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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-402

須藤眞一郎行政書士事務所気付

技能実習制度の問題

「人身売買をなくすためのシンポジウム」にて

弁護士 小野寺 信勝

(2013年9月7日平成25年度男女共同参画inパレア ワークショップ参加企画 、 くまもと県民交流館パレアで開催されたコムスタカー外国人と共に生きる会主催の「人身売買をなくすためのシンポジウム」での小野寺信勝弁護士の特別報告を以下、掲載します。)


私は、外国人研修制度問題弁護士連絡会の共同代表を務めており、技能実習制度の問題について弁護士として支援活動にあたっております。また、日弁連の技能実習生問題プロジェクトチームの一員として、日弁連としての意見書の作成にも関わっております。  

ただ、技能実習制度は、弁護士の業界の中でも、個別具体的な人権問題という認識はありましたが、人身取引の文脈では近時まで語られていない問題でした。  

私の報告の中では、どういう問題が起きているのか、具体的な事例報告をさせていただきたいと思います。  

私たちに寄せられる技能実習制度の問題として最も多いのは、長時間労働の問題や低賃金問題などですが、その他にも、暴力やセクハラ、最近では過労死の問題も寄せられています。中島さんの報告にもありましたが、従前は中国人からの相談が最も多かったのですが、近時は受け入れ国の変化に伴って、ベトナムやカンボジア、バングラディッシュなどの実習生からの相談も増えています。  

具体的にどういう事件が起きているのか。最も典型的な問題であった、2008年に天草市の縫製工場で起きた事件を紹介します。相談者は20代の女性4名、縫製工場で縫製業務に従事していました。来日に先立って、中国の派遣会社に「保証金」として、4万元(日本円で約60万円)支払っています。これは、彼女たちの当時の年収の2〜3年分にあたります。来日すると、会社にパスポート・印鑑・通帳を取り上げられました。そして、給料が月6万円、残業代が時給300円という労働条件の下で働いていました。この給料のうち、1万5千円のみが彼女らに支給され、残りは会社に強制貯金させられました。労働時間は、午前8時半から午後10時まで。遅いときは、午前3時まで。休日は、月に1日か2日という状態でした。これが最も典型的な労働相談です。2010年に新制度に変わった後も、同種の相談は多く寄せられています。  

次に、長崎県島原市の縫製工場の例を紹介します。この件は、労働条件は天草の事件とほぼ同じでした。(画像を示しながら)ご覧の通り、立ったまま作業しています。これで12時間、縫製作業に従事します。椅子に座ると眠くなるからという理由で椅子を設置してもらえなかったようです。この件では、不正が起きないよう管理する任にあたる管理団体が、このような違法行為を容認というか、推進しています。(画像を示しながら)これは、管理団体が作成した罰金規程です。この規程では、団体交渉が反則行為とされ、団体交渉をすると50万円の罰金が科せられます。その上で、保証金の没収と即時強制帰国。他には、異性と交際した場合、ゴミだしを怠った場合、門限を破った場合などにも罰金が科せられることになっています。これは、長崎の事案なのですが、全く同種の罰金規程が全国的に出回っていて、岐阜県の事案でも同じ規程が使われていたことが、裁判で明らかになりました。  

次に、徳島県の事案です。実習生を受け入れる場合には、1年間で3人までしか受け入れてはいけないことになっています。しかし、現場は人手が欲しい。そこで、徳島のこの会社は、1つの会社を4つに分割し、年間で12人、(3年間で)合計36名受け入れられるようにしました。しかし、この会社の日本人従業員は2人しかおらず、労務管理が行き届かないという問題がありました。そこで、作業場に(何か所も)ビデオカメラを設置し、日本人従業員が管理室に常駐して、ビデオカメラを通して実習生の作業の様子を監視していました。ここは、原告が14名いるのですが、未払い賃金の合計は、最低賃金で計算しても、1億円を超えました。また、この件では原告の1人が交通事故に遭われたのですが、その賠償金も会社に取られていた、という事案でした。  

(画像を示しながら)同じ会社の寮の様子です。寮費は月3万円で、給料から天引きされていました。しかし、ご覧の通り、2段ベッドがすし詰め状態に置かれており、ここで30名近くが生活するという、劣悪な環境です。  

