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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

ベトナム人元技能実習生リンさん死体遺棄事件最高裁判決について


 ベトナム人元技能実習生レー ティ トゥイ リンさん(以下、リンさん)の死体遺棄事件について、 2023年3月24日に最高裁判所第二小法廷(草野耕一裁判長)は、「主文 原判決及び第1審判決を破棄する。被告人を無罪」という逆転勝訴判決を裁判官4名の全員一致で言い渡しました。

 2020年11月19日のリンさんの逮捕後から最高裁での無罪判決まで約2年4か月かかりましたが、最高裁判所での逆転無罪判決という勝訴で、リンさんの死体遺棄事件刑事裁判を終わることができました。

 最高裁判決文と判決当日の報告集会でのリンさんのアピール文、コムスタカからのコメントを以下掲載します。

最高裁判決文

3月24日判決後の報告集会でのリンさんアピール文    

3月24日報告集会でのコムスタカー外国人と共に生きる会の発言

 2023年3月24日  佐久間 順子(コムスタカー外国人と共に生きる会事務局長



 まず皆様にお礼を申し上げます。

 これまで本当にたくさんの方が応援してくださり、協力してくださり、興味をもってくださり、一人一人の協力があったからこそ、リンさんの無罪が勝ち取れたと思います。 ありがとうございます。

 そして、リンさんにお詫びとお礼を申し上げたいと思います。

 もし日本社会が、本来なら保障されているはずの権利、技能実習生が妊娠しても解雇されず、強制帰国させられることなく日本人労働者と同じように産休をとり仕事を継続することができるという権利をあたりまえのように行使することができる社会であったなら、リンさんは孤立出産に追い込まれなくてよかったかもしれません。もし日本社会が、孤立出産に追い込まれた女性を擁護し、支援していく社会であったのなら、リンさんは逮捕起訴されることもなかったと思います。

 しかし、残念なことに、日本社会では、仕事を継続する権利は保障されているはずなのに、実際には技能実習生が妊娠したら帰国させられることがあたりまえのように行われていました。

 リンさんの事件を知った時に、技能実習生に自分たちの権利や妊娠出産に関する日本の制度を知ってほしい、また妊娠しても一人で悩まずに相談してほしいという思いから、色んな方の協力を得て日本での妊娠という多言語サイトを2021年3月に起ち上げました。技能実習生が自分の権利を知り、主張すれば、妊娠しても送り返されることはなくなるのではと思っていたのですが、サイトを起ち上げてから2か月後に、コムスタカにフィリピン人技能実習生から相談の連絡が入りました。彼女は、日本での妊娠のサイトも見てくれて、技能実習生が妊娠しても産休を取り実習を継続できることを知っていました。技能実習機構が出している妊娠に関する不利益取り扱いの通知を監理団体や実習実施先に見せ、自分の権利と希望を主張していたのですが、技能実習計画通りに実習が行えないので、実習を中断して帰国しなければならないと言われ、退職に追い込まれました。彼女は技能実習機構にも相談しましたが、大した介入は行われませんでした。技能実習生が自分の権利を知り主張してもその声は消されてしまいます。保障されているはずの権利が行使できずにいます。リンさんが、妊娠を監理団体や実習実施者に相談していたら、解雇され帰国させれていた可能性の方が大きかったのではと思います。

 そして、残念なことに日本社会は、孤立出産をした女性に対して、差別と偏見を持って、擁護対象者ではなく犯罪者としてあつかってしまう冷たい社会でした。そんな日本社会なので、リンさんは孤立死産をしたことで逮捕起訴され、一審、二審とで有罪判決を受け、多くの誹謗中傷を浴びせられながら、戦い続けて無罪を勝ち取るしかありませんでした。こんな日本社会でリンさんに本当に申し訳ないという思いがあります。

 しかし、リンさんは、親としての愛情を持って行った自分の行動に間違いはなかったと信じ、この2年半ほどをずっと無実を訴え戦い抜いてきてくれました。

 そして、リンさんがあきらめずに戦い続けてくれたことで、技能実習生を取り巻く環境は少しづつ変わっていると思います。リンさんが逮捕された当初は、メディアでもリンさんは子どもを遺棄した犯罪者という扱いでした。しかし、リンさんが無罪を主張し続けてくれる中で、技能実習生の問題、孤立出産の問題が大きく取りざたされるようになり、少しずつ理解が広がっていったと思います。リンさんのおかげで、妊娠した技能実習生を送り返すことは許されないという考えが浸透してきて、それによって救われた技能実習生も少なくないのではと思います。

  今回無罪判決がでたことで、孤立出産に追い込まれる女性たちが犯罪者として扱われるのではなく、擁護と支援が必要な人として扱われ、適切なケアが受けれるような体制が整っていくのではと期待しています。 また、現在の矛盾と問題に満ちた技能実習制度を廃止して、外国人労働者を単なる労働力ではなく、妊娠出産もする生活者として受け入れる制度になっていくと期待します。

 リンさんがあきらめずに無罪を主張し続けてくれたおかげで、多くの技能実習生、外国人、日本に住む女性に希望が見えたのではと思います。また、私たちコムスタカもあきらめずに戦い続ければ社会は変えられると実感することができて、今後の活動にも希望がもてました。

 心からリンさんには感謝したいです。

 ありがとうございました。
 

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