本文へスキップ

コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-402

須藤眞一郎行政書士事務所気付

2016年熊本地震2016 kumamoto earthquakes

2016年4月の熊本地震から1年5ヶ月を経過して―熊本市長への手紙と市長からの返信―

2017年9月28日 中島 眞一郎 (コムスタカー外国人と共に生きる会)

 熊本地方では、台風18号による被害は 一部を除いてあまりなく、午後3時半ごろには晴れ間が見えるなど落ち着いてきました。台風の直撃を受けた沖縄県や鹿児島県、宮崎県、大分県内の被害地域の皆さんへ、そして今晩から明日にかけて影響を受ける地域の皆さんの無事を祈ります。
 2016年4月14日熊本地震から1年5ヶ月が経過しました。発災から1年5ヶ月以上が経過し、あと半年後には、原則2年間の公費援助が打ち切られ、仮設住宅やみなし仮設入居者の転居問題が顕在してきます。20万棟近くの建物被害も、熊本県内の公費解体の進捗率が80%を超え、建て直しが困難な場合の跡地利用の問題が顕在化してきています。
 2017年9月15日現在の熊本県内の被災状況ですが、「死亡244人(直接死50人 震災関連死189人 二次災害死5人)、 負傷者 2715人、 建物 住宅 19万7042棟、避難者 4万5721人(仮設住宅 4024戸 1万0410人、みなし仮設 1万4447戸 3万3208人、 公営住宅など 985戸 2103人)」となっています。災害関連死は、今後も増加が見込まれますが、現時点で直接死の約4倍近くになっています。
 ここ数か月地震の揺れもなくなり安心して眠れるようになってきました。(しかし、9月8日 熊本地方では最大震度4のゆれがあり、その後も震度3、震度2の揺れが時々あります。)熊本地震で被災した私の事務所のあるビルも、事務所内部の壁の亀裂は残ったままですが、今年7月から外壁の修復工事が始まり9月中にほぼ終わる予定になっています。コムスタカー外国人と共に生きる会の熊本地震外国人被災者救援―支援活動も、2017年9月初めの外国人被災者シングルマザー調査報告書の英語版のホームページ公開で一段落です。これまでコムスタカに寄付金の送金や物心両面でご協力いただいた皆さんへ、あらためて感謝申し上げます。
 コムスタカの活動は、外国人被災者の救援−支援活動とともに、その体験を踏まえて、依頼のあった講演会やセミナー等での講演や報告時の指摘、2017年5月8日の熊本市の地域防災計画へのパブリックコメントの提出、5月24日の熊本市長への手紙の送信など、行政の災害時の外国人対応について批判と提言を行ってきました。それらは一定の効果を上げて、熊本県や熊本市の災害時の外国人対応に関して地域防災計画の見直しにつながってきました。災害時に外国人被災者に具体的に対応する機関が明記される等の見直された内容が、災害時に実働できるかどうかは、行政機関や関係機関の今後の具体化の努力にかかってくると思います。また、1年余りの時間をかけて取り組んだ被災外国人シングマザー30人のインタビュー調査と報告書の作成も、マスコミで報道されることで地域社会に外国人シングルマザーの被災者の存在に光を当てるとともに、行政内部にも、熊本市で、児童手当、児童扶養手当、ひとり親家庭医療助成事業の外国語パンフレット支援の作成など多言語化への取り組みがみられるなど一定の効果を上げています。
 2017年9月5日の熊日朝刊 都市圏版の記事「災害時の外国人対応」という見出しの記事に、コムスタカ代表の私のコメントが3カ所ほど掲載されていました。



9月14日に、熊本市広聴課から大西一史熊本市長の名前で、2017年5月24日に私が送信した「熊本市長への手紙」への返信が送信されてきました。以下、紹介しておきます。

熊本市長への手紙

2017年5月24日 中島 眞一郎

1、熊本地震という大災害を経験したにも関わらず、外国人対策や観光客対策に関して、
      素案と平成27年度地域防災計画での文言が全く同じあることについて

パブリックコメントの対象となっている平成29年度熊本市地域防災計画素案(以下、素案)について、熊本市危機管理防災総室に、「平成29年4月19日公表された平成29年度熊本県地域防災計画のように以前のものとの新旧対照表はないのか」問い合わせたところ、「(応対した職員は、熊本県が、熊本地震をへて、修正した地域防災計画を公表していることを知らなかったが)熊本県とことなり、熊本市の素案は熊本地震を経て大幅な見直しと変更を行っており、部分手直しでないので新旧対照表で表せないため作成していない」という回答であった。そこで、「大幅に見直したはずの素案の要配慮者対策の対象となっている外国人や観光客に対する対策の記述が、平成27年度熊本市地域防災計画(以下、27年度計画)の対応箇所と全く同じ文言が記載されているのはなぜか」について尋ねました。これに対しては、「内部ではいろいろ検討しているが、素案で決まったわけでなく、市民から広く意見を求めている」という回答であった。素案で関連部局と記載されている政策局 国際課(主幹)にも、電話で尋ねたところ、パブリックコメントが現在実施されていることも知らないばかりか、素案の外国人対策の文言が平成27年計画と同じであることも知らず、追って確認してから、連絡するという対応であった。当日夕方国際課(主幹)から電話があり、「パブリックコメントが募集されていることと、素案と27年計画の文言が同じであることを認め、国際課として了解して公表されている」という回答であった。(誰が素案の文言を書いて提出したのかはあいまいなままであった) また、熊本市国際課は、熊本県国際課からの大規模災害時の熊本県内の外国人向け指定避難所として、熊本市国際交流会館を地域防災計画で明記したいという申出を断わり、又災害時の多言語情報の発信についても前向きに取り組む意思が感じられない。

