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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-302

須藤眞一郎行政書士事務所気付

グエットさんの死体遺棄被告事件控訴審有罪判決と上告審へむけた取組み

 

2025年12月2日  中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

はじめに

 2025年11月4日(火曜日)の福岡高裁のグエットさんの控訴審判決は、「控訴棄却」(原審の有罪判決を認める)の不当判決でした。 グエットさんは、この判決を不服として、最高裁判所に上告する意思を表明し、弁護団弁護士が、2025年11月6日上告申立書を福岡高裁へ提出し、受理されました。

※2025年11月4日 福岡高等裁判所の死体遺棄被告事件判決の内容は、RKB詳報をご参照下さい。
①「習俗上の埋葬等と相いれない処置」で死体遺棄罪成立 交際相手の家で男児出産→死体をごみ箱へ ベトナム人技能実習生の控訴審①【判決詳報】(TBS NEWS DIG)

②「外から男児の死体を視認できない状況・・・認識していた」高裁が認定 男児出産→死体をごみ箱へ ベトナム人技能実習生の控訴審②【判決詳報】(TBS NEWS DIG)

③「法令適用の誤り」「事実誤認」「量刑不当」の主張を退け控訴を棄却 男児出産→死体をごみ箱へ ベトナム人技能実習生の控訴審③【判決詳報】(TBS NEWS DIG)

1. 控訴審判決宣告公判当日の報告

  11月4日控訴審判決当日は、午後12時30分の門前集会に約40名が参加して行われました。 午後1時からの傍聴券配布に54名(当日一般傍聴席34席、他は司法記者席とグエットさんの付添2名の特別傍聴人)が並びました。 午後2時からの判決宣告公判は、テレビの頭取りのあと、3名の裁判官(平塚浩司裁判長、中山登裁判官、檀上信介裁判官)のうち平塚裁判長により有罪判決が読み上げられ、午後2時40分頃閉廷いたしました。

判決要旨はこちら


 その後、午後3時から福岡県弁護士会館2階のホールには約60名の参加で判決後の報告集会が開かれました。 弁護団弁護士3名を代表して池上遊主任弁護人による判決内容の説明と批判、福永俊輔西南学院大学教授と田中雅子上智大学教員の判決へ批判的コメント、グエットさんからの判決を来た時の思いや「私は子どもを捨てていません。この判決は受け入れられない。最高裁判所へ上告する」という決意表明を日本語とベトナム語で発言しました。 その後、グエットさんの裁判を支援している支援団体から、技能実習生権利ネットワーク・北九州、ユニオン北九州の末永氏、コムスタカー外国人と共に生きる会の佐久間氏、同事務局員 海北氏の発言、会場の参加者からの数名の発言をへて、閉会となりました。 (報告集会での寄付金は2万1186円でした。)

 判決後の報告集会終了後、福岡県弁護士会館会議室で、最高裁判所の上告審へ向けて、弁護団弁護士と支援者の会議に約25名の参加がありました。 この場では最高裁へ向けて、起訴及び一審、控訴審とも敗訴している結果を踏まえ、1)グエットさんの無罪の主張に新たにリプロダクテイブ・ジャステイス(性と生殖に全般に関する社会的正義)や女性差別の観点を入れた上告趣意書を作成するために女性弁護士に依頼して弁護団拡充すること、 2)最高裁への無罪署名、妊娠出産経験のある女性や医療関係者、その他の方から意見書を募り集めること、3)寄付金を集めること、また、弁護士からは孤立出産の状態が分かる動画の作成など提案がありました。 早急に具体化できるか検討することになりました。

2. 最高裁判書の上告審へむけて

 11月4日の控訴審判決は、2023年3月24日の最高裁判決(リンさんの刑事裁判の)の「死体遺棄罪の隠匿が成立するには、その態様自体が習俗上の埋葬と相入れない処置といえるか否かの観点から検討する必要がある」との枠組みで判断していますが、無罪を主張する弁護団弁護士の主張をすべて退け、1審判決及び検察官の有罪主張に追随した不当判決でした。 これは、居室内で死産した女性が、「段ボール箱に遺体を入れて棚の上に置いていたら、死体遺棄罪の隠匿に当たらず」無罪となり、「ゴミ箱の中に遺体をおいていたら死体遺棄罪の隠匿に当たる」という、居室内のどこに置くかで、死体遺棄罪の「隠匿」が成立するか否かを判断しており、また、死産した当日(グエットさんは、死産後は大量出血で何度も気絶している)の女性の行為と意思を問題にして判断しています。 ここにみられる「習俗上の埋葬と相入れない措置」か否かの判断が、孤立出産(死産)した女性へすべて責任を負わせ犯罪視し、「公共の秩序維持」としての妊娠・出産を体験しない男性の支配的価値観に基づいて判断されています。 グエットさんの刑事裁判は、妊娠・出産という性と生殖に関する社会的差別や不公正に関する異議申し立てであり、その価値観の転換を求める闘いです。

