であることが明らかになりました。
 
 資格外活動に不適切な説明を行っていた日本語教育機関に対する入管の指導を行っていること、留学生にかかる在留諸申請において違反の事実が認められたことのみをもってただちに不利益処分とするものではない旨の回答、留学生の専用の相談窓口を設けていないが、相談があった場合、必要に応じて日本語教育機関に指導していること、日本語教育機関による留学生の強制帰国問題でも、「除籍や退学となった留学生に対する指導や説得をこえた強制力を伴う行為は、人権侵害にあたる旨の説明をしていること、退学処分が直ちに「留学」の在留資格の取り消しに当たるのではなく、退学から3ヶ月以内に他の教育機関の受け入れが決まれば問題ないことも明らかになりました。

2.技能実習生の人権問題

@九州内の技能実習生数

福岡入管からの回答では、2016年12月末 九州7県の技能実習生数は、22,650人から2017年6月末には25,659人と半年間に3,009人増加しています。 (上位3県は、福岡県8,058人、熊本県4,796人、鹿児島県3,164人)

A技能実習生の失踪者数の急増問題

入管から、九州内の技能実習生失踪者の急増(九州7県2016年222名から2017年653名へ、全国2017年 失踪7,089名、死亡15名 途中帰国 10,205名)の原因として、「技能実習を出稼ぎ労働の機会と捉え、より高い賃金を求めて失踪するものが多数となっている」との回答への批判が質疑でなされました。 日本国内の賃金格差だけでなく、実習先での人権侵害などひどい扱いが原因ではないか、また、出国前に送出国で、送出機関や仲介者や斡旋者から多額の借金をして来日している実態があり、それが多くの失踪者を生む要因となっているとの指摘もありました。 また、質疑のなかで、警察が把握している技能実習生の失踪者数の方が、入管が把握している失踪者数より多い傾向があり、両者の違いについて、入管は「監理団体からの報告を集計しているので、他の機関についてしらない」という回答でした。 これについて、「警察の方がより実態に近い失踪者数を把握しているのではないか、入管としても警察と情報を共有するなど失踪者の実体把握に努めるべきではないか」という意見がなされました。 なお、「技能実習生で、人身取引のうちの労働搾取の被害者として認定された者は、何件ありますか」という質問にも、「ゼロ件」という回答でした。

B新技能実習制度のもとで入管と外国人技能実習機構の権限の分担と変化について

旧法下では、入管は在留資格の該当性のほか上陸基準省令各法の基準(企業単独型は1-23号、団体管理型は1-40号)適合性を審査していましたが、新法下では、入管は在留資格の該当性と基準は「技能実習計画の認定を受けていること」のみとなり、基準該当性の審査は外国人技能実習機構(以下、機構)が行うことになりました。 入管は、在留資格の申請許否の判断、機構で対処できない事案が発生した時、新法上の主務大臣の職員として不正行為等が疑われる事業所の調査等の立入検査、申告の受理等に従事するのみとなります。 機構は、技能実習生に関する技能実習計画の認定基準や監理団体や実習実施機関への実地検査、相談や実習先変更支援など技能実習生への保護に関する業務を行うことになり、技能実習生に関するほぼすべての権限が入管から機構へ移ることになりました。 新たに技能実習の職種として認められた「介護」についての質問には、入管からは、「新法適用の技能実習については、入管は、技能実習の内容に係わる審査は行っておらず、内容については外国人技能実習機構が行なっている。」との回答でした。

C技能実習生が在留中に、日本人等と婚姻した場合の在留資格の変更問題

質疑の中で、技能実習生が在留中に、日本人等と婚姻し、帰国せずに、在留資格の「技能実習」から「日本人配偶者等」に変更申請した場合に、入管から「変更は認められず、帰国してから在留資格の認定で呼寄せるように」、「帰国後は6か月以上経ないと認定許可申請ができない」、「変更申請する場合には、監理団体や実習実施機関の同意が必要である」等と言われたという話があるが、どういう取扱いになっているのかと尋ねたところ、入管から、「技能実習生が本邦において婚姻など身分関係を結ぶことについて妨げるものではない。 その際、技能実習を継続するかどうかだけ確認している。 技能実習を継続しない場合に、一旦帰国しなければならないというということではない」という説明でした。

D地方労働局と福岡入管との相互通報制度

福岡入管から地方労働局への通報件数 2016年11件 2017年2件、地方労働局から入管への通報件数2016年18件、 2017年26件 (このうち通報後に不正行為認定した件数 2016年1件 2017年 6件,改善指導した件数2016年3件、2017年1件) ※ 入管から地方労働局への通報が11件から2件と減少し、地方労働局から入管への通報が18件から26件と増加しています。

3 人身取引被害者について

@人身売買被害者として保護された外国人は、2016年21名( タイ9名、カンボジア7名、フイリピン5名)、このうち福岡入管内は0人。21名のうち11名(タイ 8名、フイリピン3名)に在留特別許可を与えた。

A2014年12月の人身取引行動計画において、男性やセクシュアルマイノリテイの一時保護施設は努力目標にとどまっていることについての質問への回答は、2014年12月の行動計画において「法務省の人権擁護機関が実施する調査・救済において、緊急避難措置として、男性も含めた人身取引被害者に対し一時保護機能を提供できるように努めていく」とされていることの説明はありましたが、これまで通りの「警察等の関係機関との連携のもと適切な対応をする」という回答で、具体的な進展はありませんでした。

B日本政府は国際組織犯罪条約及び人身取引議定書を2017年7月に締結し、同年8月より発効しましたが、これにともなう人身取引に関する施策の変化について尋ねましたが、入管からは「議定書締結以前から締結を想定して施策を行っており特に変化はない」という回答でした。

