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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

グエットさんの刑事裁判第二回公判報告

 2024年6月29日 中島眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

1.開廷前の門前集会など

 2024年2月2日に福岡市内の知人宅で孤立死産し、2月6日に死体遺棄容疑で福岡県警から逮捕、2月27日に福岡地方検察庁の検察官に同容疑で起訴されたベトナム人技能実習生グエットさんの無罪を争う刑事裁判第二回公判は、2024年6月26日(水)午後2時30分から福岡地方裁判所911号法廷で開かれた。 公判開始前午後1時15分から、裁判所の敷地外で、門前集会を開き、50名以上の方が集まった。 アジアに生きる会ふくおかの井上幸雄さんの司会で、主任弁護人の池上弁護士、支援団体からコムスタカの中島、技能実習生権利ネットワーク北九州の本村さん、東京から傍聴に来られて上智大学教員の田中雅子さんの発言ら15分程度行なった。 池上弁護士の手には、この日博多区役所からもらい受けたグエットさんの死産した子の遺骨があり、この日の法廷に持参した。

 福岡地裁の911号法廷は、9階の一番奥にあり、傍聴席48名に対して70名以上の傍聴希望者が9階の法廷前の廊下に並び、入廷前にテレビ局の頭撮りが最初に行われ、当初の開廷時間午後2時10分を過ぎても、傍聴者が廊下に待機させられ、午後2時15分過ぎにようやく入廷できた。 傍聴者に帽子をかぶったまま脱がなかったということで、一人退廷を命じられる方がいて、実際に裁判が始まったのは午後2時30分過ぎであった。

2.弁護人の冒頭陳述の要旨

 最初に弁護人より冒頭陳述(2024年5月14日に第一回公判に読み上げた検察官の冒頭陳述で述べた事実関係と異なるグエットさんの弁護人側の事実経過と無罪の理由を述べたもの)が5分程度読み上げた。 弁護人の冒頭陳述は、本件の争点は、2つ(グエットさんの行為と意思)あることを示し、以下のように無罪を主張した。

 ① 本件において、死体遺棄罪(刑法第190条)の「遺棄」があったといえるか、リンさんの2023年3月24日の最高裁判決(他者が死体を発見することが困難な状況を作出する隠匿行為が「遺棄」に当たるか否かを判断するにあたっては、その態様自体が習俗上の埋葬等と相入れない処置といえるものか否かという観点から検討する必要がある)を引用して、グエットさんの行為は最高裁が示した「遺棄」に当たららないこと、

 ② 死体遺棄の故意がグエットさんにはなかったこと。最高裁が示した「遺棄」の解釈によれば、グエットさんに死体遺棄の故意があったといえるためには、習俗上の埋葬等とは認められない態様で死体を登記する認識や認容が必要となるが、グエットさんにはそのような事実はなく、グエットさんに死体遺棄の故意がなかったこと。 よって、本件において、死体遺棄罪(刑法第190条)の「遺棄」があったといえず、死体遺棄の故意があったともいえないのでグエットさんは無罪である。

3.証人尋問(グエットさん同僚で、交際相手のベトナム人技能実習生)

 この裁判で、検察側は、グエットさんの同僚の二人の技能実習生と、監理団体の通訳人を証人として申請、証人尋問が行われる。 まず、第二回公判で、グエットさんの同僚で、交際相手のベトナム人技能実習生が証人として出廷し証言した。

(1)検察官の尋問と証人の証言の要旨

 証人の人定質問と証人に関する被告人との関係、2023年7月に一緒に来日し、同じ実週先で勤務した。 11月から交際、一週間に4-5日被告人が証人の部屋に泊まりに来る。

 2月2日の前日にも泊まりに来て、朝布団がぬれていることについて、被告人から「生理が来た」と聞いた。 2月2日は朝一緒に実週先にいったが、被告人が腹痛いといってとても苦しそうで、早退した。 証人は、被告人にSNSでメッセージを何度も送り、様子を聞いたが返信がなく、心配になって、午後4時過ぎに帰宅するようにした。 帰宅してドアを開けると、部屋の中に、至る所に血がついていて、異臭も強く、被告人が部屋の中に横になっていた。 被告人に「どうしたのか」かと、聞いたところ、「スーパーの近くで車とぶつかって怪我をした」といった。 職場の同僚に電話して相談して、応援に部屋まできてもらった。 応援を頼んだのは、監理団体から異性を部屋に入れることを禁じられていたため、被告人を住所地のアパートまで連れて行き、もう一人の同居人が帰ってくるので、友人に証人の部屋の掃除を頼んだ。 そして、被告人のアパートの近くの病院へタクシーで被告人を連れて行った。 そこは診療所であることや時間外になっていたので受け入れてもらえず、代わりに救急車を病院がよんで大きな病院へ行き、証人も救急車に同乗していった。 そして、事故や怪我で病院へ行くときは必ず連絡するように監理団体からいわれていたので監理団体の通訳職員へ連絡した。 証人は、被告人の病室には男性ということでは入れず、病院1回付近で待機していた。 監理団体の代表と通訳職員が病院へ来て、病室に入り、1時間後にでてきて、警察に通報することになったと知らされた。 その後、証人の部屋に戻ったが、SNSで、被告人が証人の部屋の中で、子ども出産したこと、警察が部屋に捜索に来ることが知らされ、夜遅くに警察官が部屋に来た。 そして、深夜にごみ箱の中からビニールに入った子どもの遺体を警察官が取りだすところをみた。