 2025年11月4日控訴審での有罪判決(控訴棄却)を受けて、同年11月6日福岡高等裁判所へ上告申立書を提出しました。 グエットさんの最高裁判所の上告審へ向けて、現在3名の男性の弁護団弁護士に加えて、新たに林陽子弁護士(東京第二弁護士会、アテナ法律事務所)が、弁護団弁護士に加わっていただけることになりました。

 林陽子弁護士は、元国連女性差別撤廃委員会委員長で、数多くの労働事件で女性労働者の差別や人権侵害の救済へ向けて弁護活動をなされてきました。

 今後4名の弁護団弁護士の体制で、グエットさんの刑事事件に女性差別やリプロダクテイブ・ジャステイス(性と生殖全般における社会正義)の観点を加えた訴訟として、最高裁判所での逆転無罪を目指していくことになります。

林陽子弁護士のご紹介(http://athena-law.com/lawyer_hayashi.html)



リプロダクテイブ・ジャステイス(性と生殖全般における社会正義)

 人種、民族、宗教、国籍や在留資格、年齢、性的指向、階級、障害や健康保険の有無など、複数の障壁が重なって、性と生殖の権利が行使できない不公正な現状を是正していく概念

 1990年代の米国で黒人女性フェミニストたちが自らの経験と闘争から生み出した概念。白人中心のリベラル・フェミニズムが掲げてきた「選択の自由」だけでは、貧困、差別、暴力の下で生きる女性たちの現実を説明できないと批判。生殖の自由の議論を「個人の選択」から「社会の構造の転換」へと発展させた。

※ 『リプロダクティブ・ジャスティス: 交差性から読み解く性と生殖・再生産の歴史』(ロレッタ・ロス&リッキー・ソリンジャー著、申琪榮&高橋麻美監訳、林美子・新山惟乃・大室恵美・花岡奈央・ミーシャ・ケード訳 2025人文書院)

3. 最高裁判所の上告審へむけた支援活動の取組みとお願い

 最高裁判所が上告を棄却せずに受理するには、控訴審判決に「憲法違反」、「(最高裁)判例違反」の事由がある場合(刑事訴訟法第405条)か、「控訴審判決を破棄しないと著しく正義に反すると認めるとき」(刑事訴訟法第411条)のいずれかです。 最高裁判所にグエットさんの有罪の控訴審判決を破棄させ無罪判決を実現させるには、弁護団弁護士の法律論や専門家の意見だけでなく、多くの市民や労働者の意見を最高裁判所の裁判官に伝える必要があります。

 刑事裁判では、控訴審判決宣告後に最高裁判所に上告(14日以内)した場合には、福岡高等裁判所から最高裁判所に訴訟資料が送付され、最高裁判所から上告趣意書の提出期限の通知が上告人及び弁護人に送付されてきます。 その時期は、上告後から2ヶ月から3ヶ月以内といわれ、グエットさんの上告審では、2026年1月上旬から2月上旬までの期間中に提出期限が決められてくると思います。

 グエットさんの弁護団弁護士は上告趣意書を作成して、最高裁判所へ提出する時に、学者などの専門家の意見書とともに、妊娠・出産経験者や医療関係者、その他の方々のグエットさんの事件に関する一般意見書、最高裁判所への無罪署名を併せて提出します。 なお、上告趣意書の提出は郵送ではなく、弁護団弁護士の代表と支援者らで、直接、最高裁判所へ提出する行動と記者会見、東京での集会などを実現させたいと考えています。 多くの方々や団体のご協力をお願いします。

署名・意見書・寄付のご協力をお願いします!!!!

1.最高裁判所への無罪判決を求める署名

 署名がまだな方は是非署名へのご協力をお願いいたします。また周りの方へ周知をお願いいたします。
https://www.change.org/NguyetSanWaMuzai

2.一般意見書の提出

 妊娠・出産経験者や医療関係者、その他の方々からの一般意見書を募集しています。 書式・手順は こちらのページに掲載しています。 第一次締め切りは2025年12月31日となります。 ぜひご協力をお願いいたします。

3.寄付による支援

 最高裁の上告審の弁護士費用や最高裁のある東京での行動費などが必要です。多くの方々などからの寄付金をお願いします。

口座: 郵便振替 外国人技能実習生権利ネット・北九州 01750-8-84519

 クレジットでの寄付はこちらhttps://x.gd/pEkei

 グエットさんの勇気ある上告が、未来の女性たちの生きやすさにつながるように、どうか力を貸してください。宜しくお願いいたします!

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