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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

2023年コムスタカ活動報告Activity report 2023

 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会代表)

はじめに コムスタカの相談活動報告

2023年の相談件数は、383件。2020年の404件をピーク(最大)に、2021年360件、2022年342件と減少していましたが、2022年から41件増加しました。

 2023年の相談の特長として、性別では、2022年と同様に外国籍女性の比率は77%で、その比率がやや低下し、男性の比率が以前の10%程度からここ数年増加し、2023年は22%と増加してきました。

 年齢別では、2019年まで40代〜50代が最も多かったのが、2020年以降から、20代の相談が最も多くなり2023年も103件と最大で、30歳代86件や10歳代36件の相談も増えてきており、若い年齢層からの相談が増加する傾向にあります。 これは、若い年齢層の多い技能実習生や特定技能の労働者、留学生等からの相談の増加によるものです。

 国籍別では、昨年の10ヵ国から9ヶ国増加して19ヶ国でした。フィリピ籍からの相談が231件(60%)とこれまで通り一番多いのですが、ベトナム籍が92件(24%)となり、中国籍の28件(7%)を2022年と同様に上回りました。それ以外は、日本籍8件、ペルー籍5件、パキスタン籍4件、インドネシア籍4件、タイ籍、ネパール籍、ミャンマー籍、ブラジル籍、アメリカ籍など各1件と相談者の国籍がより多様化しています

1.相談活動

@ 相談件数
 2023年電話での相談は、延べ1000件以上に及びますが、相談の解決に向け取組んだのは、383件です。 電話のみの対応210件、面談(オンラインと含む)116件、同行支援43件、訪問14件でした。2022年に比べて、新型コロナウイルスの行動制限が2023年5月からなくなり、対面による面談件数や同行支援の件数が増加しました。

 2022年と2023年を比べると、電話相談のみの件数は、217件から210件へやや減少しましたが、面談は、73件から117件、同行は、29件から43件に増加し、訪問は23件から14件へと減少しました。

A 性別
 383件のうち295件(77%)が移住女性、85件(22%)が移住男性、不明が3件を対象としたものでした。

 2022年に比べて、移住女性からの相談が266件(78%)から295件(77%)と29件増加し、移住男性からの相談が176件(22%)から85件(22%)と9件増加しました。

B 国籍別
 国籍別では、19カ国、フィリピン籍が231件(60%)と最も一番多く、次にベトナム92件(24%)で、中国籍28件(7%)、日本人からの外国人に関する相談8件(2%)でした。 それ以外は、ペルー籍5件、パキスタン籍4件、インドネシア籍4件、タイ籍、ネパール籍、ミャンマー籍、ブラジル籍、アメリカ籍など各1件でした。

 2022年と比べて、フィリピン籍217件から231件と14件増加し、ベトナム籍84件から92件と8件増加、中国籍18件から28件と10件増加し、日本人からの外国人に関する相談7件から8件と1件増加でした。 2022年の10カ国と比べ2023年は19カ国と9カ国増加し、相談者の国籍がより多様化しています。
    
C 年齢別
 2023年は、年齢別で0歳代及び10歳代36件(9%)、20歳代103件(27%)、30歳代86件(22%)、40歳代37件(10%)、50歳代47件(12%)、60歳代以上49件(13%)、不明25件(7%)となっています。

 2022年と比べて、0歳代と10歳代37件から36件と1件減少、20歳代から123件から103件と20件減少、、30歳代83件から86件と3件増加、、40歳代65件から49件16件減少、50歳代29件から47件と18件増加、60歳代以上5件から49件と44件の増加となっています。

 2019年までの30歳代や40歳代が多かった傾向から、技能実習生や留学生の相談が増えたことから、10歳代や20歳代の若年層の相談が増加する傾向に変わりはありませんが、2022年と比べて50歳代、60歳代の相談が増加したことからそれぞれ、3分の1ほどを占めています。

D 相談経路別(主訴)
 2023年の相談の経路別では、電話相談が210件(68%)、面談(オンラインを含む)116件(30%)、同行43件(11%)、訪問14件(4%)でした。

 2022年と比べると、電話相談が217件から210件と7件減少し、面談(オンラインを含む)が73件から116件と43件増加、同行29件から43件14件増加、訪問23件から14件に減少しました。

E 地域別
 熊本県内が、261件(68%)と大半占めますが、熊本県外からも104件(20%)ありました。 熊本県外の内訳は、九州内25件(7%)、九州外52件(13%)、海外(フィリピン、ベトナム、中国)から27件(7%)、不明18件(5%)でした。

