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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

福岡入管との意見交換会Meeting with Fukuoka Immigration

第27回 移住労働者と共に生きるネットワーク九州と福岡入管との意見交換会報告

中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

はじめに

 移住労働者と共に生きるネットワーク・九州と福岡出入国在留管理局(以下、福岡入管)との第27回意見交換会は、福岡法務合同庁舎7階会議室で、2024年11月1日(水)午2時〜午後3時30分まで、開催されました。 入管側から統括審査官7人と、ネットワーク九州から9名が参加して、2023年に引き続き、対面方式で行われました。 今回は、T、技能実習生等の妊娠・出産問題について、(質問数5)U、入管業務について、(質問数10)V、「特定技能」、「登録支援機関」 (質問数3),W、技能実習制度について、(質問数3) X、「共生政策」について質問数(3)と、Y、2023年改定入管法について(質問数5)、Z 2024年6月成立した改定入管法について(質問数3}、統計数値について(質問数15)の全部で47項目の質問を2024年8月14日に提出しました。 また、意見交換会における要望書(13項目の要望数 44)を当日提出しました。

 2024年意見交換会での福岡入管からの回答では、昨年(2023年)以上に、これまで回答がなされていた項目に関しても「集計を行っていないため回答することは、困難です」という回答しない項目がさらに増え、特に統計数値に関する質問では、15項目のうち10項目しか回答しなくなりました。 以下、2024年の意見交換会での回答で重要と思われるものについて紹介しておきます。

 第27回福岡入管との意見交換会の質問と回答及び要望書は、以下のURLで詳細をご覧下さい。
https://snwm-netwrokkyushu.jimdofree.com/

1.技能実習生の妊娠・出産問題について

  1. 在留資格の取扱いが、日本で出産する場合と送出国に帰国して出産する場合であれ、「所属機関に在籍又は契約機関との契約等に基づき我が国に在留する外国人の妊娠・出産等に伴う在留資格上の取扱いについて(通知)」(入管庁管第2352号 令和3年6月9日、技能実習生、留学生の妊娠出産が「正当理由」として保護される)の通知に基づく運用が行われることが、2022年の回答で明らかになりましたが、2024年も「当局の取り扱いにについて変更がない」という回答でした。
  2. 技能実習生の妊娠・出産後の技能実習の再開が3.4%しかにことについて
     2019年11月1日から2023年3月31日までの3年5ヶ月間に、妊娠出産を理由に技能実習中断届出が提出された2,062人のうちわずか71人(3.4%)、技能実習の再開を希望する244人のうちでも71人(29%)しか技能実習を再開できていない現状について、また、技能実習の再開を可能とするために通知以外に何か方策を考えていますかという質問には、「入国後講習において各実習生に対して周知することとなっており、必要な情報を掲載した技能実習生手帳を確実に配布するなど制度の周知徹底を図っています。また妊娠出産における実習中断後の再開を含めて、技能実習生が妊娠等をした場合に監理団体等がとるべき対応の基本等及び地方入管や外国人技能実習機構への手続きの留意点と必要書類をまとめた資料を入管庁ホームページに掲載しており、引き続き監理団体等への周知に努めてまいります。」と周知を徹底するという回答しかありませんでした。
  3. 妊娠などの不利益取り扱いをした場合の行処分件数は、以前として0件。
  4. 強制帰国を防ぐための出国時の意思確認の申告件数は、2023年全国統計16400件(概数})申告件数11件でした。

2.入管業務について

  1. 「告示日本語教育機関」と「認定日本語教育機関」における取り扱いについての質問への回答は、「告示日本語教育機関の法務省令が改定され、5年間の経過措置を設けて、在留資格「留学」の生徒の受け入れを認める要件が、留学の過程をおく認定日本語教育機関であることに改定され、2029年3月31日までにその要件を整えなければならなくなりました。」とのことでした。
  2. 人身売買の被害者保護について
    回答は、2023年保護された外国人被害者は8名、国籍は全員フイリピン籍、在留資格は全員「興行」、8名のうち2名が福岡入管内というものでした。
  3. 2023年8月4日に斉藤法務大臣(当時)が示した送還忌避者のうち、日本で生まれた子ども在留特別許可の実施状況について、回答は「2022年12月末時点で在留資格のない送還忌避者のうち日本で生まれた子どもは201人、そのうち171人に、在留特別許可された。之に加えて、2023年1月1日から2024年6月10日までの間に日本で生まれた子ども41人にも在留特別許可が行われた。」ということでした。
  4. DV被害者の認定数
    2024年の回答では「2023年の件数については現在集計中であり、現時点でお答えすることは困難。」として回答がありませんでしたが、後日回答があり、「2023年のDV案件について、総数 20件うち女性20件。国籍別ではフイリピン11件、中国2件、イギリス1件、韓国1件、ケニア1件、バングラデッシュ1件、パキスタン1件、ベトナム1件、ミャンマー1件。
    原因  ○配偶者からの暴力、○配偶者からの暴力に準ずる言行。
    認知状況  在留審査手続き12件、相談7件、その他1件。

