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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

株式会社肥後銀行への要請行動の報告

2023年12月30日  中島 眞一郎 (コムスタカー外国人と共に生きる会代表)

 

 2023年11月初旬から、肥後銀行が、その外国籍の口座開設者を対象(1万人以上)に、日本語と英語版の裏表(A4 1枚)「お客様へのお願い」という通知文を郵送しました。 その内容の要旨は、以下の通りです。

 「近年複雑化・高度化するマネー・ローンダリング及び テロ資金供与の防止策を進めております。 その中で、金融庁が策定・公表した『マネー・ローンダリング 及びテロ資金供与対策に関するガイドライン』に基づき、お客様情報の継続的な確認等を実施していいます。 2023年12月29日期限までに、銀行の営業部の窓口へ出頭して、下記に沿った手続きをして下さい。 なお、期限までにお手続がない場合は、口座へのご入金(給与含 む各種振込等)、ご出金の取引を、原則お手続完了まで制限させていただきます。
 @ (以前 外国籍で現在)日本国籍者には、運転免許証などとプラス通帳またはキャッシュカードの写し
 A 日本国籍以外の国籍で引き続き在留される方(在留カード、特別永住者証明書も可プラス通帳またはキャッシュカードの写し
 B 国籍が日本以外で帰国予定の方は、帰国前に口座の解約手続きを行って下さい。」

 コムスタカー外国人と共に生きる会(以下、コムスタカ)は、この通知書を受け取った複数の外国籍の方からの相談をうけ、同年11月9日に9項目の質問上を同銀行に提出し、同年11月13日に口頭での回答を得ました。 そして、期限前の2023年12月27日(水)午前10時に肥後銀行本店に行き、肥後銀行に対して、以下のような趣旨と5項目の要請書を提出し、即日回答を得ることができました。 また、同日午前11時50分から熊本市政記者クラブ記者室で、貴社会見をしました。(当日の会見参加は、朝日新聞社、熊本日日新聞社、NHK熊本の3社、午後に電話による西日本新聞社の取材がありました。)

 コムスタカによる5項目による要請内容が、肥後銀行が根拠にしている金融庁のガイドラインの内容に即しているため、ほとんど受け入れる回答となっています。 ただし、金融庁は、2024年3月までのマネーロンダリング対策として、顧客情報への継続的把握状況の報告を各金融機関に求めており、在留外国人に対しては、「氏名、住所、生年月日、顔写真」以外にも、「在留資格」「在留期限」「就労先」などの個人情報の継続的把握を金融機関に求めています。 但し、民間金融機関と在留外国人の口座開設者には契約関係しかなく、これらの在留外国人の個人情報を民間金融機関への法令上の提出する義務関係になく、要請でしかありません。

 金融庁等は、『マネー・ローンダリング 及びテロ資金供与対策』の名目で、金融機関による在留外国人管理強化、その目的は「非正規滞在者」の口座開設からの締め出しにあると思えます。 今後、コムスタカとして、肥後銀行が回答した運用を実際に行っていくのか、口座の取引制限を受ける在留外国人がどの程度現れてくるのか注視していくつもりです。 また、肥後銀行など各金融機関の背後にある金融庁の金融機関を通じた在留外国人への管理強化のあり方を問題にしていきたいと思います。

 以下、肥後銀行への要請文と回答を掲載しておきます。

株式会社肥後銀行への要請文
外国籍口座開設者を対象とするマネーロンダリング対策での差別的取り扱いを見直してください

 コムスタカ―外国人と共に生きる会は、在住外国人から人権相談を受け、その解決に取り組んでいる市民団体です。 熊本県内在住の複数の外国人から、株式会社肥後銀行(以下、貴行)からの2023年11月より郵送されてきた「お客様へのお願い」という通知文(以下、通知文)に関して、相談が寄せられています。

 今回の貴行が外国籍の口座開設者を対象に送付した通知文には、「金融庁が策定・公表した『マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン』に基づき、お客様取引の開始後もお客様情報の継続的な確認等を実施しています」と記載されています。 しかしながら、マネーロンダリング対策は必要でありますが、金融庁も、そのガイドラインのなかで、外国籍口座開設者を一律にハイリスクとして取り扱うのではなく、リスクベースで、顧客リスクに応じて顧客管理を実施するよう示しています。

 今回の貴行の外国籍口座開設者に対しての取り組みは、外国籍口座開設者を一律にマネーロンダリングのハイリスク顧客者、いわば「犯罪予備軍」として取り扱っているように思われ、外国籍口座開設者に対しての差別的な取り扱いと言わざるを得ません。 これは多文化共生を目指す流れに逆行するもので、貴行が外国籍者に対して排他的だと印象付けるものでしかありません。 (上記 下線部の表現について肥後銀行から、「外国籍の口座開設者を一律にハイリスク顧客者とか、犯罪予備軍として扱うつもりはなく、外国籍預金者を「差別」しているのではなく、「区別」して取り扱っているにすぎない)という反論がありました。)

 地球規模でのグローバル化が進み、人口減少および労働力不足に直面し、日本が国際競争力を失いつつある現在、熊本県は多文化共生施策を進め、外国人労働者にとって働きやすく生活しやすい環境を整え「選ばれる」熊本を目指し、TSMC等の外国企業の誘致などを行っています。 外国籍口座開設者に対して一律な取り扱いを行うのではなく、金融庁のガイドラインに沿った、各口座開設者に対して顧客リスクに応じた対応を行い、外国籍の口座開設者にとっても貴行のサービスが利用しやすいものになるよう以下の見直しを求めます。