 2022年と比べると、熊本県内254件から261件と7件増加、熊本県外が88件から104件と16件増加、九州内から22件から25件へ3件増加、九州外が36件から52件と16件増加、海外が30件から27件と3件減少、不明は18件でした。 九州外からの相談が増加しました。
    
F 相談内容(主訴別)
 相談の内容別では、

  • 子ども 62件
  • ビザ・在留資格・国籍 52件
  • 技能実習 49件
  • 訴訟 39件
  • 福祉・医療 38件
  • 夫婦関係 29件
  • DV 23件
  • 妊娠出産 19件でした。
 2022年と比べると、技能実習生からの相談が、2022年107件に比べて49件と半減し、ビザ、在留資格、国籍に関する相談も、70件から52件、訴訟に関する相談51件39件、妊娠出差に関する相談27件から19件へ減少ました。 その一方で、子どもに関する相談29件から62件、福祉医療に関する相談5件から38件、夫婦関係に関する相談14件から29件増加してきています。

G 訴訟等の伴う相談
 2023年は、
  • 2019年6月に提訴した監理団体職員による監理団体などへのパワハラと残業代未払い訴訟1件
  • 2019年に提訴した元管理団体職員の日本人父親に対する中国籍の子の認知訴訟1件
  • 2020年12月に起訴されたベトナムの元技能実習生リンさんの死体遺棄刑事裁判1件
  • 2022年10月に提訴したフイリピン女性の元技能実習生による介護施設と監理団体などへの損害賠償訴訟1件
  • 2022年に申立てたフィリピン人妻による離婚と慰謝料の調停1件
 の合計5件が係争中です。 それに加えて、2023年4月に日本人夫から離婚訴訟を提訴されたフィリピン人妻の反訴訴訟1件の計6件が係争中でした。

 しかし、以下のように5件のうち3件に勝訴で終結することができ、2024年5月段階(2024年2月2日死産し、同年2月6日に子の遺体を遺棄したとして死体遺棄罪容疑で逮捕され、同年2月27日起訴されたたベトナム人技能実習生の刑事裁判も含める)3件の訴訟が係争中です。

勝訴・和解して解決できた訴訟
  • ベトナム人技能実習生の刑事裁判は1審有罪、控訴審も減刑されながら有罪判決が出て、最高裁判所で係争中でしたが、2022年12月に最高裁は、弁論を2023年2月24日開くことを決定し、2023年3月24日の最高裁で逆転無罪判決が言い渡され、勝訴して終結しました。
  • 2019年に提訴された日本人父親を被告とする日中国際児の認知訴訟も、被告男性がDNA鑑定を拒否し、新型コロナの影響で証人尋問が予定されている母親が来日できず、3年以上係争中でしたが、2023年2月に母親が来日でき法廷で証言し2023年3月の判決で認知が認められる判決が言い渡され被告が控訴しなかったため確定し、被告の戸籍に子の認知が記載され終結しました。
  • 2023年4月に日本人夫が離婚などを求めた離婚訴訟に対して、フイリピン人妻が慰謝料や財産分与などを請求する反訴を提訴した訴訟は、2024年4月に裁判所から和解案(夫と妻が離婚し、子の親権を父親に、夫が妻に財産分与として金額を支払うなど)が提示され、双方が合意して、2024年4月に和解解決となりました。
係争中の訴訟
  • 2019年6月に提訴したフィリピン出身女性が監理団体等を相手に、パワハラによる慰謝料と残業代などの未払いを請求した訴訟は、1審判決で一部勝訴、監理団体が原告を名誉棄損で訴えた反訴で一部敗訴の判決が言い渡され、原告被告ともは福岡高裁へ控訴しました。 2022年11月福岡高裁判決でも残業代の未払の請求は認められ、監理団体が提訴した反訴で一部敗訴訴した部分は取り消される原告の勝訴判決が言い渡されました。 被告の監理団体は、最高裁判所へ上告し、2023年12月に最高裁判所が、監理団体の上告を一部受理し、2024年3月26日に弁論、同年4月16日に最高裁は、「福岡高裁判決を破棄し、審理を福岡高裁へ差し戻す」判決を言い渡し、今後福岡高裁出差し戻し審が行われます。
  • 2022年10月に提訴したフィリピン女性の元技能実習生による介護施設と監理団体などへの損害賠償訴訟1件は、福岡地方裁判所小倉支部で2023年1月に第一回口頭弁論がひらかれ、以後、裁判官と双方の弁護士による弁論準備手続きが行われ、2024年中には証人調べ、そして結審となる見込みです。