3.「特定技能」「登録支援機関」について

  1. 技能実習生制度の廃止に伴い「特定技能」の対象とならない職種について
    回答「技能実習2号の移行対象91職種167作業のうち85職種156作業、特定技能への移行が可能となっています。対応する特定産業分野が設定されていない6職種11作業、これらも今後、追加について検討する方針とのことでした。
  2. 登録支援機関数と登録後に登録取り消し処分の件数について
    回答は、「2023年12月末現在 9197件、2024年6月末で9780件、このうち九州・沖縄に住所を置く登録支援機関は、2023年12月末、880件2024年6月末で934件。登録支援機関に関する年度別の登録取り消し件数、2019年度0件、2020年度3件、2021年度4件2022年度7件。(追加質問で、2023年度の件数を尋ねましたが、登録支援機関の取消件数については、集計中ではなく、集計をしていないため出せない。)
  3. 在留資格「特定技能」の在留資格者への人権侵害・労働債や賃金未払いや解雇などについての育成就労支援機構と入管との関係について
    回答 「外国人技能実習機構に代わる外国人育成就労機構については、育成就労外国人の転籍支援 や1号特定技能外国人に対する相談・援助は業務に追加される」ことが明らかになりました。したがって、新しく作られる「外国人育成就労機構」は、育成就労外国人の転籍、1号特定技能外国人の相談・援助が新たな業務となりますが、特定技能外国人への人権侵害・労働債や賃金未払いや解雇などについては、入管が調査、指導・助言、改善命令、特定技能所属機関への受入れ停止、登録支援機関に対して登録取消の行政処分を行う

4.技能実習生制度について

  1. 技能実習生の失踪者数について
    回答は、「2023年に失踪した技能実習生は、全国で9753人、福岡入管内 1334人」
  2. 「元技能実習生の留学の在留資格の認定証明書交付許可申請での帰国後の在職証明書の必要性に関連して、育成就労制度には、「技術移転」の目的があるのかについて
    回答 2025年1月6日に留学担当の統括審査官から1,「育成就労制度は、技能実習制度に変わり、我が国の人財育成と人材確保を目的とする制度で、人材育成を通して技能移転を目的としていない」2,「育成就労の在留資格から他の在留資格への変更については、現在在留資格の諸手続きをどうするか検討中」との回答がありました。

5.2023年の改定入管法について

  1. 補完的保護対象者の国籍について
    回答は、「補完的保護対象者とは、難民条約上の難民の要件に該当しないが、補完的に保護が必要な外国人を保護する制度で、2023年12月から2024年2月末までの3ヶ月間に、全国で補完的保護対象者として認められた者の人数及び国籍については、総数が647人、そのうちウクライナ国籍の者が644人であり、スーダン国籍の者が3人」
  2. 罰則付き退去強制の対象国について
    回答「イラン・イスラム共和国が対象となります。」
  3. 出国命令制度の見直しの内容について
    回答「摘発前に出頭した者と摘発後に自発的に帰国する場合は、いずれも出国命令の対象になりえますが、前者が出国命令により出国した場合の上陸拒否期間が再来日の際に行おうとする活動内容に拘わらず、一律に1年となるのに対し、後者の上陸拒否期間は短期滞在の活動を行おうとする場合には5年、それ以外の活動を行おうとする場合には1年となりますので、この点において取り扱いの差異があります。」
  4. 創設された監護措置と仮放免許可の違いは
    回答「監理措置は、監理人による監理のもとで相当期間にわたり社会内での生活を認めるものであり、逃亡等防止するため監理人による指導監督、被監理者からの届出義務の履行、主任審査官が必要と認めた場合の監理人による報告義務の履行等、被監理者について適切な監理を行うものです。条文上、監理人による監理に付する措置とされており、監理人の存在を前提としています。他方で、監理措置の創設に伴い仮放免が許可されるのは、被収容者について健康上、人道上その他これに準ずる理由により収容を一時的に解除することが相当と認められるときと整理されており、これが認められない場合には仮放免が認められないことがあります。」

