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須藤眞一郎行政書士事務所気付
2017年12月17日 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会代表)
はじめに
2016年活動報告は 2017年4月30日発行のコムスタカ第94号に掲載される予定でしたが、2016年4月の熊本地震の発生と被災により外国人被災者救援活動に取り組み、それを報告する特集号や熊本地震外国人被災者シングルマザー調査報告書の発刊などに取組んだため今号まで延期となっていました。
ようやく2017年9月に入り、コムスタカの活動も熊本地震以前の日常活動に戻ってきましたので、2016年のコムスタカ―外国人と共に生きる会の活動報告を以下掲載します。
注: 熊本地震による発災とその後の救援支援活動の影響で、2016年4月14日から5月20日ごろまでの約1ヶ月余りの相談記録が残っていなかったこと、また、以下の数値には、コムスタカが熊本地震発災後に取り組んだ、「外国籍被災者の救援―支援活動緊急融資、多言語情報の提供、熊本市交際交流会館の炊き出し、外国人被災者シングルマザー調査」等にともなう相談は含めていません。
1.相談活動
@ 相談件数
2016年 電話での相談は、延べ1000件余りに及びますが、相談の解決へ向け取組んだのは、212件です。電話のみの対応97件、面談71件、訪問14件、同行支援は30件でした。
A 性別等
212件のうち142件(67%)が移住女性、40件(19%)が子どもの問題(国籍取得、認知、養育費請求、日本への呼び寄せなど)、30件(14%)が移住男性の問題でした。
B 国籍別
国籍別では、フィリピン籍152件(72%)、と一番多く、二番目が中国籍の21件(10%)、日本人からの外国人に関する相談9件(4%)、その他の国籍が、パキスタン、ペルー、ベトナム、ネパール、ブラジル、ウズベキスタン、イギリス、アメリカなど相談者の国籍も11カ国と多様化しています。
C 地域別
熊本県内が、179件(84%)と大半を占めますが、熊本県外が33件(16%)でした。熊本県外の内訳は、九州内17件(8%)九州外18件(9%)、海外から1件(フイリピン、0.5%)
D 相談内容(相談1ケースに複数の内容を含む)
相談の内容別では、在留資格に関する相談58件、夫婦関係に関する相談43件(うちDVに関する相談29件)、子どもに関する相談40件、社会福祉や社会保険制度に関する相談21件、借金や生活費に関する相談が13件、雇用に関する相談8件、警察に関係する相談7件、相続に関する相談4件、技能実習生に関する相談3件。
在留資格(ビザ)をめぐる相談が最も多いのですが、その中には在留資格を喪失し、非正規滞在者となった外国人に関する相談、次に夫婦関係の破綻に伴う相談が多いのですが、その中にはDVの伴う相談、フィリピン女性の重婚に伴う相談、離婚や子の親権や養育費などの裁判所での調停や訴訟が伴う相談もあります。
技能実習生からの相談、さらに、外国人が逮捕された場合のその家族や関係者からの相談など、解決へ向け複雑化や難度の高い相談が寄せられています。
E 訴訟等の相談
2016年に、婚姻費用請求、子の面会交流、養育費、親子関係不存在、離婚、婚姻存在確認、子の認知など裁判所での調停や訴訟支援をした。係争中のケースは9件(うち弁護士を代理人とした日本人夫等から訴えられた相談が2件)でした。
2. 熊本地震外国人被災者救援活動
@ コムスタカの熊本地震発災時の緊急救援・支援活動
コムスタカは、熊本地震が発生した4月14日の翌日から、在住外国人被災者支援のため熊本市中央区にある熊本市国際交流会館が外国人への緊急避難所として開設されていることと、多言語対応できる外国人専用の相談電話番号を、これまで関係してきた外国人らに電子メールやSNSなどで知らせました。
また、コムスタカのホームページにおいても、翻訳ボランテイアの方々の協力を得て日本語ばかりの地震情報の英語、中国語、韓国語、インドネシア語やベトナム語の多言語情報による発信を始めました。
外国人への避難所となった熊本市国際交流会館で、熊本市など行政からの食料供給とは別に、熊本市国際交流会館玄関前の公開敷地で、4月16日から17日までは、避難者の自主的な炊き出しとコムスタカなどボランテイア団体による支援物資の差し入れで、4月18日以降から4月30日までコムスタカの責任で炊き出しを行い、避難者にあったかい食事を提供しました。
地震後1週間は100食程度、2週間目から閉鎖される4月30日までは40食から70を提供してきました。
また、避難している外国人家族の避難所退所後の転居先確保の相談や諸手続きへの同行支援、在住外国人の中でも社会的弱者であるDV被害者、生活困窮者、シングルマザー、刑事施設に拘留されている外国人などコムスタカへ相談が寄せられていた外国人の安否確認や被災状況把握や今後の生活や就労問題等の相談に取り組みました。
A コムスタカの熊本地震!外国人被災者に対する中長期の支援活動
コムスタカ―外国人と共に生きる会では、2016年5月以降は、緊急支援活動とともに外国人被災者への中長期的な取り組みも視野に入れた支援活動へ切り替えて、以下のような取り組みを行いました。
3. 啓発のための活動
2016年は、4月の熊本地震発災後の7月と10月に2つの企画をくまもと県民交流会館パレアで行いました。
@ 7月3日に、「熊本地震!外国人被災者救援活動の歩みと課題を考えるシンポジウム」報告を、主に在住外国人を対象に企画しました。主催者側の予想を大幅に超え、定員約50名に80名余りの参加がありました。
A 10月23日に、「DVをなくすために、加害者対策を考えるシンポジウム」を、企画しました。当日は、50名を超える参加がありました。
4. コムスタカ関係機関への参加
5. 外国籍住民への施策の提言活動
@ DV加害者対策を含むDV被害者総合支援政策
熊本県は、DV加害者対策を含む新たなDV被害者総合支援策を、2015年度からDV対策の実務者会議を設置し、具体的な検討が始まり、2016年度から具体化する方向で予算措置を含めた取り組みがなされていましたが、同年4月の熊本地震の発生により、実施が延期となりました。
(なお、この事業は、2017年度より、DV被害者総合支援・DV加害者対応モデル事業として、コムスタカ―外国人と共に生きる会が受任団体となり熊本県と厚生労働省の予算により実施されています。)
A ヘイトスピーチ解消法の成立
コムスタカ―外国人と共に生きる会も、2014年7月の「人種・民族差別をなくすためのシンポジウムーヘイトスピーチを考える」の開催、2015年3月熊本県議会での意見書の採択、熊本県内45市町村での意見書採択を求める活動に取組んできましたが、2016年5月、国会でヘイトスピーチ解消法が成立し、同年6月から公布施行されました。
B 災害時の多文化共生へ向けた提言
2016年7月以降、講演やセミナーなど熊本地震でのコムスタカの被災外国人救援活動の体験を話す機会があるごとに、熊本県や熊本市など行政の外国人被災者への対応の不十分さを指摘し、災害時の多文化共生の在り方について提言しました。
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