本文へスキップ

コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

2022年コムスタカ活動報告Activity report 2022

 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会代表)

コムスタカの相談活動概要

2022年の相談件数は、342件。 2020年の404件、2021年360件から18件減少しました。
 相談者の性別では、外国籍女性の比率は78%で、従来と比べやや低下し、男性の比率が22%と増加してきました。
 年齢別では、2019年までは40代~50代が最も多かったのに対し、2020年以降から、20代の相談が最も多くなりました。 また、30代や10代の相談も増えてきており、若い年齢層からの相談が増加する傾向にあります。 これは、若い年齢層の多い技能実習生や留学生等からの相談の増加によるものです。
 国籍別では、10ヶ国(昨年の13ヶ国から減少)。 フィリピン籍からの相談が58%、ベトナム籍が25%、中国籍5%の順でした。 それ以外は、アフガニスタン、タイ、ネパール、パキスタン、アメリカ等、より多様化しています。 特にベトナム籍からの相談の増加が目立ちます。
 相談内容別に見ると、2021年は、@訴訟、A技能実習、Bビザ゙・在留資格・国籍、C夫婦関係、DDV、E住居の順だったのに比べ、2022年には、@技能実習、Aビザ・在留資格・国籍、B訴訟、C子ども、DDV、E夫婦関係に関する相談という順に変わってきました。
 また、2020年は、新型コロナウィルス感染拡大の影響から、生活困窮への公的支援、住居、雇用に関する相談が増加していましたが、2021年はそれらの相談は半減。 2022年は新型コロナ感染拡大の影響が落ち着いてきて、さらに減少しました。 その一方、技能実習生からの相談が急増しました。 また、子どもに関する相談、DV被害に関する相談も増加してきています。

1.相談活動

@ 相談件数
 2022年は、電話での受付数は延べ1000件以上に及びますが、相談の解決に向け取組んだのは342件です。 電話のみの対応217件、面談73件、同行支援29件、訪問23件でした。 新型コロナウィルスの影響による制約(オンラインを使った面談など)はありますが、面談や同行、訪問の件数は2021年に比べて増加しました。

A 性別
 342件のうち266件(78%)が移住女性、76件(22%)が移住男性を対象とした相談でした。 2021年に比べて、移住女性からの相談が84%から78%へ減少し、移住男性からの相談が16%から22%に増加しました。

B 国籍別
 国籍別では、フィリピン籍が217件(63%)と最も多く、次にベトナム籍84件(25%)、中国籍18件(5%)。 次に、日本人からの外国人に関する相談7件(2%)でした。 その他は、アフガニスタン籍6件、タイ籍4件、ミャンマー籍2件、ネパール籍2件、その他2件でした。 国籍は10ヶ国に及びました。
    
C 年齢別
 年齢別では10代未満13件(4%)、10代24件(7%)、20代123件(36%)、30代83件(24%)、40代65件(19%)、50代29件(8%)、60代以上5件(1%)となっています。
 2019年までは30代や40代が多い傾向でしたが、近年は技能実習生や留学生の相談が増えたことから、20〜30代、10代の相談が多くなってきました。 なお10代未満とは、子どものいじめ、認知、日本へ呼び寄せの相談等によるものです。

D 相談経路別(主訴)
 2022年の相談の経路別では、電話相談が217件(63%)で、電話相談のみで解決する相談が最も多いのですが、面談(オンラインを含む)73件(21%)、同行29件(8%)、訪問23件(7%)などの相談も増加してきています。

E 地域別
 熊本県内が、254件(74%)と大半を占めますが、熊本県外からも88件(26%)ありました。 熊本県外の内訳は、九州内22件(6%)、九州外36件(11%)、海外(フィリピン、中国)から31件(9%)でした。 海外からの相談件数も増加しています。
    