6.2024年の改定入管法について

  1. 永住許可の取り消しについて
    回答「入管庁としては、外国人及び関係者の予見可能性を確保するため、施行までに在留資格を取り消すことが想定される事例等についてガイドラインとして公表することを予定していますが、ガイドラインの具体的な内容や公表の時期については現在検討中です。」
  2. 育成就労制度の創設について
    1. 技能実習生が来日の際に抱える債務問題はどのように解決されるのでしょうか
      回答「現行の技能実習制度において指摘のあった高額な手数料等の問題も踏まえ、育成就労制度においては、育成就労計画の認定要件として送出機関に支払った費用の額が育成就労外国人の保護の観点から適正なものとして主務省令で定める基準に適合していることという要件を設けています。また、育成就労制度では、悪質な送出機関の廃除の実効性を高めるため新たに送出国政府との間で二国間取り決め(MOC)を作成した上で、当局間の定期協議等を通じて不適切な送出機関の通報や認定取消しの要請を行うことができるしくみを強化することとされています。 そして、このような通報や認定取消しの要請を行うことができる仕組みによって、送り出しの適正性が担保されていることを受け入れの条件とするのが相当であるため、育成就労制度では、原則として当該取り決めを作成した国の送出機関からのみ受け入れを行うものとされています。二国間取り決めの具体的な内容については、1,外国人が来日前に送出機関に支払う手数料等が不当に高額にならないよう送出機関が協議できる手数料の上限額を設定すること、2.送出機関から監理支援機関等への供応、キックバック等をしないこと等を記載することを検討しています。」
    2. 育成就労制度における転籍の要件として、日本語能力が上げられていますが具体的にどのような形で「日本語能力」の向上をはかることを考えているか
      回答「政府の方針においては、育成就労での就労開始前に日本語教育の参照枠に示されている日本語能力A1相当以上の試験合格又は相当講習の受講、特定技能1号移行時にA2相当以上の試験合格、特定技能2号移行時にB1相当以上の試験合格を定めることとしています。また、育成就労制度では、育成就労終了までにA2相当以上の試験を受験させることを受け入れ機関に求め、これを前提として育成就労計画を作成し育成就労を行わせなければならないとしています。さらに、認定日本語教育機関の仕組みの利用やオンライン技術の活用、母国における日本語学習教材の開発等により、日本語教育の質の向上をはかることを予定しています。具体的な内容は今後、現行の制度における取組みも踏まえながら検討することとしています。」

補足、在留外国人の妊娠出産問題の取り扱いについて

1.技能実習生の妊娠・出産問題について

  1. 在留資格の取扱いが、日本で出産する場合と送出国に帰国して出産する場合であれ、「所属機関に在籍又は契約機関との契約等に基づき我が国に在留する外国人の妊娠・出産等に伴う在留資格上の取扱いについて(通知)」(入管庁管第2352号 令和3年6月9日、以下、通知という)の通知に基づく運用が行われることが、2022年の回答で明らかになりましが、2023年、2024年も「当局の取り扱いにについて変更がない」という回答でした。
  2. 「技能実習生間で、日本で生まれた子どもには『特定活動』(在留期間6月)の在留資格が付与されることになりますが、原則として更新不可とされ、在留資格取得申請時に、帰国する旨を記載した誓約書の提出が求められています。更新が認められる『やむを得ないばあい』とは、どのような場合をいうのか」という質問には、「子を扶養する者が、日本で子を扶養する能力があるかなど個別具体的な事情を総合的に考慮して、更新の許否を判断することとなる」という回答でした。

