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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

グエットさんの刑事裁判第四回公判報告

 2024年8月3日 中島眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

 第四回公判は、グエットさんの被告人尋問が午後1時30分から午後4時30分まで約3時間行われました。

1.グエットさんの保釈が認められる

 2024年7月1日の第三回刑事裁判公判終了後、弁護団弁護士が福岡地方裁判所に提出した第2回保釈請求は、翌日の7月3日に許可され、グエットさんは2024年2月6日の逮捕以来約5ヶ月ぶりに釈放されました。

2.無罪署名の裁判所への提出行動

 2024年7月8日(月)午前11時30分福岡地方裁判所に、2024年2月以降に呼びかけ集めてきたグエットさんの無罪判決を求める署名を1万4007名(インターネット署名日本語版12191筆、ベトナム語版 284筆、紙署名1532筆)を技能実習生グエットさんの裁判を支援する会代表の井上幸雄さん池上主任弁護人ら数名で、福岡地方裁判所刑事第4部の書記官室に提出しました。 (なお、福岡地裁への無罪判決を求める署名は、今後も判決日前まで継続して集め提出します)

技能実習生無罪求め1万人超署名 孤立出産の末死体遺棄罪で ...Yahooニュース
ウェブ2024年7月8日 · 共同通信.配信 : 孤立出産の末、死産した男児を遺棄したとして、死体遺棄罪で起訴されたベトナム人の技能実習生グエン・テイ・グエット被告(20)の無罪を求める署名・・・

3.裁判所前で、支援者の門前集会の報告

 2024年7月8日(月)午後12時30分から12時45分まで、福岡地方裁判所前で、60名以上の支援者の参加で行われました。

 門前集会終了後、福岡地方裁判所9階 911号法廷(傍聴席48席)前に移動して先着順で、911号法廷前で午後1時05分から整理券が配布され、80名ほどの傍聴希望者がありました。

4.死体遺棄事件第4回公判

 時 2024年7月8日(月)午後1時30分から午後4時30分
 内容 被告人グエットさんの被告人尋問

 2024年2月22日勾留理由開示裁判、5月14日第一回公判、6月26日第二回公判、7月1日第三回公判まで、グエットさんは、拘留中のため法廷には、腰縄手錠をかけられ刑務官に二人に連れられて入廷していました。 7月2日の保釈決定により、腰縄や手錠もなく被告人の弁護団席に座りました。

 最初に被告人弁護士 島翔吾弁護士、その後、池上遊弁護士のグエットさんへの尋問が行われ、その後、二人の検察官からそれぞれグエットさんへの尋問がおこなわれ、最後に裁判官からのグエットさんへの質問がありました。 公判終了直後、グエットさんは、裁判官がいる法廷で、気を失い倒れました。 そして、しばらく横になっていて、意識を回復し退廷し、裁判所内の控室で休んでいました。 弁護団弁護士も付き添っていたため、公判終了後の報告集会の開始が20分ほど遅れました。

弁護人の被告人尋問

 グエットさん(以下、被告人という)は、ベトナムで貧しい家庭を支えるために、家族の巨額の借金を返すために来日し、毎月11-12万円ほどの収入から9-10万円を送金していた。 来日前や来日後も送出機関や監理団体から繰り返し、「妊娠したら帰国させられる」という話を聞かされ、性の自己決定権を制約されていたこと、当日2024年2月2日も、死産した後、大量の出血が続く中で、夕方病院にいくまでに5回気を失い、部屋の中にあったごみ箱にビニール袋に入れた子の遺体を置いた。 その行為は、大量出血で自らも死ぬかもしれないと考えたほどの状態のなかで、子の遺体の埋葬をどうするかなど考えられないなかで、できる精一杯の行為であったこと、あくまでも一時的なものであり、病院にいって元気になり戻ってきたら、交際相手などに話しをして、子の遺体に埋葬について相談して決めるつもりだったという証言をしました。   

検察官の被告人尋問

 検察官は、主任ともう一人の検察官が40分ほど1時間20分ほど尋問しました。 被告人の今日の証言は、警察官や検察官による取り調べの中で被告人が話をしていた供述調書の内容(遺体をごみ箱に入れて捨てた、処分したなど)と異なる内容について尋問しました。 これに対して、被告人は、通訳人の通訳の問題、いくら被告人が異なる話をしても、それらの話は取り上げてもらえず、調書に記載されず、「ごみ箱に遺体を捨てたから、処分、遺棄した」という結論ありきの質問と回答を「ハイ」ですかと迫り続けられ、体もきつかったので、早く終わらせたくて「ハイ」と回答して署名したと、答えました。 また、なぜ当日遺体を、台所の上や浴室の中に置かず、「ごみ箱」の中に入れたのかの質問に対して、グエッツトさんは、「当時、体がきつくて、目の前にあるごみ箱に遺体を入れるのが精一杯であった。」と証言しました。