F 相談内容(主訴別)
 相談の内容別では、

  • 技能実習生関連107件(31%)
  • 在留資格等関連70件(20%)
  • 調停や訴訟関連51件(15%)
  • 子どもに関する相談29件(8%)
  • DVに関する相談25件(7%)
  • 離婚・結婚など夫婦関係14件(4%)
  • 生活困窮等、経済生活関連13件(4%)
  • 社会保険や雇用保険関連12件(4%)
  • 住居に関する相談8件(2%)
  • 社会福祉制度に関する相談5件(2%)
  • その他 8件でした。
 2022年は、技能実習生に関する相談が100件を超え、最も多くなりました。 技能実習生からの相談内容は、雇用、転籍、賃金残業代未払いなど労働条件に関することが多いのですが、妊娠-出産に関する相談や労災事故に関する相談も増加しました。 2019年まで最も多かったビザや在留資格や国籍に関する相談件数は、コロナ禍でここ数年減少していましたが、2022年は入国規制の緩和などにより増加に転じています。 夫婦関係に伴う相談は2021年より減少しましたが、子どもに関する相談やDVに関する相談は増加しました。 その中には主訴がDVでなくとも、DVの伴う相談、子の親権や養育費などの裁判所での調停や訴訟が伴う相談も含まれます。 また新型コロナウィルス拡大に伴う経済的困窮による雇用、公的支援制度、生活資金の借り入れなどの相談は2021年より減少しました。

G 訴訟等の伴う相談
 2022年は、
  • 2018年6月に提訴した元技能実習生による監理団体と建設会社などへの損害賠償訴訟1件
  • 2019年6月に提訴した監理団体職員による、監理団体などへのパワハラと残業代未払い訴訟1件
  • 2019年に提訴した元管理団体職員の日本人父親に対する中国籍の子の認知訴訟1件
  • 2020年12月に起訴されたベトナムの元技能実習生リンさんの死体遺棄刑事事件1件
  • 022年10月に提訴したフィリピン人女性の元技能実習生による介護施設と監理団体などへの損害賠償訴訟1件
  • 022年に申立てたフィリピン人妻による離婚と慰謝料の調停1件
 の合計6件が係争中です。 それに加えて父親と争いのない子の認知の調停などが3件あり、全部で9件が訴訟などを伴う案件でした。 その多くが以下の通りの内容で勝訴で終結することができました。 2023年5月段階では、2件の訴訟が係争中です。
  • フィリピン人元技能実習生による、監理団体や実習実施企業を相手にした損害賠償請求事件は、1審判決で一部勝訴しましたが、原告は福岡高裁へ控訴し、2022年2月に控訴審で逆転勝訴し、その判決が確定して終結しました。
  • フィリピン出身女性が監理団体等を相手に、パワハラによる慰謝料と残業代などの未払いを請求した訴訟は、1審判決で一部勝訴、監理団体が原告を名誉棄損で訴えた反訴で一部敗訴の判決が言い渡されました。 原告被告ともは福岡高裁へ控訴し、2022年11月福岡高裁判決でも残業代の未払の請求は認められ、監理団体が提訴した反訴で一部敗訴訴した部分は取り消される原告の勝訴判決が言い渡されました。 被告の監理団体は、最高裁判所へ上告し、係争中です。
  • ベトナム人技能実習生の刑事裁判は1審有罪、控訴審も減刑されながら有罪判決が出て、最高裁判所で係争中でした。 2022年12月に最高裁は、2023年2月24日に弁論を開くことを決定し、同年3月24日の最高裁で逆転無罪判決が言い渡され、勝訴して終結しました。
  • 2019年に提訴された日本人父親を被告とする日中国際児の認知訴訟は、被告男性がDNA鑑定を拒否。 また新型コロナの影響で証人尋問が予定されていた母親も来日できず、3年以上係争中でしたが、2023年2月にようやく来日した母親が法廷で証言し、2023年3月の判決で認知が認められる判決が言い渡されました。 被告が控訴しなかったため判決が確定し、被告の戸籍に子の認知が記載されました。
  • フィリピン人妻による日本人夫への離婚と慰謝料請求など調停は夫が離婚に合意し、子の親権を母親に、慰謝料を妻に支払うことで2022年中に合意解決しました。その他3件の父親と争いのないと争いのない子の認知調停もいずれも合意解決となりました。

2. コムスタカ主催の企画

 2021年はコロナ禍で行うことができませんでしたが、2022年は以下の取り組みをしました。     

  • 2022年5月27日に、技能実習制度廃止全国ネットワークキャラバンを迎えて、熊本市中央区上通で20名ほどの参加で、技能実習制度の廃止を求めるスタンディングと、リンさんの無罪判決を求める署名集めを行いました。 そして同日夜、熊本市国際交流会館ホールで「技能実習制度の廃止! ベトナム人技能実習生リンさんの無罪判決を求める支援集会」を開催し、会場30名、オンラインで約90名の参加がありました。