※ 実例紹介
 2023年3月に日本で出産したシングルマザーの技能実習生の子に「特定活動」(在留期間6月)の行進が認められ、その後母親が「特定技能」の在留資格に変更できたため、日本で子育てをしながら就労し続けています。
  1. 日本で出産した技能実習生が児童相談所に相談して子どもを乳児院に預ける場合の在留資格や件数について
     2022年は「通知(入管庁管第2352号 令和3年6月9日)の対象とはならず、子どもは『特定活動』(法務大臣がここの外国人について特に指定する活動)が付与を判断することが想定されるが、個別に申請を地方入管に相談してほしい。」という回答でしたが、2023年は集計していないためお答えすることは、困難という回答でした。
  2. 技能実習生の妊娠・出産後の技能実週の再開が4%以下
     2023年の質問で、技能実習生妊娠出産後の技能実週の再開が2%以下しかない現状を打開するための監理団体などを通じての妊娠・出産に伴う不利益を与えてはいけないという通知以外の方策ついて質問しましたが、「入国後講習において確実習生に周知すること、必要な情報が掲載されている技能実習手帳を確実に配布することなど、周知徹底を張っていきたい」という回答でした。
     2024年の質問で、2017年11月1日から2023年3月31日までに、妊娠・出産を理由に「技能実習実施困難時届出書」を提出した2,062名の実習生のうち、実習の継続を希望したのは244名で、実際に実習を再開できたのはわずか71名に過ぎない。技能実習生の妊娠出産問題に取り組むとしながらも、制裁の実施など実効性のある対策を政府が行っていない結果、実習再開率が4%にも満たない現状は続き、「技能実習生は妊娠したら帰国」という状況は依然として変わっていない。
  3. 妊娠などの不利益取り扱いをした場合の行処分件数は0件
     妊娠出産した技能実習生に不利益取り扱いを行った場合の行政処分の件数の質問については、2019年3月の技能実習生の妊娠出産への不利益取り扱いを禁止する通知以降2024年9月現在までも0件という回答でした。
  4. 強制帰国を防ぐための出国時の意思確認の申告件数
     全国及び福岡入管内での統計で、技能実習生の出国時の意思確認を行った件数と、このうち技能実習生からの申告件数についての質問には、2022年の回答が全国統計12900件(概数)、申告件数1件でしたが、2023年は、全国統計16400件、申告件数11件でした。申告件数が少ない理由や改善策ついては、理由の回答はなく、今後とも対象者に周知を徹底し、より丁寧かつ慎重に手続きを行っていくという回答でした。

2.留学生(日本語学校生)の妊娠出産について

 「在籍校が休学を認めその後に復学の予定がある場合には、現に有する在留資格に該当する活動を行わないで在留していることについて正当な理由があるものとして取り扱うこととし、在留期間の更新などにおいても、個々の諸事情を踏まえ柔軟に審査をすることとなる。 また、出生した子について、個々の諸事情を踏まえて審査することとなる。」という2023年の回答も2022年と同じ回答でした。

3.「特定技能」(1号)の在留資格者間の妊娠出産について

 これについては、「在留資格「特定技能1号」については、原則として家族帯同を認めていないものの、特定技能1号の活動を行う外国人同士の間に生まれた子のように、特に人道上の配慮が必要と認められる場合には、入管庁第2352号通知の対象とはなりませんが、別途在留資格『特定活動』として在留を認めています。」という2022年、2023年の回答と同じでした。

4.「家族滞在」の在留資格間で妊娠出産について

 家族滞在間の父母の間に、日本で生まれた子の在留資格のとり扱いに関して、令和3年6月9日の地方入国管理局長への通知(家族滞在の在留資格の適用のない出生子へ「特定活動」(在留期間6月、原則更新なし)を付与する)の適用があるのかという質問については、「在留資格『家族滞在』間の子の日本での出生を、そもそも想定しておらず、令和3年6月9日の地方入国管理局長への通知の適用はない。 個別のケースごとに、判断しており、統一的な運用はしていない。(事例により「特定活動」の在留資格を付与した例もあるとのことでした。)」という回答でした。

5.技能実習生の失踪者数について

 2023年の回答は、「2022年に失踪した技能実習生は、全国で9006人。技能実習生が失踪する主な原因として、賃金の不払いなど実習実施側の不適切な取り扱い、入国時に支払った費用な回収など技能実習生側の経済的な事情などが考えられますが、失踪原因を明確に特定することは、困難であり、また、失踪者数が増加した原因についても明確にすることは困難です。」というものでした。 2023年に失踪した技能実習生は「、全国で9753人、福岡入管内 1334人」という回答でした

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