1. 外国籍口座契約者への通知を多言語化してください

 熊本県に在留する約2万人(2022年12月末現在)の外国人を国籍別で見ると一番多いのがベトナム(6251名)、その次が中国(3201名)とこの二ヶ国だけでも約半数を占めており、他の国籍者もそのほとんどがアジア圏となっています。 その為、日本語はもちろん英語能力の制限があります。この通知文は英語と日本語のみで作成され発送されており、多くの外国籍口座開設者には通知文の意味が理解されずに何のアクションも起こせずに手続き期限を迎えることが予想されます。 通知文の内容が外国籍口座開設者に理解できるようベトナム語および中国語を含む多言語での通知文の作成をしてください。

(回答要旨) 1回目の未回答者に準備している2回目の通知文の送付から中国版も対応するが、ベトナム語版はすぐには対応できない。

2. 期限内に情報の確認が取れない口座開設者に口座取引の制限を一律にしないでください

 この通知文には、「お手続き期限が2023年12月29日」と設定されていますが、上記の理由で通知文の内容を理解することができずに、また手続期限が比較的短期間に設定されていることで、多くの外国籍口座開設者が期限内に手続きを終えられない可能性があります。 また、外国籍者は在留資格内であり1年以内であれば再入国が認められていますが、手続期限が通知文発送後2ヶ月以内という比較的短期間に設定されていることは、口座開設者は日本にいることが前提となっており、法律に準ずる形で日本と海外と両方で生活をしている外国籍口座開設者に不利益を被る可能性が考えられます。 期限内に口座開設者の情報の確認が取れない場合でも、一律に口座取引を制限するのではなく、これまでの取引の内容や状況に応じた対応を行ってください。

(回答要旨) 期限内に窓口への出頭や郵送などの回答がなかった口座開設者に、口座取引を一律に制限することはなく、これまでの取引内容や状況に応じて対応し、給与の支払いなど継続的な取引のある方の口座を制限するようなことはしない。

3. 銀行窓口への出頭だけでなく、オンラインや郵送の手続きでも可能としてください

 日本人口座開設者には別個の「お取引目的等のご申告のお願い」という通知が送られており、こちらはアンケートとしてウェブサイトで回答できるようになっています。 しかし、外国籍口座開設者に対しては窓口での手続きが要求されています。 銀行窓口の営業時間内に窓口に行き手続きを行うのは口座開設者にとって大きな負担となります。 また、ネットなどに通知文が掲載されていれば、外国籍口座開設者が翻訳機などを活用することができますが、紙媒体のみではITの利用を困難とします。 今後外国籍口座開設者に定期的に在留資格確認のための書類の提出等を求めるのであれば、紙媒体のみではなく電子媒体での通知文の提供を行い、オンラインもしくは郵送での手続きを可能にしてください。

(回答要旨) すでにご指摘を受けて、肥後銀行のホームページで、平日窓口へ来ることが困難な方にはご連絡いただければ郵送も可能としている。 ただし、オンラインでの回答にはシステムが困難で、当面できない。

4. 在留期限を迎えて帰国する外国籍口座開設者のうち再入国予定者の口座は継続できるようにしてください

 帰国時の口座解約についての記載がありますが、外国籍口座開設者が在留期限を迎え帰国することになっても、再入国する予定がある等引き続き銀行口座を使うことも予想されます。 貴行は日本国籍口座開設者が海外へ転居し国内に居所がなくなる場合に口座の解約を求めていないにも関わらず、国内に居所がなくなる外国籍預金者に対し一律に口座解約を求めるのは差別的取り扱いと考えられます。 外国籍口座開設者が在留期限を迎え帰国する場合でも、再入国する予定がある等の理由で銀行口座の利用を継続したい外国籍口座開設者に対して、口座の解約を強制したり、一方的に口座を解約したりせずに口座を引き続き利用できるようにしてください

(回答要旨) 帰国される前に、近い将来再入国の予予定のある方など事情を事前に話していただければ、帰国後も引き続き口座を利用できるように配慮する。

5. 在留期限のない永住者などの口座開設者に対しては、日本人口座開設者と同様の金融庁のガイドラインにそった運用をしてください

 令和4年8月5日に金融庁が出している「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」には「在留期間の定めのある在留外国人についても、リスクベースで、顧客リスクに応じて顧客管理を実施していただく必要があるものと考えます。」 とある一方「特別永住者や永住者については、このような在留期間に基づくリスク自体はないものと考えられますが、他の顧客と同様に顧客リスク評価は必要になります。」とあり、在留期間の定めのない外国籍口座開設者に対して日本国籍口座開設者同様の取り扱いを行えばいいと解釈できます。 しかし、今回の通知は永住者を含む外国籍口座開設者に発送されており在留期間の定めのある外国籍口座開設者と同様の扱いとなっています。 在留期間の定めのない外国籍口座開設者や帰化した元外国籍口座開設者に対しては日本国籍預金者と同様の取り扱いを行ってください。

(回答要旨) 今回の在留外国人を対象とした顧客情報の継続的確認で、永住者や特別永住者であることが確認できれば、以後は日本人口座開設者と同じより扱いをしていく。

2023年12月27日 
コムスタカー外国人と共に生きる会(代表 中島 眞一郎)
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