2、熊本地震での発災直後から応急対応での熊本市の課題

熊本地震発災後、特に4月16日の本震以後、熊本市国際交流振興事業団(以下、KIF)が指定管理団体として運営している熊本市国際交流会館が、外国人向け避難所(日本人避難者も含まれる)として24時間避難所となり、4月30日に閉鎖されるまで約2週間余り活動したことは、応急対応として全国的にも国際的にも高く評価されている。
 しかし、それは偶然とこれまでのKIFの多文化共生のための活動の蓄積と民間団体等との協力の結果成し遂げられたもので、いわば「奇跡の結晶」であって、行政としての熊本市の功績ではなかった。(なお、私が代表となっている民間団体のコムスタカー外国人と共に生きる会(以下、コムスタカという)は、公開敷地で避難所開設期間中行われた炊き出しの責任団体として関与し協力していたので、KIFの活動については身近に見聞している。
 ※コムスタカの熊本地震外国人被災者救援―支援活動の取組みについては、ホームページを参照http://www.geocities.jp/kumustaka85/intro.html
 熊本市は、27年度計画において、大規模な災害発生時に、国際交流会館を外国人避難対応施設として開設すると明記していた。但し、発災時に、外国人避難対応施設の設置主体や運営主体がどうなるか、具体的な手順は何も決まっておらず、あくまで開館時間内に対応する一時避難所としてしか想定されておらず、あらかじめ想定されていたものではなかった。4月16日の本震以降、同施設が24時間避難所となったのは、偶然であり、指定避難所以外の他の多くの避難所と同様に、多くの避難者が施設内に避難してきたため、なし崩し的に24時間避難所となったにすぎない。そのため、避難所の運営主体となったKIFは、24時間避難所の運営マニュアルも立ち上げの手順もないなかで、手探りで運営していくこととなった。避難所運営に忙殺され、発災直後からの外国人被災者への多言語情報による防災情報の発信は4月23日以降からしか、各地指定避難所への巡回活動は、外部支援を得られるようになった4月20日以降からしか行えなかった。
 発災直後からの行政の防災情報に基づく多言語情報の発信は、熊本市の防災会議にそもそも国際課が出席しておらず、4月20日に外部支援者から行政の防災情報をもらえることを指摘されるまで、国際課やKIFもその事実を知らなかったということから、実現性のないものであった。27年度計画での外国人被災者への多言語情報の発信は、防災会議に基づく行政情報を発災直後から発信する具体性にかけ、紙の上のものでしかなかった。
 この結果、行政レベルの対応で見ると、熊本地震では、発災直後から1週間以上、外国人被災者は日本語のみの防災情報の中で逃げ惑うこととになった。
 また、熊本市の各避難所(指定避難所として追加された避難所を含む)では、外国人避難者や日本語が不十分な避難者の存在の把握をしておらず、要配慮者として配慮はほとんどなされていなかった。
 以上、外国人被災者に対する熊本地震の発災後1週間程度の応急対応に限定しても、熊本市の対応は、以下のような多くの課題を抱えていた。

熊本地震での熊本市の応急対応での課題

  1. 災害関連情報の多言語提供が、発災後1週間以上遅れてしかなされなかった。   
  2. 外国人向け避難所を開館時間内の一時難所としてか想定しておらず、24時間避難所となることを想定していなかった。   
  3. 避難者数や避難期間を想定できず、避難所の逐次追加と避難所開設期間の逐次延長を繰り返した。   
  4. 各地区の指定避難所に外国人避難者がいることを想定した対応がなされていなかった。
  5. 大規模災害時の外国人被災者に対応する責任主体や運営主体が決まっておらず、災害時に具体的に何を行うかというマニュアルがなく、多言語能力を有する嘱託職員や相談員の活用もできていなかった。
 その背景には、熊本地震のような大規模災害を具体的に想定できていなかったこと、関連部局となる政策局国際課が、在住外国人(外国人被災者となる)を対象とする多文化共生政策をほとんど行っておらず、外国人被災者への関心や対応する機関として意識が欠如していることにある。