3. 行政への政策提言など

 2021年はコロナ禍で様々な会議が開かれず、熊本県や熊本市へのDV対策に質問と要請を文書で行うだけにとどまりましたが、2022年中は以下の取り組みがありました。     
  1. 5月31日
     熊本県DV対策関係機関会議が、熊本テルサホテルで3年ぶりに対面で開催されました。 コムスタカとして、DV対策に関する事前の質問と要望書を提出しました。 そして、後日回答を文書で得ることができました。
  2.  熊本市のDV関係機関ネットワーク会  議は対面で行われず、文書によりコムスタカからDV対策に関する事前の質問と要望書を提出し、後日回答を得ました。

4.コムスタカの事務局会議と勉強会とニューズレターの発行

 2022年は、毎月第4日曜日に事務局会議を年12回開催しましたが、ZOOMでのオンライン参加を原則とする形式で行いました。 一方、勉強会の方は、コムスタカの相談員と通訳協力者を対象として、2022年9月から2023年3月まで毎月最終火曜日午後7時30分から午後9時まで、オンラインで月1回合計8回開催しました。 また、会の活動を報告するニューズレターは、「コムスタカ」108号と109号と110号の3回発行しました。

5.外国人の人権問題等をテーマにする講演やパネリストの依頼

 2019年は、在住外国人の人権問題等の講演の講師やパネリストの依頼が21件ありましたが、2020年は新型コロナ感染拡大の影響で合計7件に減少しました。 2021年はやや回復してきたのか、14件に増加しました。 2022年は、リンさんの刑事裁判に関連した勉強会や集会での講演の依頼が多く、17件ありました。

6.コムスタカ関係機関の会議や企画参加

  1. 2022年10月12日
     「第25回移住労働者と共に生きるネットワーク・九州と福岡入管との意見交換会」が、福岡法務合同庁舎7階会議室で、対面で開催(各10名以内)され、コムスタカから1名が参加しました。
  2. 10月21日
     熊本学園大学14号館高橋守雄ホールで「第11回東アジア共生映画祭」が開催され、コムスタカも後援団体として参加しました。
  3. 11月28日
     大村入国管理センターで、第19回移住労働者と共に生きるネットワーク九州と大村入国管理センターとの意見交換会が開催され、ネットワーク九州から4名参加(コムスタカから1名参加)。 ただし、参加人数4名、録音を認めない、施設見学の中止などの条件が付されました。

7.ベトナム人元技能実習生リンさんの無罪判決実現へ向けた取組み

 

 2020年11月19日死体遺棄罪で逮捕されたベトナム人技能実習生の刑事裁判の無罪実現のための支援活動として、コムスタカも参加している「ベトナム人技能実習生リンさんの無罪判決を求める弁護団支援者会議」等により、以下の取組みをしました。     

  1. 1月14日
     福岡市天神のパルコ前で、リンさん無罪の街頭署名集めとスタンディング。15名以上参加。
  2. 1月15日
     福岡市立中央市民センターで「ベトナム人技能実習生リンさんの無罪判決を求める支援集会」の開催。 会場に70名以上、オンライン参加46名の参加。     
  3. 1月19日
     福岡高等裁判所で控訴審判決の日には、午後1時30分から裁判所門前集会に120名ほどが参加。 有罪判決(原審判決破棄、懲役3月、執行猶予2年の減刑有罪判決)の後、午後3時30分から 福岡市立科学館6階ホールで記者会見(130名以上)。     
  4. 4月10日
     午後2時から東京都千代田区の星稜会館ホールで「ベトナム人技能実習生リンさんの無罪判決を求める支援者集会IN東京」を開催。 会場に70名以上、オンラインで130名以上の参加。     
  5. 4月11日
     最高裁判所への上告趣意書(専門家8名による意見書、一般意見書127名分を含む)とリンさんの無罪を求める署名25912名分(累計86612名分)を弁護団の3名の弁護士が最高裁に提出。 門前集会に20名以上が参加。 午前11時から衆議院第二議員会館第一会議室で上告趣意書提出報告会(会場に国会議員2名、秘書11名を含む約50名、オンライン28名の参加)。 午後1時から東京の裁判所の司法記者クラブでの記者会見(リンさんはオンラインで参加)に20名以上の記者が参加。     
  6. 12月9日
    2023年2月24日午後2時から弁論開催決定通知が弁護士とリンさんに届く。 記者クラブなどの幹事社などに通知書とリンさんと弁護士のコメントを公表し、全国報道される。

※この記事は、コムスタカニューズレター第112号に掲載たものです。

shop info店舗情報

コムスタカ―外国人と共に生きる会

〒862-0950
熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302
須藤眞一郎行政書士事務所気付
groupkumustaka@yahoo.co.jp