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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

日本で出産し、技能実習を継続できたベトナム人技能実習生からの妊娠と出産の相談

中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会代表)      

(1)相談の経緯

 2019年12月中旬に、カトリックのシスターから妊娠中のベトナム人技能実習生のことで相談が入り、仕事が終わった後で、シスターと共に彼女と会って話をしました。 彼女から、「妊娠していることに気が付くのが遅くなったこと、妊娠していることを会社や監理団体にいうと、会社を首になって、ベトナムへ送り返されると思い、怖くて言えなかったこと」を聞きました。 彼女の希望は日本で出産し、産休を取って技能実習も継続したいというものでした。 相手の男性も、別の監理団体と会社で働くベトナム人技能実習生で、二人は結婚する意思がありましたが、彼もまた彼女に妊娠させたことが監理団体や会社に知られると帰国させられると思い、何も言えませんでした。 その日の夜に緊急に「保護してほしい」と彼女から連絡があり、コムスタカで一時保護することになりました。

 翌日、会社や監理団体と連絡を取り、妊娠している事情と日本で出産したいという彼女の希望を伝えました。 監理団体や会社とも、2019年3月12日付法務省入国管理局、外国人技能実習機構、厚生労働省から監理団体や実習実施者への「妊娠している技能実習性に不利益的取り扱いをしてはならない」という通知について知っていました。 翌々日に監理団体と会社、本人とその支援者や通訳者が集まり、交渉して、その合意を得ることができました。 また、子の父親の監理団体や実習実施者の会社にも連絡して、出産への立会や育児のための有給休暇の活用などの配慮をお願いして了解を得ました。 母親と子どもの在留資格、技能実習計画の中断、産休手当、出産する病院や通訳者の問題や出産後の産休や育児休暇など、様々な課題がありました。 日本で出産することの余りの課題と困難の多さに、彼女に「まだ飛行機に乗れるのなら、ベトナムで帰国して出産した方がよい」という意見をいう支援者もいました。 彼女の意思は、日本で出産したいということでした。

(2)子どもの出産後の経緯

 出産予定日は2020年1月下旬でしたが、彼女は妊娠34週の2019年12月下旬に子どもを出産しました。 前日から腹部が痛み出し、夜中我慢できずに近くの病院に連れて行ってもらったところ、母子手帳と以前別の病院で診察を受けていることで入院が可能となり、母子とも危ない状態ということで帝王切開し、35週目で出産となりましたが、母子とも無事でした。

 母親は2020年1月上旬に退院しました。

 子どもが日本で生まれたということは、出産した日に、福岡出入国在留管理局、外国人技能実習機構福岡支部熊本出張所、母親の監理団体、実習実施者の会社、子の父親の会社と監理団体のそれぞれの担当者に連絡報告しました。 そして、退院後の母子の生活と育児ができるために、支援者の協力で熊本市内でアパートを借りることができました。 2019年末までに、母親の熊本市への転居を届出、子どもの出生届を出しました。 そして、2020年1月上旬に母子の世帯の住民票・出生届記載事項証明書の発行が認められました。 母親が退院した後も、子どもは未熟児で養育療養対象となって退院が遅れていましたが、同年1月中旬に退院できました。

 1月上旬に、福岡入管の担当者に現状報告と在留資格の取扱いについて相談したところ、母親については、期間更新申請を保留として(2020年3月上旬まで最大2ヶ月可能)その間は「技能実習」の在留資格が適法として健康保険の適用を可能とする、 また、子どもの在留資格については、当初は「短期滞在しかない」(住民票がなく、健康保険の適用を得られない)」といわれましたが、国会の厚生労働委員会の2019年3月12日議事録での答弁を根拠に、子どもに「特定活動」が付与される場合があり得ることを伝えた結果、とりあえず子どもの在留資格の取得は「特定活動」での申請を勧められました。

 生まれた子どもの健康保険(母親の扶養家族として)の加入についても1月上旬に会社の担当者に必要書類を送り、会社の方で手続きを進めてもらえることになりました。 同年1月中旬に退院した子どもは、出産時に比べて成長し、順調ということでした。 そして、同年1月中旬に入管へ、子どもの在留資格(特定活動)の取得申請を行い、受理されました。 子の在留資格取得は、子の出生後60日以内に決定されます。 また、子どもの両親は、子の出生届、子のパスポートの作成、両親の婚姻届をベトナムの福岡領事館へ同年1月下旬に提出し、2月下旬に取得できました。

 そして、2月下旬に、おそらく日本で外国人技能実習性の間に生まれた子どもとして初めての「特定活動」の在留資格の取得(在留期間4月)が認められました。 また母親についても、「技能実習2号 ロ」の在留資格の期間更新(在留期間 1年間)が認められました。

(3)出産後の育児から帰国と職場復帰

 母親は、2019年12月中旬から有給休暇を使用し、12月下旬から産休を取得して休職していました。 そして、出産後、8週間取得できる産休を使い、2020年2月中旬まで休職しました。 育児休暇については、有期雇用契約のため、申請人の母親は、技能実習期間が残り1年しかなく、1年6カ月の契約期間以上の雇用継続の見込みが必要と会社から言われ、取得できる見込みがありませんでした。 しかし、会社からは、育児休業手当は出ないが在職のまま育児のために休職をしてよいと言われています。

 母親は同年2月中に子どもをベトナムに連れて帰り、母親の実家に預け、3月上旬までに日本に戻ってきて、3月上旬か、あるいは中旬から職場復帰する予定で、入管や外国人技能実習機構、監理団体や会社など関係機関で調整をすすめました。 また、子の父親も、育児休暇が使えないため、母子の住むアパートに同居し、実習先の職場へ通勤して、夜の育児介護、週末の休日の育児介護をしています。 子どもをベトナムにつれて帰る予定の2月末までを、母親の残っている有給休暇も使いながら父母と、カトリックの女性信徒の皆さんや支援者の力で子どもの育児を乗り越えました。

 新型コロナウイルス感染拡大による航空機の便が減少し、各国が入国制限を拡大する中、無事飛行機が飛ぶのか不安でしたが2020年2月末、子どもを連れて、両親はベトナムへ一時帰国し、3月上旬に再来日し、無事職場復帰することができました。

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