4.外国人DV被害者について

@DV事案の認知件数

2016年11件(在留審査手続3件、相談8件、国籍別では、フイリピン4件、中国3件、韓国、台湾、スリランカ、バングラデッシュ各1件)、2017年10件(在留審査手続4件、相談6件、国籍別では、フイリピン7件、中国2件、タイ1件)、以上すべて女性、男性の認知は0件

ADV事案として認知された場合の在留審査の配慮状況

 「配偶者としての身分に基づき在留している外国人からの在留期間更新許可申請において、配偶者からのDVを理由に配偶者の協力を得られず、配偶者による身元保証を得られない場合や配偶者と別居している場合等は、DV被害者であることを考慮し、提出資料が不十分であったり、配偶者と別居中であっても許可するなど柔軟に対応している。 また配偶者からのDVを原因に離婚訴訟等を行っている場合であっても離婚成立に確定的な見通しが立っていない場合は、在留資格の該当性が認められるとして在留期間の更新を認めている。 一方夫婦双方が婚姻継続の意思を有しておらず今後配偶者としての活動が見込まれない場合には、申請の理由、申請人の在日経歴、在留状況、家族関係等をはじめ離婚に至った経緯等を総合的に判断し日本での在留の可否を決定する。 特に養育監護を必要とする日本人の実子を扶養するため本邦在留を希望する外国人の親に対しては、その親子関係、当該外国人が実子の親権者であること及び現に実子を養育監護していることが確認できれば定住者への変更を許可している。」との回答でした。

5 ハーグ条約(国際的な子どもの奪取に伴う民事上の則目に関する条約)施行

「条約施行後でも、一方の親の同意を得ずに子どもを国外に連れ出したり、国内に入国させる親がいた場合でも、当局の取り扱いに変更はなく、一方の親の同意がなくても、子どもを連れての出入国は可能」という例年通りの回答でした。

6 セクシュアルマイノリティ問題

@ 同性婚の場合の在留資格

「同性婚の相手について原則配偶者として認めていないが、当事者双方の本国で有効な婚姻が成立している場合に、在留資格『特定活動』で、入国在留を認めている。」という回答でした。

F パートナーシップ保障と在留資格

「同性パートナーシップについては、同性婚と同一に取り扱うことは困難で、相手方を配偶者として認めていない。」という回答でした.

7 2012年7月施行改定入管法の運用状況

@ 2012年7月9日から施行された新たに設けられた在留資格取消制度について

ア、法22条の4第1項7(日本人配偶者としての活動を6月以上行っていない)の取消は、2014年に1件ありましたが、2015年、2016年、2017年と0件でした。

イ、法22条の4第1項8〜110(住居移転の届出の90日以上怠る場合や虚偽の届出の場合)の取消についても、疑いがあるとしての事実の調査件数は、2016年164件、2017年310件でしたが、在留資格の取り消しは、2016年、2017年とも0件でした。

A 永住許可のガイドラインの見直し

 「平成29年4月26日改定の永住許可のガイドラインにおいても当面在留期間3年を有する場合は、最長の在留期間をもって在留しているとして取扱うとしており、現時点も変更がない」という回答でした。

8 難民申請(福岡入管内、那覇市局も含む)

 難民認定申請件数  2016年46件、2017年60件(上位5ヶ国スリランカ 10名、ミャンマー8名  ベトナム6名、エジプト及びネパールから各5名)
 認定数 2016年及び2017年とも0件。質疑の中の質問で、申請件数のうち弁護士のついた件数については後日の回答で、1-2件と思われる」ということでした。

9 その他、福岡入管内の統計数値について

@出国命令制度により出国した外国人 
 2016年 57名(うち未成年 1名)、2017年 50名(うち未成年 1名)

A在留資格を取り消された外国人 
 2016年 10名(うち「留学」8名、「技術・人文知識・国際業務」1名、「日本人配偶者等」1名)、2017年 8名(うち「留学」5名「技術・人文知識・国際業務」3名)

B在留特別許可件数 
 2015年 65件 2016年 29件 2017年 35件

C上陸拒否者 
 2015年 276名、2016年 397名、2017年 410名

D非正規滞在者の摘発件数と摘発数
 摘発件数2016年 85件、2017年 81件、摘発人数2016年 65人、2017年 89人

E退去強制者数
 2015年 214件、2016年 210件(うち自主申告数 67名)、2017年 61件(うち自主申告数 73名)

F退去強制者の内訳(自費出国・国費送還者)
 自費出国者 2015年 121名、2016年 94名、2017年 148名
 国費送還者 2015年 3名、2016年 2名(送還忌避者 1名を含む)、2017年 2名

G仮放免者数
 2015年 7名(男性 5名、女性 2名)、2016年 12名(男性 7名、女性 5名)、2017年 12名(男性 9名、女性 3名)

H福岡入管の収容施設 収容定員、平均収容期間、最長収容期間
 2016年 収容定員 36名、平均収容期間 5.4日、最長収容期間 14日
 2017年 収容定員 36名、 平均収容期間 7日、最長収容期間 28日

I福岡入管の職員体制
 2016年度 総定員 413名  福岡本局 99名
 2017年度 総定員 465名(2016年度 52名の増員 出入国審査を行う空海港への増員)
 福岡本局 100名(入国在留審査部門と審判部門 55名、警備部門 32名 その他 13名)

追記

第20回意見交換会の質問や回答、要望書等の詳細や第18回以降の移住労働者と共に生きるネットワーク・九州と福岡入国管理局との意見交換会における質問と回答、要請書、意見交換会の報告については、以下のURLにアクセスしてください。

移住労働者と共に生きるネットワーク・九州 福岡入管との意見交換会報告

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