(2)弁護人による証人への反対尋問への証言の要旨

 証人は、来日前に送り出しの機関および、ベトナムに来た監理団体の代表から「技能実習生が妊娠したら、帰国させられる」という話を何度も聞かされていた。 また、来日後1ヶ月間の監理団体での研修中にも、監理団体代表から、「住む寮のルールとして異性を部屋入れてはいけない、交際はしてはならない、特に同期の間(一緒の時期に来日した技能実習生間)で交際してはならない、妊娠したら帰国させられる」という説明を聞かされた。 被告人と証人が交際していた2023年12月23日に監理団体の研修が被告人や証人の同期15名を対象に、実週先の会社の事務所で行われ、証人と被告人が交際していることを皆の前で、名指しで非難されたことがある。 (SNSに二人の写真を載せたことから、そのグループに監理団体の職員もはいっていたので、わかったと思う)、また、交際を続けていたら、経済的に不利益が生じると言われたことがある。

 証人の部屋のごみは、燃えるゴミは室内にあるごみ箱に入れ、それ以外の燃えないゴミやペットボトルなどはビニール袋に入れて、ゴミの回収日はよくしらないが、満杯になったらアパート全体の大きなゴミステーション(ゴミの収集場)に、証人が捨てにいっていた。 2024年2月2日の朝には、室内のごみ箱に40%ぐらいのゴミが入っていた。 室内の風呂場は、シャワーを浴びるが、浴槽は使わず、普段から洗濯物をその上に洋服などを干す場として使われていた。 2月2日朝、布団が少しぬれていたように思うが、水みたいで色がついていたかは、よく覚えていない。 被告人が早退した後、何度もSNSで連絡したが返信がなく、早めに部屋に戻る途中で、被告人から「おむつとお菓子」を買ってきてというメッセージがきて、おむつとお菓子を買って部屋に戻った。 ドアを開けると、床、壁、台所、トイレ、浴槽、クローゼットの扉、棚など部屋の至る所に血がついていて、匂いもきつく、被告人が部屋の中に横たわっていた。 被告人はいきも弱く、顔も青白く、慌てて、被告人を病院へ連れて行かないといけないと思った。 そのときの被告人の服装は朝出勤したときは違っていた。そして、同僚の友達に連絡して、部屋にきてもらった。

 もし、ゴミ箱の中にビニール袋に入った子の遺体を証人が見つけたらどうしましたかという質問には、「(妊娠出産経験のある)年上の女性に相談して、どうしたらよいかを聞く」と思うが、そのときは(遺体のことは)わからないまま、被告人を病院へ連れて行くことしか考えなかった。

 警察の捜索が終わり、被告人が逮捕されたあと、2月7日か8日頃に、実習先の事務所でOTIT(外国人技能実習機構)の職員から対面で電話通訳を介して話を聞かれ、妊娠したら帰国させられるなどこれまで聞いていた事実を話した。 その日の夜、監理団体の通訳職員から証人へ電話があり、監理団体は、『妊娠したら帰国させる』などという話をしたことがなく、それらの話は、インターネットやWEBなどから知ったと話をするようにいわれた。 証人は「はい、」と返事した。

 弁護人の証人への反対尋問の後に、検察官から証人へ「証人は監理団体や実習先の企業から不利益な取り扱いを受けたことがありますか」という質問がなされ、証人は「ありません。」と答えた。

4.公判終了後の報告集会

 第2回公判終了後 6月26日午後4時半過ぎから福岡県弁護士会館4階会議室で、取材に来たメデイア関係者を含めて70名以上の参加で報告集会が開かれた。 技能実修習生権利ネットワークの末永さんの司会で、池上弁護士と島弁護士から第2回公判の前後の経緯と証人調べの証言のポイントについて報告がされた。 今回の公判で、グエットさんの交際相手の技能実習生が、勇気をふるって、(1)「監理団体や送出機関等から日本に来る前から『妊娠したら帰国させられる』という話を何回も聞いていた」とする証言 (2)事件後、交際相手が監理団体から、「質問されたら『妊娠したら帰国させる』などといった内容は監理団体から言われたのではなくインターネットで検索したというふうに説明してくれと言われた」とする証言等をしてくれたことは、とても重要なことであるとの指摘があった。

 支援団体からコムスタカの中島、技能実習生権利ネットワーク北九州の本村さん、アジアに生きる会の井上さんの発言を経て、会場参加者からの質疑応答を行いました。

 傍聴者数の多さに、裁判官も驚いていたこと(次回より、傍聴券配布が後に決まる)、グエットさんに、弁護士が博多区役所から引き渡された子どもの遺骨の入った箱を公判終了後の帰り際に見せたら、目にいっぱい涙をためて泣いていたことが報告されました。 グエットさんは、交際相手の技能実習生の証言を間近にきき、同僚の技能実習生を含む多くの傍聴支援者の姿をみて、第一回公判時より、緊張感が少なく落ち着いていた印象でした。      

 ※6月26日のグエットさんの第2回公判終了後の報告集会の録画を視聴ご希望の方は、100日官期間限定ですが、記録をギガ ファイル便で送ります。

https://55.gigafile.nu/1004-m37e33c8ab59250d4658a24cc9f882595

グエットさん支援のための署名・寄付のお願い

グエットさんの無罪を求める署名活動と、支援のための寄付をお願いしています。

詳細は、こちらのページをご覧ください。

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