コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

2024年11月14日　　中島　眞一郎（コムスタカー外国人と共に生きる会）

　2024年11月8日（金）午前11時20分から11時50分まで、傍聴券の配布のための番号をえる時間で、福岡地方裁判所の南玄関側には、一般傍聴席35席に対して、傍聴券希望者57名が並びました。 午前11時50分過ぎに、傍聴できる番号が公表され35名が確定しました。 昼休みをはさんで、午後1時15分から福岡地裁前の公道で、門前集会がひらかれ、支援者ら約50名が参加しました。

　この日の第5回公判は、グエットさんの弁護人の申請した蓮田　健　慈恵病院院長（産婦人科医師）の証人調べが行われました。 2024年9月18日に行われた進行協議（非公開）で、裁判官１名の単独審から3名の合議審となり、11月24日の第5回公判から、３名の裁判官が出席しました。

最初、弁護人による蓮田医師への証人尋問が申請時間60分をすべて使い、ベトナム語の通訳を介さず、尋問が行われました。 蓮田証人の証言の要旨は以下のとおりです。

　「望まない妊娠にともなう孤立出産は決して稀なことではない、慈恵病院は『こうのとりのゆりかご』（自分で育てられない赤ちゃんを匿名で病院預け入れるもの）というシステムを運用しているが、2007年5月の開設以降179人の子を受けれているが、その多くが孤立出産を経ている。 グエットさんは､出産直後から意識や判断能力が、以下の理由から低下していたことが推測できる。 「医療関係者の立ち会いもないなかで、孤立死産し、その不安感や陣痛に耐えたことによる疲労感が強い、当日の血液検査データから出産による大量出血による貧血状態が著しい重症貧血と考えられ、輸血が必要なレベルであった。 また、死産であったこと、死産した子が浸軟児（胎児の体に羊水など液体がしみこみ体の組織が軟化し、ぷよぷよ　になってしまう胎児のこと）出会ったことによる精神的なダメージを受けていた。」 「出産直後から起立を保つことができず、這うような状態で何度も意識消失を伴う状態にあったグエットさんの認識力や、判断力や、行動力の低下を来したと考えられる。」

　グエットさんがごみ箱に遺体を入れたことについては、「孤立出産した女性は、とにかく疲弊し、精神的にも追いつめられた状況ですから、何か計画的に考え行動したというより、とりあえずという場当たり的な行動と思います。」

　グエットさんのケースで死体遺棄罪が成立することについて、「本件は出産後9時間に産婦人科医療機関を受診し、遺体の損壊の形跡もなく、居室内のごみ箱に遺体を入れた本件のようなケースで、死体遺棄罪が成立するのであれば、孤立出産に伴う死産のほとんどが犯罪と見なされてしまいまねない。」 「孤立出産で死産した女性は、体力的・精神的にも限界で、完璧な行動はできないので、罪に問われるべきでない」

　その後、検察官尋問は、申請時間30分（ベトナム語の通訳を含めて60分間）の申請でしたが、「妊婦や通常定期的に病院に行くのか、」「検診を受けないのは子どもに対して危険ではないか」「日本語の話せない外国人の妊婦が病院にきた場合は」「被告人が遺体をビニール袋に入れ、ゴミ箱に入れた理由は被告人しか分からない思うが。」という質問だけで、１０分以内でおわりました。

　証人尋問終了後、裁判官は、検察官によるグエットさんの尋問調書の証拠採用をきめ、検察官は、グエットさんが犯行を認める供述調書の一部を読み上げました。 これに対して、グエットさんが福岡県警博多署に勾留中に福岡地方裁判所で行われた勾留理由開示裁判での「子の遺体を遺棄しておらず、無罪である」という意見陳述書を含む勾留尋問調書の証拠採用を弁護人側が求めたところ、検察官は反対しましたが、裁判官が、採用をきめました。

　次回第6回公判は、2025年1月15日水曜日午後2時から3時10分までと決まりました。 第6回公判では、検察官の求刑、最終意見陳述、弁護人や被告人グェットさんの最終意見陳述が、福岡地裁911法廷でおこなわれ、結審となります。 判決は2024年3月末までに言い渡される予定です。

　公判終了後の報告集会は公判が想定より早く終わったため当初の午後4時30分から30分繰り上げ、午後4時から5時半まて、弁護士会館3階会議室で、開催されました。 会場に支援者はメデイア関係者を含めて、60名以上の参加（これ以外に、オンライン参加者は、22名でした）し、証人として証言された蓮田医師、弁護団弁護士による報告と支援団体や支援者による発言がりました。 （会場カンパは、約4万円あまりが、あつまりました。）

グエットさん支援のための署名・寄付のお願い

グエットさんの無罪を求める署名活動と、支援のための寄付をお願いしています。

詳細は、こちらのページをご覧ください。