3、熊本市地域防災計画で素案の外国人対策等で改めるべき課題と提言

  1. 熊本市の防災会議に組織として外国人被災者に対応する機関を明記し、災害時に外国人被災者のために対応する責任主体を明確にするとともに、その機関を中心に災害発生時に外国人被災者の救援や支援のために活動する 。
     ※現在の担当部局の政策局国際課は、訪日外国人誘致やプロモーション活動中心で、在住外国人を対象とした多文化共生施策や、災害時の外国人対応施策に関心と意識がないので、在住外国人を対象とした多文化共生施策を中心とし、災害時に外国人対応に責任をもって取り組める「外国人住民課」を設け、それに意欲と能力のある担当者を新たに任命する。
  2. 災害発生直後から、災害関連情報の多言語情報(訪日外国人向けだけでなく在住外国人の言語も含めて)を発災時から発信できるようにする。
  3. 外国人向け情報センター機能をあわせた24時間対応の外国人向けの避難所の設置を明記する。(なお、熊本市国際交流会館を指定避難所とする場合には、指定監理団体に外国人向け災害対応できる能力を持つ団体を指定し、その団体に運営責任を果たすことのできる権限と予算をつける。)
  4. 外国人が宿泊している旅館ホテルなど宿泊施設、留学生のいる大学や技能実習生の監理団体や実習実施機関への外国人情報センターの存在の周知と相互連絡可能な仕組みを作る。
  5. 各避難所に、外国人や日本語の理解が不十分な避難者がいることを意識し、その把握や登録を当たり前のこととするとともに、避難所内の掲示物の多言語化をはかる。
  6. 車中泊等外国人の屋外避難者を把握できるための巡回活動。
  7. 災害時に外国人避難者の相談に対応できる相談員(多言語あるいは、やさしい日本語をつかう)の配置を行い、そのための人材を養成していく仕組みを作る。
  8. 熊本市などは、熊本県や熊本県国際協会、他の市町村や国際協会など災害時に連携をできるように、普段から連絡協力できる仕組みを作っておく。
 以上の課題を踏まえて、外国人対策や(外国人を含む)観光客対策に関して、熊本市として、熊本地震などまるでなかったかのような同じ文言での地域防災計画の作成ではなく、熊本地震での体験に基づき、真摯な検討による大幅な見直しと変更こそが求められている。現在の熊本市の在り方は、外国人を観光客誘致という経済的利益の対象者としてしか見ておらず、熊本地震の被災体験を経て、災害時に訪日外国人や在住外国人を含めた外国人に安心安全を提供できるあり方への転換が、今こそ求められています。
 

市長よりの返信

2017年9月14日

 秋風が心地よい時節となりました。
 昨年は、熊本地震により多くの市民の皆様が被災されるとともに、熊本城をはじめ、市内各所に甚大な被害が発生し、市政始まって以来の大災害となりました。
 改めまして、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 また、「コムスタカ−外国人と共に生きる会」の皆様におかれましては、発災直後から被災された皆様のために炊き出しなどのご協力を賜り感謝申し上げます。
 さて、平成29年5月24日にいただきました、「市長への手紙」について、回答が遅くなりましたことを深くお詫び申し上げます。
 また、中島様からお電話をいただいた際の本市国際課の対応におきまして、十分な説明ができず、ご不信を抱かせてしまいましたことに対しまして、重ねてお詫びいたします。
 ご意見をいただきました「災害時の外国人被災者への救援や支援のための熊本市地域防災計画の素案」につきまして、担当部署からの報告を踏まえまして、回答いたします。
 災害時における外国人の皆様への対応につきましては、今回の熊本地震における課題と教訓を「平成29年度熊本市地域防災計画」に反映させるため、震災復興座談会、各種アンケート、及び市長とドンドン語ろう!(防災編)などを行い、市民の皆様のご意見を伺いながら、抜本的な計画の見直しに取り組んだところです。
 しかしながら、その見直しにあたりまして、外国人対策を所管する国際課と計画全体を所管する危機管理防災総室との間で十分な連携ができておらず、中島様からのご指摘を受け、早急に見直しを行うよう国際課に指示した次第でございますが、多くの皆様にご心配をおかけして大変申し訳なく思っております。
 具体的には、これまでの取組に加え、市の災害情報を円滑に提供できるように翻訳などを行う災害多言語支援センターを設置することや、災害多言語支援センターなどで作成した多言語情報の発信及び野外避難者の状況把握などSNSの積極的な活用を計画に盛り込んだところでございます。また、災害時の備えといたしまして、熊本県をはじめ、国際交流会館の指定管理者、各大学、民間団体及び地域団体等との連携を図り、外国人の皆様が防災訓練等の地域活動へ積極的にご参加できる環境づくりに努めることなども計画に盛り込んだところでございます。
 本市といたしましても、中島様のご提案の趣旨である「外国人の皆様の視点に立った地域防災計画」は、たいへん重要であると認識しており、今後は「平成29年度地域防災計画」に基づき、多くの皆様とともに防災・減災に取り組んでまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 今後とも、熊本市政へのご理解とご協力をお願い申し上げますとともに、中島様のますますのご健勝を祈念いたします。
    平成29年9月14日
    中島 眞一郎 様        
                           熊本市長 大西 一史

shop info店舗情報

コムスタカ―外国人と共に生きる会

〒862-0950
熊本市中央区水前寺3丁目2-14-402
須藤眞一郎行政書士事務所気付
groupkumustaka@yahoo.co.jp