裁判官の被告人への尋問

 裁判官が、当日2月2日の交際相手のアパートに戻った時間、死産した時間、ごみ箱に遺体を入れた時間、交際相手に「おむつとお菓子をかってきてほしい」とメールで返信した時間を聞きました。 被告人は、「何度も意識をうしない、また意識が戻る繰り返しで、正確な時間は覚えていないが、午前10時半頃にアパートに戻り、トイレで死産したのは、12時前、ごみ箱に遺体を置いたのは午後1時前後、交際相手にメールを送ったのは、午後2時半頃から3時頃」と回答しました。 最後に裁判官が、「あなたは先ほど病院で元気になったら、アパートに戻ってくるつもりだったと証言しましたが、戻ってきて、どうするつもりだったのですか」と質問しました。 被告人は「病院からアパートに戻ってきたら、交際相手に謝り、交際相手や監理団体などに、事実を話し、子どもの遺体の埋葬などについて、どうするか相談するつもりでした」と答えました。

検察官の起訴状と冒頭陳述(公開用)


弁護人の冒頭陳述


5.公判終了後  裁判報告集会

2024年7月8日(月曜日)午後5時から午後7時前まで福岡県弁護士会館2階ホールで、約80名の参加で行われました。

第4回公判終了後のオンライでの視聴ご希望の方

 公判終了後(7月8日月曜日公判終了予定時刻午後4時30過ぎから)の報告集会をオンラインで視聴希望の方は、以下からお入り下さい。

グエットさん第4回公判終了後の報告集会 録画
https://www.youtube.com/watch?v=mB8QVucs_wY


グエットさんからの2024年7月8日第4回公判終了後の報告集会参加者へのスピーチ 
支援してくださっているみなさんへ


 私を心から助け、サポートしてくださっている皆さんに、この場をお借りしてお伝えしたいことがあります。

 いつも私のそばにいて、あらゆる段階で私に付き合ってくれたすべての人に本当に感謝しています。 たとえ異国の地にいても、昼も夜も常にみなさんが私を励ましてくださったので、私は決して孤独を感じたことはありません。 私をここまで救い、導いてくださり、本当に感動しています。

 今回の事件は私の人生最大の教訓であり、孤立出産で逮捕勾留され起訴されるのは私が最後となることを願っています。

 私の主張がありとあらゆる場所に広まって、次の世代の若者たちの肩にのしかかる恐怖がなくなるように、私が代わりに恐怖に立ち向かい、道を切り拓いていきたいと思っています。 そしてわれわれが歩んだところが道となり、いつか技能実習制度(弁護人注:法改正後の育成就労制度)がよりよいものに変わっていくと信じています。 いつもそばにいて守ってくれている方々に本当に感謝しています。 私の前途はまだまだ長いと思いますので、これからも皆さんが私を助けてくださることを願っています。 心より本当に感謝しています。

2024年7月8日
グエン テイ グエット

6.今後のグエットさんの無罪立証へ向けて取組み

 2024年2月27日の検察官による起訴以降、刑事裁判は、検察側の証人3名の証拠調べ、被告人調べが終了し、検察側の死体遺棄罪の有罪であるという立証が終わりました。

 検察官の起訴状や冒頭陳述で記載された事実とはことなる証言が、検察官申請の3人の証人調べや、被告人グエットさんの証言から明らかになってきました。 グエットさんの無罪を立証するため、被告人弁護団は、蓮田 健慈恵病院院長、ベトナムの埋葬の法令や文化についてベトナムのヒュー弁護士、刑法学者の福永俊輔西南大学教授の3人の意見書を今後裁判所に提出します。 また、これまで池上遊弁護士、島翔吾弁護士の福岡県弁護士所属の2名弁護士に加えて、リンさんの刑事裁判で主任弁護人として最高裁判所で無罪判決を得た熊本県弁護士会所属の石黒大貴弁護士を加えて3名の弁護団体制で取り組んでいきます。

7.今後の刑事裁判の進行について

 今後の刑事裁判の争点は、グエットさんが逮捕後に拘留中に警察官と検察官から取り調べをうけ、署名した供述調書に対して、裁判官が証拠採用するかどうかです。 刑事裁判公判で前の第一回進行協議で、弁護側が証拠として同意しなかったため、裁判官がこれらの供述調書をみることなく、グエットさん被告人尋問を行いました。 弁護団弁護士は、供述調書は、通訳人の通訳の問題や検察官の誘導などがあり得心性や信用性や任意性などないとして証拠採用しないように求める意見書を裁判所に提出しました。 これを受けて検察官が証拠採用を求める意見書を裁判所に提出し、裁判官が決定を行います。 そして、無罪を主張する被告人側の意見書に対して、検察官が同意するか不同意の回答をへて、検察官の不同意の意見書に対する証人調べを行うかを裁判官が決めます。

 今後の刑事裁判の進行について、2024年8月23日(金)裁判官・検察官・弁護人の三者協議がひらかれ、9月以降に被告人側証人調べか、論告求刑の公判のかいずれの期日がひらかれることが決まります。 そして、判決は9月中か10月に言い渡される予定です。

グエットさん支援のための署名・寄付のお願い

グエットさんの無罪を求める署名活動と、支援のための寄付をお願いしています。

詳細は、こちらのページをご覧ください。

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