2. コムスタカ主催の企画

 2023年は以下の取り組みをしました。     

  • 2023年5月27日(土)午後、「マリアの宣教師フランシスコ修道会 熊本修道院」「リン最高裁無罪判決を祝う!祈りと感謝の集い」を、コムスタカー外国人と生きる会主催で開催し、リンさんを含む20人ほどの弁護士や支援者らが参加し、レー ティ トイ リンさんの2020年11月の逮捕から2023年3月24日の最高裁逆転無罪判決までの2年4ヶ月間に渡る苦労や、勝訴に終わった喜びを分かち合いました。
  • 2023年12月17日(日)午後、熊本市国際交流会館の会議室で、コムスタカー外国人と共に生きる会主催で、「外国人との共生・参画の地域づくりをめざすシンポジウム」を開催し、当日会場に45名、オンラインで60名の参加がありました。
  • 2023年11月から12月の2ヶ月間の期間中に、「外国人との共生・参画に関する在住外国人などへのアンケート調査をオンラインと紙媒体で行い、フイリピン石やベトナム籍の住民ら2002名から回答を得ました。
  • 肥後銀行が、外国人預金契約者を対象に2023年11月から発送した通知書問題に関して、2023年12月27日午前10時に、コムスタカー外国人と共に生きる会から肥後銀行への質問と要請書を提出し、同日お昼ごろから熊本市役所市政記者クラブで、この問題について記者会見しました。

3. 行政への政策提言など

 2023年中は以下の取り組みがありました。     
  1. 5月31日(水)午後1時30分から午後3時間まで熊本県DV対策関係機関会議が、熊本県庁会議室で、昨年に引き続き対面で開催され、50名ほどが参加しました。 コムスタカとして、DV対策に関する事前の質問と要望書を提出しました。 そして、後日回答を文書で得ることができました。
  2. 熊本市のDV関係機関ネットワーク会議は、2023年中は開催されず、2024年1月26日(金曜日)午後2時から午後4時まで、熊本市議会棟第2予算委員会室で、4年ぶりに対面で行われました。 文書によりコムスタカからDV対策に関する事前の質問と要望書を提出し、後日回答を得ました。
  3. 2023年9月に、2024年4月施行される熊本県困難な問題を抱える女性の支援に関する基本計画(第一次)の素案に対するコムスタカー外国人と共に生きる会の意見と提案を熊本県子ども家庭福祉課に提出しました。

4.コムスタカの事務局会議と勉強会とニューズレターの発行

 2023年は、原則毎月第4日曜日に事務局会議を年12回開催しましたが、ZOOMでのオンライン参加を原則とする形式で行いました。 一方勉強会の方は、コムスタカの相談員と通訳協力者を対象として、第一期1月から3月まで3回、第二期(事例問題を中心)として2023年4月から2023年11月まで8回、毎月最終火曜日午後7時30分から午後9時まで、オンラインで月1回合計11回開催しました。 また、会の活動を報告するニューズレターは、「コムスタカ」111号と112号と113号の3回発行しました。

5.外国人の人権問題等をテーマにする講演やパネリストの依頼

 2022年は、リンさんの刑事裁判に関連した勉強会や集会での講演の依頼が多く、17件がありましが、2023年は、前半リンさんの刑事裁判に関連した勉強会や広範囲は、外国人人の人権問題に関する講演会やシンポジウムの講師の依頼が22件ありました。

6.コムスタカ関係機関の会議や企画参加

  1. 2023年11月1日(水)午後2時〜午後3時
     福岡入国管理局会議室にて、「第26回移住労働者と共に生きるネットワーク・九州と福岡入管との意見交換会」が、福岡法務合同庁舎7階会議室で、昨年10月の第25回意見交換会に引続き、対面で開催され、福岡入管より職員7名、ネットワーク・九州から9名(うちコムスタカから2名)が参加しました。
  2. 2023年12月6日(月)午後1時15分〜午後2時45分
     大村入国管理センター2階会議室で、第20回移住労働者と共に生きるネットワーク九州と大村入国管理センターとの意見交換会が開催され、ネットワーク九州から20名参加(コムスタカから3名参加)。ただし、参加人数が昨年の4名から20名と緩和されましたが、、録音を認めない、施設見学の中止などの条件が付され、また本省の指示で回答も答えないものが大幅に増えました。

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