次に鹿児島県の事案を紹介します。(画像を示しながら)この工場の横に設置された木造の部分が「寮」です。ここに6名の実習生が住んでいました。ここの実習生は、外出が月に1回しか許されていませんでした。しかも、その1回というのが、社長と一緒に、1か月分の食材をスーパーに買い出しに行くというものでした。その上、この工場の周辺は、ネズミとか蛇が出るような場所で、買っておいた食材が食べられることもありました。これが、ネズミの糞の写真です。ここの実習生は、会社にいったん取られたパスポートを返してもらうことはできました。そして返してもらったパスポートをインスタントラーメンの袋に入れて冷蔵庫に隠しておいたのですが、再び会社に取られるのではないかと怯え、夜中に窓から抜け出し、地面に穴を掘って埋めていました。私たちがここの実習生からの相談を受けた際、実習生のうちの何名かは、不正確な表現かもしれませんが、精神的に普通ではないという印象を受け、非常に大変な状態でした。  

次に、熊本県の事案です。(画像を示しながら)これは、県からの補助金を受けていた社団法人が農家向けに発行している文書のコピーです。内容は、農家に対して、実習生を、1年目は時給350円、2年目は400円、3年目は450円で受け入れませんか、という募集です。

(画像を示しながら)次は、JITCOが発表した実習生の死亡者数です。少し古いものですが、JITCOの発表によれば、1992年から2008年までの研修生・技能実習生の死亡者は213名、うち過労死が疑われる脳心臓疾患が67名、自殺が20名でした。  

次の画像は、来日にあたって母国で結んだ契約書の翻訳のコピーです。非違行為、つまり、やってはいけない行為として、契約期間に他人と同居・結婚・妊娠することとあり、違反したら即時帰国させられます。それから現地の行政、社会団体、メディアに訴えてはいけない、とあります。これらに違反すると、保証金は全額没収、違約金として20万元(日本円で約300万円)を支払うことになります。それから、この罰金を支払うために、保証人は家を抵当に入れることが書かれています。  

(画像を示しながら)これは、かつてJITCOが作成し発行していた書式です。内容は、会社側に、パスポートを実習生から受け取る際はこの書式を使って署名してもらって下さい、というものです。つまり、JITCO自体が、パスポートの取り上げを容認していたというのが私たちの主張です。  

(2010年に入管法が改正され)制度が変わってからも、事態は全く変わっていません。長崎県の縫製工場で起きた事件で、現在、京都で裁判中のバングラディッシュからの実習生の例を紹介します。ここは、労働時間は、午前8時半から午後10時までと、先ほどと同じようなケースですが、給料は最低賃金は一応守られていました。しかし、そこから寮費などとして4万円が控除されていました。さらに、この件ではバングラディッシュのブローカーも一緒に働いていて、彼に月5万円を払っていました。そうすると、手元に1万円しか残らない。残業代は出ていません。彼女は、来日する前に、日本円で40万円の保証金を支払っており、3年間働いたとしても、赤字にしかならないというケースです。これは、その会社の写真です。ここも、先ほどの徳島の例と同じく、ひとつの会社が4つに分割し、且つ協同組合まで作っていました。私たちが相談を受けている限りでは、制度が変わってもさほど変化はなく、むしろ巧妙化しているという印象です。  

最後に紹介するのは、鹿児島の実習生からもらった漢詩です(画像)。これは実習生の間で「よみ人知らず」の詩として出回っていたそうです。これを夜な夜な眺めては泣いていたそうです。

人生短短几个秋(人生は短い、何度目の秋)
美好生活必所求(幸せな生活を求め)
告?故?与?友(故郷、家族や親戚、友人と離れて)
?了梦想来日修(夢と希望のために日本に来た)
梦想??天地?(夢と現実は天と地にように違った)
无奈他??回?(異国の地で、帰国することもできない)
?天工作累如牛(毎日、牛のように働かされた)
一年四季无假休(一年春夏秋冬、休みもなく)
受人欺?无理由(いわれない侮辱も受けた)
回?往事已成旧(過ぎた日々は、もう古い思い出)
三年光?似水流(三年間は水の流れのように過ぎ去った)
如果光?能重来(もし、もう一度機会があっても)
再也不愿来日修(再び日本に来たくはない)  

これで私の報告を終わります。ありがとうございました  

   
 

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