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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

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須藤眞一郎行政書士事務所気付

ベトナム人技能実習生リンさんの死体遺棄事件控訴審に提出された 控訴趣意書の骨子

2021年10月10日
コムスタカ 代表 中島 眞一郎

 ※ この文章は、2021年10月9日(土)に熊本市国際交流会館ホールで行った、ベトナム人技能実習生リンさんの刑事裁判控訴審へ無罪判決を求める記者会見で配布した「記者会見に参加された皆さんへ」を、公開用に編集しなおしたものです。


1,これまでの経緯

 2021年11月19日死体遺棄容疑で逮捕され、同年12月10日刑法第190条死体遺棄罪で起訴されたベトナム人技能実習生レー ティ トゥイ リンさん(以下リンさん)は、無罪を主張しています。 しかし、2021年7月20日に熊本地方裁判所は「懲役 8月、執行猶予3年」の有罪判決を言い渡しました。 この判決を不服として、リンさんは、福岡高等裁判所に控訴しました。 福岡高等裁判所(第2刑事部 辻川 靖夫 裁判長裁判官)より、11月12日(金曜日)午後1時30分から控訴審第1回期日の通知が送られてきました。 リンさんの控訴趣意書は、10月8日までに2人の刑法学者の意見書と3人のベトナムの専門家の意見書を付けて提出します。 また、リンさんの在留資格は、「技能実習2号ロ」の在留期間(4月)の延長許可申請が認められ、2022年1月29日まで在留期限があります。


2,原判決(2021年7月20日 杉原判決)の骨子

 「被告人に埋葬の意思があっても、死産をまわりに隠したまま、私的に埋葬するための準備であり、正常な埋葬のための準備でないから、国民の一般的な宗教感情を害することが明らかである」 「墓地・埋葬に関する法律は、不審な死であるかどうかを確認するための規制であり、一般的な宗教感情を害するかどうかとは関係がない」 「少なくとも、まわりの人に、出産や死産を告白し、助力を求めることはできたはずである」として、死体遺棄罪の成立を認め、懲役8月、執行猶予3年の有罪判決を宣告した。


3,原判決を批判し、無罪を求める控訴趣意書の反論骨子

  • 原判決は「私的埋葬の準備であり、正常な埋葬のための準備ではない、国民の一般的な宗教感情を害する」とするが、何が「私的埋葬」、「正常な埋葬」であるか、「国民の一般的な宗教感情」とは何かについて何ら論証していない。
  • リンさんは妊娠したことを誰にも相談できず死産したが、遺体を隠そうとはしておらず、妊娠―死産を誰にも相談しなかったことは犯罪ではない。
  • リンさんの当日の行為は、ベトナムの法律、埋葬文化や慣習にそったものであり、また日本社会の一般的な宗教感情に反するものでない。
  • 原判決は、墓地・埋葬に関する法律を「不審な死であるかどうかを確認するための規制である」として同法は関係ないとするが、同法第3条で、「24時間の埋葬等を禁止する」趣旨は、「蘇生の可能性を認めて、命を守る」趣旨の規制であり、同法は、日本社会の宗教感情に配慮した法律であり、死体遺棄罪の成立に関係・影響する。
  • リンさんは、遺体を納棺し、安置しただけで、私的埋葬という実行行為を行っていないにもかかわらず、原判決が「私的埋葬のための準備」であるから死体遺棄罪にあたるという認定は、未遂罪も予備罪もない死体遺棄罪に新たに予備罪を創設したに等しく、罪刑法定主義に反する。
  • リンさんは、死産当日、双子の遺体のそばから離れておらず、罪に問われている時間も1日程度であり、遺体から離去せず、このような短期間で、死体遺棄罪の成立が認められた例は過去なく、死体遺棄罪は成立しない。

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